つい最近イラン問題に関する評論を読んでいて、自分の英文の読解力が本当に正しいのか疑問に感じた瞬間がありました。
それは現在フォーリン・アフェアーズという権威ある外交雑誌を出版したり、外交政策を提言するシンクタンクを抱える外交評議会の会長であるリチャード・ハースが書いていたものでした。
この人はブッシュ大統領(息子)時代に国務省の政策企画局の局長を務めていました。この政策企画局は第2次大戦後にマーシャル国務長官がジョージ・ケナンのために作った部署でした。ハースはいわゆるアメリカの外交エスタブリッシュメントの一員と言っても良いでしょう。
彼が書いたものを要約すると次のような感じです。
確かにトランプ大統領が一方的に核合意を破棄するまではイランはきちんと合意を遵守していたかもしれない。しかしながらイランの行動を抑制するためには核合意だけでは決して十分ではない。
イランがレバノンのヒズボラを支援していることでこの地域を不安定にしていることやミサイルの開発を続行していることで、いくらイランを再び核合意に戻すことができてもそれだけでアメリカは満足できないとして次のように書くのです。
「代わりの政策は公式の外交ではなく、非公式なものだ。それを暗黙の外交または同意無き軍備管理と呼ぼう。アメリカや関係する国家(イスラエルを含む)がイランに対してイランの核開発に関して我々の許容範囲を伝える。
そしてイランがこの範囲を超えたら、イランは実質的な代償を払うことになるだろう。さらなる経済制裁に加えてサイバー攻撃がイランに対して行われ、核施設および経済や軍事的価値を持つ施設への軍事攻撃が予定されている。」
アメリカとイスラエルを含むアメリカの同盟国が一方的に条件を示し、イランがそれを守らなければアメリカはイランを空爆するというのです。
私はこれまでこのようなイランに関する乱暴な議論をしばしば読んできましたが、リチャード・ハースのような立場の人が書いているのを読んだのは初めてです。
ところが、この文章を書いている時に割と有名なアメリカの元高官がイランに対して核合意の状態に戻るようにイランを軍事力で脅かせという文書を連名で発表していました。
レオン・パネタCIA元長官やデイビッド・ペトラウシ退役将軍、バイデン政権の国防長官の噂があったマイケル・フルノイ女史が含まれており、内容はハースが書いたものとそっくりなのでこれがアメリカの外交エスタブリッシュメントの総意なのかもしれません。
本当にこの方法でイランの核問題が解決するのでしょうか?不安が強まっていくばかりです。