「冬は寒くて何をするにも億劫になったりするな」
「あらそう。寒さに対してどころか成長する事まで億劫に感じているんじゃないかと思わせるあなたにはあまり言われたくないと思う人もいるでしょうけれど、そう思う人も多いでしょうね」
「どんな存在なんだそれは……ちゃんと日々成長してるはずだぞ。それはそうと、冬は暖かい食べ物が美味しいな」
「さぁ、どうかしらね。美味しい食べ物はどの季節に食べても美味しく感じるんじゃないかしら。季節によって美味しく感じなくなる食べ物なんて本当の美味しさとは程遠いと思うわ。例えばフライドポテトはいつ食べても美味しいもの」
「な、なるほど……でも別に夏に不味くなるって意味で言ったんじゃないぞ。ラーメンとか鍋だって夏に食べても美味しいけど、寒い中で食べると更に美味しさが増すんじゃないか?」
「ええ、そうね。美味しさを増す前にそうやってまず詳しい説明を増しておいてくれないと何が言いたいのかよく分からないわ。あなたの言葉はお湯で麺を茹でてそのまま何も味付けをしないで食べさせられているようなものよ。まさに素の麺、素麺ね」
「うっ、そう言われると返す言葉もないな……と、とにかく、冬に寒い中で食べるラーメンは……」
「ちなみにソースでも何でも良いから麺に掛けてくれないと味がほとんどしないから食べられないぞ、を略して【そうめん】というのよ」
「えっ?そうなのか?ソースの方が先に日本にあったって事か」
「うるさいわね。冗談に決まってるじゃないの。ちょっと想像すれば分かるはずよ、面倒臭いわね。こういう状況を略して【想面(そうめん)】というのよ」
「冗談に決まってる、って言われても、お前が言うとホントっぽいんだよな……今回の想面は冗談だろうけど」
「あら、どうしてそんな事が言い切れるのかしら。私の言葉が冗談だなんて失礼な。恋人を嘘つきの権化みたいに認識しているあなたみたいな人は辞書を見て驚けば良いのよ」
「えっ?今回の想面はホントに存在する言葉なのか?そ、それは悪かった……」
「あら、辞書を見てからでも謝罪は遅くないわよ。……きっと驚くでしょうね。どこを探してもそんな言葉は載っていないもの……」
「おい、心の声が少し聞こえたぞ。まぁ良いか。とにかく僕はこの冬の寒い時期に食べるならどんなラーメンが良いかな、ってのを訊きたかったんだけどな」
「さぁ、どうかしらね。先程も言ったように、自分が美味しいと感じる好きな味のラーメンを食べていれば良いんじゃないかしら。冬に味噌味なら何でも美味しいとか、トンコツなら何でも美味しいとか、人の味覚はそこまで鈍感ではないと思うわ」
「なるほど。まぁ冷静になればそうかもしれないな」
「それともあなたは何か冬にお勧めのラーメンでもあるのかしら?」
「お前の意見を聞くまでは味噌が良いんじゃないかと思ったんだけどな」
「あらそう。あなたらしい答えね。冬に限らず一年中食べるべきじゃないかしら。温まるものね」
「温まるから食べるのか?何かさっきまで言ってた意見と正反対になったような気がするんだけど……」
「違うわよ。頭になるものね、って言ったの。例えば肝臓が悪い人はレバーを食べたり、関節が悪い人は軟骨を食べたり、弱っているところを食べるのが健康に良いと言われているのよ。だからあなたは味噌を食べ続けるのが良いと思うわ」
「食べる味噌と脳味噌とは成分が全く違うだろうが!」
「ここをクリック出来ないようなら指を食べるべきかもしれないわ」
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