ー世界では、画像所見が認められない脳損傷があること、
受傷後の意識障害が軽度でも、
神経学的異常が持続することは、常識です。
ー先進国ではそうだし、
WHOをつうじて、後進国もそのように認識しています。
ー先進国でも、後進国でもない日本とは、何じゃろう。
つまるところ、井の中のかわず。
(歴史認識、と同じ)
第3の1 国際的な動向
(2)MTBI定義の内容
ー石橋論文に引用された定義を具体的にみる。
ア アメリカ・リハビリテーション医学会(ACRM)の定義(甲36-2)
「軽度外傷性脳損傷患者とは、少なくとも下記症状の一つによって表わされる、外傷により誘発された脳機能の生理学的障害を呈した患者である。
1 期間を問わない意識喪失
2 受傷直前または直後の事象に関する記憶喪失
3 受傷時のあらゆる精神状態の変化(例、ぼんやりする、失見当識、または混迷)
4 一過性または持続性の局所神経学的障害
しかし損傷の重症度は以下を越えない。
・約30分以内の意識喪失
・30分後の初回Glasgow Coma Scaleが13-15
・24時間以下の外傷後健忘症(PTA)」
順番に出入りがあるものの、のちのWHO定義と基本的にかわらない。
また、神経学的異常は、一過性のものも、持続性のものも含まれている。
イ アメリカ疾病対策センター(CDC)の定義(甲37-2)
日本訳の7頁に、次のように記載される。
「MTBIの概念定義は、鈍器による外傷の結果、若しくは加速度または減速度による力が加えられた結果生ずる頭部への損傷であって、次記の状態の1つ以上を引き起こすもの:
・短時間でも観察されたり自覚されたりしたもの
・一過性錯乱、見当識障害、意識障害
・損傷時前後の記憶障害
・30分間以内の意識消失」
また、センター長の序言、序文、要旨で、そろって次のように指摘される。
「軽度外傷性脳損傷は、米国におけるすべての外傷性脳損傷の少なくとも75%を占めています。しかしながら、MTBIの結果は、軽度でないことが多いのは明らかです。」(3頁)
「最近の数十年間の公衆衛生分野及び医療関係者は軽度外傷性脳損傷の結果が実際のところ決して軽いものではないということの認識を深めるようになった。疫学的調査によりMTBIは大きなスケールの公衆衛生上の問題と確認され、さらに、臨床調査により、これらの損傷は深刻で永続的な問題を引き起こすことが証明された。」(5頁)
「現在あるデータによると、米国では百五十万人以上の人々が毎年外傷性脳損傷を経験している。その内、75%もの人々が軽度外傷性脳損傷-MTBIを示している。このような損傷は、長期間あるいは永続的な損傷や障害を引き起こしていると思われる。」(6頁)
さらに、永続的な神経学的異常などと「軽度」の定義に関係について、次のように記載される。
「この推奨定義の下では、神経画像により証明される頭蓋内病変又は局所性の神経学的障害(例:片麻痺)のある患者であっても、依然として軽度であると見なされる場合があり得る。」(21頁)
本件もまさに、受傷後の意識障害は軽度(30分間以内の意識消失)だが、片麻痺のような永続的な神経学的異常(身体的所見)があり、TBI(脳の器質的異常)であるところ、TBIの分類としては軽度であると見なされる。しかし、MTBIの結果は軽度でなく、長期間損傷や障害を引き起こし、深刻で永続的な問題を引き起こしている。 (つづく)