水曜日は職場の都合で残業ができなかったので、久しぶりにスナックに飲みに行く。
店のスタッフは若い女の子が増えていたが、お客は常連客ばかりだった。
いつも女の子に車で迎えに来てもらうので、常連客には彼女の「何番目かの」彼氏だと思われているらしい。
説明するのも面倒なので、まあ、いいや。どうだって、と思っていた。
焼酎のボトルをキープしてあるはずなのだが、ビールばかり飲んでいた。
2時間くらいのうちに、ビールを4~5本飲んだ。
マスターに山菜採りの話を聞く。
こしあぶらは最近人気が出てきた山菜だけど、うるしに形状が似ているらしい。
「間違えて、採ってきちゃったら大変なことになりますよ。」
そんな話を笑いながら聞いていた。
その夜も、帰りはマスターに家まで送ってもらった。
翌朝、ベッドから足を降ろそうと思ったら、左足に激痛が走った。
久しぶりのこの骨に響く重い痛み。
これは間違いなく通風の発作だ。
ここのところ薬も飲まず、食事もまったく気をつけていなかった。
痛風によくないと言われるビールを飲んで、同じくよくない納豆も食べていた。
自分のなかでは、通風なんてもう過去の病気で、既往歴という欄に書けばいいや、くらいの気持だった。
よっぽど仕事を休もうと思ったのだが、そういうわけにはいかない。
通風の発作といっても尿酸が細い血管に入って炎症を起こしているだけなのだから、捻挫をしたときと処置自体は変わらない。
炎症を取る処置はRICE処置(応急処置の基本)。
Rest(患部を使わない)、Icing(冷却)、Compression(固定)、Elevation(心臓より高くあげる)。
RとEは不可能なので、足に湿布をして、そのうえからテーピング用のテープをきつく巻いて患部を固定する。
薬だけは飲む。尿が酸性になるのを押さえる薬らしい。
今さらという気がしないでもない。
職場では、仕事が山のようにあり、足を引きずりながらも走り回っていた。
昼に、ヤンキースの松井が手首の骨を折る重傷を負ったニュースをテレビで見た。
彼の痛みに比べれば、僕の痛みなど無いようなものだ。
金曜日の夜には、前の職場にいたキアというアメリカから来ていたスタッフの送別会が渋谷であった。
彼女とはロンドンで食事をしたことがある。
家に招かれて、料理をご馳走してもらったことも。
今度はニューヨークで働くのだという。
でも土曜日も仕事があって、僕は送別会に行くことができない。
キアから電話が来る。
「会いたいのに、何で来てくれないの?」
「ごめん。仕事が忙しくて行けないんだよ。」
「私に、プレゼント買ってくれたでしょ。」
「うん。出席できないから代わりにと思って。大谷に頼んだんだけど。」
「大谷さん。忘れたって…。」
大谷に電話を代わってもらって怒る。
「ふざけるな!」
そのあと別の出席者にも代わってもらう。
「くれぐれも大谷にバカヤローとお伝えください。」と伝言してもらう。
出席者とは順番に全員と話をする。
「最近、出席率悪いよ。そんなに仕事好きだったっけ?」
「好きなわけないだろ!」
考えてみたらみんなとも随分と会っていない。
でも、あまり懐かしい気がしないのはなぜだろう。
会ったらすぐに、あの頃に戻れるような気がしてしまう。
夜、1人で寿司屋に行きカウンターに座る。
「とりあえず、ビール。それからあぶりトロ。」
その後も、うに、いくらなどどんどんと注文する。
6千円分くらい食べた。
「痛風に悪いだろうなあ。」とも思ったけれど、寿司がうますぎて、しまいには「どうとでもなれ。」と思っていた。
土曜日の朝、こわごわと左足を床に降ろす。
痛みは木曜日と変わらない。
「薬も飲んでいるし、食生活も気をつけているのに。」
あまりの痛みに、ちょっと嘘を言ってみたりした。
