100均の飽くなき戦い  - iPhone充電ケーブルで見せる「ど根性」 | プロムナード

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100均は、生活に必要な雑貨が100円で手に入る庶民の味方として広く知られており、小生もたとえ用事はなくてもしばしば立ち寄るお気に入りのスポットであるが、エレクトロニクスエンジニアと言う視点で興味深いものについて、これまで幾つかの優れものをここで紹介した。

100均の挑戦  - LEDナツメ球のナゾ http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11500885320.html

100均で勉強  - 今回はバッテリチェッカーのナゾに迫った http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11514432647.html

100均の真髄  - マグネットスイッチ付LEDライ http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11519473233.html

100均のナゾ  - ニッケル水素充電池様充電器の分解 http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11528545464.html

100均のLEDキーホルダ  - リチウムイオン充電池の取り扱い http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11562889517.html

100均で買える電子技術の勉強材料  - オーディオアンプ http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11576215501.html

100均魂  - スマホの強い武器、パソコンクロスというスグレモノ http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11834531382.html

100均で買える逸品  - 今回は「マジックライトペン」というUV-LED、ブラックライト http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11986631385.html

100均USBケーブルの秘密   - 電流と充電時間の関係 http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-12019712753.html

100均が教えてくれること  - 車からモバイルに充電できる「USB Charger」の分解 http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-12071753089.html

どれも何故100円で製造販売できるのかなどを突き詰めると、中には安全規格上や品質上の問題がありそうなものもあるが、それが気になるならブランド物を買えばいいでしょ、という自己責任を前提とすれば、それらの商品を分解してみると電子回路的にみて基本に忠実であることや、余計な保護回路などが入っていない事など、回路動作の勉強になることは極めて多い。

さて今回は、マイクロUSB端子に挿して使うiPhone用の充電アダプタをターゲットとしてみた。

ご存知の様に、iPhoneはiPhone5以降のモデルでは充電やデータ伝送に用いられるケーブルが大幅に変更され、ライトニングケーブルという特殊なケーブルが必要となった。コネクタ形状は小さい上、リバーシブル(上下どちらに挿しても動作する)というピン配列となっているので大変便利なケーブルとなっているのだが、問題はiOSのバージョンに支配されていて、アップル社による正規ライセンス認定品以外のケーブルは、たとえ動作しても将来iOSがバージョンアップされた際に「燃えないゴミ」になってしまうということだ。環境マネージメントISO1400x的には如何なものか、と思える仕組みでもあるわけだが。

実際にOSをバージョンアップさせて非ライセンス品で充電しようとすると、非ライセンス品ユーザにはおなじみのこんな冷たい表示が表示される。


この様なことから、アキバにあるパーツショップでは非ライセンス品については「現バージョンでの動作は確認済み」といった貼紙付きで、そのかわり純正品やライセンス品と比べるて相当な格安で店頭販売されている。

拙宅にもこれらの非ライセンス品が幾つかあり、純正品と使い分けて使用しているのだが、その中のひとつに100均のマイクロUSBアダプタというコネクタ形状変換アダプタがあり、それがこれだ。


マイクロUSBケーブルは、モバイル系などのUSB機器にはほぼ標準的に同梱されているケーブルで、機器買換えなどによってこのケーブルは知らないうちに余ってくる。その結果、拙宅にもミニUSBを含めてたくさんのマイクロUSBケーブルが未使用のまま保管された状態となっている。

100均のアダプタは、これらを有効活用するための大変貴重な逸品なのだ。


ところが問題は、本製品、当然のことだろうが非ライセンス品。つまり将来まで使用できることが保障されていない「As is」な商品なのである。とはいえ、これまでの廃棄寸前のマイクロUSBケーブルが再活用できるということは大変有難いわけで、このアダプタはお気に入りとして日頃から使用していた。

しかしながら、そこは非ライセンス品の宿命、OSをアップデートしたところ早速使用不能になってしまった。こうなるともう役立たずとなってしまう。そこで廃棄となるのだが、その前にライセンス認証のナゾを探るべくコネクタ部分を分解してみた。

  

こんな感じ。XA42と刻印されたICと、PchMOSFETが入っている。XA42はMFi認証用と思われるが、フシギなのは先々のOSバージョンで使用できなくさせる方法だ。現バージョンまでであれば使えるということは、即ち認証は通るということだから、この手の商品に搭載されている認証ICと正規ライセンス品の認証ICとでは、認証に必要な鍵の種類が異なるということなのだろう。正規ライセンス品に搭載されている同種のICはオールマイティの鍵を持っているということか。それにしてもそんな「現バージョンまでだったらサポートする鍵」付きの認証デバイスをどうやって調達しているのだろう。供給方法は??いずれにせよ、日本じゃないな、と言う想像はつく。

また、興味深いことは、このアダプタはライセンスがないとは言え、合法的に販売されていることだ。アキバで売られているサードパーティ製のケーブルなどは、出所も入手ルートもアヤシイのだが、全国展開している天下の100均の場合は、製造元も流通ルートもきちんとしたところを使っているはずなので、つまり、その製品に対するライセンスに絡む法律的なお咎めはないということになるだろう。そこには何か理由があるはずだ。

この辺のからくりは、メーカーや100均ショップではこれらのケーブルやアダプタに対してライトニングとは言っていないことにある。具体的に言うと、正規のライトニングケーブルは表裏どちら方向に挿しても使えるリバーシブルであることに対し、くだんのケーブルは片面しかサポートしていない。つまりこのケーブル、アダプタはライトニングではないという論理に基づいて販売されているからお咎めがないのだ。

普段ナニゲで使っているケーブル、中にこんなICが入っていて認証云々といったプロトコルを司っているなんて知らない人が圧倒的に多いと思う。因みに、以前断線してしまったアップル純正品のライトニングコネクタを分解したことがあったが、ものすごく頑丈にと言うか屈強にというかモールドされており、分解にはとんでもなく難儀したことがあった。もしかすると鍵保護のため、と言うことかもしれないが、見えないところに様々な仕掛けがあるものだ。

先に述べたように、この仕組み、環境マネージメントISO1400x的には如何なものか、と思える仕組みでもあるのだが、アップルとしてはライセンス品以外は海賊版であり、海賊版が自己都合で廃棄されることに関してはなんら感知せずというところなのだろう。いたちごっこは今後も続くのだろう。

とにかく様々な手法でガードを固めるアップルへ喰らいついていく100均魂はアッパレだ。

もちろんケーブル自体華奢だし、以前にも紹介した様に皮膜の誘電率や銅線の純抵抗、伝送線路としてのインピーダンスなどを評価すれば品質的に純正品の比ではないものの、

「四の五の言わず、動けばいい」という庶民の事情に沿い、充電時間が云々とか贅沢なことを言わなければ100円で販売できるという事実を証明していることは本当にエライと思う。

安く提供できるものを高く買わされるのは不本意だから、100均には今後もがんばって欲しい。