【ゲーム感想】『白昼夢の青写真』CASE0 | 雪花の風、月日の独奏

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ついに三つの別離の物語を読み終え、真相へと至る最終章「CASE-0」へとやってきた。

 

 

そこは、下層、中層、上層に階級化された地下の世界。

遺伝子改造された人間の肉体は紫外線に耐え切れず即効性の病を発症するため、人々は太陽の光をさえぎる特殊な物質で覆われた空間で暮らしている。

主な食糧は、トウモロコシとトウモロコシの粉。肉や魚は上層民など一部の者さえも入手するのが難しい。

環境の劣悪な土壁の家で、CASE-0の主人公・海斗は立身出世を願い、ひたすら勉学に励む。

全ては、不治の病に侵された母を救うため。

 

 

 

うおーーーーー!世界観が面白い!

近未来だけど、どことなく原始回帰的。

それでいて、住民の体にはナノマシンが埋め込まれているため、身体管理は機械任せというのも面白い。この辺りは伊藤計劃の『ハーモニー』っぽいなあ。

脳の話や人体の話など、科学や生物学にまつわる小話もたくさん出てくるんだけど、文系の我輩でもついていけるほど、メチャクチャ面白くて引き込まれた。

SF検証をかなり丁寧にやったんだろうなあ、感動。

 

最初は「近未来の世界で民衆を階級化することに何の意味があるんだろう」とか「紫外線が危険なら上層に住むのは危険行為だし、上層民を下層に住まわせる方が特権階級らしさが出るのでは…?」などと、様々な疑問が渦巻いていた。

しかし、そういったプレイヤーの懐疑などお見通しとばかりに、物語が進むにつれ、一つ一つの疑問が紐解かれていく過程がこの上なく爽快。

全ての設定に、深い意味がある。

海斗が上昇志向であることにも理由がある。

この世界が全て「優しい嘘」で塗り固められてできたものだった、と明かされた時は鳥肌立ったわ。

 

 

 

CASE-0のヒロイン・世凪は、世界を救うキーパーソン。

彼女の「自分の思考を他人に伝える」特殊能力が詳らかになった瞬間、CASE-1からCASE-3までの布石が見事に繋がって、ゲーム序盤の海斗の行動に得心がいった。

 

性格は、これまでのヒロインの中で一番つかみどころがないかなあ。

凛・オリヴィア様・すももの生みの親なので、三人の性格を足して三で割った感じなのだろうが、全体的にはすもも度合が一番高い。

 

そして、サントラ特典ドラマCDの脳内会議では、他の三人からかなり雑に扱われている。

 

みんな、救世主様の扱い、適当すぎ。

でも申し訳ないが、プレイヤー視点で見ても一番個性が薄いヒロインかと…イエイエナンデモアリマセン。

 

 

海斗と世凪は早々に親を亡くして、二人で寄り添い合いながら生きていくんだけれど、青年期に入ったあたりから生じ始めた二人のすれ違いは見ていて切なかった。

もっと高みに上って世凪を幸せにしたい海斗。

下層の暮らしに満足している世凪。

海斗の昇進が決まって、その温度差が明るみに出た時がCASE-0一番の盛り上がりどころかなー。

10年暮らしていたって、相手の気持ちは分からない。

ん?『白昼夢の青写真』ってリアル夫婦喧嘩の話?(マテ

 

その後、世凪に遺伝性アルツハイマー病の兆しがあることが分かってからは、二人で手を取り合って進んでいく。

けれども、世凪の幸せよりも最大多数の幸福を優先する恩師・遊馬先生の手により、世凪は人格を失い、人々に夢を与える装置「世界」と化す。

脳の一部にメスを入られれることで――――。

 

病気と手術。

遅いか早いか。

過程は異なるといえど、世凪はやがて自我を喪失する定めだった。

かつて愛した彼女とは違う存在を、自我を失った相手を同じように愛し続けることができるのか。

これが『白昼夢の青写真』という作品最大のテーマ。

深い話である。

2章で男の娘をネタに下ネタ繰り返していた作品と同じとは到底思えん。

牛乳粥はやめろ牛乳粥は(笑)

 

 

 

自暴自棄の海斗に手を差し伸べたのは、下層時代にお世話になっていた親方と、研究所で苦楽を共にした親友の入麻くん。

ワシ、このくだりで涙腺決壊………。

栄光を掴もうとした者が墜落して、かつて見捨てた存在に救われる展開って王道だけど、それ故に心地いい。

いや、海斗は見捨てる前に世凪に叱咤されてるので、下層民を見限ったわけではないのだけれど。

 

 

 

そして、海斗(及びプレイヤー)視点から見たら仇敵ポジションにいる遊馬先生にも、強行に走る理由があった。

それは世界の真相に関わること。

そして、その真相と関連のある病に罹患した妻を救うこと。

 

海斗がモノローグでも述べていたけれど、結局海斗と遊馬先生って似た者同士なのよね。

向上心と探究心が強く、自他ともに優秀だと認めていて、現状から這い上がってやろうという意思が強烈。

何より、傍には常に大切な人がいて、その人は儚く消えようとしている。

葛藤はあったろうけれど、遊馬先生が親友の忘れ形見である世凪を犠牲にすることを選んだのは、彼にとって最優先すべきが妻の里桜だったから、ただそれだけのこと。

海斗にとっての世凪が、遊馬先生にとっての里桜。

そして、遊馬先生は海斗よりも歳を重ねて清濁併せ呑む経験を幾たびもしてきているから、世凪の前頭葉にメスを入れる覚悟が容易にできた、というだけのわずかな差。

つまり、遊馬先生は海斗の有り得たかもしれない未来の姿なのである。

 

そういう驕りや葛藤、妻への愛情も含めて、我輩、CASE-0では遊馬先生が一番好きです。

賛否両論あると思うけどね。

 

 

 

長々語ってしまったので、結末とエピローグは、次の総括で。

出雲やリープくんについてもまだ語ってないよ。語り足りないよ。

 

あ、CASE-0でのマイヒロインは、世凪……ではなく、海斗のママです。

黒髪ロングの儚げ美人サイコー!ヒャッフーッ!!