永遠の途中 -4ページ目

計画


北高の彼の名前は「谷くん」といった。

マイちゃんは早速彼の電話番号を手に入れたらしい。

しかも、彼女はすでに彼に電話をして、

紹介に至るまでの流れを作っておいてくれていた。


さすがマイちゃん。仕事が早い。


「でね、彼と、その友達と、実優とあたしの4人でとりあえず会うの。

そこで仲良くなって、その後はまぁ・・・お二人に任せるけど」


帰り道、駅で電車を待っている間に、マイちゃんの計画を聞いていた。


「なんかものすごいトントンと進んでいくけど・・・期待しちゃうよ、あたし」

「いいよ、これはけっこう期待できる。クリスマスファンタジーも夢じゃないよ。

4人で行こうね!今度会う4人で」


と、マイちゃんが張り切ってそう言い、あたしの方に向き直った。


「・・・え、マイちゃんいいの?」

「うん。谷くんの友達、大島くんって言うんだけど、彼がまたかっこよくてー。

どうせなら一緒に行きたいじゃん」

「あぁ・・・なるほど」




久しぶりに盛り上がる恋話。

まだ始まってはいないけれど、期待してしまう。

あたしたちのテンションは、自然と上がって行った。



もう半年以上、無視されていたのに

いつまでも忘れられなかった彼の事を

その時だけは忘れていた。



やっぱり、前の恋を忘れるには

新しい恋なんだろうか。




吐く息がまた、白く舞う季節がやってきた。




冬の始まり


秋の空は高く、澄んでいるのに比べて

冬の空は低く、重い色をしている。

太陽が顔を出していない日は、なんだか凍えてしまいそうだ。




あたしとマイちゃんは、地元の駅に着くと、

ほぼ毎日のように寄り道をして帰る。


ここは、あたし達の乗ってきたローカル線の終着駅ということもあり

沢山の人たちが降りてくる。

今日も、行き交う人たちをぼんやりと眺めながら

駅の中にあるドーナツ屋で、温かいココアを飲んでいた。



「あ、あの人同じ中学だ」

ふいにマイちゃんが、ガラス越しに歩いていく男の子を指差した。

「へぇー」

小柄で、真面目そうな男の子。

顔もなかなか可愛らしい。


「北高の人なんだね」

「みたいだね。今まで同じ電車だったのに全然気付かなかった」


よく電車で見かけるブルーの学ランは、北高の制服だ。

まぁ、そんなに評判の良い学校ではないけれど。



「けっこうあたしタイプだよ。ああいう感じの人」

「あー確かにね。けっこう大人しい子だったなぁー」

「いいねぇ。そういう人好き」

あたしは、歩いていく彼を目で追いながら呟いた。


「・・・仲良くなる?」

急に目をキラキラさせながらマイちゃんがあたしを見てきた。

「え、なれるの?」

つられてあたしもキラキラしてしまう。


「今日帰ったら中学校の友達に連絡先教えてもらうよ。

そして仲良くなって、恋が芽生えちゃったりしてね!」

「う、うん・・・恋・・・芽生えるかな」

「もうクリスマスだよ?そういう空気になるでしょー普通」

「・・・そう?」

「うん。なるようにするの」



・・・ホントになるのか?と思いつつも、

思いがけない展開にどこか期待している自分も居た。


このまま、新しい道へ進むことができれば。

ただ、足踏みしているだけだったあたしも、変われるかも知れない。




あたしはカップを両手で包み込むと

すっかり ぬるくなったココアをごくりと飲み込んだ。





からっぽ


肌寒さを通り越し、本格的に北風が冷たくなってきた。


そんな人恋しい時期にも、あたしたち(あたし・マイちゃん・ナオ・ミィ)は

彼氏が居ないという状況だ。

あたしはともかくとして、マイちゃんやミィは綺麗な顔立ちをしているし

ナオだって可愛くて親しみやすい。

それなのに何故。


あたし達は話し合い、

「ナオとミィは理想が高い。

マイちゃんはガードが固い。

実優はこだわり過ぎ。」

と言う結果に落ち着いた。


「だから何だ、っていう話だけどね」

「理由が分かった所で解決はしないよね・・・」

「もう、クリスマスまであと1ヶ月だよー信じらんない」

「誰かこの中で一人でも彼氏作って友達紹介してよー」


そんな話をしながらも、なんだか切なくなり

あたしたちはため息をついた。


街のあちこちでは イルミネーションやツリーなどの装飾が施され、

雑誌をめくれば、クリスマスの特集記事が溢れている。

この時期って、訳もなくワクワクするけど

きっと、好きな人が一緒だったら もっとずっと楽しいのだろう。



―それが、岡田くんだったら。

なんて思ってはみるけど、有り得なさ過ぎる。


今や彼は、あたしの存在すら無視しているのに。




あたしは弱い。

何も出来ない。

強くなりたいのに。


いっそ 何も、感じない人になりたい。

泣きそうになったり、怒りを感じたり、笑ったり

そういうこと全部、皆の前で見せない人になりたい。


何も考えたくないよ。

空っぽになりたい。


誰のことも想わずに、

たとえ彼が近くに居ても、何も感じずに平静で居られたらいいのに・・・。




そしたら、こんなに淋しくないはずなのに。