「先日睡眠と食事とどっちが幸せか 、って話をしたけど、よく【寝溜め】とか【食い溜め」とか、どっちも溜めておけるような表現をされるな」
「そうね。それがどうかしたのかしら。お金や才能を貯めたり溜めたりする事が不可能な気がして諦めてしまって、せめて睡眠や食事だけでも、と思っているのね、可哀想に。私の同情を溜めて何が嬉しいのか分からないけれど、そんな低い志を見せられた私の不幸や無念も同時に溜まっていく事を考慮して欲しいわね」
「誰もそんな事言ってないだろ!睡眠と食事について訊いただけじゃないか!」
「うるさいわね。そんなものは溜めたって限界があるじゃないの。時間が経つにつれてどんどん溜めたものが失われてしまうわ。話すだけ無駄じゃないかしら」
「まぁそうかもしれないけど……でも少しでも長く溜めておけるのはどっちだろうな」
「さぁ、どうかしらね。ほとんど眠らない私に訊いてもあまり意味がないような気がするわ。とにかく人は眠ったり食べたりしなければ生きていけない存在だと定義出来る以上、今こうして起きて何も食べずに会話している時点で溜めていた睡眠と食事を使っているのよ。本来は睡眠と食事だけを交互に繰り返すのが最も無理のないライフスタイルなのかもしれないわね」
「なるほど。こうしてる間も溜めた睡眠と食事を消費して、身体にとっては無理をしてるわけか」
「ええ、そうね。だからどっちが長く溜められるか、ではなくてどっちも全く溜める必要が無いわ。授業中に早弁をしたり眠ったりしても良いのよ。生きていくためには勉強よりも睡眠や食事の方が重要度が高いのは明らかだもの。次の授業中にやってみせてちょうだい」
「いや、言いたい事は分かるけど流石に怒られると思うぞ」
「あら、注意されたら今話した理由を伝えれば良いのよ。身体にとって必要な行為が認められなかったとしたら体罰みたいなものじゃないの。あなたの一言で早弁と居眠りが校則で認められれば学校のヒーローになれるわよ。次の授業中に必ず試してみてちょうだい」
「まぁ別にヒーローになりたいとは思わないけど……ホントに怒られないと思うか?」
「ええ、そうね。きっと怒られないと思うわ。その場で停学や退学になっても責任は取れないけれど」
「こら!怒られるを通り越して見捨てられちゃってるじゃないか!とてもじゃないけど試せないぞ!」
「あらそう。あなたの中には勇気もチャレンジ精神も全く溜まっていないのね。そのわりに睡眠や食事だけは一人前に溜め込んだりして、意地汚いわね」
「全く酷い言われようだな……お前の言う通りにしてもし僕が退学になったらどうするんだ」
「あら、どうもこうもしないわよ。いつもと何も変わらないわ。私の日常から二人を切り離すだけよ」
「おい!それのどこがいつもと変わらないんだ!しかもハイジまで巻き添えになってるし」
「違うわよ。私の日常は二人きりで話すだけよ、って言ったの。あなたがいなくなれば高校に通う意味なんて無くなっ……って、何を言わせるのかしら、みっともない。一体どれだけみっともない想いを溜めさせれば気が済むのかしら」
「自分で口を滑らせてるだけだと思うけど……でも僕の幸せもどんどん溜まってるぞ」
「みんなのクリックもちゃんと溜まるわよ」
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