仕事がますます忙しくなってきた。毎日、帰るのは11時過ぎ。土日も出勤になってしまう。先週の日曜日には楽しみにしていたラグビーの日本選手権も見ることができなかった。せめてキック・オフの瞬間だけでも、と思っていたが、1時に電話がかかってきて職場に呼び出されてしまった。


毎朝、スターバックスでイタリアンサラミのホットサンドを食べ、マグカップで本日のコーヒーのショートサイズを飲み、日記を書いて軽く本を読む。

そんなおしゃれな生活も朝だけで、仕事に追われて昼と夜は柿の種とダイエットコーラだけだったりする。


最初は残業が嫌で、残業をするということだけで、ストレスだった。でも、最近は随分と慣れてきた。


夜、7時を回り、問い合わせや指示の電話が一段落すると、こっそりi-podを取り出して、音楽を聴きながら仕事をしている。一度i-podを持ってしまうとそれまで使っていたウォークマン・スティックはおもちゃのようで使う気になれない。


最近、気に入っているのはMusic BrokersというレーベルのVarious Artists(これが本当のバンド名なのか文字通りいろんなバンドの集まりなのかは不明)のアルバム「Bossa 'N' Stones」で、ローリング・ストーンズの曲をボサノバ(サンバを都会っぽくした音楽?)にして演奏している。


女性ボーカルの声が甘くてエロティックだ。

I can’t get no satisfaction..と甘い声で歌われると、元々の歌詞とは全然違う、もっと別なことを歌っているように聞こえる。悪魔を憐れむ歌など、ミック・ジャガーよりも彼女の方がなまめかしくて悪魔っぽい。


家には寝るためだけに帰っているようなものだ。その寝る時間も最近は少ない。


みんな、どうしてこんなに真剣に仕事をしなければならないのだろうと思う。活字が0.25ミリずれただけですべてやり直しの書類もある。

その書類ができあがると10人近くの人間が一斉に製図用の定規で何10本も線を引いて位置を確かめる。空しい作業だと思っているのは僕だけなのだろうか。


Oh, Angie, Oh, Angie,

When will those clouds all disappear,

(アンジー、あの雲がなくなるのはいつだろう?)


夜中の11時。仕事はいつまでも終わらない。体も頭も疲れている。i-podから聞こえてくるAngieを聴きながら僕もつぶやく。

「アンジー、あの雲がなくなるのはいつだろう?」

水曜日の日。突然、東京に日帰りの出張になった。東京の国土交通省に行って、資料をもらってくるのだという。


国土交通省は有楽町線の桜田門駅の近くなので、JR有楽町駅で山手線から有楽町線に乗り換える。JR有楽町駅のホームを有楽町線に向かって歩いていると東京国際フォーラムが目に入る。


「あそこにも行ったことがあるなあ。」

東京国際フォーラムにあるホールの座席は、しっかりと作られていて座り心地がよかった。

ロジャー・ウォーターズ(ピンク・フロイド)のコンサートを聴きに行ったのだ。


僕はピンク・フロイドのアルバムはザ・ウォールぐらいしか聴いたことがなかったが気に入っていた。

コンサートのチケットはクリスティーナが取ってくれた。彼女はいろいろなアルバムを聴いているようだった。


映像が多く使用され、不思議な雰囲気の静かな暗く深いロックのコンサートだった。


最近は仕事が特に忙しく、なかなか10時前には帰ることができない。徹夜をする同僚もいる。今日(金曜日)も解放されたのは午前1時近かった。そして、明日も明後日も勤務しなければならない。


そんな日々のなかの出張だったので、水曜日は資料を受け取ってその解説が終わると、すぐに帰ることにした。資料が10冊以上あって、鞄が重く、軽く飲みに行く気も起きなかった。


有楽町線を有楽町駅で降りると、ビックカメラの地下の入り口とつながっている。

特に何かを買うあてもなかったけれどちょっとだけビックカメラの店内を見てみることにした。


つい35,000円近くもするアップルのiPodを衝動買いしてしまった。

この小さなボディーには30GBの容量がある。30GB!まともに音楽だけを入れていったら、いったい何曲入るのだろう?


家に帰って、さっそく使ってみる。よくわからないままiTunesをインストールし、ショップから曲をダウンロードする。

記念すべきその1枚目のアルバムはピンク・フロイドのアトム・ハート・マザー(原子心母)にした。


翌日、そのアルバムを聴きながら職場に向かう。


その中の「IF」という曲を聴いたとき、気だるくぐったりとした気分になった。これから仕事に行くなんて信じられない気がした。頭がぼんやりとして何もかも忘れそうになった。


IF


もしもぼくが白鳥だったなら

飛び去ることができる。

もしもぼくが電車だったなら

遅れてくる。

そしてもしもぼくがまともな人間だったなら

もっと君と話しをするのにね。


もしもぼくが眠っていたなら

夢をみることができる。

もしもぼくが恐がっていたなら

隠れることもできる。

もしもぼくが気違いになってしまったら

お願いだからワイヤを脳に埋め込まないで。


もしもぼくが月にいたなら

クールになれる。

もしもぼくが道路だったなら

曲がる。

そしてもしもぼくがまともな人間だったなら

友達の間にも距離のあることがわかるのにね。


もしもぼくがひとりぼっちだったら

泣くだろう。

でももし君といっしょだったなら

涙もかわいて家に帰っただろう。

でももしもぼくが気違いになってしまっても

君はまだぼくを遊びの仲間に入れてくれるだろうか?


何だかわからない歌詞だけど、曲は静かで気だるくとてもいい。ぐったりしたい気分のとき(どんなときだ?)はお薦めです。

渋谷にアロマテラピー・アドバイザーの講習会に行った。アドバイザーになるためには、どうしてもこの講習会を受けなければならないのだ。


大宮から埼京線に乗り換えて渋谷に行く。昔からそうだったのだろうか?渋谷の駅は、埼京線のホームだけが遠く離れていた。電車の窓から眺めていたら、目指す109(一般にはワン・オー・ナインなどと呼ばれているが東急という意味らしい。)がはるか後方に見えて、あそこまで戻らなければならないのかと思ったら、気分がいきなり暗くなった。到着時刻を講義開始時刻ギリギリに設定していたのだ。


それでもなんとか開始時刻前にはたどり着いた。教室は圧倒的に女性が多く、ほとんどいっぱいだった。


講師は美人だった。でも、話はびっくりするほどつまらなかった。上品にまとまり過ぎているのだ。笑いを取ろうともしないし。


西原理恵子が毎日新聞に連載している「毎日かあさん」で、娘が「私立の小学校に行きたい」と言い出す話がある。そのとき、西原は「上等な私立卒業したって、世間は上等な私立じゃねえんだよ。」と言い放つんだけど、こういう感覚はあの講師には理解できないんだろうなあ、と思う。


寝てはいけないと思ったが、30分も経たないうちに眠ってしまった。わかりきった話ばかりだったし。


講義が終わって、渋谷駅に向かって歩いているときに、カリフォルニアに住んでいるクリスから電話があった。

「俺、今、大阪にいるんだよ。金曜日にロスに戻るから会えないけど、一応、連絡しようと思って。」と彼は言った。

「そうか。残念だな。彼女の写真ありがとう。ジェニファーやアーチーにも転送したよ。みんな君の彼女に驚いていたよ。」

「どうして?」

「その、ビッグな…。」

「ビッグな何だ?」

「メロンズ。」

彼女はものすごくでかい胸をしている。

「ふざけるな。勝手に写真を転送するな。」彼は笑いながら怒っていた。


埼京線で大宮駅まで戻り、いもかりんさんと会った。

焼鳥屋に行き、鍋などを食べ、お酒を飲んだ。恋愛の話をし、僕らは互いにうまくいかないね、という話をしていた。


もう少し早く帰ろうと思っていたけど、結局、終電まで飲んでいた。



山田あかねの「すべては海になる」(小学館)を読んだ。高校生のときにセックス依存症になり、そこから立ち直りたいと思っても、なかなかままならない。面倒になると抱かれてしまう、そんな女性の生活を描いた話しだ。


優しい文章で淡々と書かれているが、依存症になるまでの経緯はなかなか壮絶で、真面目な女の子も、こんな出来事があれば簡単に壊れてしまうんだな、と思った。壊れても無理はない。


本としては、かなりいい本だと思う。お薦めです。


読み終わった後、こんなセックス依存症の女子高生が近くにいたら、僕は救ってあげることができるのか。と、ちょっと考えてみた。


つい、ろくでもない発想をしてしまい「ああ、俺は本当にろくでもないなあ。」と反省しました。

窓からの光が眩しくて目が覚めた。

「天気予報では、今日は大雪のはずなのに…。」


高校の後輩に電話をする。戸隠にスキーに行くことにする。電話の向こうで咳き込んでいる音が聞こえる。

「風邪を引いているの?なら、やめようぜ。」

「いいですよ。行きましょう。明日寝ていますから。」

なんていい奴なのだ。そして、なんて俺は図々しいのだ。


戸隠は曇りだった。ゲレンデに立つと寒い。フェイスマスクを持ってくるんだったと後悔する。


とりあえず、戸隠スキー場のゲレンデのなかにある「そば処めのう」まで滑って行き、力そばを食べる。手打ちでうまい。


第6リフトの終点から瑪瑙(めのう)山山頂までは10メートルほどだ。スキーを外して40度ほどの雪の斜面を登る。簡単に山頂にたどり着く。なぜか瑪瑙山山頂付近だけは青空が広がっている。太陽の光が暖かい。

何本か滑った後、メノウコース(全長1500メートル、最大18度、平均10度、中級者向)が気に入ったので、そのコースを滑る。


第6リフトは4人乗りだが、いつも彼と2人で乗っていた。雪景色が美しい。

「青空がいつもよりも黒っぽく見えるなあ。やっぱり山の上は宇宙に近いからかなあ。」空を見上げながら言うと、

「たぶん、ゴーグルしているからだと思いますよ。」と彼は言った。


夕方になるまで休みも取らずに滑っていた。


「昔、大学生のときにもこのスキー場に来たことがあるんです。よく晴れた日の夕方に、この瑪瑙山に立つと北アルプスに夕陽が映えてとてもきれいですよ。」

「なるほどなあ。」

周りのガスっている山を見回したけれど、うまく想像することができなかった。

「そのとき、一緒に来ていた同級生に、あの夕陽が日本海に沈むとき、耳を澄ますとジュッって音が聞こえるんだ、って言ったら信じた奴がいました。」と彼は笑った。


疲れ果てて帰ってきた。左足の親指が内出血している。スキー靴が合っていないのだろうか。歩くと痛い。


それでも、それから翌日のために証明写真を撮ったり、トミーフィルフィガーの店にできあがったズボンを取りに行ったり、姪にプレゼントを買ったり、いろいろと忙しい一日だった。

「侵入社員」(J・フィンダー著 新潮文庫)を読み終わった。驚くのは、下巻の巻末に載っている謝辞の量である。ざっと40名くらいは取材をしている。マイクロソフトから始まり、看護師やビルの保安会社まで。この位の取材をしないと、現代のIT企業を舞台にした小説は書けないのだろう。


小説の中で、ライバル社の社長が主人公に提示する問題がある。「テセウスの船」というのがその問題。


要約するとこうだ。


「アテネに迷宮があり、そこにミノタウロスという怪物が住んでいた。その怪物をテセウスという英雄が殺した。アテネ人たちは、記念品としてテセウスの船を保存することにした。当然のことだが、年月が経過するうちにその船は老朽化した。彼らは朽ちた部分を新しいものと取り替え、つぎつぎにそれをつづけた。やがて、船はすべての板が新しいものと交換されることになった。ここで、ギリシャ人は考えた。-これは、本当にテセウスの船だろうか?」


これは、アイデンティティについての問題でもあると、その社長は言う。


「人間もこの船と同じではないだろうか?人生という階梯を登り、自分のすべてを変えはじめると、やがては本当の自分がわからなくなってしまう。ジーンズとスニーカーですごしていた人間がスーツに高級な靴をはくようになる。洗練され、社会を知り、マナーを覚える。話し方も変わる。新しい友人ができる。バドワイザーをのんでいたのが、第一級のポイヤックをのむようになる。ドライブスルーのビッグマックから、塩でつつんで焼いたスズキに変わる。ものの見方が変わり、考え方までもが変わる。そしてあるとき、こう考えるようになる。自分は以前と同じ人間なのだろうか?」


仕事の間も、この問題を考えていた。


僕なりの結論としてはこう。


「物理的には、この船はもはやテセウスの船ではない。しかしながら、アテネの人たちの記念品もしくは過去の出来事の象徴としては、これはやはりテセウスの船なのだ。」


深みのない当たり前の結論だけど。


それから、僕はよく覚えている。


社交的で優等生だった小学生時代、人間嫌いで本とロックにのめり込んでいた高校時代、山登りと司法試験を目指していた大学時代を。


「自分は以前と同じ人間なのだろうか?」


ずっと考えていたけど、結局、最後までわかりませんでした。

先週スキー板を買ったのでスキーに行くことにした。無料のペアのリフト券も、アトミックのスキー靴もある。


「私、運動音痴だから。」

「寒いから嫌。」

女の子には軒並み断られた。本当はスキーを好きなのかも知れないが、あまり深く追求しないことにする。自分が惨めになるだけだ。


「行きます、行きます。」

こんなとき頼りになるのは高校の後輩だけだ。趣味は車だという。世界に555台しかないインプレッサS230の特別仕様車に乗っているそうだ(ちなみに、彼の車は215台目。そうギアの周りの金属に刻印がされている。)。


朝、彼の家まで車で乗り付け、インプレッサにスキー板を載せ替える。僕の板は持ち運びが簡単なように150センチしかない(実はスキー店の店員にも短すぎると止められた。でも、買った。)。片手で簡単に持ちあがる。


「座りにくいシートだなあ。狭くて、きつい。」

「このシート、レカロなんですよ。ひとつ50万円するんです。」

「ひとつ50万!ってことは、助手席と併せて100万!」

車が趣味という人間の金銭感覚がよくわからない。


高速に乗る。ものすごい加速力だ。腹にエンジン音が響く。二日酔いのときは絶対に乗れない。


斑尾高原までの峠道を彼はぐいぐいと走っていく。途中、道幅が狭くなったところで、前から観光バスが迫ってきた。彼は、観光バスと道の端に積もっている雪の壁の間、ギリギリの空間をすり抜けていく。


「すごい、車幅感覚だな。」

「まあ、ぶつかったって雪ですから。平気ですよ。」

「もし、あれが雪の壁じゃなくて、雪をうっすらとかぶったコンクリの壁だったらどうするんだよ。」

「ははは。大丈夫ですよ。」


今日の斑尾高原はピーカン。白く輝く妙高山や黒姫山が目の前に広がり、遠くには新潟の海が大きく見えた。

標高が高く寒いせいか、雪質もパウダーで最高だった。


彼はスキーも詳しいので、僕の買った板の特性を教えてもらう。それから、板に合った滑り方も。


カービングの短い板の場合、エッジは両足とも立てる形で、高速ターンをするのだという。

「そのための板ですから。」


それからスキーをするときの姿勢についても説明を受けた。

「基本的に、滑るときは前から板に力が入るので、前からの力に耐えられる姿勢を取ることが理想なんです。」

実際に、いろいろとテストをしてくれた。確かに、僕の今までの姿勢では不安定だ。ゴルフの姿勢をもう少し深くした感じで安定した。しかし、この姿勢を動きながらキープするのは難しい。

「もちろん、それが原則で、しゃがんだり伸びたりしてもいいんですけどね。」


昼食はスキー場の定番であるカツカレーを食べた。彼の板も見せてもらう。

「変わったビンディングだね。」

「板に加わる前からの力を吸収するピストンがついているんですよ。」

「本当?」

「って話です。」

「いくら?」

「板と併せて10万円。」

「高っ。」

「先輩もキャバクラに行くのやめればすぐに買えますよ。」

「ふざけるな。」


久しぶりのスキーだったが、板が軽いせいか思ったより簡単に滑ることができた。昔は175センチの金属のように固いまっすぐなスキー板で滑っていたのだ。新しい板でシュテムターンをすると山側の足が本当に浮いてしまう。


リフトの待ち時間がないので、いくらでも滑れる。でも足の踏ん張りが効かなくなってきたので、3時頃にはあがった。


中尾山温泉に入って家に帰る。


年のせいか、今日はあまり体が痛くない。明日かあさってはどうだろう?

会社に行けるのか心配だ。

逮捕されたホリエモンがライブドアの前に作っていた会社の名前はオン・ザ・エッヂというのだそうだ。でも、オン・ジ・エッヂだろう。なぜ、ザ?理由があるのだろうか。

どうでもいい話だけれど。


ジョゼフ・フィンダーの「侵入社員」(新潮文庫)を読んでいる。帯には軽いコピーが書かれているが(<上巻>ライバル会社にスパイとして入社したチョー駄目社員。ところが、そこで出世街道を大爆走!?<下巻>一流ブランドのスーツ、黒のポルシェ、29階のコンドミニアム。夢のような生活はこのまま続くのか?(んなわけねーよ!))、騙されてはいけない。この作者は本当に博識で、現代に対する状況把握が正確だ。


外資系に面接試験を受ける人がいたら、7章だけでも読んでみるといい。面接試験というものを深く分析していて、勝ち残る正しい解答を知ることができる。


アメリカでも和を乱すことは嫌われるし、暗黙のルールに違反すると日本と同様に厳しい罰が与えられる。主人公は昇進の際、同僚から「出る杭は打たれる」という日本のことわざを教えてもらったりする。


まだ、上巻を読み終わっただけなのでこの話が面白いのか何とも言えないけれど、上巻は読む価値がある。この本を読むことは決して暇つぶしだけではない。知恵が身に付くとでも言えばいいのだろうか。



仕事は相変わらず夜遅くまで残業をしている。木曜日には夜の10時頃になって、先輩に新たな資料を作成するように頼まれた。

トップが見る数字はすべて、億万表示にしなければならない。

エクセルのシートに数字を打ち込み、漢字に変換していく。セルの幅を一定にしているので、2億6547万5千円が枠内に収まりきらず、小さな文字にせざるを得ない。2万円は大きな文字のままだ。

2万円の方が2億6547万5千円より多額に見えてくる。疲れた頭での細かな作業は神経を消耗する。


11時30分頃には打ち込みが終わり、帰ることにした。

先輩はそのまま残業し、最後に資料を提出したのは午前3時近かったと聞いた。今週、2回目の3時過ぎまでの残業だという。

翌日、また平気な顔をして通常どおり出勤してくる。どこにそんなモチベーションがあるのか不思議だ。彼をそこまで仕事に駆り立てるものは何なのだろうか?

ハードな仕事は、僕には空しさが残るだけだ。


大道珠貴の「しょっぱいドライブ」(文春文庫)を読んだ。「しょっぱいドライブ」もなかなかしょっぱいが、「タンポポと流星」のしょっぱさは唸りたくなるほどだ。ストーリーがしょっぱいなんて変な表現だけど、でも、しょっぱいとしか言いようがない気持ちを読めばきっと、わかってもらえると思う。


吾妻ひでおの「失踪日記」(イースト・プレス)も読んだ。文化庁メディア芸術祭大賞、日本漫画家協会大賞を受賞した本だ。ギャグ漫画家は壊れやすいというが、彼もその一人だったのだろう。確かに、他の漫画家にはあまり描けない話だ。


でも、年末頃に読んだ東野圭吾の「容疑者Xの献身」(文藝春秋)が宝島社の「このミステリーがすごい!」、原書房の「本格ミステリ・ベスト10」、週刊文春の「週刊文春ミステリーベスト10」で3冠を達成したときと同じくらい、違和感を感じた。


確かに面白いけど、そんなに賞を取ったり1位になるほど面白かったりするかなあ。昨年、僕はもっと面白い本や漫画をいっぱい読んだような気がしたので、少し納得がいかない気分になりました。

年が明けてから、3.4キロも太ってしまった

階段を登っていると体が重くてつらい。太腿が互いに擦れあう。胸も大きくなったような気がする。

そのくせ、食欲だけはたっぷりとある。

仕事中も柿の種やベビースターラーメンなどから手が離せない。

職場で夕食を食べた後、家まで帰る間に、またラーメンを食べてしまう。

なんとかしなくては。そんな思いの中、週末を迎えた。


それで、プチ断食をすることにした。


食べていいのは土日の2日間でキウイ2つと(腐りそうだったから)、ヨーグルト500CCのみ。

でも、飲み物は自由にした。一応、ダイエットペプシを3リットルとダイエット生360CCを12缶用意した。

基本的に液体が好きなので、液体さえ自由ならなんとかなる、という思いがあったのと、どうしても空腹に耐えられなくなったら、自分を酔いつぶれさせて寝かせるためだ。


初日は順調。髪の毛を切りに行ったりデパートに買い物に行ったりして、すっかり疲れたところに、ダイエット生を4本飲んだら、空腹を感じる前に眠ってしまった。


2日目も午前中は順調だった。

唯一危なかったのは、午後スキー板を買いに行ったとき。板の調整のために90分ほど空き時間ができてしまった。何していようか。

思った次の瞬間には、コンビニに車で乗り付けていた。

「腹が減ったから、おにぎりでも買おう。」

そう思って車から降りそうになったときに、ダイエット中だったことを思い出して、いかんいかんと首を振った。久しぶりに感じる強烈な空腹。今なら、分厚いステーキでも平らげそうだ。


漫画喫茶に行って「常務 島耕作」や「20世紀少年」(思い出すなあ、Tレックス)などを読む。漫画喫茶に置いてあるスナック菓子にも目を奪われるがひたすら我慢。コーヒーをがぶ飲みしていた。


家に戻ってからは、ダイエット生を飲み、ネットで麻雀ゲームなどをして、気を紛らわせる。ブログを書いたりしながら、ダイエット生を3缶ほど開ける。


そして今日、朝起きて体重を量ったら3.4キロ痩せていた。ちょうど今年になって太った分を取り戻したことになる。思ったよりも効果があった。


これから、職場に行くまでにスターバックスに寄って、最近の定番「イタリアンサラミのホットサンド」を食べ「本日のコーヒー」のショートサイズを飲むのだ。


ああ、あの、サラミの味。


月曜日の朝など、職場に行くのはうんざりした気分になるのだが、今日は今から楽しみだ。

カリフォルニアに住んでいるクリスティーナから、立派な結婚式の招待状が届いた。3月に結婚するとは聞いていたが、こんな立派な招待状が届くとは思っていなかった。


「3月に友達の結婚式があるんだけど、その頃って仕事は忙しいですか?カリフォルニアまで行かないといけないんですが…。」

職場の先輩に聞いてみた。

「別にいいんじゃない?日帰りなら。」

「…。」

結婚式に出席することは、それであきらめてしまった。


彼女は身長が160センチもないが、結婚相手はドイツ系の人で190センチを超えるそうだ。メールで写真を送ってもらったことがある。大きなバイクの後部座席に座り、大きな彼氏を抱え込んだ彼女はとても幸せそうに見えた。


彼女とは、以前の職場で一緒だった。

その頃、職場の外国人スタッフは美人ばかりが多く、きっと顔で採用をしているに違いない、と噂されていた。

彼女はその中では、どちらかと言うと地味な方で、あまり目立つような子ではなかった。でも、いつも笑顔でかわいらしかった。


一緒に韓国やシンガポールも旅行した。

彼女は日本語も流暢だが、もちろん英語も話せる。彼女と一緒に飛行機に乗ると、いつも非常口の前の席を確保できた。

この席だと、足が伸ばせるので同じエコノミークラスでもずっと楽になる。

僕はいつも彼女に交渉してもらっていたのだ。


旅行の間、僕たちは友達の家を泊まり歩いていた。シンガポールでは単身赴任している女性の家に泊めてもらった。ナイトサファリなど連れて行ってもらい、楽しかった思い出がある。


彼女は水泳が好きで、シンガポールでも、僕や途中から合流した友達が二日酔いで寝ているときも、プールで熱心に泳いでいた。

カリフォルニアの実家にはプールがあるのだという。どんどんと水が流れてくるプールなので、どのくらい泳いだのかわからないのが困る、と笑っていた。


ヨーロッパに2か月ほど行っていたときは、彼女からよくメールが届いた。

僕も暇なので、ほとんど毎日返事を書いていた。職場に帰ってからは、また忙しい日々が始まり、同じ仕事をすることが滅多になかったので、すれ違いが続いていた。

「ヨーロッパにいるときは、毎日、メールで話していたのに、日本に帰ってきて同じ職場なのに、全く話さないのはおかしいんじゃない?」

そんなメールを受け取ってからも、あまり彼女と話す機会はなかった。


職場の仲間達の間でテキーラをショットグラスで飲む飲み方が流行ったことがある。手に乗せた塩をなめ、ショットグラスを一気飲みして、最後にライムを囓る。

他の課の人が合流したときも、この方法で飲んでいた。


僕の課は皆、お酒が強かったので平気だったが、合流した他の課の3人は簡単に酔いつぶれた。

意識がほとんどなくなった3人を、近くにあるクリスティーナの家まで運んで寝かしつけた。

そのとき、なぜか彼女から「あなたはマイ・ヒーロー」と言われた。

よく意味がわからなかったけれど、それからも彼女に「マイ・ヒーローだから」といろいろと親切にしてもらった。


毎年、クリスマスになると彼女の家でパーティーがあった。七面鳥料理やケーキを食べ、ワインを飲んだ。料理はいつも彼女の手作りで、食べきれない分はいつも分けてもらっていた。


長野に帰ってから一度だけ、彼女が遊びに来たことがある。結婚式に招待されて日本に来たついでだった。

忙しくて、昼間に会うことができず、夜はフレンチレストランに連れて行ったのだが、あまりおいしくなかった。


結局、彼女には親切になりっぱなしで、何もお返しができなかった。


クリスティーナに「君のことを思い出すと、君はいつも笑顔で優しかった。君と結婚する人は幸せだ。」とメールを書いたら、「あなたもとても優しかった。あなたと付き合う人も幸せ。」と返事が来た。


彼女に優しくしたことなんか一度もなかったのに。

でも、そんな僕を許してくれた彼女の優しさに改めて胸を打たれた。


今日、彼女にお祝いのカードを送った。

カードを書きながら「あなたは、マイ・ヒーローだから。」と言ってくれた彼女の顔が何度も浮かんできた。


彼女と結婚する人は幸せだろうけれど、彼女自身も幸せになって欲しいなあ、と心から思った。

東京に出張した。

仕事の後に誰と会うべきなのか迷ったけど、結局いつもの友達と食事をすることにした。


今回は池袋のサンシャインプリンスに泊まった。

客室数が多い割にはフロントもエレベーターも数が少なく、チェックインの際に待たされ、その後、エレベーターの前で高校の修学旅行生に囲まれてうんざりした。よっぽど階段で登ろうかと思ったが、部屋が28階だったのでそれもあきらめた。


友達とは8時頃に会った。誕生日が近かったので、何か彼女にプレゼントを買おうと思ってサンシャイン・シティを歩いていたら、期間限定のぬいぐるみを売っていたので、それを買うことにした。

「これください。」

近くにいた店の女の子に声をかける。

「この子ですか?では、この中から気に入った子を選んでください。」

ぬいぐるみを「この子」と言うのに少しとまどったが、べつにかまわない。


選べと言われた箱の中には、綿の入っていないぬいぐるみがたくさん入っている。

僕にはどれも同じに見える。

「適当でいいですよ。」

「じゃあ、顔のかわいいこの子でいいですか。」

「いいです。いいです。」


「それでは、綿を詰めますので、お好みの固さを教えてください。」

「適当でいいですよ。」

「じゃあ、詰めますので、一緒にお手伝いしてください。それでは、足下のスイッチを踏んでください。」

スイッチを踏む。綿が勢いよくぬいぐるみに充填されていく。


僕の後ろには、高校生のカップルが綿の入っていないぬいぐるみを手にして順番を待っている。ネクタイをしたサラリーマンがぬいぐるみの綿つめをしている姿は間抜けだろうなあ、と思う。

「お顔は少し固めに、お腹は柔らかめでいかがでしょうか。」

「あ、いいです。そうしてください。」

「それでは、最後にですね。このハート型の綿に願い事をしながらキスをして、ぬいぐるみの中に入れてください。」

「…。」


それから、出生証明書を作った。名前と誕生日を決める。

「連絡先もちゃんと書いてください。でないと、もし、この子が迷子になって私どもの店に運ばれてきたときに、連絡先がないと困ってしまいますから。」

彼女の目は本気だった。仕方なく、僕の電話番号を書き込む。


「この子、裸なんですけど、お洋服とか一緒にどうですか。」

「とりあえず、そのままでいいです。」

「では、リボンは何色に?お箱のリボンの色も選んでください。」

俺はただぬいぐるみを買いたかっただけなのに、20分くらいかかった。

ビルド・ア・ベア・ワークショップって店だから、思いっきり暇な人はどうぞ。ぬいぐるみ自体はね、かなりかわいいよ。マジで。俺が作った(スイッチを入れた)っていうのもあるけど。



待ち合わせ場所は銀座三越のライオン前だった。そこから、銀座6丁目にある「ペロ」というスペイン料理の店に行く。

アンコウ入りのパエリア、カニのオーブン焼き、サラダ、イベリコ豚の生ハム、牛テール、豚足などを食べる。

店のお薦めの白ワインは柑橘系の香りがして、とてもさわやかで気に入った。イベリコ豚の生ハムは、どこか魚の薫製を思わせる深い味だった。料理のはずれは全くなく、おいしかった。

結局、この店で3時間ほど食事をして、友達とは別れた。



最近、シオドア・スタージョンの「輝く断片」(河出書房新社)を読んだ。スタージョンはSF界では伝説の人らしいが、今回読んだのは彼のミステリーの傑作集。いろんな人がべた褒めしていたので、期待していたんだけど、僕は「マエストロを殺せ!」以外はそれほどいいとは思わなかった。「マエストロを殺せ!」はいい。

「マエストロを殺せ!」を読んでいると、たまらなくジャズが聴きたくなる。実際、銀座の山野楽器で3枚もジャズのアルバムを買ってしまった。音楽のテイストとは、その音楽を作った人だけに宿るのか、彼が死んでも生き続けられるのか?音楽を本当にわかっている人の書く小説だなあ、と思った。


それから川上弘美の「いとしい」(幻冬社文庫)も読んだ。不思議な気分になる本。僕は特に前半部分が好きだった。春画を描く義理の父。そこに描かれている「入り船」などの格好を試してみる姉妹。授業を後ろ向きで聞くミドリ子。始めから最後まで、変で不思議なんだけど、いいんだよなあ。緊張していた心がぐったりして。


島田洋七の「がばいばあちゃんの幸せのトランク」(徳間文庫)も読んだ。幸せって、簡単な話だよな、とこの本を読んで思った。恋人のりっちゃんがかわいくてとてもいい。


俺は、幸せのトランクをどこに置いて来ちゃったんだろう。

帰りの新幹線の中で、そんなことを考えていた。