ロナルド・ドーア氏は『日本の転機』で次のように書いています。

「中国は周恩来、鄧小平の言葉に従って、(自国の領土だと思っているが、この問題は当分の間棚上げにしよう)ということで、その口約束を守ってきました。」

同じことを元外交官の孫先享氏もいつも主張しています。

でも、これは本当でしょうか。

つい先日の『産経新聞』に総理補佐官を勤めたことのある岡本行夫氏が「中国は、尖閣諸島を中国領土に編入するという『領海法』を1992年に制定した。国有化を撤回しろと日本に要求する前に、中国はこの法律から尖閣諸島の名前を削除すべきである。不思議なことに、当時も、今も、日本政府はこの中国法に対して強い抗議を行っていない。領土問題は存在しないのだから中国にいちいちに対応する必要はないということなら、間違いだ。それが今の中国の大攻勢を許している。」と書いています。

中国が尖閣諸島を「核心的利益」と呼び出した時も、日本側が抗議を行ったという話を私は聞いたことがありません。

そして気づいてみたら大変追い込まれた事態になって、あわてて国有化を行ったのですけれど、世界からは日本側が一方的に現状を変更したと思われているのです。

満州事変の時と全く同じです。

こういう日本人の習性は治らないのでしょうか。
イギリス人学者ロナルド・ドーア氏が書いた『日本の転機』を読了しました。

イギリスのリベラル派が書いた国際関係論といった趣きの本です。至る所に、イギリス人ぽい皮肉がこなれた日本語で書かれてあり、読んでいて不思議な感じがしました。

前半部分は、中国の勃興について書かれてあります。イギリスの進歩派も日本と同様にこれからも着実に発展していくと考えているようです。私のように歴史は循環しながら進んでいくと思っている者からすれば、そうですかという感じで、今回はその部分は取り上げません。

後半部分は、イランと核兵器問題について書かれてあり、私としてはこちらの方に興味を惹かれた次第です。

ドーア氏も、イランとの戦争の可能性が大と考えておられるようで、実際に戦争になったら「爆撃は残念なことで、しないに越したことはなかった。だが、核不拡散条約に照らせば、イスラエルの爆撃は正当化できる。イランが核兵器を作ることはどうしても制止しなければならないのだから」というレトリックが使われると考えているようです。

このような考え方をするのが、米国、日本、イギリスでは95%。フランス、ドイツは50%であろうかと指摘しています。

ここでドーアが指摘する大切なポイントは、「核不拡散条約を維持するための紛争が核兵器の拡散の予想結果より、よっぽど多くの人命を奪いそうな危険性を孕んでいる」というものです。

ここで私が思い出したのが1994年におきた米朝の核危機でした。

あの時も、北朝鮮が核拡散防止条約から脱退し、寧辺で勝手に燃料棒を取り出す気配を見せたのです。

そこで、クリントン大統領が北を爆撃する一歩手前までいったのですが、カーター元大統領の仲介でどうにか騒ぎはおさまりました。しかし、最終的には北朝鮮は核保有国になってしまいました。

もし、あの時にアメリカが爆撃していれば、どうなっていたでしょうか。

北朝鮮が核保有国になることは防げたでしょうか。北朝鮮は爆撃に対して反撃したでしょうか。また、中国はどういう態度をとったでしょうか。

疑問だらけですが、当時の日本や韓国ではアメリカの爆撃に賛成していなかったと私は思っています。

あの時、日本は戦争になる可能性よりも北朝鮮の核保有を選択したのです。

一方、イスラエルは、イランが北朝鮮になる可能性を絶対に阻止するつもりなのです。

ドーアのいう平和目的に作られた核拡散条約が戦争の引きがねになっているというのは正しいと思います。

ドーアはこの本の最後の部分で、ボロボロになった核拡散条約に変わるものを提唱していますが、これは別の機会に書くつもりです。
韓国の『中央日報』に次のような記事が出ていました。

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「ソフトパワー」の著者で米国防総省次官補を務めたハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が、「日本が韓国人慰安婦に対する謝罪を盛り込んだ河野談話を否定するのは自虐的行為」と話したとウォールストリートジャーナルが27日に報道した。

ナイ教授は26日に東京で国際戦略問題研究所(CSIS)と日本経済新聞の共同主催で開かれたシンポジウムで、「河野談話を撤回しようとする日本の動きは(韓国と中国のような)近隣諸国の国民にとって日本が軍事力を乱用した過去を思い出させる。(そういう主張は)自分の足に銃を撃つようなもの」と話した。今回のシンポジウムにはアーミテージ元米国務副長官、キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)らが参加した。アーミテージ元副長官は、「中国もやはり韓国人慰安婦補償問題を握りつぶす日本政府の姿と閣僚の靖国神社参拝などを眺め日本で軍国主義が復活していると感じている」とし、最近の日本政界の動きに懸念を示した。
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対日政策で重要な鍵を握るナイ、アーミテージ両氏が安倍氏の掲げる河野談話の修正に否定的です。

やはりアメリカは、天木直人氏の言うように「戦後レジームの変換」に反対なのでしょう。

歴史問題などは、現下の日米安保条約がある限りは変更できないのです。どうも日本の保守派はこの点がわかっていません。

もし安倍政権が出来るのなら、安全保障よりも経済に集中する方が得策とおもえます。