放課後
金曜日、あたしは どうにも落ち着かない一日を過ごすことになった。
明日は学校もお休み。
ひとつひとつの授業が終わるごとに、気分も晴れやかになるはずだった。
普段ならば。
だけど、今日はちょっと違う。
いつもの金曜日のようで、いつもの金曜日じゃない。
今日は、初めて谷くんと会うのだ。
地元の駅前にある、ハンバーガーショップで。
朝からソワソワしてはマイちゃんにからかわれ、
数時間後のことを想像してはドキドキしてしまう。
授業にも集中できるはずもなく、かといって、それを見透かされて
これ以上からかわれるのも嫌だったので、とにかく何でもない風を装っていた。
そして迎えた放課後。
いつもよりも少し早めに学校を出たあたしとマイちゃんは、
足早に駅へと向かっていた。
まだ、時間的にも余裕はあるはずだ。
でも、そこは女の子。
やっぱり会う前に髪型もセットしたいし、軽くメイクだってしておきたい。
早めの電車に乗っておかないと、もしかして同じ電車に乗られたら困る。
地元の駅に着くと、あたしたちはバス乗り場の隣にある小さな公園のベンチで、
お互いの身なりをチェックしあった。
「うん、オッケー。スカートもう少し短くてもいんじゃない?」
「そう?あ、マイちゃんそれ貸して~」
「うん、実優もうちょっとリップぬった方がいいよ」
まだ日が沈んでないとはいえ、12月の気温は決して温かいものではなかった。
それでも、その時のあたし達は、寒さも感じないくらいテンションがあがっていた。
遠くの空の色が、数分単位で濃くなっていく。
気がつくと、視界は赤に染められていて
ドキン、と鼓動が早くなっていくのを感じた。
午後4時半。――約束の時間だ。
クリスマスミサ
実優です。
今日、卒業式ぶりに高校へ遊びに行ってきました。
毎年この時期になると、あたしたちの高校ではクリスマスのミサを行うのです。
この日は学校も開放されて、一般の方たちも式典を見ることができるんですが
3年間通って、ただただ時間が過ぎるのを待っていた在学中よりも、
卒業して、数年たった今のほうが、その素晴らしさを実感することができました。
キャンドルサービスや聖歌、神父様のお話
昔は退屈でしかなかったものも、
今では受け入れて それを自分の中で糧にできる。
ロウソクの火が灯るだけなのに、綺麗すぎて泣けてしまう。
成長していないようで、ちゃんとオトナになっているんだなぁ と思えた日でした。
そして何年もたって初めて、
自分があの学校を選んだのは、間違いではなかったという事に気がつけました。
思うように上手く行かない高校生活。
辛いことも沢山あり、何度辞めようかと思ったかわからないくらい、あの学校が嫌いでした。
でも、それでも色んな人たちとの出会いがあって
その出会いだったり経験が、間違いなく今のあたしを作っているんだなぁ
と、しみじみと感じました。
あの頃の自分に感謝です。
学校に行ったついでに、写真も何枚か撮ってきたので
文章に合いそうな場面でアップしていきたいと思います。
あまり分かりやすい写真だと学校がバレちゃうかな(^-^;)
ではでは年末年始の間、更新も頑張ります。
変わる心
次の日の朝電車に乗り込むと、マイちゃんがあたしに手招きをしてきた。
「なに?」
「谷くん。朝も電車一緒だったみたいだね、ほら向こうに友達といる」
小さく指をさした方を見ると、確かに、そこに彼はいた。
電車のドア側に立ち、何人か友達と話をしている。
「あっち、行かなくていい?」
「いやいや、友達もいるじゃん、やめとこうよ」
動きかけるマイちゃんを、慌てて止めた。
話もした事がないのに、いきなり皆の前で初めまして、なんて恥ずかしすぎる。
二人でコソコソと話していると、彼らもあたし達に気がついたらしく
チラチラ見ては、何かを言っている様子だ。
「あぁぁぁ何言われてるんだろう、どうしよう」
ビクビクと心配するあたしに、毅然とした態度でマイちゃんが彼らを見返す。
「今度会う子はどんなだろうって知りたいんじゃない?すごい見てるし、こっち」
恥ずかしくて、あたしは顔も向けられない。
マイちゃんみたいに綺麗でもないし、可愛いわけでもないし、
とてもじゃないけど堂々としていられない。
マフラーに顔を埋めながら、じっと俯いてしまう。
ガタン、と大きく揺れて 電車は一つ目の駅に着いた。
ここで、彼ら北高生が降りる。
ワイワイうるさいぐらいに騒ぎながら、たくさんの北高生がホームへと降り立っていく。
谷くんたちも、その波に紛れて見えなくなった。
ドアが閉まり、再び電車が走り出すと
あたしはホッとため息をついた。
こんなんで、大丈夫なんだろうか。
ちゃんと話できるのか・・・?
「実優、とりあえず押して押して押しまくるんだよ、勢いだからね~」
マイちゃんに諭されながら、電車は次の駅に着く。
今度は西高生が、ホームに沢山溢れている。
速度を落とした電車の窓から、すぐに見つけてしまう岡田くんの姿。
忘れていたのに。
忘れたかったのに。
目が、追っている。
身体が、反応する。
俯き加減で電車に乗り込む彼は、相変らずで
純粋にキレイだと思った。
色の白さも、肩の線も、流れる柔らかい髪も。
こんなにキレイな男の子、きっとどこにもいない。
そう、思うだけで あたしの心はギュッと苦しくなった。
だけど、もうおしまい。
もう、忘れるんだ。
どんより曇った空の下、
電車はゆっくりと、三つ目の駅に滑り込んでいった。