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さよならミニスカート1巻

牧野あおい・りぼんマスコットコミックス

(りぼん掲載)

 

 

あらすじ

その高校でたった一人、スラックスをはいて登校する女子がいた。

名前は神山仁那。しかし正体は元アイドルの「雨宮花恋」。

彼女は半年前、握手会で何者かにナイフで切り付けられ、それから「女」であることを捨てたのだ。

いまだ犯人は捕まっていない。

クラスの男子は女子に対するモラルが低いし、美玖をはじめとする女子たちはいちいち絡むのをよしとしない。それが当たり前の空気だった。

けれど柔道部の光だけは、何かが違う。仁那が感じた「それ」はなんなのか…?

「セカイの果て」で読者の話題をさらった作者、今度は編集長の「何があっても連載をやめさせない」というお墨付きをもらい、ジャンプ+でも並行連載!

「これは少女漫画じゃない」「考えさせられる」いろいろな方面から話題になった問題作。

 

★★★

 

この作品が連載された時、けっこうSNSで話題になっちゃって、しかもジャンプ+(無料)で読めたためりぼん読者以外にも読まれました(現在はもう読めません)。

実際のアイドルに起こった事件をモトにした感じのお話ですね。

主人公は事件で男性が怖くなり、女子の格好をやめた元アイドル。男性を拒絶していますが、たった一人優しい光に惹かれていきます。

しかし犯人は捕まらず、しかも犯行時警備員を「投げて」逃げおおせたという…

光と犯人に共通点が多く、サスペンス要素のある漫画です。そして、女性が抱える問題に言及しようとしている…?

 

 

…はい、女性はいつも大変なんです。

★高校生になったらミニスカートは履きたい、でも男性に変な目で見られたくない。

★どんな格好していたって痴漢には遭います。でも、「油断している方が悪い」とか「おまえにも落ち度があったんだろう」と言われます。

 

そして、量産されるアイドルもいろいろ問題を抱えています。

★恋愛禁止というルールを掲げたりして、それを破ってスクープされると丸坊主とか謎の罰を受けます。

★じゃあなんでそんなルールがあるのかっつーと、「アイドルには清純であってほしい」というファンの謎の期待があるからですね。

★売れりゃ御の字ですが、売れなきゃ悲惨。売れているアイドルの陰で、解散していくあまたのアイドルを目にしてきました。

★売れるために何でもするにはするけど、「媚びを売っている」とみられたりする

 

それはもっともだし、真実だし、

見逃してはいけない問題なのです。

だけど、この「さよならミニスカート」という漫画‥「またりぼんがやらかしたな」と思う以外の感想はありません。

 

まず作者の牧野さんですが「セカイの果て」という作品を出してりぼん読者に衝撃を与えました(その前の作品についてのアレは問題にしません)。

殺人をした中学生二人の物語です。

若さゆえの過ち、大人への反抗。

「バレるかバレないか、捕まらないかどうか」毎回最後にそういうヒキを作って読者を煽ったんですよね。

ラスト、「それでよかったんだろうか‥?」と正直思いましたし、

全4巻という長丁場、いたずらに読者の気持ちを揺さぶっただけではないかと考えています。なにしろ登場人物がみんな陰鬱で、みんな大げさ。

漫画とリアルは違いますが、「リアルっぽく」描いているのがタチ悪かったです。

 

で、今回の「さよならミニスカート」。

今回は女子が生まれながらに背負ってしまう「苦悩」をテーマにしているので、なんか社会派漫画のように見られているんですが私からするとりぼんの中で脈々と続いてきた「続きが気になるように衝撃的に作って読者をイジる漫画」にしか見えないんですよ。

ブルーフレンド(えばんふみ)から始まって、セカイの果て、なないろ革命(瑞原柚香)…テーマはいろいろ違うんですが主人公がいつもひどい目に遭う暗い漫画ばかりです。

 

─こういう漫画は、正直売れます。

単行本も気になるところで終わるため、続きを買わざるを得ない。

しかしこれは「搦め手」というやつで、正攻法の漫画だけ雑誌に載せても売れないというりぼんの弱みを見せてしまっているのです。

1998年にりぼんはちゃおに売り上げを抜かれました。

そこからなんですよ、こういう漫画が始まったのは。

なかよしにも「出口ゼロ」、現在は「地獄のチャイハロ」という陰鬱な漫画が存在します。出口ゼロはそうでもないんですが、チャイハロは目も当てられない内容です。

まあつまり、「雑誌が売れなくなると出てくるタイプの漫画」なんですよ。

ちゃおには存在しません(というとキミソラとかセカキミを持ち出してくるかもしれませんがあれちゃんとハッピーエンドでしょ?)。

別冊フレンドで大人気だったいじめ漫画「ライフ」も、フレンドが負け組だったから存在したんです。

 

で、「この連載は何があってもやめさせません」とりぼんの誌上で編集長が異例の宣言をしましたが…

この編集長相田さん、以前は男女問題にガバガバだった「バクマン」の初代担当なんですよね。

宣言したこと、ジャンプ+に持ち込んだこと、いろいろやっていることがあざとくて「なんだかな」という気持ちになります。

 

本編、確かにアイドルのエグさとか、男子の視線とか、痴漢に対する周りの考え方などリアルに描いており、それに対し主人公たちが真面目に答えを出していくのですが、

起承転結の「結」に行くまでの陰鬱さはいつも通りです。男子は妙に性欲旺盛だし、女子は女子でひがみや妬みを平気で口にする。

そしてみんな日和見で、クラスのリーダー的存在の美玖(美少女)があれこれ言うと簡単に従ってしまう。

どいつもこいつも動きが大げさです。

漫画ですからしょうがないんですけど、前作よりも絵がまたリアル寄りになっているためさらに「リアルっぽい」んですよね。

 

女子のスラックスを認めてる学校、結構あります。この漫画みたいに「校内で履いてるのは仁那だけ」なんてことはないです。

あちこちでスラックス女子、見かけますよ。うまくアレンジして着こなしてますよね。

あとはリーダー的存在が何を言おうと、「どうでもいい」タイプのグループは必ずいますよね。どうでもいいから何も言わないんですが、その辺からみると「リーダー的存在」はちっぽけなものです。

そういうものを漫画内に出すとめんどくさいことになるから切り捨てているのでしょうが、めんどくさくても描写していこうとする姿勢の漫画家はいます。別に、青年漫画でもなく。

「リアルっぽい」嘘(悪意あり)を漫画で描くのは、ホラーだけにしてほしいんだよな。特にりなちゃは。

 

この漫画はりぼん読者以外に読まれ、「女性の問題」を読者に突き付けた‥なんて言われて結構絶賛されてますが、

今までの経緯といい、売り出し方といい、その「大きな問題」を茶化しはしないかと私は懸念しています。

 

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