谷崎潤一郎『細雪』⑦~「堂々たる人生谷崎潤一郎伝」 | 自転車から今日は♪

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「あさぼらけてけてけブログ」あさぼらけさん

最近小谷野敦著「堂々たる人生 谷崎潤一郎伝」という本を読了され

感想記事を書いて下さいましたので、リブログさせて頂きます。

 

聖地巡礼『細雪』お花見編

まだ平安神宮の桜が残っていました、ちょっと回り道^^

 

実際の桜の季節に京都を巡って感じた私の谷崎センセについて

語ってみます。

 

本の画像お借りしました。

あさぼらけさん、どうもありがとう♪

 

 

尚、2月の記事には、あさぼらけさんによる、谷崎大先生の

イメージイラストが寄せられていまして

 

その額には「松子命」とあり、似顔絵の横には

 

その白い脚で踏んで!

ぼくの奥さんいらない?

 

とセリフが書かれててまして、私はぶはっと噴きだしてしまいました。

 

 

 

 

まず、今回のお花見は、桜のシーズンに関西出張ということで

突然決まったものでして、その前の私はというと頭の中思い切りSF入ってました。

 

頭の中は半分が谷崎潤一郎、そして半分は新幹線で読んでいた

ブラッドベリの短編だったんです

(↑仕事はどーした)

 

 

ブラッドベリの話は、改めて紹介するつもりですが

人って小金ができると、こういう気持ちになったりするのかなー

そういうものなのかなぁ

と思わせるようなお話が結構ありまして

 

仕事が成功した男が、夢だったタイムトラベルを実現させようと

ツアーに申し込んでみたり

本当は会社を軌道にのせるために設備投資しなきゃいけないのに

宇宙船が欲しいと言い出して家族をやきもきさせてみたり

 

そしてお花見から戻って、谷崎潤一郎という人となりを彼もまた

夢を追い続けているんですよねぇ

 

自ら命を絶った小説家も少なくない中、谷崎先生は最後まで

もっと小説を書きたいと仰って、それは何故なのかなと考えると

自分の欲求にどこまでも忠実だったからなのかなぁと

 

スキャンダラスでも堂々と。

一般人には真似できませんが多少図太さも必要なのでしょう。

 

さて先日大覚寺大沢池のお花見の話で、大覚寺近辺は

和風の豪邸がいっぱいでびっくりしたって呟いたこと皆さん覚えてます?

 

 

 

 

あの辺りに、どんな方が住んでいるかはわからなかったのですが、

京都市街の南禅寺エリアに、最近宇宙旅行にいったという

社長さんが純和風の別荘があるとのことで。

 

南禅寺といいますと、細雪お花見ツアー的には

1日目の早めの夕食をとったという料亭「瓢亭」が場所。

 

私には縁のない場所だと今回のウォーキングでは除外したエリアなのですが

後日関連本を読みますと、一時期南禅寺エリアに住まわれたというお話がありまして

これにまつわるお話も、後ほど書いてみたいと思います。

 

 

 

 

さてさて、文豪谷崎潤一郎

 

私のファースト谷崎は「細雪」だったのですが、この小説は谷崎家の人々の

日常をベースにした小説と知り、傑作傑作誕生の裏側を知りたいという下世話な欲求から

時期関連本を読みまくっていた時期が私もありました。

 

するとどうでしょう。

この先生の作品にはそれぞれミューズとなる女性たちがいて、

作品のスタイルにあわせてお部屋や生活スタイルをカスタマイズするんですね。

 

「ガラスの仮面」の北島マヤちゃんが、王女様になるために姫川さんの

おウチに住んでみたり、狼少女になるため狼になりきってみたりするように

谷崎先生も、源氏物語の訳すときは六条院風なお部屋にかえますし

なんでしたら女同士を競わせて、それをネタの小説書くとか

エグいことやってるんですよねぇ

 

初めは小説以上にドラマティックな人生を送ってる人だなと

思う程度だったのですが、関係者が亡くなるたびに、暴露本的な本が出版され

小説のイメージを壊さないでくれーと封印してたのですが

やっぱり作品を読みますと、彼のスキャンダラスな私生活の世界に

ループしてしまいます。

 

 

あさぼらけさんが紹介していた本、図書館で貸し出し中で

読めてないのですが、女性関係あれだけやらかしてるのに

堂々とされてるのは、流石といいますか…

 

こんな人間家族だったら絶対お断り!って思うくせに

作品は大好きというこの矛盾。

 

本当に困ってしまいます。

 

 

谷崎家家系図です。

 

 

 

 

ゴシップネタで申し訳ないのですが谷崎先生は三度結婚しており、

この中に小説のモデルとなる女性たちがたくさん登場しています。

 

まず一人目の奥様、千代さん

 

谷崎先生はじめは、千代さんのお姉さまである芸者の初さん

結婚したかったのですが振られてしまったので、

姉がむりなら妹にするか、まるで光源氏が紫の上を拉致るかのように

千代さんと結婚しました。

 

千代さんは気性の激しい初とは違い良妻賢母タイプの女性で

谷崎センセの好みとは違うんですよ。

 

翁は中身ドSなくせして、勝気で奔放な女には振り回されたいというドM

嗜好がありまして、姉の初に性格のよく似た妹のせい子さんと浮気します。

 

そしてそのせい子さんこそ、痴人の愛のヒロイン、ナオミの

モデルとなった女性なのです。

 

 

お馬さんごっこの場面は有名ですね。

 

こんな筈ではなかったのに…

といいつつ、主人公は悦んでたりします。

 

気の毒なのは、奥様の千代さんです。

 

いくら友人の谷崎でもこれはヒドすぎると、小説家の佐藤春夫先生が介入しますが

相談しているうちに情が沸いてしまうですよね。

 

いろいろ、すったもんだがあって「小田原事件」とか

「細君譲渡事件」あたりをググってもらうか

夫婦間のすれ違いを知りたいのであれば、小説『蓼食う虫』あたりを読みますと

なんとな~く全体がみえてくるかな。

 

但し小説は、結構美化して書いてる気が致します。

 

千代夫人とは離婚。

 

妻と別れて哀しいのかなと言われたらそれはどうでしょう。

実はこの時既に、3番目の妻となる松子さんと知り合ってますので

心は松子さんに向いてたかもしれないですね。

 

しかし残念なことに、当時松子さんは人妻でした。

 

(ダブル不倫ですがな)

 

 

さて、三番目の妻である松子夫人は『細雪』の次女幸子さんのモデルでしたよね。

 

長女鶴子は朝子さん、次女幸子は松子夫人

三女雪子は重子さん、四女妙子は信子さん

そして幸子夫である貞之助は、松子夫人の前のご主人である根津清太郎さんと

谷崎潤一郎をミックスさせたような、このような配置になります。

 

 

これを踏まえ、小説『細雪』の登場人物でリアル谷崎家を説明すると

こうなります。

 

蒔岡四姉妹は大阪船場のお嬢様

 

長女の鶴子姉さんはエリートサラリーマンを婿に入れ蒔岡の名を守っています。

次女幸子も、お金持ちの御曹司の貞之助さんと結婚。

 

結婚してない妹の雪子と、妙子は本家の長女の家より

豪奢な趣味をもってる貞之助義兄さんとウマがあうのか

幸子夫婦と暮らしている。

 

しかし、貞之助は、浪費がたって会社が行き詰まり

幸子も、東京からやってきたT崎という妻子のある作家と急接近。

 

これまでにも女関係で問題起こし続けてきた貞之助だが、あろうことか

妻の妹である妙子と不倫関係になって駆け落ち騒動

しかし何故か新聞には、三女の雪子と書かれて苦労は絶えない。

(細雪では、奥畑という船場のボンボンと駆け落ちという設定になってます)

 

世間体もあるので、貞之助&幸子夫婦は離婚はせず

いろいろ失敗して、かろうじて残った不動産に、雪子、妙子を引き入れ

何事もなかったように暮らす。

 

作家T崎は、妻と離婚が成立。

愛する幸子は人妻で、夫の事業が傾いたとはいえ

手の届かない上流階級の奥方

 

失意の作家は、別の女性と結婚するのであるが

二人の関係はその後も続き、やがて二人は不倫同棲へと

発展していくのであった…

 

リアル細雪(上巻)終わり

 

 

 

ドロドロじゃないかっ!

 

 

はい、次。二番目の妻、丁美子夫人の巻

 

お写真で拝見する丁美子夫人はとても美しくて、編集のお仕事をこなすくらいに

頭も良くて、そして何より、夫となる潤一郎を敬愛してたんですよ。

 

なのに文豪にかかるとこうなってしまうのです。

 

『猫と庄造と二人のをんな』

 

諸説ありますが、庄造の前妻品子は、登美子夫人

庄造の新しい妻福子夫人のモデルは松子夫人とも言われています。

 

 

細雪の世界って素敵ねって、うっとりとしていた私も

このへんまできますとオイオイってなってきます。

 

丁美子夫人、松子さんに対しては相当お怒りで不倫アルアルじゃないですけど

裏ではズルく立ち回ったと思うんですよね。

 

 

松子夫人は、細雪の幸子であり、春琴抄の美貌のヒロイン琴抄であると同時に

『猫と庄造と二人のをんな』では資産家の娘だが奔放でちょっとやかましい

福子という姿で登場していて、作品の為なら人の人生なんて知ったこっちゃない的な

作家の恐ろしさを感じてしまいます。

 

谷崎関連本は過去色々読んでいますが、なかなか鋭いことを書かれてるなと思ったのが

「われよりほかに ~谷崎潤一郎最後の十二年」

 

作者の伊吹和子さんは晩年までの十二年間、秘書として口述筆記を行い

谷崎亡き後は川端康成先生の編集についた方なんですが、

なんといっても若い女性でありながらエロ翁の毒牙にかからなかった方でもあるんですね。

 

とてもフラットに谷崎家の人々を描いていて、谷崎ファンにとっては

なかなか面白い本だと思います。

 

伊吹女史は、谷崎先生が一番きらいな、小賢しいタイプの女だったからみたいな

自己分析をされていましたが、名作誕生の裏話がいろいろでていてオススメですよ。

 

 

さて最後のミューズは『鍵』『瘋癲老人日記』のモデルとなった

お二人に登場いただきましょう。

 

『鍵』は細雪の三女雪子のモデルとなった、松子夫人の妹の重子さん

 

アルコールにかなり依存していて、この小説で

お酒に酔った妻が倒れて大変なのことになるというエピソードは

重子さんのからきています。

 

 

谷崎先生は、当時人妻だった松子夫人が本命でしたが

松子を妻にできないのなら、妹の重子さんを妻に迎えようって

考えてました。

 

先ほどのリアル細雪、貞之助さんを前夫の根津氏から

谷崎潤一郎におきかえて説明するとこうなります。

 

蒔岡の次女幸子は作家貞之助と再婚。

前の夫との子供もこちらで引き取り二人は幸せに暮らしていた。

 

貞之助はノーベル賞候補と囁かれるほどの売れっ子作家で

妹の雪子は、徳川家の血をひく葵の家紋をもつという名家の男と結婚。

 

しかし夫は早くに先立たれ、雪子は娘時代を過ごした

貞之助夫婦の家へ身を寄せていた。

 

幸子は前夫との間にできた長男を雪子の養子にしたものの

息子を亡き夫の家の家風に合わせることなく、全てが蒔岡流だ

 

貞之助の庇護のもと雪子は姉の幸子にかわって、蒔岡家の細々とした

用事を取り仕切り、貞之助の第二の妻と囁くものもあったが

名作『細雪』のミューズとしてその地位は絶対だった。

 

住まいを京都へとうつし、いつしか蒔岡邸は源氏物語の六条院と

ようだと噂されるようにもなった…。

 

リアル細雪 中巻 終わり

 

 

文章はともかく、内容的には続編細雪っぽいとこありません?

 

ところがこの谷崎家に刺客があらわれます。

 

松子夫人の前のご主人との子供で、重子さんの養子に入となった

渡辺清治さんのお嫁さんになった千萬子さんです。

 

 

千萬子さんは『瘋癲老人日記』のヒロイン颯子のモデルとされています

 

…ったく このエロジジィがっ!

 

と言いたいところなんですが、なぜかこの人が小説にすると

文学になってしまうんですよ

 

 

 

船場のお嬢だった細雪四姉妹

谷崎文学ヒエラルキーの頂点に立っていた彼女たちでしたが

颯子さんは日本画家の橋本関雪様の孫娘。

 

誰もがビックリな京都は南禅寺の600坪もある文豪の豪邸も

私はが子供の頃住んでた京都の家は3000坪あったし何がそんなにスゴいわけ

なスーパーお嬢

 

しかも文豪にも、姑である細雪姉妹たちにも物おじしない、

気の強さもありましたので谷崎翁いちばんのお気に入りになるのです

 

二番目の妻、丁美子さんがモデルと言われた『猫と庄造と二人のをんな』では

若い資産家の娘に夫を略奪された品子が、略奪したって続くわけがない

みたいなセリフをはいてますけど、実際は谷崎潤一郎&松子夫婦

最後まで添い遂げるんですよね。

 

しかし、夫は息子の嫁のおねだりにホイホイ答えて、宝石やらミンクの毛皮やら

たくさんのお小遣いやら稼ぎをみんあ義理の娘に貢いでしまいますので

いい気分はしません。

 

清治氏と千萬子さんの夫婦仲は不仲ですので、ことさら大切にし

自分を「おじさま」と呼ばせて恋文めいた文通をします。

 

このへんは作品を作るための演出という解釈もあるかもなのでコメントは控えますが

 

松子夫人と、重子さんからはかわるがわる

 

『瘋癲老人日記』のヒロイン颯子は、決してアナタなどではありませんよ

いい気にならないでね

 

 

みたいなことを言われて、釘を刺されたと書かれてありました。

 

 

 

これらをリアル細雪で書きますと…

 

おー こわいっ

 

さらにドロドロとした物語になりそうで、下巻は書けそうもありません。

 

どうぞご容赦を

 

 

 

 

説明が長くなりましたけど、私は京都の街を歩きながら思ったんですよねぇ

 

地位やお金を手に入れた男性が最後に行きつくところって

やっぱり、自分を刺激してくれる若い女性だったりするんですかねぇ

 

そして古都にある建造物とかお金で買えないような何かを求めてみたり

 

女性であればなんだろう

 

永遠の美… とか?

 

 

文豪谷崎潤一郎の最愛の妻を演じるってとっても大変そうに感じるのですが

 

話が壮大過ぎて想像もつかないわ^^

 

 

この作家さんの人生ってさぁ…

 

って常々思うことがありましたので、便乗して語らせてもらいました。

 

 

「堂々たる人生谷崎潤一郎伝」

 

本取り寄せたら、私も読んでみますね。