「お前の髪は綺麗なストレートだな」
「引っぱたくわよ」
「いきなり何でそうなるんだ!変な事は何も言ってないぞ!」
「うるさいわね。どうせ【内面と外見が比例しない事があるけれど、これほど分かりやすい例は他にない。その真っ直ぐで綺麗なカラスの羽根のような黒髪と、ぐちゃぐちゃに捻くれた都会のカラスの巣のような性格を動画サイトで世界中に配信して見てもらうべきだ】と言おうと思ったんでしょう?あなたの事は何でもお見通しよ。言いたい事があるならストレートに言えば良いじゃないの、失礼な」
「そんな事言うわけないだろ!僕はただ……」
「うるさいわね。あなたのせいで世界中の辞書の【ギャップ】の欄に私の挿絵が載せられてしまったらどう責任を取るつもりなのかしら」
「だからそんな事誰も言ってないだろ!僕はただ綺麗な髪を褒めてただけだ!」
「あらそう。あなたは素直に褒めているのに私は捻くれていて褒められた気にならなくて悪かったわね。これはもういよいよ辞書に載せられてしまうのかもしれないわ」
「いや、辞書の事は分からないけど、僕が素直に褒めてるのを理解してくれたなら、褒められた気になるのは難しくないんじゃないのか?」
「……しつこいわね。そんな事をして私がこの髪のようにストレートな感情を出してしまったらどう責任を取ってくれるのかしら、恥ずかしいわね」
「僕が相手ならそれでも良いじゃないか。感情を出すのを我慢したりしないで、たまには喜んだり嬉しがったりしても良いと思うぞ」
「ちょっと、調子に乗ってストレートを私の心の奥に投げ込もうとするのは辞めてちょうだい、完全にデッドボールじゃないの。これ以上言うと危険球で退場になるわよ。節電とか色々言われているのによくアマチュアのあなたが野球なんてする気になるわね。何を考えているのかしら」
「おい!比喩の方が現実になっちゃってるぞ!僕がいつ野球なんてしたんだ!」
「うるさいわね。冗談に決まってるじゃないの。さっきのあなたの褒め言葉も私が戸惑ったのも全部冗談で幻よ。それで今日は何の話をしたいのかしら?」
「うっ、強引に話を変えようとしてる……って、あれ?もしかして僕の言葉で戸惑ったのか?」
「……退場だと言っているのにしつこいわね。一体何の事かしら。あなたの言葉で私が戸惑うなんて、トマホーク級に血迷った事を言わないでちょうだい。どれだけドキドキしても戸惑ってつい失言したりしないわよ、失礼な」
「う、うん……分かった……少なくともドキドキしてくれたみたいだな……」
「……いつも私を飽き飽きさせるあなたが活き活きウキウキした様子で何をごにょごにょ呟いているのかしら、気持ち悪いわね。とにかく今日は何の話をしたいのかしら?」
「いや、別に、髪が綺麗だな、って話だぞ。自分でもその髪は気に入ってるんじゃないのか?」
「さぁ、どうかしらね。あまり好きではないかもしれないわ。あなたに時々触れられてしまうもの」
「どういう事だ!例え髪でも僕には触れたくないって言いたいのか?」
「違うわよ。あなたにドキドキ褒められてしまうもの、って言ったの。あなたに褒められると変な気持ちになるのよ、って、何を言わせるのかしら、みっともない。こんな居心地が悪い気持ちになるくらいなら褒められる特徴なんて全て無くしてしまいたいわ」
「……要するにテレるって事か……でも残念だけど全部は無くせないと思うぞ。だって全部好きだしな」
「寄り道せずにストレートにクリックしてちょうだい」
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