ー国際基準の島国日本への導入。
石橋医師が多数症例を以て、これに貢献したことは明らか。


ー被告国側の医者は「井の中の蛙」に戻りたい、というおりこうさん。
日本の戦争責任を否定して、靖国に参拝する公務員みたいだ。


第3  WHOの軽度TBI定義
1 国際的な動向

(3) 東京高裁の判示(甲19・14ないし15頁)
 東京高裁はWHOの定義について、次のように判示した。
「たとえ、①控訴人が本件事故後に実況見分に立ち会って警察官に指示説明をし、その後自ら控訴人車を運転して東京都世田谷区用賀まで帰って来ているとしても、すなわち、本件事故直後には強い意識障害はなかったとしても、

②また、控訴人にはCT検査やMRI検査の画像所見において異常所見が認められないとしても、

③さらには、控訴人車の同乗者には後遺障害が生じていないとしても、軽度外傷性脳損傷においては事故後すぐに症状が現れるとは限らず遅発性に現れることもあるというのであり、また、軽度外傷性脳損傷の場合には必ず画像所見に異常が見られるということでもないというのであるから、上記①②③の事実をもって控訴人において本件事故により脳幹部に損傷を来した(脳細胞の軸索が損傷した)事実を否定することはできないものというべきである。

ーもっとも、控訴人がWHOの定めた軽度外傷性脳損傷に関する平成16年の定義に該当するか否かについては、本件訴訟においてはそれを確定することが必要なわけではない。・・・」


 裁判例にもあるように、本件TBIが「軽度」に分類されるか「中度」に分類されるかという学問上の論争・研究にかかわらず、原告には脳の器質的障害である「身体性機能障害」及び「高次脳機能障害」が存在し、本件受傷後に意識障害が起きたので、原告に発症したTBIの原因は本件事故である。

 

2 労災認定基準への導入
 平成22年4月20日に参議院厚生労働委員会で山本博司議員が質問した結果、厚生労働省は「MTBIに関する省内連絡会」を8回開催し(平成22年6月23日ないし25年6月21日)、22年9月16日の第2回連絡会では石橋医師が講師をつとめた。
 山本質問に対する山井和則厚生労働大臣政務官の答弁と石橋報告では、それぞれ次のように指摘される。


「・・・石橋医師によりましても、数十万人ぐらい患者の方がおられるのではないかという推計も出ておりますし、また、数年たって初めてこの病気であるということが分かるという方もおられますので、その意味では引き続き医学的な知見の収集に努めてまいりたいと考えております。」(甲39・19頁最下段7ないし12行目)


「軽度外傷性脳損傷は、高次脳機能障害だけではなく、さまざまな症状がでるので、高次脳機能障害というものだけにとらわれない、幅広い診療科が関与した様々な検査を行うことが必要。WHOの定義は、受傷後の意識障害の程度に基づく分類であり、その後に引き続く後遺症を加味した分類というわけではないため、『軽度外傷性脳損傷』の診断は、幅広い診療科が関与した様々な検査に基づいて行っている。」(甲40-2)


 厚生労働省は上記のような検討を経て、平成25年基準(甲6)を策定し、WHOの定義を認定基準に導入した。渡辺靖之医師も指摘するように「研究の経緯を踏まえた石橋医師の論究は真摯なもの」であり(甲35・8頁)、それを「WHO版MTBI」と区別して「石橋版MTBI」などとおとしめる林医師の主張は失当である。 (つづく)