現在アメリカで行われる世論調査をみたら過半数の国民は対外関係を重視することよりも国内問題に集中すべきだと答えています。

ところがこのアメリカの世論は議会やメディアには反映されておらず、ワルト教授が書いておられるように、いまだにネオコンやリベラル介入主義者達の影響力の方がはるかに大きいのです。

では、日本はどうなっているでしょうか。

西尾幹二さんは『アメリカと中国はどう日本を「侵略」するのか』で次のように書いておられます。

「日本国内の議論を見ていると、危機感などどこ吹く風で『親米保守』と『護憲左翼』が握手をして、メディアの大部分が平和主義にかこつけて自虐史観にしがみつき、なんとかして護憲の立場を死守しようとしている。」

日本の場合いまだに「親米保守」と「護憲左翼」の勢力が圧倒的で、このグループの許容できる範囲でしか政策を動かすことができずに基本的には「現状維持」を図っているわけです。

なぜ日本では「親米保守」と「護憲左翼」の現状維持勢力が優勢を保つことが可能なのでしょうか。

それはやはり「ネオコン」と「リベラル介入主義」がいまだに優勢なアメリカと同盟関係を結んでいるからだと思われます。

悲しいかな、日本が変わるためにはまずアメリカに変わってもらわなければならないのです。

いずれアメリカにおいても、少し時間はかかると思いますが、世論をしっかり反映した「ネオコン」と「リベラル介入主義」が優勢にならない時代を迎えるでしょう。そうではないとアメリカは民主主義の国とは呼べなくなってしまいます。

そうなった時に日本においてもようやく政治の変革が行われるのでしょう。
ハーバード大学のスティーブン・ワルト教授が少し前のブログに「間違いを認めないネオコン」という記事を書かれています。

イラク戦争を主導して大失敗したはずのネオコンなのですが、実はアメリカにおいてはいまだにマスメディアに登場して活躍しているのです。

ふつうあれだけ間違っていたら発言の機会は制限されても仕方がないと思うのですが、そうはならない理由をワルト教授は4つ挙げておられます。

一つ目は、ネオコン自身が決して間違いを認めず、厚顔無恥なこと。

二つ目は、ネオコンの思想を信じている団体が潤沢な資金を持っていること。

そして三つ目は、フォックス・ニュースのような偏ったメディアだけではなく、いまだにニューヨーク・タイムズなどの主要なメディアにも「意見をバランスさせる」という目的で度々登場することを書いておられます。

そして最後に、最も重要なことは次の点です。

現在のアメリカの外交思想で優位を持っているのにliberal interventionists(リベラル介入主義)というものがあります。実はリベラル介入主義者とネオコンにはそんなに違いはありません。前者が国連のような制度を好ましいと思っていますが、ネオコンはそれを否定しアメリカの単独主義を好むという差異があるだけなのです。

リベラル介入主義者もネオコンの主導するイラク戦争に賛成しました。そのリベラル介入主義者達がネオコンを批判できないのは当然で、それをやると自分達に火の粉が及ぶからです。

アメリカの議会やメディアでは現在でもネオコン+リベラル介入主義者の勢力は圧倒的で、勢力均衡派や孤立主義者達の力では到底及ばないのです。

逆に言えば、イラク戦争やアフガニスタンでの失敗はアメリカの国内政治にさほどの影響を与えていないのです。

だからオバマ大統領がいくら戦争をしたくなくても、ネオコン+リベラル介入主義者達の圧力に抵抗することは難しく、今回のイラク危機でも500人の軍事顧問団を派遣せざるを得なかったのです。

結論としてネオコン+リベラル介入主義者の勢力がアメリカで優勢なうちは、これからも戦争をする可能性が高いのです。
久しぶりに西尾幹二さんの本を読みました。途中から話が散漫になって一気に読むというわけにはいきませんでしたが、所々に文学者らしい鋭い捉え方があって面白かったです。

今回は私が鋭いと思ったところを引用してみます。まずは現場認識について西尾さんはこう書いています。

「他国の力で経済的に有頂天になった中国の『没落への秒読み』と黄昏の帝国アメリカの『逃げ腰のポーズ』。我々が目撃しているのは両陣営相打ちのそのようなシーンではないだろうか」

私は、このような捉え方は現状を正確に認識しているように思われます。

ただ、ここでの問題は中国とアメリカがどちらが先に転ぶかで、日本に及ぼす影響が全然違うのです。

もし先に中国が転べば、「中国が民主化されれば、結果として日本の防衛は実現されるのである」と西尾さんが書くように、その後に日本がアメリカに捨てられてもさほど困ることはないのです。

ところが中国より先にアメリカが転んで日本がアメリカに捨てられるようなことがあれば、日本は中国の軍拡をまともに相手にしなくてはならないのです。

現在のところは中国が先に転がってくれるのを祈るしかありません。

またアメリカに対して西尾さんは次のようなことを書いています。

「私はアメリカに日本を失って欲しいと思っている。そのときが、我が国の独立のチャンスであるし、そこまでこないと、この国は独立できないのだから」

私はこれまで何度かこのブログでアメリカが日米安保を破棄することで日本の憲法改正が可能になることを書いてきましたが、西尾さんの文学的表現ではこうなります。

こちらの方もそんなに先にはならないかもしれません。

私の計算では最短で、オバマ大統領の残りの任期2年+ヒラリー・クリントン一期4年=6年で政権交代した共和党が同盟国を処分しそうな気がします。

少し脱線しましたが日本の将来が心配な人は西尾さんの「アメリカと中国はどう日本を『侵略』するのか」を読んでみてください。