こんにちは、志緒村亜希子です。  
 
 
 
 
 
 
image
 
 
お正月、実家に帰りたくない。
 
ただその言葉を言うために、貧血になりそうな体を引きずって、子ラッコとカピバラさんがはしゃぐ寝室に入った。
 
 
二人の隣で、私も布団に入る。
 
いつも夜が遅いパパが、今日はこの時間からいる。
私とパパと一緒に寝られるのがとても嬉しそうな子ラッコは、いつも以上に上機嫌で私たちのお腹の上をジャンプしながら行き来している。
 
 
私は、夫がこのまま眠りに落ちてしまえばいいと祈りながら、いつ切り出そうとタイミングを見計らう。
 
 
男性全般そうかもしれないが「あなたに相談があるの」「話があるの」と言うと、相手はめっちゃ構える。

でも他に何て言っていいか分からない。どうしよう。
 
 
子ラッコの騒ぐ声の中、ぐるぐるしていたら「間」が訪れた。
 
 
今だ。
 
 
 
「あのね、きみに聞いてほしいことがあるの」
 
 
暗闇で話しかける。
 
 
「ん?なあに?」とカピバラさん。
 
おや? 構えてない。
 
 
「あのね、お正月が辛くて、実家に帰るのがしんどいんだ・・・・」
 
 
言い終わる頃には不覚にも号泣してしまった。
 
 
カピバラさんは瞬時に「いいよ いいよ」と言った。
 
 
なんだか、声が優しかったような気がする??
 
暗闇で顔も見えないけれど、妄想していた落胆とため息は見えなかった。
 
 
あなたの家が嫌いとかじゃないということ。
むしろ、お父さんもお母さんもすごくいい人で優しい。
なのに、こんな風に思っちゃう自分がとても辛いこと。
 
何もしなくていいよ と彼は言ってくれるけど、彼には分からないものがあること、
 
とにかく、これまでずっと感じてきたことをぐちゃぐちゃになりながら伝えた。

 
一通り聞いてくれた彼は、こう聞いた。
 
「それで、きみはどうしたいの?」
 
 
 
「あなたと子ラッコ二人で実家帰ってあげて。私は待ってる。」
 
 
 
「うん、いいよ」と夫。
 
 
 
 
 
夫は優しかった。
 
穏やかな時間だった。
 
 
ごめんなさい、ごめんなさいと思ったけれど、それ以上に、正直に心のうちを話せたことと、聞いてくれたことに、想像もできなかった安堵に包まれて泣いた。
 
 
私よりも、子ラッコが号泣していて、三人で抱き合いながら、親子で泣いた。
 
 
 
続きます。