-WHOの定義と論争を示します。
石橋先生がまじめに論争しているのに対し、
被告国側の医者は、石橋先生を揶揄しているだけです。
ー卑怯な輩です。


第3の1(2)MTBI定義の内容
 
ウ WHOの定義(甲38-2)
「MTBIは、物理的な外力から頭部にもたらされる機械的エネルギーによって引き起こされた急性の脳損傷である。臨床的同定のための機能上の定義には以下が含まれる。

(ⅰ)以下のうちひとつ以上:混迷または失見当識、30分以下の意識喪失、24時間未満の外傷後記憶障害、および/または局所兆候、けいれん、外科手術を必要としない頭蓋内病変といった他の一過性神経学的異常、

(ⅱ)医療機関来院時の外傷後30分以降のGlasgow Coma Scaleスコア13-15。・・・」(3頁)

 

エ 研究や論争
 アのACRM定義以来、短時間の意識喪失(期間を問わない意識喪失)でもTBIが発症すること、それどころか意識を失わなくとも「受傷時の精神状態の変化」のみでも、TBIを発症する場合のあることが解明されてきた。後者の知見は、ウのWHO定義における「混迷または失見当識」の規定に引き継がれている。
 ウのWHO定義の第一要件(ⅰ)に、混迷や意識喪失などの意識障害と、けいれんなどの一過性神経学的異常とがある。つまり、WHOの定義には受傷時の急性症状として、意識障害と神経学的異常の双方が規定される。
 MTBIをはじめとするTBIなど「脳の器質的障害」のうち、平成15年報告書に規定される運動障害や感覚障害など「身体性機能障害」(身体的所見)は、持続的な神経学的異常である。
 そして、受傷後意識障害の分類(軽度・中等度・重度)と、神経学的異常の分類(一過性・持続性)の相互関係について、論争がある。
 たとえば「受傷後に軽度の意識障害」かつ「持続性の神経学的異常」がある場合、Dr.Linda J Carrollはその症例を「中度TBI」に分類し、石橋医師・ACRM・CDCなどは「軽度TBI」に分類する(乙21・6ないし7頁、上記アないしイ)。
 しかし、「軽度の意識障害」ならば、「一過性の神経学的異常」しか起こらず、持続性の神経学的異常を発症しない、という医学的知見は存在しない。そもそもTBIの多数が軽度TBIであるところ、WHOによる2007年報告の結論と勧告は「・・・外傷性脳損傷という、静かに進行しながらも無視されて来た流行病に対する世界的な闘いに取り組むべきである」というものである(甲14-2・14頁)。 (つづく)