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とんだ遠距離恋愛だった
トシと付き合ったのは
約1カ月間
親友としての期間に比べれば
ほんの一瞬だった
1カ月のうち
会ったのはたった4回
それまでは、3日に一遍は
会って遊んでいたのに
自分でも驚くほど会わなくなった
会うと気が重かった
親友としてやりたい事は
幾らでもあるのに
恋人としてやりたい事は..
何一つ、思い浮かばなかった
「親友」改め「恋人」としてのトシは
会う度に
それはそれは尽くしてくれた
とはいえ
「親友」関係だった時も
基本、性格女王様な私の荷物を
率先してトシが
持ってくれたりしていたので
「恋人」関係になっても
そこにぎこちないエスコートが
加わったというだけで
表面上は
極端な変わり映えはなかった
変わっていたのは 互いの心の有り様
付き合いだしてからは一度も
私からは
手を繋がなかった
トシが手を繋いできても
「親友」だった時の力強さでは
握り返せなかった
肩を組まれると
ただただ、哀しかった
それまで笑い合えていたことが
友情の証と思えていた行為が
以心伝心だった心の距離が
もう2度と、
肩を並べることはないのだと
自覚させられるのが...
自分には何よりも、辛過ぎた
そんな心の有り様が
トシにも伝わったのだろう
4度目の逢瀬は、トラウマになった
押しても引いても
あの手この手もダメとなると
男は、最低な
最終手段に出る事がある
自分も同じ「男」だから、というか
これは同性に襲われ慣れた
自分の経験的勘からだが
『夜に少し逢えないか』
と連絡をもらった時
ああ..これはヤバい
と確信した
かと言って
未だ奴の精神面を考慮すると
断るわけにも行かず
私は白侶に運転を頼み
約束の場所に赴いた
トシの車に乗ると
「話しがある」と言って
自分のことをどう思っているのか
問いただされた
私が答えに困り
煮え切らない態度になると
案の定、奴は車の中で1人でおっ始めた
肉体関係を持てば
何とかなると思っているのは
男の浅知恵だ
かと言って
いくら体術に自信がある自分でも
190cm近い89キロの筋肉の塊を
倒すことはほぼ無理だ
ウエイト差は26キロもある
絶望的だ
逆上されて襲われたら
確実に死ぬ
「男同士」の怖いところは、まさにここだ
ただ自分も、愚かだったと思う
「親友」という思い出を壊されたくなくて..
あわよくば「戻れるかも」と思っていた
期待を壊されたくなくて...
全力でトシを拒んだ
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