バジュランギおじさんと、小さな迷子 | akaneの鑑賞記録

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声が出ないパキスタンの少女シャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)は、母親とインドのイスラム寺院に願掛けに行った帰り道ではぐれてしまう。ヒンドゥー教徒のバジュランギ(サルマーン・カーン)は迷子の彼女を預かるが、後に少女がイスラム教徒だと知る。対立する両国の現実を背負いつつも、バジュランギは国境を越え少女を親元に送り届けようとする。
 

 

いや~もう泣いたわ!ひっさびさにメチャクチャ泣いたわ!
そのあと美容院に行く予定だったのに、目が真っ赤でどうしようかと思うぐらい泣いたわ!
ホント良い映画でした。
 

 

バカが付くほど正直者のバジュランギ(パワン)、パキスタンの少女シャヒーダー、彼らと行動を共にするパキスタン人記者ナワーブ、そして彼らを取り巻く家族、町の人々。
全ての人が心優しく、愛に満ちていて、それが見ている私たちの心にどんどん注ぎ込まれる感じ。
ほぼロケだったので、壮大な山々、混沌とした街並みなど、インド&パキスタンの美しい風景も楽しめます。
パキスタンのバスだってこんなの。

 



極彩色の布地、アクセサリー、装飾、寺院とモスクそれぞれの霊廟、お祈りの仕草、ヒンドゥー教とイスラム教の音楽 

そういったものすべてが美しい。

 


2回ほど、インド映画特有のダンスシーンがありますが唐突な感じはなく、それどころかあまりにも幸福感に溢れていてなんだか泣けてくるんですよね。

国と宗教の対立といった難しいテーマを取り上げつつ、それを笑いや深い愛で包み込み、感動のラストに持っていく脚本が本当に素晴らしい。

特にひねったストーリではなく、予定調和なんですが大傑作だと思います。

上映館は少ないですし、東京でもキャパ60人ぐらいの、映画館というよりは映画室のようなところで観賞しましたが、周りもみんな泣いていて、最後には拍手が起こりました。
是非、多くの方に見ていただきたいと思います!
絶対に感動間違いなしです!超超超お勧めです!!!



ちょっと面倒ですけど、この映画の背景となっているインドとパキスタンの関係について説明しますね。
(私も全然知らなかった)

インドはムガール帝国滅亡後イギリスの植民地になりましたが、イギリスは植民地支配を続けるために、インド人をヒンズー教徒とイスラム教徒とで仲間割れさせました。
1947年、ガンジーによりインドの統一&イギリスからの独立に成功しましたが、宗教上の教義の違いによりヒンズー教徒とイスラム教徒は反目し、イスラム教徒はパキスタンを建国。
以来、分裂して互いに領地の取り合いになり、1970年代まで3度のインドパキスタン戦争が起こっています。
今でも両国は政治的にも宗教的にも対立が激しく、お隣の国なのにビザがないと入国することもできません。
それぞれが固有の領土と主張し対立しているのが北西部の豊かな山岳地帯のカシミール地方です。


ここから先は少しネタバレになりますので、行間空けておきますね。






















小さな迷子の故郷は両国が領土と主張するカシミール地方の山岳牧草地。
村人20人ぐらいの小さな小さな村。
村に1つだけあるテレビで、クリケットの試合を見ています。
パキスタンチームのエースは「シャヒード」。
彼のファンであるママは、生まれた娘に「シャヒーダー」と名付けました。
可愛く育ったシャヒーダーは6歳、でも口がきけません。
言っていることは理解できるのですが、声が出ないのです。
村長から「デリーの霊廟に行って願掛けをしなさい。私もしゃべることができるようになったから」といわれ、
お父さんは大事な羊を売ってお金を作り、お母さんとシャヒーダーは列車でインドに向かいます。
無事に願掛けも済ませ、帰路につく二人。

しかし夜中、国境付近で列車が立ち往生。
シャヒーダーはふと目を覚まし、好奇心から列車を降りてみます。
子ヤギを見つけ遊んでいると、静かに列車が動き出してしまいました!
叫びたくても声が出ず、途方に暮れていたところ、別の列車が止まったので乗り込んだのですが、それは車両を切り替え、インドの方向に走り出します。
シャヒーダーの姿が見えないことに気付いた母親は半狂乱になって「娘を探しに行く!」と泣き叫びますが、すでにパキスタン国内に入ってしまったため、もうインド側に入国することはできません。


対してバジュランギ。
厳格な父は、インドパキスタン戦争の英雄の一人。
しかしバジュランギは学校を卒業するのにも10年かかり(10年間落第し続ける)、スポーツもダメで、父親からは馬鹿者扱いされています。
やっと合格して卒業できたところで父は死去、デリーにいる父の知り合いの家で面倒をみてもらうことになります。
家の雑用を手伝ったり、学校の先生であるその家の娘の紹介で学校の仕事を手伝ったりしています。
二人は恋に落ちるのですが、信仰心が強く誠実ではあるもののバジュランギがあまりにもお人好しすぎて、親父さんは心配でなりません。
ちゃんと一人前に稼げるようになって家を買えたら、結婚を認めてやると言い渡します。




バジュランギはデリーの街で、なぜか迷子女の子に懐かれてしまいます。

 

 

警察に連れて行っても保護してもらえず、仕方なく居候している家族の元に連れて帰ります。
口がきけないので、どこの子かもわからないし、どうやって親を探せばよいのか…

 

採食主義ではないこと、モスクでお祈りの真似事をしたりなど、だんだんと彼女の素性が分かってきますが、決定的だったのは、家族団欒リビングのテレビで、インド対パキスタンのクリケット試合を見ていた時のこと。
パキスタンが逆転勝利を収めると、シャヒーデは大喜びして踊り、画面の国旗にキスをしたのでした。

 


「この子はイスラム教徒のパキスタン人!!!」と怒った親父さんは、今すぐ出て行けと。
しかし、インド国内のパキスタン大使館で暴動がおこったため、1ヶ月はビザの発行をしないことに。
旅行代理店も全てNG。
闇ルートで入国させてやると多額の金をせしめた業者は、なんと彼女を売春宿に売り飛ばそうとしていました!
それを知ったバジュランギは、自力で彼女をパキスタンの親の元に返そうと心に決め、ビザもパスポートも無しで旅立ちます。
違法に国境を超えるのですから、普通なら策を練り、嘘八百並べ立ててるところですが、彼は本当に馬鹿正直なので、絶対に嘘をついたり逃げたりしません。
真っすぐに現状を訴え続け、何があっても信念を曲げず突き進む姿に、やがて敵対する相手も心を打たれ、手を貸してくれるのです。

 

砂漠に掘った秘密の地下道から国境越えさせてもらった時も、国境警備隊に「誰それの手引きで、地下の抜け道から密入国しました」て言っちゃいます。(抜け道は埋められちゃうし、手引きした人大迷惑)
「逃げるのはハマヌーンの神に逆らうことだから、ここから先に進む許可を下さい!」って居座るんです。
どんなに殴られても、銃で脅されても「許可を下さい」と動かないんですね。
そんな性格だから「インドのスパイ」だと警察に捕まったり、トラブル続き。

 

警察署に置いてあったカレンダーの風景に反応したので、その写真だけを頼りに、彼女の村を探していきます。

 

 

 

 

逮捕劇を見ていたパキスタン人記者が特ダネをスクープしようと彼を追い始めるのですが、次第に密入国の理由を知り、彼の人となりに感銘を受け、二人三脚で女の子を親元に返してあげるため奮闘します。

 

 

この記者役のナワーズッディーン・シッディーキーさんがすっごく良いんですよ!
ご本人も結構苦労して、たたき上げみたいなキャリアなんですよね。
なかなか彼女の家が分からず途方に暮れ、警察に追われながらも、彼は二人の動画をずっと撮り続けます。
この動画をテレビ局で取り上げてもらえば!とあちこち交渉するのですが、全く取り合ってもらえず、最終的にインターネットに動画をアップロード。



この先、感動的なラストはお楽しみにしておきましょう。




サルマン・カーン  言わずと知れたインドの大スター。
ただ実年齢50歳台ということで、青年役なのかおじさんなのか、ちょっと微妙ではありましたが…。
さすがの演技力だし、包容力と可愛らしさ、素直な感じが素敵。

ただ、バジュランギの生い立ちを説明するシーンがちょっと長いので中盤ダレる感はあります。

 

 

シャーヒーダー役のハルシャーリー・マルホートラちゃん。

 

 

5000人のオーディションから選ばれただけあって、まぁ本当に可愛らしい!!!
一切セリフが無いのに表情だけで全編演技できていて、素晴らしいです。