「3月は卒業の季節だな」
「あら、そうかしら。日本は教育制度の影響でそのような印象を受けるけれど、海外はそうでもないんじゃないかしら」
「いや、まぁそう言われたらそうなのかもしれないけど、お前にも学校以外に何か卒業したい事ってあるか?」
「そうね、今は何としても日本の卒業シーズンの話題から卒業したいわ」
「こら!ちょっとは話に付き合ってくれたって良いだろ!」
「うるさいわね。冗談じゃないの。いちいち大きな声でツッコまないでちょうだい。あなたが今のような状態では、すぐに興奮して怒鳴りつける人と接するのを卒業したい、としか言えないわね」
「うっ、それは困る……出来たらずっと一緒にいて欲しいぞ」
「あら、私が卒業した途端に廃校になってしまうような不人気校だからといって、その場しのぎのウソを言ったりしない方が良いわよ。それともあなたの口は開くたびに別人の口と繋がる四次元マウスか何かなのかしら」
「どんな口なんだよそれは!腹話術やアテレコじゃあるまいし、僕の口からは僕の言葉しか出ないぞ。それにウソじゃなく本気で僕はずっとお前と一緒にいたいと思ってるんだ!」
「……あらそう。そのわりには私が夜中まで一緒にいようとすると拒絶するのはどういう理由なのかしら」
「いや、ストーカー行為はまた別の問題だと思うんだけど……お前が屋根にいて僕が寝てる状態を【一緒にいる】って定義されてもな……」
「うるさいわね。口先だけのあなたと違って私は行動でも示す女なのよ。それはそうと今日は一体何の話がしたいのかしら?あなたの話したい話に早く入学しなければ一体卒業までにどれだけ時間が掛かるか見当もつかないわ。昼夜を問わず会話をしてもずっと留年し続けてしまうかもしれないわね」
「わざわざ説明する必要も無いくらい話したいテーマは伝わってると思うけどな……散々卒業ってお前も口にしてるし。まぁとにかくさっきも一度訊いたけど、学校以外で卒業したい事につい訊こうと思ったんだ。何か卒業したい事ってあるか?」
「さぁ、どうかしらね。早くこの卒業の話題から卒業したいわね」
「だからそういうのじゃなくて……もっと何かを直したいとか改善したいとか、そういう意味だぞ」
「引っぱたくわよ」
「何でだよ!意味が分からないぞ!」
「うるさいわね。【せっかく上手く促してやったんだからとっとと短所しかない事を自覚しろこのオールショートの寸足らず女】と言いたいんでしょう?失礼な。最早あなたには私の短所しか見えていないのね。付き合って時間が経つとそういうものだと聞いた事があるわ。最初は魅力的なところしか見ようとしなかったのに、次第に短所ばかりが目に付くようになってしまって、心が離れる頃には長所だと思っていた特徴さえ短所として鼻に付いてしまうのよ。そうして手付かずのまま口も付けずに二人は永遠にくっ付かない関係になるのね。二度と私に近付かないでちょうだい」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!僕にはお前の短所が分からないから自分ではどう思ってるのか訊いただけじゃないか!」
「うるさいわね。今更何を言っても無駄よ。私は何としても卒業してあなた以外の場所からやり直すわ」
「うううっ、そ、そんな……別れるって言ってるようなものじゃないか」
「……違うわよ。あなたには無い短所からやり直すわ、って言ったの。あなたには目立った短所は無いけれど、私は短所だらけだもの……って、何を言わせるのかしら、みっともない」
「いや、さっきも言ったように、お前には短所なんて無いと僕は思うんだけど……一体何を直したいんだ?」
「そうね。まずはあなたみたいな短所も長所も個性も無い人の彼女をしているところかしら」
「全く素直じゃない!」
「クリックすれば今回の会話から卒業出来るわよ」
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