パドマーワト 女神の誕生 | akaneの鑑賞記録

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13世紀末。北インドでは、若き武将アラーウッディーンが、叔父を暗殺してイスラム教国のスルタン(王)の座を手に入れました。
獰猛で野心に満ちた彼は、第二のアレキサンダー大王との異名を持つほどに、その権勢を広げています。

 

 

同じころ、メーワール国のシン王は真珠を求めてシンガル王国に行った際、狩りをしていた王女パドマーワティが誤って王を射ってしまい、文字通りフォーリンラブ!

 

 

傷が癒えて彼女を王妃として連れて帰り、盛大な宴を催します。

(彼にはもともと妃殿下がいたんですが…)

 

 

パドマーワティもすっかりお城で人気者。
シン王は、自分が最も信頼する僧侶(兼 預言者みたいな人)に引き合わせます。
彼女と問答を交わし、その知性と美しさにすっかり魅了されてしまった僧侶ですが、なんと二人の初夜を覗こうとしたのがバレて追放されてしまいます。

それを逆恨みした彼は、敵側であるアラーウッディーンに取り入り「貴方様は素晴らしいが、完璧になるには絶世の美女パドワーマティが必要」と吹き込んで、メーワール王国への復讐を図るのでした。


アラーウッディーンは、メーワール王国に兵を差し向けますが、堅牢な城壁に阻まれ苦戦。

一目パドマーワティを見たいと単身丸腰で王宮に乗り込むも、誇り高いラージプート族の王であるラタン・シンの抵抗により、彼女の姿を見ることも許されません。

 

 

一計を案じたアラーウッディーンは、ラタン・シンを拉致し、助けたければパドマーワティ自ら城に会いに来い、と言い渡します。
それに対してパドマーワティが出した条件は3つ。

800人の侍女を輿に乗せて連れて行きます
ラタン・シン王を解放してからでないと会いません
(裏切り者である)僧侶の首を届けないと出発しません


アラーウッディーンはすべて「いいよー!」と快諾して、さっさと僧侶の首なんかはねちゃいます。
自ら手を下さず、裏切り者を処刑しちゃったわけですね。賢い!
しかも800人の侍女は全て男性(女装させてる)プラス、輿を担ぐ男が二人ずつ。
2000人以上の兵を従えていくわけです。
さらに、いつもアラーウッディーンに虐げられている王妃は、パドマーワティの味方となり、シン王と彼女を秘密の通路から逃がしてあげます。

 


またしてもパドマーワティに会えなかったアラーウッディーンは、遂に総力を上げてメーワール王国に進撃します。

 

 

城を取り囲むアラーウッディーンの大軍勢と、睨みあうメーワール王国の兵士たち。
やがて始まる、王と王の誇りと野望を懸けた最後の戦い。

 

 

一対一の戦なのに、アラーウッディーン側は汚い手を使い、シン王は倒れます。
そして、圧倒的に不利なその戦に、パドマーワティはある決意をもって臨んでいました。

「尊厳殉死(ジョーハル)の権利を」
「殿下の許しなしに 私は死ねません」


つまり、戦に負けて凜辱を受けるぐらいなら、尊厳を保つために自死するお許しを下さいと。



ラストは王妃と共に国中の女性がジョーハルに向かうシーンなのですが、妊婦も幼女も含め皆、赤い衣装をまとい、恐ろしいほどの美しさと壮絶な覚悟が伝わってきます。

 

 

 

アラーウッディーンはここでもパドマーワティを一目見ようと奔走しますが、あと一歩のところで間に合わず、もはやその姿を永遠に見ることは叶わないのでした。



一国の運命を変えるほどの美貌と、聡明な決断力。まさに国を傾けさせる「傾城」であり、やがて神格化されていくパドマーワティに、インド映画界トップ女優のディーピカー・パードゥコーン。

 

背もすらっと高く、すっごい美人!
ただ、この大きな目に涙を湛えているシーンが多くて。辛いね~

 


その夫であるラージプート族、メーワール国王ラタン・シン(シャーヒド・カプール)は一族の誇りを重んじ、いかなる窮地にも高潔さを失わず、常に義を重んじる正統派の王。

パドワーマティと本当にラブラブなんです。美しい。


 

 

対してイスラム教国のスルタン、アラーウッディーン(ランヴィール・シン)のとめどない野心と凶暴性。

欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れずにいられない。
彼にとっての「義」とは、勝つことのみ。
アラーウッディーンを演じたために、ランヴィール・シンは性格や振る舞いにも大きな影響が現れ、元に戻るために精神科医のカウンセリングを受けたそうです。壮絶!


イスラム側を描くときは、ほぼ男性ばかり。

女性はアラーウッディーンの王妃と、慰み者としての女(顔も出ない)しか登場せず、踊りのシーンもまぁ男臭いというか勇壮というか…

 

 

対してヒンドゥー教のメーワール国で目立って登場するのはほとんどが女性。

王宮の装飾も、お祭りのシーンなどもともかく美しくて、その対比がすごくはっきりしていましたね。


500年にわたり語り継がれる伝説の映画化。
ともかく13世紀が舞台ということで、博物館級の衣装と宝飾の数々が本当に美しいし、セットなども豪華絢爛です。

 

 

バーフバリ」のような荒唐無稽な活劇でもなく、「パジュランギおじさん」のようなハートフルな実話でもなく、壮大な抒情詩、悲劇の物語ですね。

かなり長いのですが、ずーーっと引き込まれて見入ってしまいました。

史実を元にしていますが、脚色して膨らませ、3人の男女に焦点を絞った愛の物語になっていて、そういうアプローチは歌舞伎にも通じるところがあります。

こういう映画がお好きな方にはお勧めです!


現在の人権尊重の考えにはそぐわないストーリですが、侵略者から身を守るために集団自決というのは、かつては日本でもありましたね。

もちろん推奨される行為ではありませんし、そういう形でしか抵抗できなかった哀しさもありますが、物凄い意志の強さがないととてもできないことです。
その他、動物を生贄にするなどのシーンもあり、本編が始まる前に「これは物語であり、風習その他は架空のものです」といった内容の注釈が長々と流れました。
インド国内でもヒンドゥー教とイスラム教の一部の過激な宗教団体による上映中止運動などが勃発するなど、かなり物議を醸しだしたようです。


でも一番驚いたのは、実生活において、アラーウッディーンとパドワーマティの俳優さんが夫婦だということ!!!