永遠の途中
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振り出し


北高生が一斉に降りる。

変わらない、いつもの光景。


ただ、以前までと違うのは

気まずい思いが、またひとつ増えた、ということ。



電車は、再び走り出した。

もうすぐ、ふたつめの気まずさが待っている。



「クリスマスは、寂しく一緒にいようね。ナオちゃんとか誘ってさ。

もう、みんなでぱぁ~っと遊ぼう」


マイちゃんのお誘いに二つ返事で答えながら、減速し始めた窓の外を眺めた。




―――去年の今頃は。


名前も知らなかった彼と、クリスマスに一緒に遊べるかもしれない、なんて

少しでも期待してた喜んでいた自分がいた。


あれからもう1年だ。


何も変わってないじゃないの、あたし。


岡田くんと話せなくなってから、どれくらい経つのだろう。





ドアが開き、隣の車両に乗り込む彼の姿を見つけた。


その伏し目がちな表情に、また胸がしめつけられる。

どうしたって、その目はあたしを捉えてはくれない。


あたしを、自分の視界に入れることを拒んでいるかのように

近づけば近づくほど、彼の心は閉ざされてしまうから。



何度も何度も分かっていたはずなのに。


また、振り出しに戻ってしまいそうだ。





見慣れない雪景色が、冬の景色を 少しだけ明るくしていた。


違い


朝、窓の外を見ると 夜中に降ったのだろう、初雪がうっすらと積もっていた。


どうりで寒かったわけだ。


マフラーをぐるぐるに巻いて、あたしは自転車に飛び乗った。


風は、向かい風となって、あたしの髪や頬に容赦なく吹き付ける。


それほど寒さに弱くないあたしでも、さすがに堪える冷たさだ。





ギリギリのタイミングで駅に着き、慌てて改札を抜ける。


電車は、ちょうどホームに停車したところだった。


息を整えながら乗り込み、手すりにつかまりながら、外の景色に目をやった。


カチカチに冷たかった手は、暖房の暖かさで、ジワリジワリと解けてゆく。




あの日以来、谷くんとは連絡を取ることも無く、友達になることもなく終わっていった。


彼はきっとそれを望んでいたし


あたしもきっと、そこまでの執着心がなかったのだろう。


今までのあたしの恋は、どちらかの気持ちが分かった時点で、おしまいだった。


今回も例外なくそうなっただけ。

ただそれだけの話だ。





電車を乗り換え、マイちゃんの居る車両へと乗り込んだ。


彼女はあたしの顔を見るなり、


「谷くんがいる。こっちをみて、逃げた」


手鏡を覗きながら、表情も変えずにそう言った。


「あぁ・・・同じ電車だったもんね・・・」



チラリ、と遠くにいる北高生の固まりに目を向ける。


確かに、谷くんがいる。


一緒にいる友達はチラチラとこっちの方を見てくるのに、

谷くんは頑ななまでにこっちを向かない。




あぁ。


同じだ。




あの人と、同じ。





だけど、まるで違う。






前髪も、


横顔も、


遠くを見つめる、あの瞳も。




その結末


―――わからないなぁ。




クリーム色のカーテンの隙間から、弱々しく朝の光が差し込んでくる。


この季節特有の、柔らかな日差しだ。


時刻はもう昼近いのだろう。




落ちかけていた毛布を手繰り寄せ、しっかりと身体に巻きつけた。

その温かさにほっとする。


昨日からずっと、頭のなかでリピートされていた言葉が、再びループし始める。




あたしは、谷くんのことを好きになるのだろうか。


そして、彼は・・・?




ぼんやりとした頭で、昨日の事を思い出す。



あのとき、浮かれていて、あたしは気がつかなかっただけかもしれないけど


彼は、本当は、嫌がっていたのかもしれない。


早く帰りたかったのかもしれない。


電話だって、迷惑かもしれないのに。


あぁ


きっともう、会ってくれないかもしれない。




考えれば考えるほど、ネガティブな思考になってしまう。


今に始まったことではないけれど。






その日の夜、マイちゃんから電話がかかってきた。


「谷くんは友達にするべきだよ。それで、谷くんの友達を一緒に紹介してもらおうよ」


開口一番にそう言われ、


頭では理解していたはずなのに、その意味を素直に飲み込めない自分がいた。


「谷くん好きな人いるらしくって。そんなん初めに言えよってかんじなんだけど。

昨日あの後電話したら、実優とはそういうつもりで会ったんじゃないって言うんだよ」


マイちゃんが不機嫌そうに言葉を続ける。


「あたしは、実優が少なからず谷くんに気持ちがあることは伝えたんだよ。

好きな人がいるなら、そこで会わなくたっていいはずじゃない」


「まぁ・・・会ってみないとわからないからね・・・」


「それにさー、何がショックって、大島くん!彼女いたんだって~。もー狙ってたのに」


なるほど。

それで更に機嫌が悪いのか。


「はー・・・谷くんはやっぱり無理なのかぁ」


「つくづく運がないよね、実優」


「マイちゃんもでしょ」



あたしたちは二人虚しく ため息をついた。





クリスマスまで、あと10日。



今夜から、ぐっと冷え込むようだ。


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