車のマフラーをすべて交換してもらったら、5万9千円もかかった。

しかし、前のマフラーは完全に錆びて腐っていたので、仕方がない。


職場に車を運転して行き、昼の10時45分から夜の11時15分まで残業した。

でも、まだ仕事は終わっていない。

今日は他の人の作った資料のチェックと修正のみ。

明日から本当の僕の仕事が始まる。


ずっと椅子に座っていると体が痛くなってくる。なんだかもううんざりだなあ、と思ったときに、先日、サッカー部の友人が僕を訪ねてきたときのことを思い出した。


久しぶりに会った彼が痛々しい松葉杖姿だったので驚いたのだ。

彼とは昔、松本でバレー部やバスケ部も一緒だった。

僕は職場の先輩たちにつかまって部活動に半ば強制的に入らされていたのだが、彼は僕と違って運動神経が発達しているので、自分から入部し、いつもレギュラーだった。


「どうしたの?」


バイクに乗っているときに車に跳ねられて、大腿骨と手首、それから肋骨を6本折り、その骨が肺に突き刺さったのだという。

2か月間入院していたそうだ。


「つらかったのは、事故のとき意識がはっきりしていて、すごく痛かったこと。気絶したかった。」

確かに気絶したい。想像するだけで痛そうだ。


それから、彼が病院のベッドの上で過ごした2か月間を考えてみた。

痛くて、悔しくて、悲しかっただろう。

話を聞きながら、俺もあそこが痛いとかここが痛いとか言っていてはいけないな、と少し反省をしたのだった。


課長が転勤になったので、送別会のときに「僕も早く転勤させてくださいよ。僕はもう今の仕事うんざりです。」と酔った席で言ってみた。


「今は無味乾燥に見える数字も、だんだんとその向こうにドラマが見えてくる。少なくとももう1年頑張ってみろ。みんな見捨てているわけではない。君が頑張っているのは、みんなわかっているんだ。確かに、君は今までこういう職場にいたようなタイプではないけれど、君がいると職場の雰囲気が変わる。それはいいことなんだ。」と説得された。


数字の向こうにドラマが見えるのかあ。


今日は一日、そんなことを考えながら残業していたけど、誤りや適当な計算式を見つけるたびに「こんな細かい数字、概算でいいや。」とか「よくわかんないけど、こんな数字でいいだろう。」と適当に数字を入れている担当の顔が浮かんできて、「くそう、ろくなドラマじゃないなあ。」と腹が立った。

年度末で忙しいのに、先週はアロマの試験で土日を使ってしまった。

大丈夫なのだろうかと思っていたのだが、大丈夫なわけがない。

きっちり2日分ずつ仕事が遅れてしまった。


毎日、12時近くまで残業をし、なんとか取り戻そうとするのだが、もともと普段も残業をしているので取り戻すことができない。

おまけに、水曜日には送別会まである。

そしてこれだけピンチなのに、送別会では2次会まで行き、飲み過ぎてしまう。

以前、「侵入社員」を読んだとき、タバコよりも酒の方が仕事への害が多いと書いてあって、なるほどな、と思っていたのだが、そんな知識なんて行動を制御するのに何の役にも立ちはしない。


木曜日は二日酔いで午前中は吐きそうだった。

朝は起きられず、職場までタクシーを使った。

難しい案件を理解するのに時間がかかり、仕事の能率の悪いこと。

このままではまずいと思ったので、昼は何も食べずに休憩室でずっと眠っていた。


午後から回復し、12時近くまで残業した。

それでも、頭の一部が死んでしまったかのように働きが悪く、思うように仕事が進まない。


あまりに眠く、明日の朝は少しゆっくりしたいと思ったので、職場近くのホテルに泊まることにした。

ホリディ・インに電話をしたら4200円だという。

ホテルまで歩いていき、フロントでカードキーを受け取り、部屋に入った。


部屋にはテレビがついていて、明るい。

「最近は、客が部屋に入ると同時にテレビのスイッチも入るのか。」と感心していたら、目の前にパンツ1枚で裸の男が立っていた。


「えーと。俺、どうしたんだっけ?」

すぐに引き返し部屋の外に出る。


「すみません、お客様。部屋を間違えてしまいました。」

フロントの従業員がエレベーターから飛び出してくる。

「いろいろあるなあ。」と疲れた頭でぼんやりと考えていた。


そして、今日から今週末。今週末にすべてがかかっている。

今すぐにでも仕事に行きたいのだが、車を修理工場まで取りに行かなくてはいけないので、そういうわけにもいかない。


珍しく今日はやる気があるのに、うまくいかないもんだよなあ、世の中って。

通常なら12月には報告のある会計上の事故報告が、木曜日の夕方になって出てきた。

「何で今頃、出してくるんですか?もう1週間もないじゃないですか!」

隣で同僚が怒鳴っているのを聞きながら、気が重くなってくる。彼は転勤になるので、その仕事はそのまま僕が引き継ぐことになる。

昨年は4件だったのに、今年は5件もあるのか…。


金曜日の早朝に会議が開かれ、今後の処理を話し合った。

結局、その事故報告を僕がしなければならないことになった。

報告が遅れた言い訳をどうしようかと夕方まで考えながら仕事をしていた。


「まあ、正直に言うと、ちゃんと管理していなかったということです。」

それをそのまま言うわけにはいかない。 なんと報告すればいいのだろう。


悩んでいたら夕方になって、別の事務所から事故報告があと8件あると連絡が入った。

「8件ってどうなってるんだ!そこの組織は!」

同僚もあきれ顔だ。

僕が処理しなければならないのかと思うと、また気分が暗くなる。

謝りに行かなければならない部署が頭をよぎる。怒った担当の顔が目に浮かぶ。そしてこれからいくつ文書を作ればいいのだろう?本当についてない。

今日も最悪の一日だ。


金曜日には東京で以前の職場の飲み会があった。

携帯に電話がかかってくる。

「今から終電に乗って東京まで出てこいよ。」

行きたい気持はあるが、とても参加できる状態じゃない。


結局11時まで残業をし、それからデニーズでビールを飲みながらアロマの本を読んで家に帰った。


土曜日は車を修理に出し(またマフラーが壊れた)、それからアロマの勉強をする。

日曜日(翌日!)にはアロマテラピー・インストラクターの試験があるのだ。

でもなかなかやる気が起きず、うたた寝をしながら問題集を読み進めていた。


本気になったのは午後6時を過ぎてからだった。それから問題を700問近く解いた。

できなかった問題に付箋を貼り、すべての付箋が取れるまでやり直しをしていたら、終わったのは午前1時近かった。


そして今日の日曜日、東京の永田町にある砂防会館で試験があった。

午前中の択一問題はほとんど解けたが、午後の記述問題には頭を抱えた。


1問目のジャン・バルネの功績は何か?という程度の問題は軽く解けたが、2問目のペパーミントの成分は何か?ゼラニウムの成分は何か?という問題辺りからこけ始めてきた。精油の成分まで記述式で出題されるとは思っていなかった。

もっと勉強しておくべきだったと、今さらだけど、後悔した。

ショックが大きく、帰りは有楽町にあるビックカメラで買い物をしただけで帰りの新幹線に乗った。


それでも、春の東京はいい。

ほんのわずかの間いただけだけど、そう思った。

法政大学の前の桜もそろそろ咲くだろう。

僕はあの下を歩くのが好きだ。


高校を卒業して、初めて東京に出てきたときのことを思い出す。

僕は高校が嫌いで、授業をしょっちゅうサボって街をうろついていたんだけど、田舎の街なのでやたらと目立ってそれが本当に嫌だった。本屋でも映画館でもやたらと声をかけられるのだ。

「高校はどうしたの?」と。

東京に来たら、誰も僕のことを気に留めずにいてくれて、本当に嬉しかった。自由になった気がした。

そのときの刷り込みがあるから、僕はきっと春の東京が好きなのだ。


法政大学の前の桜の下で桜吹雪をいっぱいに浴びながら、予備校の授業をサボって帰った日のことを思い出す。

あのときの桜の見事だったこと。あのときの美しい春の光。そしてあのときの開放感!


新幹線が長野に近づいていく。夢が終わりに近づいていく。見慣れた風景が広がり出す。

東京は晴れていたのに、長野は曇っている。ああ、ほんとに嫌だなあ、という気がしてくる。

「明日からまた仕事か…。」

気分がまた一気に暗くなる。


今の僕にはサボる勇気もない。昔はまったく平気だったのに。

それが一番情けなくて、悲しい。

大学生の姪が、カナダのバンクーバーに語学留学に行くのだという。

バンクーバーには友達のジェニファーがいるので紹介する。

「連絡を取ってみる。」とメールがくる。


カナダではビクトリアにも行くらしい。

「楽しんできてね。」メールの返事を書きながら、僕もカナダに行ったときのことを思い出した。


僕も昔、カナダに行ったことがある。

バンクーバーではサイクリングをし、ビクトリアでは観光をした。


ビクトリアの景色は、美しかった。大学にも行き、こんな環境で勉強ができる学生がうらやましかった。


学食で食事をし、ついでにトイレに入ったら、女性用だった。

慌てて外に出てドアの標識を見てみたら、黒色で女性のマークが描かれている。

女性用のトイレの標識は赤色だと思っていたので、意外だった。


カナダは新しい国なので、建築物も新しいものが多い。

「これは、建てられてから200年も経った古い建物で…。」

ガイドが説明を始めると、一緒に行ったイギリス人のディーンはバカにしたように、「たった200年だって。俺の実家の方が古い。」と言うのだった。


モントリオールではディーンとストリップも見に行った。

ちょうどバチュラー・パーティーの最中で、花婿が3人のストリッパーに股間に蛍光の絵の具で色を塗ってもらったりして、独身最後のバカ騒ぎをしていた。

入場料は確か5ドル程度だった。安かったという思い出がある。



先週末悩んでいた数字は、結局、月曜日に元数字が約2億円間違っていたことが判明した。

5月に提出した数字に誤りはなく、単純に今回作った元数字が間違っていたらしい。

先週の土日に出勤した分が、随分と無駄になってしまった。がっかりして、そして当然のことながら腹が立った。


その後さらに、今度は2千円だけまちがっていたことがわかる。

「ふざけるな!なんで、もっと早く報告しないんだ!」

前回、誤りを報告したときに僕が怒っていたので、怖くて直前まで言い出せなかったそうだ。

2千円程度であれば計算の手直しは素早くできるが、それでも書類のほとんどは作り直しだ。

おかげで提出する直前まで、数字作りにおわれた。文書ができあがったのは提出3時間前。

イライラしたまま新幹線に乗り、さいたま新都心へ向かう。

文書は無事に受け取ってもらえたけれど、本当に疲れた。


金曜日は人事異動の発表があり、飲み会になった。

僕は異動できなかった。

「最近、君、怖いよ。わかるけどさ。」

飲み会の場で職場の先輩に言われ、少し反省した。


土曜日にも出勤し、帰りに実家まで帰った。

すき焼きを食べてぼんやりとしていた。


来週末は、東京でアロマテラピーのインストラクター試験がある。

全然、勉強が進んでいないし、余程、運がよくないと受からないだろう。

今まで受けてきた試験のなかでは簡単だと、試験をなめ過ぎていた。

僕は何度、似たようなことを繰り返すのだろう?


問題集を放り投げると、布団に横になる。

姪がバンクーバーできっと会うはずのジェニファーのことを思い出す。現実逃避だと自分でもよくわかっている。


一緒にイギリスに行き、バッキンガム宮殿に行ったときのこと。

門の前で彼女の写真を撮ろうと、彼女から借りた一眼レフのカメラを構え、シャッターを半押ししてピントを合わせた。

焦点が合い、ファインダーの向こうでにっこり笑う彼女を見たとき、僕はそこに天使がいると思った。

そのときの彼女はきれい過ぎて、言葉がなかった。こんな美しい人と仲良く話ができる僕は幸せだと思った。


「いろいろで、もう本当に疲れたよ。」

頭の後ろで手を組んで部屋の天井を見上げながら思った。

「会いたいよ、ジェニー。」

声に出して言うと、なんだか涙が出てきそうな気分になった。

ファイナル・ファンタジー12が発売になる。

現状ではとてもできるような余裕はないのだが、買ってしまいそうな自分がいて怖い。

今買ったら、本当に命がけの冒険になってしまいそうだ。


休日だというのに職場には僕以外にも多くの人が来ている。

計算を進めていくと、自分で作った数字が信じられない結果になっている。

携帯に電話をして元数字を作った人に聞いてみる。

「このまま計算すると、一人当たり月に52時間も残業したことにしないとつじつまが合わなくなるんだけど。」

「実は前回、5月に報告した数字を間違えていました。今回は間違いないと思います。」

間違えていた?思います?

「でも、52時間くらい残業しますよね。」

「11か月連続して?全員が?ありえないよ。」

「すみません。謝るしかないですね。」

なんてこった。本格的にまずい。目の前が暗くなってきた。


8時頃、疲れ果てて家に戻ってきた。


クリスティーナに結婚祝いの小さなプレゼントを贈っていたのだが、そのお礼の手紙が届いている。相手の男性も早く会いたい、などと書いてくれている。少し幸せな気分になる。


アロマテラピー・アドバイザーの資格証明書も届いていた。そういえば、インストラクターの勉強は全然進んでいない。今からの勉強で間に合うのだろうか?問題集を開いてみるが解けない。焦ってくる。


宮部みゆきの「模倣犯」(新潮文庫、全5巻)も3巻まで読み終えたところでストップしたままだ。そば屋の娘がどうなるかが気になって仕方がないけど、どうしようもないのだ。


金曜日の夜、友達と電話で話をした。不眠症なのだという。

「ふーん。」とか「へえ。」とか答えていたら、「もっと大丈夫?とかお体を大切に、とか気遣いってものがないの?」と言われたので、電話を切る直前に「お大事に。」と言ったら、「よく言えた。」とほめられた。

確かに僕は思いやりが足りないのかもしれない。


トイレに座ったときだけ、鷺沢萌の「さいはての二人」(角川文庫)を読んでいる。

僕にはどうしても、主人公の恋の相手の魅力がわからない。

不幸な生い立ちが重なっているせいか、主人公は「この男はあたしだ」と思いこんで恋に落ちるのだが、それから後も、主人公がなんでこの男に夢中になっているのか全然理解できない。

さいはてで生活していることだけがわかる。

うらやましくもなんともない。


わからないのは僕だけなのだろうか。

この本を読んで感動したと言っている人も多いのだ。


いろいろ考えていたらうんざりとしてきた。

もう、早くビールを飲んで寝てしまいたい。

でも、目を覚ましたら、もう月曜日になってしまう。

信じられない気分だ。

仕事に余裕が見えてきたと思ったのは幻想だった。

大きな仕事が待っていたのだが、その仕事をするには、別の人が作業をしなければならない。

そしてその人が2週間も何もしていなかっただけだった。


これから僕の仕事が始まる。

リミットは土日も併せて5日しかない。本当にできるのだろうか?

できないという選択肢はないんだけれど。


「提出を依頼されていたエクセルのセルが結合できないんですよ。書類を提出しなくていいってことですか?」

他の人から電話がかかってくる。

何を言っているんだ?怒りがまたこみ上げる。何があろうと提出しろ!

そう思うが口から出たのは「こちらでも調べてみます。」という言葉だけだった。


結局、その電話をかけてきた人が、他の人が使っている間にも作業ができるようにエクセルのブックを「共有」にしていたのが原因だった。

指摘をしたら「ああそうですか。でも共有にしたのは僕じゃないと思いますよ。」とわけのわからない言い訳をされて電話が切られた。


ある事業がいよいよ執行という段階にまで成熟した。

上司にも説明し、他の課にも許可を得た。

その段階になって電話がかかってくる。

「すみません。金額、間違えていました。もう5千万円足りませんでした。」

どう計算したら、5千万円も計算間違えるんだ?また1からやり直しかよ!

脳天気な電話口の声にイライラが増す。


残業をしていると、いろいろと思い出してきて叫びたくなる。

これからやらなければならないいくつかの仕事についても不安が募る。


「とりあえず、落ち着けよ。俺。」


i-podでCOLDPLAYというバンドのDon’t Panicという曲を繰り返し聴く。

2分ほどの短い曲だ。


We live in a beautiful world , Yeah we do, Yeah we do, We live in a beautiful world..

(僕たちは美しい世界に住んでいる。本当だ。僕たちは美しい世界に住んでいる。)


スキー場の透明な空気、青い空を頭に描く。

薄汚れた職場のなかで、透き通った空を思い出す。

普段、すっかり忘れているけど、僕たちは美しい世界に住んでいるのだ。

しばらく見てないけれど、そしてこれからまたしばらく見れないけれど。

僕たちは美しい世界に住んでいるのだ。


Yellowも聴く。

Look at the stars, Look how they shine for you, And everything you do, Yeah, they were all yellow.

(星をみて。どんなふうに輝いているかみて。そして君のしていることすべて。みな黄色に輝いている。)


大きく深呼吸をする。

もうしばらくがんばれそうな気がしてきた。うん。それでいい。

自分に言い聞かせる。

今まで内緒にしていたんだけど、実はがんばらなくていいという選択肢はなかったんだよ。

日差しが春めいてきた。僕にとってジョン・レノンは冬の音楽なので、彼の歌声を聴くのももうあとわずかだ。


仕事も、実感としてはまだまだなのだが、どうやら山を越えたようだ。残業は相変わらず続いているが、土日に休めるようになってきた。


土曜日には松本まで車で行き、多文化共生のセミナーに参加した。僕みたいな一般参加の人は少なく、参加者の多くは国際交流担当の職員だった。


さまざまな悩みといったものを聞いた。そんな問題が存在することすら僕は知らなかった。


今、長野県にはブラジルからの移民が多いそうだ。ブラジルの経済が崩壊しているのが原因らしい。


自治体にとっては、そのブラジル人たちがゴミの出し方などのルールを守ってくれないのが問題なのだという。ブラジルには地域コミュニティーというものがほとんどなく、地元の集会に参加するという経験がないのでゴミの出し方とかを周知しようと地元住民が集まって集会を開くと言っても誰も出てこないそうだ。


日本語もほとんど理解してもらえない。ボランティアの日本語学校でも熱心な中国からの研修生に圧倒され、ブラジル人はすぐにやめてしまうそうだ。


ブラジル人は日本人ではないので(あたりまえだけど)、子供に義務教育を受けさせる義務はない。子供たちも教育を受けたり受けなかったり様々だという。

「永住権をとったブラジル人には、義務教育を受けさせるべき!」そういう声が多かった(確か、憲法上は教育を受ける権利(学習権)は社会権なので、基本的にはその人の属する国が面倒を見るべきで、日本国が当然に義務を負うべきものではない。他国人にその権利を賦与するか否かは財政面の問題もあるので総合的に勘案したうえで日本国の政策によるってことじゃなかったっけ?)。


ゴミの出し方のルールなどは親に説明するよりも、日本語を理解できる子供に教えた方がずっと効率がいいそうだ。


昔、アメリカのサラリーマンが東京で暮らしたときの生活について書いた本を読んだことがある。もう題名も作者も忘れてしまったが、その本のなかでも「子供に車を買ってもらう」話が出てくる。


自家用車を買おうと思ったのだが、日本語が話せない。ところが、小学校で日本人と話している子供たちは不自由なく日本語をしゃべっている。そこで車を買う際、小学生の子供に通訳をしてもらったという話だ。


2時間30分ほどのセミナーだったが、少し足取りの覚束ない年配の女性(日本人)が、流暢なポルトガル語を話しているのを見て驚いたり、金沢に現代美術館があることを知ったりしたので、なかなか僕にとっては意味があった。本来の多文化共生の話を僕は理解できたのかどうかわからなかったけれど。


それから、せっかく松本まで来たので、友達と松本市の中央2丁目にある「J.CUISINE TOBIRA」にまた寄って、コース料理、ベーコンとソーセージ、それからイベリコ豚をたっぷりと食べて帰ってきた。イベリコ豚は本当においしかった。


この店は前回も書いたけれど、スタッフが美人でサービスが本当にいい。今日は電話で予約をしてから行ったのだけど、予約してから到着するまでの間に、席にスタッフからの予約のお礼のカードが置いてあったりして感激した。


東京で食べるよりも一品、一品の量が多いので、フレンチ好きの人はぜひ行ってみて。

(今まで最後の行だけ、ですます調になっているのはおかしいと多くの人から指摘を受けたので、今回は情報誌風にまとめてみた。これはこれで大失敗だけど。)

今日は久しぶりに1日休みだった。


ベランダに出ると大粒の雨が降っていて、風も強かった。これではスキーには行けない。

もう春の雨だった。考えてみるともう3月になるのだ。


今年の初めの頃、名古屋の弁護士にちょっと法律のことで聞きたいことがあって電話をした。

「君から、年賀状が来ていないんだけど。」

「出してないよ。」

「君のブログつまらないけど読んでいるよ。昨年の年末はおめでた続きだったようで…。」

「ふざけるな!」


そんな冬ももう終わりだ。


中尾山温泉に行く。最近、空気が乾燥しているせいか肌が荒れているので、温泉に行きたかったのだ。

雨のなか露天風呂に入る。大粒の雨が水面で跳ねる様子をぼんやりと見ていた。静かで雨音しか聞こえない。催眠術をかけられたように、眠りそうになった。


家に帰って、ビールを飲みながら、大竹しのぶの「私一人」(幻冬社)を読む。本としてはつまらない。でも、彼女の特にデビューしたての頃の姿は魅力的だ。清楚で、前向きで、リーダーシップがあって、優しく、思いやりがある。そして、可愛くてきれいだ。彼女のデビュー作となる映画「青春の門」をまだ観ていないので観てみたいと思った。


また、「マクベス」や「エレクトラ」といった舞台も僕は観ていない。昔、芝居というのがどういうものなのか知りたくて下北沢にも何回か行ったけど、あまりにつまらなくて「やっぱり俺、映画がいいや。」と思って、それから舞台に興味が持てなかった。でも、彼女の本を読んでいるうちに、生の演技というのも観てみたいなあ、と思うようになった。


彼女のヌード写真集が出たときに、ちょうど佐藤幸治「憲法」(青林書院)が改訂になった。「憲法」が松本のどこの本屋にもなく、彼女のヌード写真集ばかりが置いてあるので「憲法より大竹しのぶの裸の方が大切なのか!」と頭にきていた記憶がある。


今なら当時の自分に「とりあえず憲法はあきらめて、写真集を買っておけば。」と助言をしたい。世の中にあるもので美しいものは(かどうか知らないけれど)、見れるものなら見ておいた方がいい。


読み終わると眠くなって寝てしまった。起きたら6時を過ぎていた。せっかくの休みなのにもったいない気がした。

今日も出勤した。2月の残業時間がとうとう100時間を超えた。考えてみたら、2月は最初の土日しか休んでいないのだ。木曜日に続き、昨日も夜の12時30分まで仕事をしていた。肩が痛むのでその後、台湾人の経営するマッサージに行ったら、8000円も取られてしまった。


日記をつけているのだが、朝から夜まで仕事をしているだけなので、特に書くことがない。起きて、スタバに行って、仕事に行って、帰って寝る。この繰り返しだ。本もほとんど読んでいない。残業中、昔買ったCDをi-podにダウンロードして、アルファベット順に聴いている。音楽を聴いているといろんな思い出が甦ってくる。残業の数少ないいい面ではある。


水曜日は残業ができない日だったので、久しぶりに早く家に帰って7時間ほど寝たら、仕事の夢ばかりを見た。それもうまくいかない夢ばかり。夢のなかで働いた分も残業代が出ないものだろうか。



自転車を盗んだ少年の母親から電話があった。

母子家庭で、少年は中学生だという。被害者は4人で、僕が最後の交渉相手だそうだ。被害物件のなかには60万円もする自転車もあったという。

自転車を買い取って欲しいと言うと、総額で数10万円を支払わなければならないので、少し猶予をくれないかという。パートで働いていて蓄えも少ないのだと寂しそうに話す。

「べつに。いいですよ。」

「息子がすみませんでした。教育が行き届かなくて。」

電話口で何度も謝る。

「そんなに謝らなくていいですよ。僕は自転車を買い取ってもらえれば、それで何も気にならないから。」

「そんなことを言ってくれたのはあなたが初めてで嬉しい。」


被害者のなかには「悪いことをしたのだから今すぐ10万円払え。」と毎日のように催促の電話をしてくる人もいるらしい。その気持ちもわからないではない。


「私自身、息子が何をしたのかよくわかっていないんです。盗んだのは知ってますけど、具体的な話は知らないんです。警察にも聞きに行ったんですが、自分で息子に聞いてくれ、と言うだけで、詳しいことを教えてくれないんです。息子も私には話したがらないし。」

「それはそうだろうなあ。自分のした悪事をペラペラ母親に話す中学生の息子なんているわけがないからなあ。」


それから1時間くらい電話に付き合わされた。

「どうして、あなたは怒らないんですか?私だったら許さないし、他の人も皆怒っているのに。」

「だってあなたは盗んだ本人じゃないし、怒ったって誰も得しないから。自転車がないと生活できないわけじゃないし。」

「ああ。そうですね。勉強になります。」

いったい何が勉強になるのだろう?


「息子は勉強もしないし、部活動も勝手に休部届けを出してしまったんです。息子を見ているとまた犯罪を起こすのではないかと心配なんです。でも、本は好きなので、なにか息子にいい本があったら教えてください。」

とりあえずルイス・タッカーの「穴」を薦めておいた。無実の罪で施設に入れられ、毎日穴を掘り続けなければならない少年の話だ。


なんで本の話なんかしているのか不思議なんだけど。


電話を切って、自分の中学時代を思い出した。体罰率先主義の担任の顔が目に浮かんだ。激怒すると何を言っているのかよくわからず、「おまえは、とう!こんなことを、とう!」と威嚇しながら話し、すぐに手が出てきた。僕たちは、こっそり担任がいないときに、担任が怒ったときの物真似をしてみんなで笑いあっていた。


僕は登下校のときによくガムを噛んでいた。それがなぜか担任の耳に入り「青あざができるまで、あいつを殴る」と宣告していたと、土曜日の放課後に友達から聞いたことがあった。


「謝りに行った方がいいよ。この前のキャンプのとき、あいつが薪を手で折っているのを見て、俺、あいつには逆らっちゃいけないって思ったもん。」


そう友達が言うので自転車に乗って、友達と日曜日のうちに担任の家まで謝りに行ったことがある。

「もう2度とするな!」

玄関口で怒られ、ついでに乗っていった自転車がドロップハンドルだと言って怒られた。でも殴られなくてほっとしていた。


「俺、掃除とかはサボったけど犯罪とか喧嘩とかしなかったからなあ。」

いろいろと思い出しているうちに僕は本当にいい子だったんだなあ、と思った。

土曜日も出勤。来週の木曜日から出張する人達のための書類を僕がまとめなくてはいけない。量が多くて泣きたくなる。


仕事をしていたら、警察から電話がかかってきた。7月に盗まれた自転車が見つかったのだという。


「自転車はどんな状態ですか?」

「一応、自転車の形はしてますよ。ちゃんと乗れます。」


一応、自転車の形はしている?その言い方が少し気になった。

それでも、見つかったと聞いてうれしかった。デザイン的には、白のルイガノの方が気に入っていたので、今のオレンジ色のルイガノは姪にあげて、白のルイガノに乗ろうと思った。


「盗まれた自転車に乗るなんて気持ち悪くない?」

同僚は言うが、僕は全然気にならない。


仕事帰りの6時頃、警察まで歩いて取りに行く。

「こちらがその自転車です。」

警察官が取り出してきた自転車を見て、息をのむ。


泥よけとカゴがなく、ライトやメーター類も外されている。ハンドルは両端が切断され、以前と違う角度に取り付け直されている。タイヤもぼろぼろでフレームも泥まみれだ。


「これは、放置されていたんですか?」

「マウンテンバイクばかり盗んでいる少年がいて、彼が使っていたんです。」


ハンドルのザラザラとした切断面を触っていると怒りが強くこみ上げてくる。


「とても自転車に詳しい少年で、マウンテンバイクが大好きなのですよ。でも、その気持ちが少し間違った方向に行ってしまったようなのですね。」

「間違った方向…ですか。」


少年は可塑性に富む。以前、刑法の本で読んだ知識が頭をよぎる。一般に少年は未成熟だから刑罰ではなく、教育が必要。だから刑法で処罰せず少年法で保護するのだと。しかし、実際に自分が被害者になり、ぼろぼろになった自転車を見ていると、少年法の意義も罪刑均衡の概念なども吹っ飛んでしまう。「そいつを死刑にしてください」と言いたくなった。


自転車を引きずりながら家に帰る。心底、がっかりした。被害者は僕だけではないのだそうだ。盗まれた後バラバラにされ、自転車の一部分のみ返された被害者もいるという。


家に着いたとたん、携帯電話が鳴る。

警察に、相手の親から一週間以内に損害賠償のことで電話をくれるように頼んでいた。もう警察から相手の親に連絡が行ったのかと思い、慌てて電話に出る。


「私だけど、電車に乗り遅れちゃったから、次の電車が来るまで遊びに行っていい?」

スナックの女の子からだった。松本に住んでいる彼氏のところまで遊びに行こうと思っていたのに、電車に乗り遅れたらしい。

「別にいいけど…。」


それから5分ほどで彼女がやってきた。

「うわ、汚い。ちゃんとほこりとか取れよ。これだから男の一人暮らしは…。掃除機ないの?」

部屋に来るなり、掃除機をかけ始める。

「えらいなあ。」

「違うよ、ばか。私の足の裏が汚れるでしょ!」


掃除が終わると椅子に座り、インターネットを見始める。

「飲み物ないの?飲み物!」

グレープフルーツジュースを渡す。


本でも読もうかと思ったが、なかなか集中できなかった。インターネット・オークションに夢中になっている彼女に声をかける。

「あのさあ、今から松本まで車で連れてってやるよ。」

「え、本当?じゃあ、松本で食事しようよ。いい店を知っているんだ。」


高速道路を使って松本まで行く。

久しぶりの松本の夜の町は明るくにぎやかだった。昔、この町で飲み歩いていた日々を思い出す。あの頃よりも、松本はずっと発展しているようで長野よりずっと都会だった。


彼女のお薦めは松本市中央2丁目にある「J.CUISINE TOBIRA」。

コース料理と、フォアグラ入りのパテを注文する。

僕の頼んだコースは、こんな感じ。


シェフのおすすめ 前菜9品盛り

ハマグリのスープ

マダイとキンメダイのカルパッチョ

仔羊のロースト

木イチゴのソルベ


これで、4000円しないのだからお得だ。味も悪くない。特に仔羊のローストはパンチが効いていてうまかった。

そしてなによりも接客する人が親切で、美人が多いのが嬉しかった。


食事の後、彼女を彼氏の家の近くに送り届け、夜の高速を走る。

運転しながら以前から買ったままだった「スネークマンショー・アンソロジー」を聴く。


「楽しい料理」「ラジオショッピング」「解りやすい英会話」には爆笑した。まだ、全部聴いていないけれど本当に面白い。ラジオショッピングでは、男性のアナウンサーが商品を紹介し、女性のアナウンサーがそれを試しながら紹介する。超音波美顔器、痩身用マッサージ器、バイブレーターと段々と過激になっていく。

「この商品は…とても…いいです。」女性アナウンサーの声に笑ってしまう。


家に帰ると11時を回っていた。金曜日も夜の11時から飲み始めて、2時過ぎまで飲んでいたのだ。今までの疲れが溜まっていて寝たかったが、まだ仕事が少し残っていたので、それをこなしてから寝た。


寝る前に時計を見る。もう2時を過ぎていた。