足の小指の爪が変形している。砕けているといった状態だ。いつの頃からなのか思い出すこともできない。

登山をしていた頃からなのだろうか。


コマーシャルを見ていたら、爪の変形は水虫が原因で、飲み薬で治すらしいとわかった。


そこで、以前、外科の医者に見せたところ「君、来週もこの病院に来られる?水虫の薬ってアレルギー反応を起こして肝臓を痛めることがあるから、最初は短い期間の間に何度か血液検査をする必要があるんだよね。」と言われた。


その頃はとても忙しい時期だったので、そのときは諦めた。


次に別の病院の内科の医者にも診てもらった。

「これ、水虫なのかな?小指の爪だけ水虫ってことがあるのかな?指の間とか何もないし。もし、中指の爪とかが変形していたら水虫かも知れないけど、小指だけっていうのが気になるね。皮膚科の専門医に顕微鏡で見てもらって。薬だけならうちの病院でも出せるから、とりあえずこれが水虫なのかどうか、はっきりさせてきて。」


そこで、仕事を1時間ほど休んで皮膚科の病院に行った。医者は女性だった。

見た瞬間、「あなた水虫を疑っているんなら、これは水虫じゃないわ。一応、顕微鏡で見るけど。でも、見るまでもなくこれは違うわ。これは、あえていえばタコみたいなものなの。どうしても治すなら、でも、これは水虫より大変なことになるし、治す必要ないんじゃないかしら。」と言われた。


どうも水虫ではなかったらしいので、治療はしないことにして仕事に戻る。

職場には検査のために病院に行くと言っておいた。

「どうだった?健康すぎて来るなって怒られただろ?もっと仕事をしろって。」と同僚が言うので、「もう少しで死ぬところだったらしい。仕事のし過ぎが原因だって入院を勧められたけど、隣の席の人に僕の分の仕事もしてもらいますって言ったら、しぶしぶ許してくれたよ。危なかった。」と答えた。


その同僚も以前、膵臓の検査でひっかかって入院すると言っていたことがあった。

ものすごく忙しい時期だったので「俺、わざわざ入院先の病院まで君の仕事運ぶのめんどくさいから嫌だなあ。」と言ったら「運んでくるな!」と文句を言っていた。

「入院したら休まなくちゃいけない。仕事なんかしていたら医者に怒られる。」

「でも手と眼と頭は健康なんだから、仕事できるじゃん。めんどくさいなあ。この書類も運ぶのか。」机や足下にうずたかく積み上げられた書類に眼をやる。

「運ばなくていいから。絶対、君には入院先を教えない。」

「ええ?入院先まで俺が調べなくちゃいけないの?めんどくさいなあ。」


忙しい時期には、そんな会話でストレスを発散していたのだ。

不健康な話だ。


「渋松対談」の偉い先生のお薦めで、最近僕も自転車で職場に通うようになった。

6時50分には家を出て、あまり頑張って朝から疲れないようにゆっくりと自転車を走らせる。

今乗っている自転車は、以前乗っていた街乗りマウンテンと違って、車体も軽いし、タイヤも細い。速く走れるギアだってある。

速く走れるギアはほとんど使わないが、それでも、いざとなれば使えるギアがあるというだけで心に余裕が持てる。


汗だくになって職場に着くと、まずシャワールームに行く。

今までそんな存在も知らなかったが、各階の平面図を見ていて発見したのだ。

シャワールームには狭いマンションにあるような、ユニットシャワーが2つ設置されている。


蛇口は混合栓で、赤い止水栓をひねると勢いよく水が出てくる。

もちろん、青い止水栓をひねっても水が出てくる。

止水栓はその2つだけで、お湯は出ない。これも経費節減のためだ。


それでも、汗をかいた体に水を浴びると気持ちがいい。

その後、服を着替えて自分の職場に行く。


「今日も自転車?早いね。」

職場に行くと同僚が既に来て仕事を始めている。

まだ8時前だ。

「いつもこんな時間から仕事をしているのか…。」


確かに、自転車に乗り始めてから見えてきたものがいろいろとある。