100円ショップで売られている製品を
コストと品質及び性能のバランスという視点で見ると、すごく勉強になる(^^)
写真は、ダイソーで購入したLED搭載のナツメ球。ナツメ球というのは、蛍光灯などに付属された常夜灯などに使用される小電力のくら~い電球のこと。LEDが搭載される前は大体5Wぐらいが標準だったが、LEDが登場してからは0.5Wと、約10分の1値度まで省電力となっている。
ところで、LEDは従来のフィラメント型と異なり、100Vの電源電圧を直接印加させることはできない。そんなことをしたら、ブレーカが落ちる前にLEDに大電流が流れ、燃えて破裂してとんでもないことになる。
LEDは低圧で駆動し、なおかつ明るさは電流で制御されるものだ。これをどう処理しているのか、いったいどんな回路になっているのか、とても興味があったので天気があまり良くない休日に分解してみた。天気の良い日は外出する。
現物を眺めながら回路図に落としてみた。極めてシンプルな回路であるが、基本に忠実で教科書通りの回路となっていた。逆に云えば、安全設計などの冗長性は最低限度なので、早い話「使用するのは自己責任で」ということか?
とはいえ、100円ショップの名誉のために言っておくが、別段危険というわけではないので、特に使用する上での問題はない。ただし、とにかく徹底的なコストダウンがされているので、ある程度のリスクはやむを得ないというところだろう。
さて、回路的にみると、100VAC電源から150Ωの抵抗を通じて0.47μFのフィルムコンデンサで降圧し、LEDに流し込む電流値を得ている。まぁ、なにせこの大きさなので、100Vから降圧させるためにトランスなんぞ使っているわけないし、どうやって降圧しているのか、一番の興味はそこだったのだが、100Vを直接ぶち込む方式としてコンデンサ降圧方式を使っているのは、なるほどと思った。
0.47μFのコンデンサを介して100Vを印加すると、直列に接続されている抵抗とかダイオードのインピーダンスなんかを無視すれば、関東の場合、回路の電流値=100 x ωC=0.00147(A)、つまり約15mAとなる。一般的なLEDへの流し込み電流はだいたい20mA程度だから、関西での使用を鑑みてディレーティングして設計してあるのだろう。
実際のコンデンサのインピーダンスを計算してみると、
となる。
このコンデンサに並列挿入されている470kΩの抵抗は、おそらく電源遮断時の感電防止用としてコンデンサに蓄電されている電荷を消すために挿入されているいるんじゃないかと思う。このあたりは安全設計かもしれない。
そういえば、ACに直結して直列に入っている160Ωの抵抗はヒューズも兼任しているようだ。これもある意味、安全設計だ。
そのあとは、教科書通りのフルブリッジによる全波整流でDC化している。ただし平滑コンデンサは搭載していないから、脈流のままLEDに流し込むという手段。もちろん平滑なんぞしなくたって、電流の方向が一方向であればフリッカーが出ようが効率が落ちようが、使用上の問題はないから、これで良しとしているわけだ。一方、コンデンサを用いて降圧された電圧を整流しているので、かなり「鈍っている」ために、平滑しなくても相当に平滑に近い脈流となっている可能性もあるから、わざわざ平滑コンデンサを使わなくてすんでいるのかもしれない。とすれば、
目的にあった回路として完成されているといえる。
以上の様に、極めてシンプルに、しかも基本に忠実に回路構成されていることが分かった。ただし、先に書いたように、安全設計の冗長性はかなり犠牲にしているようだ。
ところで、回路はともかく、製造についてだが、100Vの口金部分から直接抵抗を空中配線しているのには、ちょっと驚いた。絶縁チューブを使っているとはいえ、ハンダ不良部分の経年劣化や落下衝撃などで外れて反対側に触れたら確実にショートし、ブレーカーが落ちる前に口金部分が溶けてしまうだろう。。。これはちょっとコワイ。
そもそもハンダ付けも、見た感じではゼッタイ手付によるものだし、かなり粗い出来具合だったから、リスクも大きい気はする。とはいえ、工賃を鑑みると、
たとえこの程度の出来であっても日本国内ではこの価格、全く無理だろう。
部品代だけを見ると、確かに100円では十分おつりが出ると思うが、原価、品質、性能という三大要素はそれぞれトレードオフの様なものだから、枯れた技術を使う限り、三大要素のうちどれかを優先させれば、他の要素は犠牲になるという例だ。
100円ショップの「究極のコストダウンを図りつつ、どこまで品質を保ちながら性能を維持できるか」という戦いは、大変興味深い。



