スナックで働いている女の子が、友達を連れて部屋にやってきた。
看護婦だというその友達は、下呂に行く道を教えて欲しいという。
「中津川ICで降りれば、あとは国道だろ?」
「中津川までどう行ったらいいのかわからない。」
インターネットで調べて、メモを作ってやる。
「料金がいくらかかるかも教えて。それから時間も。」
それも書く。渡してやると「ありがとう」と言って財布の中にしまった。
食事をしてきたというので、僕は自分の分だけ料理を作って食べることにする。
2人はインターネットでヴィトンのサイトを見ている。
「ねえ。あんたって女の子に2万円以上のプレゼントってしたことないでしょ。」
ネットを見ていたスナックの子が声をかけてくる。
「ないな。」
「だからダメなんだよ。うちの店のお客さんなんか、私に20万円のバッグをプレゼントしてくれるんだよ。」
「見返りに何かしてやるの?」
「ううん。ありがとうって言うだけ。」
サイトで見た型番を携帯のメールに打ち込んでいる。
それだけで、バッグが手に入るのだという。
「まるで、魔法使いだな。」
「私もバッグ欲しい。」
看護婦の子も言う。彼女は18万円のバッグが欲しいのだという。
「ダメダメ。この人ケチだから。100回くらいエッチしてあげないと買ってくれないよ。」
「じゃあいらない。ケチ。」
「ふざけるな。」
僕はサケとイクラの親子丼を作って食べる。
「やだやだ。男の料理ってわびしいよね。」
「ねえ。」
「うるせえ。」
「だいたい、その年で独身っていうのがおかしいんだよ。」
「きっと変な性癖とかあるんだよ。」
「ふざけるな。」
それからも彼女たちは、ずっとネットを見ていた。
僕は付き合うのもバカバカしいので、ずっと本を読んでいた。
彼女たちはネットを見飽きると、テレビをボーっと見て、それから帰って行った。
別に、それだけで何もなかったんだけど。
彼女たちの金銭感覚のおかげで、僕の中のリミッターが外れてしまった。
日曜日にスタッドレスタイヤに履き替えようとガソリンスタンドに行ったら、ついつい店員の言うとおりに、2万7千円のバッテリー、8千円分のハイオク、6千円の下部防錆塗装、1本1万3千円のスタッドレスタイヤを2本買い、さらに、帰りに本屋で勉強のための本を7千円分と、シーナ&ロケッツ、井上陽水、中島みゆき、RCのアルバムを全部で1万5千円分ほども買い、その他にDVDも4枚買ってしまった。
そして、夜は6万円の腕時計と、3万5千円のカメラ、1GBのSDカードをネットで購入。
自己嫌悪に陥る。
でも、俺にはやはりシーナの歌声が必要だと思ったんだし、
腕時計もGショックのベルトが切れたんだし、
カメラも紛失したから仕方がないんだし、
バッテリーだってスタッドレスだってそれなりの理由はあるし、
すべてはALRIGHT(YA BABY)だし。
あの看護婦の子にバッグを買ってあげたと思えば、まだ傷は浅い。
でも、ああ。もう。















