金曜日の夜、自転車で家まで帰る途中で、岩盤浴の看板を見つけた。

一度は通り過ぎたのだけど、気になって再び戻った。

なかに入ってパンフレットをもらう。

通常なら2100円のセットが1000円で体験できるという。


それで、土曜日に予約して入りに行った。


時間は1時間だけだというので、「短いなあ」と思っていた。

最初に注意事項や利用の仕方を聞く。

そこの店では高濃度の酸素を吸入できる装置も付いるとのことだった。


着替えてなかに入る。

薄暗く蒸し暑いがもちろんサウナほどではない。

岩盤に横になると、5分ほどで汗が噴き出してくる。


1時間が短いと思ったのは間違いだった。

暑さと自分の汗に耐えきれなくなって、結局10分前には出てしまった。

入るときに渡されたミネラルウォーターを一気飲みする。


僕はもともと水好きで汗かきなのだ。

登山をするときどんなに重くても、僕はいつも必要以上に水を持って山にあがる。


大学2年の夏、僕は行くはずだった長期の登山に行かなかった。

そのときの登山は水場が少ないコースだったので、水が足りなくなって、随分苦労をしたらしい。

一緒に行くはずだったメンバーはその登山のあと「おまえが来なくて本当によかった。もし来ていたら、俺はおまえを殺していたかもしれない。」と僕に言った。

かなりきつい体験をしてきた仲なので、彼が本気で言っていることはわかった。

水がない登山は本当にきつく、そして僕が極限状態になればなるほどよく水を飲むことを彼はよく知っていた。

僕もそんな山行に行かなくて本当によかったと思った。


本当は岩盤浴でかいた汗は水で流してはいけないらしいのだけど、タオルで拭き取ったあともいつまでも汗が止まらないので、中尾山温泉まで車を飛ばした。


土曜日の昼間にはさすがに客も少なく、ほとんど貸し切りのような状態で風呂に浸かっていた。

露天風呂では、たくさんのセミの鳴き声が聞こえた。

空はどこまでも青く、日差しは強く、露天風呂に木々の濃い影を落としていた。

風だけはどこか秋を思わせる冷たい空気を含んでいた。


家に帰るとアイスクリームを食べて2時間くらい昼寝をした。


その後、車を運転してゴルフの打ちっ放しに行き、200球ほど打った。

集中力が持続しなくて、打てば打つほど下手になっていくようだったので、あきらめて家に帰った。

岩盤浴が思ったよりもずっと体力を奪うことに気がついた。


その日の夜は久しぶりにうんざりするくらい寝た。


朝起きて鏡を見ると、肌がきれいに輝いている。

「これが大量の汗をかいた効果なのか…。」


美肌効果なんかあんまり男の僕には意味がないけれど、あれほど大量の汗をかくのは確かに爽快だ。

ゴルフのせいかまだ疲れているし、筋肉も痛む。

でもまた体力が戻ったら、岩盤浴に行ってみようと思った。

冥王星が、太陽系の惑星からはずれることになった。

冥王星が地球の衛星である月よりも小さいということを、今回初めて知った。


8月24日付の毎日新聞には、こんな記事も出ていた。

『冥王星が惑星でなくなるという事態は、占星術の世界に影響を与えるのか。毎日新聞に占いを提供しているマーク・矢崎さんは「今回のことは、冥王星を惑星と呼ばないようにするだけのことで、冥王星が消えてなくなるわけではない。星占いとしては影響はない」と話している。』


星占いなんか「でまかせ」なんだから影響がないのは当然なんだけど、少しは影響があるって言って欲しかった。

いろんなことを冥王星が惑星からはずれたせいにしたかったから。



朝、職場に行くと、まだ若い職員が課長に抜擢されたということで話が盛り上がっている。

もうトップは代わるのに、なぜ?という気がしないでもない。

でも、僕はあまりそんなことは気にならない。


8月31日号の週刊新潮の「結婚」の欄に揚ちゃんの結婚のことが出ている。

相手は年商3000億円を優に超える会社の社長令嬢だという。

後継者は今のところ未定らしい。


揚ちゃんとは昨年の秋、一緒に中国地方に旅行に行った。

そのときは4人で行ったのだが、乗っていたのは軽のマニュアル車だった。

記事を読みながら、もう住む世界が変わってしまったなあ、と思う。


記事によると「二人とも英会話が好きなので、人がいないところでは、英語だけで会話をすることが多かった」という。

なぜそうしなければならないのか、そこら辺りの感覚はちょっとよくわからない。


朝から隣の席の同僚とこの話をしていて仕事をやる気がなくなる。

「年商3000億だぜ。俺は1個100円のポストイットをどうするかなんて話をしているのにさあ。」

「どうですか。先輩も資産家令嬢と結婚というのは。」

「俺?あり得ないよ。」

「でも、もし結婚できたら、仕事どうします?」

「やめる決断をするまで3秒かからないな。」


間違いなく幸せだと思うけれど、揚ちゃん、お幸せに。



それから名古屋のみさとさんも結婚した。

紅茶のセットを頂いたので、お礼の電話をする。

「みんな結婚しているのに、どうして結婚しないんですか?もっと積極的にならないとダメですよ。隣の席の人とかどうなんですか?それがダメならその隣の席の人とか。それでもダメならその隣の席の人とかは…。」

「今言った人、みんなおっさんなんだけど…。っていうか、おっさんしかいない職場なんだよ。」

「ダメですねえ。」

「まったく。」


みさとさんも、お幸せに。



仕事で、監査をした。僕は事前審査の担当だった。

書類を整理して、簡単な検算をして、検査官に渡す。

ラグビーでいうとナインの役割みたいな感じだ。

スクラムにボールを入れて、後ろに回って拾って、パスする。

そして、僕はラグビーではナインのポジションがいちばん好きだ。


検査官に書類を渡すと暇な状態になってしまう。

審査を受ける人は真剣な顔で待機しているので、眠るわけにはいかない。

実際、万が一間違いが見つかったときには、現場に帰って説明からやり直さなければならなくなる。


以前読んだ、ルイス・サッカーのウェイサイド・スクールのシリーズから、ウェイサイド・スクールの算数の本が出版された(著者は同じルイス・サッカー。題は「 SIDEWAYS ARITHMETIC FROM WAYSIDE SCHOOL 」)。


ウェイサイド・スクールでは算数も文字で行う。

例えば elf+elf=fool とか。


実はこの式はそれぞれのアルファベットが0から9までの一桁の数を示している。

そして、アルファベットごとに数字は異なるというルールになっている。

どのアルファベットがどの数字の代用をしているかを探るのだ。


ちなみに、さっきの式はe=7、l=2、f=1、o=4で、数字に直すと721+721=1442になる。

この置き換えが結構手強くて面白い。

seed+iced=spice など、解くのに10分くらいかかる。

方程式を使えば簡単に解けそうな気もするけれど、繰り上がりも考えないといけないので、なかなか方程式も使えないのだ。


検査官に書類を渡して手持ちぶさたになると、僕はもっぱらこのパズルを解いていた。

真剣な顔で電卓を叩いていたので、きっと真面目に仕事をしていたように見えたはずだ。


そういえば監査のときに税込み金額から消費税を抜き出す必要があって、みんな苦労しているようだった。

たとえば、総額1050万円のうち消費税はいくらか?という問題だ。


ちょっと考えて、総額から消費税を算出するには21(ブラックジャック!)で割ればいいことを発見した。

ただ、これは理論値なので、実際には端数処理の関係で1円単位の誤差はある。



新聞等で絶賛され、書店でもいつも品切れ状態が続いていた綾辻行人原作、佐々木倫子漫画の「月館の殺人」(上下巻、小学館)をようやく手に入れて読んだ。


まあまあ、かな?

でもこの漫画の本当のよさは、鉄道マニアでないとわからないと思う。

僕は国内旅行主任者の資格を取るときに1か月くらい時刻表を見ていたことがあったくらいでマニアにはほど遠いのであまりよさがわからなかった。


鉄道マニアというのは奥が深い。

以前、長野東インターの近くの「トレイン・ギャラリー・イン・NAGANO」という博物館?に行ったとき、人が一人乗れるような足載せ台のようなものがあった。

天井からつり革もぶら下がっている。

そこに乗ると電車の振動を体感できるというのだ。

実際に乗ってみると、確かに電車に乗ったときの振動を感じる。

でも、何が楽しいのか僕にはさっぱりわからなかった。


この漫画はそういうことが楽しいと思う人達にはきっとたまらない漫画なんだけど、僕は普通の推理漫画のように読んでしまったので、なんだか感想も今ひとつだった。



最近あまり楽しいことがない。

何もかも「冥王星のせい」だと思いたい。

久々にテレビでジュディ・オングを見た。

本当の美人だからなのだろうか。

相変わらずの美貌で、世の中がどれだけ変わっても、彼女だけは年を取らないで済むかのようだった。


僕が幼稚園や小学校に上がったばかりの頃、家に紙芝居があった。

いくつかあったのだが、今でも覚えているのは「七匹の子ヤギ」だ。

頑張れば今でもその紙芝居の途中に流れる「…そんなヘンテコなしゃがれ声。怖いオオカミに決まってらあ。お母さんはきれいで優しい声だもん。」という歌を歌えそうだ。

というのは、その紙芝居にはソノシートがついていて、レコードプレーヤーで再生して聞くことができたからだ。

僕は本当に何度もその紙芝居を、ソノシートを聞きながら見たのだ。


その紙芝居の朗読者というか紙芝居を読む声は、子供心にとてもまっとうだった。

紙芝居を読む声の理想があるとすれば、この声こそ理想だった。

そしてその「声」の役をしていたのが「ジュディ・オング」だった。

僕が一人で本を読むようになった原点は、この紙芝居にあるような気がする。


そんなわけで、僕はジュディ・オングを見るたびに、あの紙芝居を思い出す。

僕のベースを作ってくれた人なので、彼女にはいつまでもきれいでいて欲しい。



小学校に入学した頃といえば、家にクロという名のネコが住みついたことがあった。

クロはその名の通りの黒猫で、いつも玄関から入ってきた。

爪を立ててちゃんと玄関の引き戸を開けて入ってくるのを、僕は今でも覚えている。


父が、その頃何を考えていたのかわからないが、ある日クロは捨てられることになった。

天竜川の川べりまで運んで捨てに行くのだという。

危険を察知したのかクロは家中を逃げ回った。

最後に台所に逃げ込み、そしてそこには僕がいた。

僕はクロがかわいそうで戸を開けて逃がしてしまった。

「何しているんだ!」

父に怒られて、泣いたことを覚えている。


でも結局、クロはつかまって、天竜川の川べりに捨てられた。

家から数キロも離れたところだ。

もうクロには会えないんだと思っていた。


それからしばらくして、僕が家の廊下に立っていたら、クロが玄関の戸を開けて入ってきた。

「クロ!クロが帰ってきた!」

僕は嬉しくて大きな声で言った。


大きくなってから、ネコにも帰巣本能はあるが、他のネコの縄張りを重視するために、一度捨てられたネコはなかなか元の家に戻ってこられないのが普通だと本で読んだ。

でも、あのときクロは戻ってきた。

いったい、それまでにどんなドラマがあったのか、彼は話そうとしなかったけれど。


戻ってきたクロを、父は岐阜県近くまで捨てに行ったらしい。

彼が一生かかってもたどり着けないほど遠くの土地だ。

僕はそのことを後になって教えられ、とても悲しかった。


幸せだった幼年期の最後の思い出は、クロが捨てられたこと。

今でもときどき、彼はどうして捨てられてしまったのだろうと考えることがある。


先日、実家に帰った。

実家近くのアパートで大きな火事があり、そこから子猫が逃げ出して、どうも僕の家の庭に住みついたらしい。

うわさではそこに住んでいたヤクザの飼い猫だという。

茶色の子猫で、僕が実家に帰ると早速足元にじゃれついてきた。

僕は昔からネコには好かれる性質なのだ。

子猫は「僕は君の友達だよ。」という目をしていた。


ネコは仰向けになると、お腹をだした。

これが犬なら、これは服従のポーズなのだが、ネコがこんなことまでするのだろうか?


でも、そのとき僕は「不潔だ。」「病原菌もいっぱいいる。」「ノミやダニの巣だ。」という理屈っぽい考えで頭がいっぱいだった。

僕は見ていただけで、手を出そうとはしなかった。

ネコはかわいい顔立ちをしていたが、「捨てに行こう。」と頭の中で考えていた。

家に居つかれたら困ってしまう、と。


そしてそのとき小学校の頃、大嫌いで理解ができなかった大人に自分がもうすっかり変わってしまっていることに気がついた。

目の前にいるかわいいネコを、狂犬病には侵されていないだろうな、という目で見ている自分がいることに驚いた。


もう僕は誰かが間違いがないといった血統書つきの健康なネコじゃないと愛せないのかもしれなかった。

でも、いったいいつからそんな風になってしまったのだろう?


ネコを捨てられて、僕の幼年期は終わった。

そして、今度は自分でネコを捨てて、今度はいったい僕は何を終わらせてしまうのだろう。


玄関の戸をネコの前でピシャリと閉めた。

その戸の向こうで、ネコが何度も甘えた声で鳴いている。

僕はその声を無視した。聞かない振りをした。

きっと病気を持っている、と僕はそのとき思っていた。


母にネコの話をする。

隣の家では彼を見るたびに、バケツの水をかけるのだという。

全身、濡れた子猫が、よくうちの玄関で悲しそうに鳴いているのだと。

そういうことも、この世の中にはあるんだろうなあ。


その話を聞いた後、僕は自分の食事をした。

ネコは玄関の外で、ときどき、思い出したように鳴いていた。


「わかったよ。わかった。」

僕は玄関の外に行って、ネコにちくわをあげた。

小さな口で一生懸命ちくわをかじっている。

丸ごとはかじれないので、少しずつちぎってやる。


「俺、君を捨てに行かなくて本当によかったよ。」

ネコの頭をなでてやる。

ダニアレルギーなのであとで痒くなるかもしれないなって思ったけれど、でもそれでもいいや、と思っていた。

喉をゴロゴロと鳴らしている。

「家の中には入れてあげられないけど、テラスだったら自由に使っていいよ。餌もあげるし。」

テラスまで連れて行きながら、僕は彼に話した。


彼はみゃあう、と鳴いた。

今となってはどうでもいいことだが、英検の準2級に受かっていた。

面接の結果が届いた。

Q&Aで4点減点され、アティチュード(態度)でも1点減点されていた。

Q&Aはともかく、アティチュードの減点は何だろう。

アティチュードは「3:特に優れている、2:優れている、1:普通」を表すそうだ。

減点されたから言うわけではないが、こんなもんに点数をつけること自体が馬鹿げている。


ルイス・サッカーの WAYSIDE SCHOOL シリーズの最終巻、「 WAYSIDE SCHOOL Gets a Little Stranger 」を読み終わった。

最後まで飽きのこない本で、ストーリーを読み進めるのが楽しかった。


今回、読んでいて意味不明になって何度も最初から読み直し、とても苦労した節を訳したので読んでみて欲しい。

たぶん日本語で読んでもきっと混乱すると思うけれど、最後まで読んでもう一度読み直すと、ああ、そういうことだったのかとわかってもらえると思う。



ペットの日


ジュール先生のクラスの子供たちが全員、ペットを学校に連れてきた。教室はとてもうるさかった。犬がわんわんと吠え、ネコがミャーミャーと鳴き、カエルがゲロゲロと鳴き、ブタがキーキーと鳴き、牛がモーと鳴き、鳥がピーピーとさえずった。

ジュール先生が指を2本立てると、動物たちは静かになった。

ステファンはペットを持っていなかったので、オレンジを持ってきた。彼はオレンジをカゴに入れて机の上に置いていたので、オレンジは逃げることができなかった。

トッドは弟のラルフィーを連れてきた。

「トッド?」ジュール先生が言うと、トッドが吠えた。

「人をペットにしてはいけません。」ジュール先生は言った。

「でも、噛まないよ。」トッドは答えた。

ジョイはトッドに座って静かにしているように言った。

ジュール先生は文房具の棚から模造紙を取り出して「表を作りましょう。」と言った。

その表の最上段に、「名前」、「ペットの種類」、「ペットの名前」とジュール先生は書きだした。

ジュール先生はディーディーから始めることにした。名前の下に、ディーディーと書き、「飼っているのは犬ね。」と言った。

「ネコです。」ディーディーは言った。

「ネコ?」ジュール先生が聞くと、ディーディーはうなずいて犬の背中を撫でた。

ジュール先生はロンに移ることにした。

「ロン、あなたはネコを飼っているのね。」

「犬だよ。」ロンは膝の上にのせたネコを撫でながら答えた。

ジュール先生は方をすくめ「いいわ。」と言った。

「それは私の犬。」ディー・ジェイが言った。

「ロンがあなたの犬を持っているの?」

「ロンはネコを飼っているのよ。」ディー・ジェイが言った。

「でも、私がさっき言おうとしたのは、何ていうか…。」

「何って犬よ。」ジェニーが言った。

ジュール先生は耳をふさいで頭を振った。

「もう一回最初から始めるわ。」

ジュール先生は文房具の棚から新しい模造紙を取り出した。

「マック、あなたの犬の名前は何?」

「何って私の犬の名前よ。」ジェニーが言った。

「私はあなたに話しているんじゃないのよ。ジェニー。私はマックと話しているの。」

「彼は話せないよ。」マックは言った。

「誰が話せないの?」

「マック。」マックは答えた。

ビリーがマックに吠え、マックがビリーに吠え、トッドがマックとビリーに吠えた。

ジョイはトッドに足下に横になるように言った。

ジュール先生は続けた。

「ミロン。あなたのペットは何?」

「あなたのペットってカメよ。」とシャーリーが答えた。

「何?」ジュール先生が言った。

「何ってジェニーの犬よ。」シャーリーが答えた。

「ジェニーのペットは犬!そんなのわかっているわ。ジェニーの犬の名前は何?」

ジェニーはうなずいた。彼女の犬はまっすぐに立ち上がると背が高く、ジュール先生に微笑みかけているようだった。

「彼はハンサムね。」ジュール先生が言った。

「僕のネズミはハンサムだよ。」とベンジャミンが言った。ベンジャミンは小さな白いネズミをカゴに入れて机の上に置いていた。

「もし、先生がネズミを好きならね。」ダナがしかめっ面をしながら言った。

「ジュール先生はネズミを好きだよ。ネズミを食べるんだ。」カルビンが言った。

「おえっ。」ダナが言った。

「あなたが呼んでも、彼は来ないわ。だって彼は自分の名前を知らないから。」キャシーが言った。

ビリーがミャーミャー鳴いた。

「ジュール先生ってヨーグルト食べるのかな?」ジョンが聞いた。

「馬鹿言うなよ!」カルビンが答えた。

「食べるわよ。私はヨーグルトが好き。特にイチゴがいちばん好きよ。」ジュール先生が言った。

モーレシアは自慢げに微笑んだ。「ジュール先生、イチゴがいちばん好きなんだって。」

「ひいきはよくないわ。」ダナが不満の声をもらした。

「ジュール先生、クラッカーは好き?」ロンディが聞いた。

「ご心配なく。ジュール先生はクラッカーを食べません。」カルビンが言った。

「なんで私が食べるかどうかあなたが知っているの?カルビン。」ジュール先生は少しイライラしながら聞いた。「私はチーズをのせてクラッカーを食べるのが好きよ。」

「おえっ。」ミロンが言った。

「あなたが呼んでも、彼は来ないわ。」キャシーがまた答えた。

「マック!マックを私の靴下から遠ざけてよ。」アリソンが叫んだ。

「待って。」ジェイソンが言った。「今、君は僕の靴下を持っていて、僕が君の靴下を持っているんだ。」

「私の靴下とあなたの靴下の違いくらいわかるわよ。ジェイソン。」アリソンが言った。

ジュール先生は耳をふさいで頭を振った。それから続けた。

「あなたのペットは何?ダミアン?」

「私はもう、カメだって言いました。」シャーリーが言った。

「私はあなたと話していたんじゃないのよ。シャーリー。」ジュール先生は言った。「私はダミアンと話していたの。」

「あなたの鼻はイタチです。」ダミアンが言った。

「私の鼻がイタチ?」ジュール先生が聞いた。

「私の鼻ってハムスターだよ。」ジョーが言った。

ビリーがメーと鳴いた。

ジュール先生は足を舐めた。

「ねえ、ポール。私、あなたのピッグテイル(お下げ髪)好きよ。」レズリーが言った。

「ありがとう。君のパジャマも触っていい?」ポールが言った。

「どうぞ。引っ掻いたりしないから。」レズリーのパジャマを撫でていたベイブが言った。

「これはクレイジーだ!」テレンスが叫んだ。

「かわいいわ。」ダナが言った。


名前         ペットの種類   ペットの名前

ディーディー       犬          ネコ

ロン            ネコ          犬

ディー・ジェイ      犬          いいわ

ジェニー          犬          なに

マック           犬          マック

ジョイ           犬          トッド

シャーリー        カメ         あなたのペット

ベンジャミン       ネズミ        ハンサム

カルビン         ネコ         ジュール先生

キャシー         スカンク      おえっ

ジョン           カエル       ヨーグルト

モーレシア        ネコ        イチゴ

ロンディ           鳥        クラッカー

ミロン           シマリス      チーズ

アリソン          ネコ         靴下

ジェイソン         ネコ        靴下

ダミアン          イタチ       あなたの鼻

ジョー            ハムスター   私の鼻

ポール           ブタ(ピッグ)   テイル(尾)

レズリー          ネコ        パジャマ

テレンス          犬         クレイジー

エリック・フライ      子供の山羊    ビリー

エリック・ベーコン     犬         ビリー

エリック・オーヴェンス  ネコ        ビリー

ダナ             犬         パグジー

ベイブ            鳥         ピカソ

トッド            子供の人     ラルフィー

ステファン         オレンジ      フィード

足の小指の爪が変形している。砕けているといった状態だ。いつの頃からなのか思い出すこともできない。

登山をしていた頃からなのだろうか。


コマーシャルを見ていたら、爪の変形は水虫が原因で、飲み薬で治すらしいとわかった。


そこで、以前、外科の医者に見せたところ「君、来週もこの病院に来られる?水虫の薬ってアレルギー反応を起こして肝臓を痛めることがあるから、最初は短い期間の間に何度か血液検査をする必要があるんだよね。」と言われた。


その頃はとても忙しい時期だったので、そのときは諦めた。


次に別の病院の内科の医者にも診てもらった。

「これ、水虫なのかな?小指の爪だけ水虫ってことがあるのかな?指の間とか何もないし。もし、中指の爪とかが変形していたら水虫かも知れないけど、小指だけっていうのが気になるね。皮膚科の専門医に顕微鏡で見てもらって。薬だけならうちの病院でも出せるから、とりあえずこれが水虫なのかどうか、はっきりさせてきて。」


そこで、仕事を1時間ほど休んで皮膚科の病院に行った。医者は女性だった。

見た瞬間、「あなた水虫を疑っているんなら、これは水虫じゃないわ。一応、顕微鏡で見るけど。でも、見るまでもなくこれは違うわ。これは、あえていえばタコみたいなものなの。どうしても治すなら、でも、これは水虫より大変なことになるし、治す必要ないんじゃないかしら。」と言われた。


どうも水虫ではなかったらしいので、治療はしないことにして仕事に戻る。

職場には検査のために病院に行くと言っておいた。

「どうだった?健康すぎて来るなって怒られただろ?もっと仕事をしろって。」と同僚が言うので、「もう少しで死ぬところだったらしい。仕事のし過ぎが原因だって入院を勧められたけど、隣の席の人に僕の分の仕事もしてもらいますって言ったら、しぶしぶ許してくれたよ。危なかった。」と答えた。


その同僚も以前、膵臓の検査でひっかかって入院すると言っていたことがあった。

ものすごく忙しい時期だったので「俺、わざわざ入院先の病院まで君の仕事運ぶのめんどくさいから嫌だなあ。」と言ったら「運んでくるな!」と文句を言っていた。

「入院したら休まなくちゃいけない。仕事なんかしていたら医者に怒られる。」

「でも手と眼と頭は健康なんだから、仕事できるじゃん。めんどくさいなあ。この書類も運ぶのか。」机や足下にうずたかく積み上げられた書類に眼をやる。

「運ばなくていいから。絶対、君には入院先を教えない。」

「ええ?入院先まで俺が調べなくちゃいけないの?めんどくさいなあ。」


忙しい時期には、そんな会話でストレスを発散していたのだ。

不健康な話だ。


「渋松対談」の偉い先生のお薦めで、最近僕も自転車で職場に通うようになった。

6時50分には家を出て、あまり頑張って朝から疲れないようにゆっくりと自転車を走らせる。

今乗っている自転車は、以前乗っていた街乗りマウンテンと違って、車体も軽いし、タイヤも細い。速く走れるギアだってある。

速く走れるギアはほとんど使わないが、それでも、いざとなれば使えるギアがあるというだけで心に余裕が持てる。


汗だくになって職場に着くと、まずシャワールームに行く。

今までそんな存在も知らなかったが、各階の平面図を見ていて発見したのだ。

シャワールームには狭いマンションにあるような、ユニットシャワーが2つ設置されている。


蛇口は混合栓で、赤い止水栓をひねると勢いよく水が出てくる。

もちろん、青い止水栓をひねっても水が出てくる。

止水栓はその2つだけで、お湯は出ない。これも経費節減のためだ。


それでも、汗をかいた体に水を浴びると気持ちがいい。

その後、服を着替えて自分の職場に行く。


「今日も自転車?早いね。」

職場に行くと同僚が既に来て仕事を始めている。

まだ8時前だ。

「いつもこんな時間から仕事をしているのか…。」


確かに、自転車に乗り始めてから見えてきたものがいろいろとある。

あまりに暑いので、少しぬるめの風呂に入って、途中からどんどんと水を足していった。

ほとんど水風呂のようになった状態で、本を読む。


最近、少し考えるところがあって、村上春樹の本を読み返している。

トイレでは「ノルウェイの森」を。風呂では「スプートニクの恋人」を。

僕が最後にヨーロッパに行ったとき、ロンドンでもパリでも地下鉄への長いエスカレーターの壁には「スプートニクの恋人」のポスターが貼られていた。


村上春樹の小説は、あだち充の漫画と同じで、どの本も内容がとてもよく似ている。

ストーリーが多少混同してしまったりするが、別に混同したからといって問題もない。

「やれやれ。」と僕はつぶやけばいいのだ。


風呂から出ると、夏の日のプールからあがったような清々しい気持になる。



サトちゃんからもらったハンガリーのフォアグラのパテを食べてからというもの、病みつきになってしまい、毎日フォアグラのパテを食べている。

デパートでもドイツ製のパテなら意外と安く買えるものだ。


皿に少し高いオリーブオイルとバルサミコ酢をそれぞれ大さじ2杯分くらいずつ垂らす。

淡い黄緑色の透明なオイルに、濃い茶色のバルサミコ酢が漂っている。

それからフランスパンを1センチの幅で斜めに輪切りにする。

フランスパンにフォアグラのパテを塗り、さっき作ったオイルと酢の混合したソースにつけて食べる。

赤ワインがあれば、それも飲む。

フランスパン1本くらいは簡単に食べてしまう。



ワイシャツくらいは自分でアイロンをかけてみようと思い、先月コードレスアイロンを買ってきた。

それから毎週末アイロンを使っているので、だんだん上手になってきた。

右腕、右ヨーク、左腕、左ヨーク、ボタンのある前側、背中、ボタン穴のある前側、エリの順序でかけていく。


その後、コードレスアイロンは熱が持続しないので普通のアイロンに戻したけれど。

アイロン台は大きければ大きいほどよく、片側が尖っているとか変形だとさらにいい。

ヨークの部分は曲面になっているので、尖っているところに引っかけると上手にかけられるのだ。


最初のうちは、ポケットの上とエリの間の部分などアイロンがけを忘れてしまうところもあった。

それで洗濯機で脱水したら、すぐにアイロンをかけるようにした。

アイロンがけをしたところから乾いていくので、忘れることがない。

その後、ちゃんと干せばいいのだ。


高校生の姪に「クリーニング師の資格でも取ろうかな?」というと「その前に、結婚すれば?そうすればクリーニングなんて必要ないじゃん。」という。


今の僕にとって結婚はクリーニング師の資格を取るよりも500倍くらい難しいということをどうやって伝えたらいいかわからなかったので「うん。まあ。確かに。」とだけ答えておいた。

今日は先日の大雨で被災した岡谷の家屋の土砂を取り除く作業に行った。

粘度の高い土が庭に高さ80センチほど流れ込んでいる。

庭は狭く、重機が入り込めないため人力に頼るしかない。

土の中には大きな石や、木、ぶつかって壊れた塀の欠片などが含まれている。

スコップで土砂を取り除こうとするが、弾き返されてしまいとても歯が立たない。

まずツルハシで掘り起こし、鋤簾(じょれん)で崩し、それからスコップで取り除く。

狭い箇所なので、多くの人数は一度に入れず、交代しながら作業を進めていた。

暑くて、気が遠くなりそうになる。


昔、幼稚園の入園試験でシスターに(カトリック系の幼稚園だったのだ。)「お風呂には何を持って入るの?」と聞かれ僕はシャベルの絵を指さしていたそうだ。

シスターが「シャベルを持ってお風呂なんておかしいわねえ。」と言っても、僕は譲らなかったらしい。

深層心理ではどうなのか知らないが、僕はそれほど土木道具が好きではない。

実際ツルハシなど、僕が握っても何の役にも立たない。

使えるのはせいぜいスコップと一輪車ぐらいだ。


水分を補給するための休み時間に、辺りを見回す。

山は遙か彼方にあり、家からは見ることもできない。

見ることもできないその山から流れ出た土石流で、家の壁には大きな穴が開き、そこからも土砂が流れ込んでいる。

流れ込んだ土砂で全壊した家もあるし、電気がショートして全焼してしまった家もある。

当然、死者も出た(写真はブログ-チーム森田の“天気を斬る”より。僕が作業した場所はここから100メートルほど上。)。


岡谷湊地区

眼下には諏訪湖がきれいに輝いて見える。

災害がなければ、とてもきれいで素敵な場所だ。


スコップで土を一輪車に積み込んでいると、そのことに夢中になって、他のことを忘れてしまう。

悩みも不安もすべて頭から消え、ただ土のことだけ考えている。


昔、大学のワンゲル部に所属していた頃、中央アルプスの宝剣岳に登ったことがある。

飯田の大平から、駒ヶ根の木曽駒ヶ岳まで縦走したのだ。

宝剣岳の鎖場は数百メートルの絶壁の上にあり、足場が2センチしかないところをカニ歩きで鎖を伝って歩いていく。

30キロ近い装備を持って、この鎖場を渡るのは命懸けだ。

数年前にも、この鎖場で父親と中学生の息子が死んでいる。

互いにザイルで体を結びあっていたらしい。

どちらかが落ち、もう一人が確保しきれなかったのだろう。

ここから落ちれば即死だと、鎖を握りしめながら僕も思っていた。


山のことが本当に怖くなり、山登りを真剣に考えだしたのはそれからだ。

宝剣の鎖場に限らず山は転んだら即死、の場所が多い、というかそんなところばかりだ。

ロック・クライミングなど、手を離せば死ねる。

山では一歩一歩を本当に考えながら踏み出すようになった。

他のことなど、何も考えられない。


かなり楽天的な僕でさえ、わけのわからない不安に襲われることがある。

そんなとき仕事から離れて、山に逃げ込み、すべてを忘れてしまいたくなる。

そして、山は本当にすべてを忘れさせてくれる。

どんなスポーツでも、勉強でも同じことだが本当に集中すると、他のことを忘れてしまう。

山では集中せざるを得ないので、余計なことを考えている暇を奪うのだ。

そして、すべてを忘れると気分が少し楽になる。


被災地で作業をしながら、昔「なぜ、山に登るのか」をテーマによくワンゲルの仲間で酒を飲んだものだが、一つの答えはこれだな、などと思ったりした。

M I 3を観た。アクション映画のお手本のような映画だ。

脚本もよくできている。

今回はトムはIMFに所属していることになっている。「へえ。国際通貨基金に所属しているんだ。」と思っていたら、国際通貨基金じゃなくて「 Impossible Mission Force 」の略なんだって(なんてセンスのない名前だろう。)。

なんで国際通貨基金の職員がここまでやらなければいけないんだろう?と僕は随分終わりの頃まで考えながら観ていた。


他にも映画は「ポセイドン」も観た。


DVD では「プライベート・ベンジャミン」と「アメリカン・ビューティー」を観た。

「プライベート・ベンジャミン」は昔のコメディ映画で、箱入り娘が軍隊に入る話。

「アメリカン・ビューティー」は映画が好きなら観ておかなければいけない映画で、一種の物差しのような役割を果たしている映画だ。

たとえば映画を人に紹介するときに「アメリカン・ビューティーのような映画」というように使われる映画なのだ。

それを僕は今頃観た。

好き嫌いは関係なく、僕はこの映画を観なければならなかったので観た。


それから「アリー my Love 」のファースト・シーズン全20話も見終わった。

セカンド・シーズンにもつい手が伸びてしまいそうな終わり方で、こうやってドラマっていうのは繋がっていくのか、と納得した。


本は、ルイス・サッカーの「 Wayside School is Falling Down 」を読み終わり、川上弘美の「おめでとう」(新潮文庫)を読んだ。

「おめでとう」は小手先で作ったような短編で、僕にはなんだかぬるくて、上手だけどなんだかなあ、って感じだった。


最近、物事にすごくやる気が湧かない。


明日は災害の被災地に手助けに行くメンバーになっている。

同じメンバーになった同僚に、上司が「日焼けに気をつけろ」などと温かい忠告をしている。

彼は前回の諏訪湖の葦を捨てる作業で、ひどい日焼けになり顔の皮がめくれるほどだった。

一方僕はそのとき、ひどい二日酔いで、力がほとんど出せられなかった。

好んで日陰を目指していたので、ほとんど日にも焼けず、本当に仕事したのか?とみんなに責められた。

「明日行って来ます。」と上司に報告すると「ちゃんと働け。被災者と一緒に寝ているんじゃないぞ。もし万が一にも被災者に看病されるようなことがあったら許さん。今日は飲みに行くな。」と僕には厳しい忠告が。

ひどい話だ。

土曜日も働いたのに。

代休は半日しか取れなかったのに。


ため息、ため息。ため息。

最近読んでいる、Louis Sachar の「WAYSIDE SCHOOL is Falling Down 」で、カルビンという小学生の少年が誕生日のお祝いにタトゥーを入れてもらう話が出てくる。

お父さんがタトゥーパーラーに連れて行ってくれるのだ。


「身体髪膚、これを父母に受く。敢えて毀傷せざるは孝の始めなり。(体、髪、皮膚は両親からもらったものである。これを故意に傷つけないというのは親孝行の基本である。)」という孝教の教えのある国では考えられないようなことだ。


どんなタトゥーがいいのかカルビンは悩む。なにしろ一生の問題である。

友達たちは、タカにしろ、いや裸の女にしろ、とうるさい。

また、どこに入れるかについても、腕に入れろ、いや胸だ、とこれもまたうるさい。

カルビンは1日ずっと考えて、結局最後は自分一人で決める。

カルビンがタトゥーを入れたのは足首の上。そして、絵柄はポテトだった。

友達がそして先生までが馬鹿にするが、カルビンは心変わりができないものを自分が決定したということに深い自信を持つ。

僕は決断したんだと、ポテトを見るたび幸せになるのだ。

「なるほどなあ。」

電車の中で、この節を読んでいて考え込んでしまった。

僕は自分で決定すべきときに、最後まで責任を持った決断ができていただろうか。

人の眼を気にしてばかりいなかっただろうか。

俺の仕事は、俺の人生はいったい…。

考えていたら、仕事に行くのがすっかり嫌になってしまった。


いつもトボトボと職場に歩いていく。

背中を押して(比喩的な意味ではなく本当に!)くれる人もいるし、挨拶をしてくれる人もいるし、通り過ぎて行くだけの人もいる。

みんなどうしてこんなに元気なんだろう?と不思議に思う。


高校の頃、授業は片っ端からサボっていたのに地学だけは好きだった。

地学の最後の試験は記号問題で、答えを全部つなげると「ユタカナヨキジンセイヲオクレ」になっていた。

「そんなこともあったなあ。豊かなよき人生かあ。今の俺にはあり得ないなあ。」

よろよろと職場に到着する。


基本的に土木関係の仕事なので、作業着を扱うことが多い。

数十枚ある中から、サイズを指定されるのだが、なかなか見つからない。

それで今日、臨時社員の女性の方に、ズボンのウェストサイズがすぐに分かるよう、作業ズボンの目立つところにカバーテープを貼って、そこにサイズを書き込んでくれるように頼んだ。

僕としては「86」とか「78」とかセンチで表示したものを希望していた。

「できました」というので「どうもありがとう」とお礼を言って見てみる。

カバーテープには「L」とだけ書いてある。

「この、Lっていうのは何?何センチ以上はLとか決めたの?」

「いえ、そう書いてあったので…。」

いっしょに表示を見てみる。

W:86というウェストサイズの他に、股下の長さを示すL(Lengthの略):80が確かに書いてある。

「随分とLが多いんだなあって思いました。Lばかりで…。」

「なるほどなあ。」

つまらない仕事の世界でもいろんなことが起こるものだ。


早く帰れたので、サケのムニエルを作ることにした。

確か、中学校時代に家庭科の授業で作った覚えがある。

マスだったかも知れないが、ムニエルはムニエルだ。

いくらなんでも、あの頃よりは料理も上手になっていることだろう。


フライパンにアルミホイルを敷く。

そこにバターとサケの切り身を載せて、ついでにシメジも載せて、コショウを振ってアルミホイルで包み込む。

サケの生臭い匂いが手に残っていて、なんだか気分が悪くなってきた。

古いものを買ってきたのかも知れなかった。

これはしっかりと焼かなくては、と思う。

弱火にして、ゆっくりと温めることにする。


部屋に戻ってインターネットで麻雀を東風戦だけして、再びドアを開けてキッチンに行く。

猛烈な煙だ。

やかんをこすったら、「ご主人様。お呼びでしょうか。」とランプの精でも出てきそうだった。

以前、焼酎でフランベしたときは火災警報機が作動するのではないかとビクビクしたが、今回も煙感知器が作動するのではないかとドキドキした。

キッチンの換気扇を回し、部屋のエアコンも最強にする。

ふと気がつくと部屋の中まで煙で真っ白だ。


ガスを止め、アルミホイルを開くと、半分以上が炭になったサケがアルミホイルにしっかりと張り付いている。

ナイフとフォークで無理矢理引きはがし、食べてみる。

今まで自分の料理では、まずそうに見えて、まずくなかった試しがなかったが、今回は違った。

今回の料理は食い物ですらなかった。

炭素棒の味がした。

カナダのモントリオールに行ったことがある。

昔読んだフレデリック・フォーサイスのスパイ小説では、モントリオールはスパイの最前線基地だということになっていたのだが、ソ連がなくなってしまったからだろうか?

実際にはどこか寂れた感じのする普通の地方都市だった。


モントリオールで日曜日の昼にホテルのベッドで横になって日本から持ち込んだ小説を読んで時間をつぶしていた。

ロビーに行くと、オートミールやらビスケットやらをただで食べることができる。

ベッドメイキングの間はロビーにいて、また、部屋に戻って本の続きを読んだ。


夜になるとイギリス人のディーンが呼びに来る。

「食事に行こう。ところで今日は何やっていたんだよ?」

「本を読んでた。」

「ホテルで?一日中?意味ないじゃん。( It’s No Point! )僕は、今日1日で市内を50キロサイクリングした。」

ディーンはちょっと自慢気に話すと、それからもずっと僕に「信じられないな。意味ないじゃん。(Unbelievable! It’s No Point ! )」と繰り返していた。


そのとき以来、休みの一日に、ゲームをしたり小説を読んだりして一日を過ごすと、ディーンの「 It’s No Point ! 」という叫び声が聞こえるような気がして、なんだか罪悪感に襲われてしまう。


実は土曜日は朝から諏訪湖に行き、流れ着いた葦を堤防まで引き上げる作業をしていた。

とんでもない2日酔いで、普段の3分の1くらいの体力しか出せなかった。

書くべきことはあるんだけど、未だに書く意欲が湧かない。

金曜日の飲み会の記憶も飛び飛びで恐ろしく曖昧なままなので、そこら辺りを探るのも腰が引けてしまう。


そんなわけで土曜日は作業をして、日曜日は、小説を読んだり、パスタを茹でたりワイシャツにアイロンをかけたりして過ごした。


今読んでいるのは Louis Sachar の以前読んだ本の続きで「 WAYSIDE SCHOOL is Falling Down 」。面白いのでまた一部を取り出して、訳してみたいと思う。


ジュール先生宛ての小包


 校庭の先生であるルイスはしかめっ面をしていた。

 校庭はひどいものだった。鉛筆や紙切れがあちこちに散らばっていた。どこから、このゴミがここまでやってくるんだ?彼は不思議に思った。いずれにしろ、俺は拾わないからな!

 ゴミを拾い上げるのは彼の仕事ではなかった。彼の仕事は昼と休憩時間に子供たちにボールを手渡してやることと、子供たちが互いに殺し合わないようにすることだけのはずだった。

 彼はため息をつくとゴミを拾い始めた。彼はウェイサイド・スクールの子供たちが大好きだった。彼は、汚れた校庭で子供たちを遊ばせたくなかった。

 彼が鉛筆と紙を拾い上げていると、大きなトラックが駐車場に入ってきた。トラックは警笛を2回鳴らし、それからさらに2回鳴らした。

 ルイスはトラックへ走っていき「静かにしろ!」と囁いた。「子供たちがここで勉強しているんだぞ!」彼は学校を指さした。

 背の低い、大きなもじゃもじゃの髪の男がトラックから降りてきた。「女性のジュールって先生に小包を預かってきたんだ。」と彼は言った。

「俺が預かっておくよ。」

「あんたが、女性のジュール先生なのかい?」

「そうじゃない。」

「俺は、女性のジュール先生にこれを渡さないといけないんだ。」トラックから降りてきた男は言った。

 そこでルイスは少し考えた。彼はこの男に子供たちの邪魔をさせたくなかった。ルイスは子供たちが勉強中に邪魔をされることをどれだけ嫌っているのかを知っていた。

「俺が、女性のジュール先生だ。」彼は言った。

「でもさっき、俺は女性のジュール先生じゃないって言ったよな?」

「気が変わったんだ。」

 男はトラックの後ろから小包を取り出すと、ルイスに手渡した。「はいよ。女性のジュール先生。」

「うう!」ルイスはうめいた。それはとても重い小包だった。「こわれもの」という標示があらゆる面に貼り付けてあった。彼は気をつけて運ばなければならなかったし、落としてもいけなかった。

 その小包はとても大きく、ルイスは自分がどこに向かっているのか見ることができなかった。幸運にも、彼はジュール先生の教室に行く道を知っていた。まっすぐ行けばいいのだった。

 ウェイサイド・スクールは30階建てで、1階ごとに1教室しかなかった。ジュール先生の教室は最上階だった。それはルイスのお気に入りのクラスだった。

 彼は学校へ入るドアを押して中に入り、階段を上り始めた。この学校にはエレベーターがなかった。

 地下に行く階段もあった。しかし、まだ誰もそこに行ったことがなかった。そこでは死んだネズミたちが住んでいるのだ。

 小包の箱がルイスの顔に押しつけられて、鼻がぺしゃんこになった、ちょうど15階にたどり着いたとき、マッシュ先生がカフェテリアで料理をしている匂いがした。彼女はマッシュルーム料理を作っているようだった。帰る途中で、マッシュ先生の部屋(マッシュ・ルーム!)に立ち寄って、マッシュルームをいくつかもらっていこう、と彼は考えた。彼はマッシュ先生のマッシュルーム料理を取り逃したくなかった。彼女の得意料理なのだ。

 彼は息を切らし、うめきながら階段を登り続けた。彼の腕と足はとても痛んだけれど、休もうとはしなかった。この小包は重要なものに違いない、と彼は思った。これをすぐにジュール先生に届けなければならない。

 18階から20階は簡単に登ることができた。19階はないからだ。

 ザーヴァス先生が19階で教えている。でも、ザーヴァス先生もいないのだ。

 ついに、ルイスは30階の最後の段にたどり着いた。彼は、ジュール先生の部屋のドアを頭でノックした。

 ノックを聞いたとき、ジュール先生は「重力」について子供たちに教えている最中だった。「どうぞ。」と彼女は言った。

「ドアが開けられないんだ。」ルイスは喘ぎ声を出した。「両手がふさがっている。あなた宛の小包を持っているんだ。」

 ジュール先生は教室を見渡した。「誰かルイスのためにドアを開けてあげたい人?」彼女は聞いた。

 子供たちは全員手を挙げた。彼らは授業中に邪魔をされるのが大好きなのだ。

「まあ、誰を選んだらいいのかしら?」ジュール先生は聞いた。それから「公正にしないといけないわ。もちろん!これから綴り方競争をします。優勝者がドアを開けてもいいことにします。」

 ルイスは再び、ドアを頭でノックした。「重いんだ。それにとても疲れた。」彼は言った。

「ちょっと待ってて。」ジュール先生は授業に戻った。「アリソン、あなたが最初よ。重いって書ける?」

「重い。H-E-A-V-Yです。」アリソンは答えた。

「とても素晴らしいわ。ジェイソン、あなたは次よ。疲れたって書ける?」

「疲れた。S-L-E-E-P-Y です。」

 ルイスは汗をかいた指から、小包が滑り落ちるのを感じた。彼はよりしっかり握れるように体重を移した。小包の箱の角が、ルイスの腕に食い込んだ。彼は手がしびれていくのを感じた。

 実際には、彼はしびれるという感覚すら失っていた。

「ジェニー、小包は?」

「小包。B-O-X です。」

「素晴らしいわ。」ジュール先生は言った。

 ルイスは気を失いそうだった。

 ついにジョンがドアを開けた。「ルイス!僕が綴り方競争で優勝したんだよ!。」彼は言った。

「よくやったよ。ジョン。」ルイスはつぶやいた。

「握手してくれないの?」ジョンが聞いた。

 ルイスは箱を片腕に移すと素早くジョンと握手をして、それから箱を握り直して、ふらつきながら教室に入った。

「どこに置いたらいいですか。ジュール先生?」

「知らないわ。何の小包なの?」ジュール先生は言った。

「知りません。」ルイスは言った。「あなたが箱を開けられるように、どこかに置かなくては。」

「でも、中身がわかるまでは、あなたにどこに置くべきかなんて言えないわ。間違った場所に置いてしまうかもしれないでしょ。」とジュール先生は言った。

 それでルイスはジュール先生が彼の隣でイスの上に立って上のフタを破るまで、小包を持っていた。彼の足はブルブルと震えていた。

「コンピューターよ。」ジュール先生は叫んだ。

 子供たちは皆、ブーイングをした。

「どうして?みんなコンピューターが好きだと思っていた。」ルイスは言った。

「そんなの欲しくないよ、ルイス。」エリック・ベーコンが言った。

「返しちゃってよ。」テランスが言った。

「そんなクズ、ここから出してよ。」モーレシアが言った。

「そんなことしちゃダメよ。」ジュール先生が言った。「コンピューターは学ぶことを助けてくれるわ。それも紙や鉛筆よりもずっと早くね。」

「でも、早く学べるようになったら、もっとやることが増えるでしょ。」トッドが言った。

「ルイス、向こうのカウンターの上にコンピューターをセットしていいわ。」ジュール先生が言った。

 ルイスはコンピューターをシャーリーの机の隣のカウンターにセットした。それから、床に崩れ落ちた。

「さあ、みんなもっと近くによって、ご覧なさい。」ジュール先生は言った。

 教室の子供たちが全員新しいコンピューターの周りに集まった。コンピューターはフルカラーの画面と2つのディスク・ドライブを搭載していた。

 ジュール先生は、そのコンピューターを窓の外へ押し出した。

 全員が、コンピューターが落ちていき、歩道にぶつかって粉々に砕け散るのを見た。

「見たでしょ。」ジュール先生が言った。「あれが重力よ。」

「うん。わかった。」ジョーが言った。

「ありがとう。ルイス。」ジュール先生は言った。「私は午前中ずっと重力について教えようとしていたの。私達は、鉛筆や紙を使っていたんだけど、でも、コンピューターの方がずっと早いわ。」