DuncanBrowne「TheWildPlaces」(1978年)

 

ダンカン・ブラウン(以下、D/B)のソロ3枚目のアルバムです。

まずは、このアルバムのものすごい参加メンバーをご紹介しますね。

JohnGiblin:bass

SimonPhillips:drums

TonyHymas:Keyboard

DuncanBrowne:Vo.AllGuitars

完全に4人編成のバンド指向で作られたアルバムです!

 

この1年前にリリースした、このアルバムとほぼ同じ指向性の、METROというバンドのアルバムがあります。

METRO(1977年)

 

メトロはD/Bと同じくソロアーティストとして活動していて、パッとしなかったピーター・ゴドウィン(白いスーツの人です。担当はVo.key.)と意気投合して、ついでにギタリストのシーン・ライオンズを一緒に誘って作ったトリオバンドです。ちなみにこのMETROのアルバムも、リズム隊(JohnGiblin:b.&SimonPhillips:ds)はD/Bのソロと同じメンバー!

つまり、サウンドとしてはMETROと「TheWildPlaces」は、ほぼ同じです!

私はこの2枚はD/Bの作品だと思っています。

METROのファーストアルバムリリース後すぐにD/Bは脱退してしまうのですが、ベースとドラムはD/Bとその後も一緒に...という感じです。いかにこのMETROというバンドのファーストアルバムがD/Bの主導でつくられたかのわかりやすい証明だと思います笑

このアルバムとバンドは、のちにデヴィッド・ボウイが「Let'sDance」(1983年)の中でA-1.CriminalWorldをカバーしたことで広く知られることになりましたが、そのカバーバージョン自体は丁寧に言っても「クソ」みたいなものだったので、私はとてもがっかりしました。このアルバムは仏国やスペインやイタリアなどのヨーロッパ各国ではかなりヒットしたそうなので、ボウイも原曲やこのアルバムをとても好きだったのだと思います。ナイル・ロジャースにはその良さを理解することは全くできなかったようなので、ボウイもおそらくは残念だったのではないでしょうか笑

METROというバンド自体は、D/B脱退後もピーター・ゴドウィン主軸に活動は続けられるのですが、ソングライターを失ったバンドの音楽は一気に変わり、さして取り柄のないエレポップになりました。(なので、もうこのバンドはどうでもいいです笑)

 

D/Bの「TheWildPlaces」に話を戻すと、私にとってはオールタイムベストテンに入るほど好きなアルバムです!

ジャケット写真を見て、すぐわかると思いますが、レコード会社は明らかにロキシー・ミュージックまたはブライアン・フェリーの路線を狙ってます。まぁ、率直に言って、気持ち悪い、安易で酷い世界観ですね〜汗

でも、楽曲とサウンドは超一級品です!

完全にパーマネントなバンドとしての指向性を持っていたようで、要するに4人組のバンドとして、活動しています、という感覚です!とにかくGiblinさんとPhillipsさんによるリズム隊の演奏がとても素晴らしく、二人の相性も抜群で、サウンドの完全な「主役」となっています。

そこにクラシックギターで鍛えたD/Bの繊細なアコギの紡ぎと1音1音がとても綺麗なエレキギターの伸びのある俗に言うバカテクフレーズに、ずっと後にジェフ・ベックのサウンドマスターとして活躍するセンスとテクニックを兼ね備えたTonyHymasの見事なシンセアレンジと鍵盤テクニック...

私はこのサウンドが、プログレッシブ・ロックというものが洗練されていった「ひとつの究極」の姿なのではないかと思っています。

 

まずはこのアルバム全曲(CD版)についてメモっておきましょう!

 

1.The Wild Places (5:55)

METROの「CriminalWorld」と同じ傾向の“姉妹曲”ですね...笑

Giblinさんのフレットレスベースとセンスの塊のようなPhillipsさんのタイコのフレーズに導かれて、D/Bのウィスパーヴォイスが艶かしいです。名曲だと思います!!!このアルバムの唯一の不満点はD/Bのウタですが、ウィスパーやルー・リードばりの語りぽい入れ方だと苦になりません...笑

 

2.Roman Vécu(4:43)

粒ダチの綺麗なD/Bのエレキギターのアルペジオにロマンティックなメロディのウタ。

シンプルなバラードかと思いきや途中から思いっきりフレットレスベースとキレのあるタイコがキメッキメのプログレちっくな演奏に展開されていきます!

 

3.Camino Real, Part I, Part II, Part III" (Browne, Giblin, Thomas, Hymas) (8:30)

6/4と展開後は4/4、さらに変拍子が絡む思いっきりプログレッシブ・ロックのインスト曲です。D/Bはこのアルバムの前まではアコギが中心なこともあり、マイク・オールドフィールドと同様にエレキギターでも指弾きが主体なのですが、この曲ではおそらくピック弾きで完全にプログレ・ギタリストになってます。

 

4.Samurai(4:25)

この曲は、ピーター・ゴドウィンとの共作とクレジットされている(7.PlanetEarthも)ので、METROの頃に創られた曲のようです。シンバルワークによる深みのある空間の中からフレットレスベース特有のヌルッとした輪郭のベース音フレーズのイントロから、いきなりノリの良い“普通の”ロックになります...笑

Giblinさんのノリの良いベースに救われてますが、やはりこんなテンポの良い曲になるとウタがD/Bというのはちょっとツライ汗ですね...笑

 

5.Kisarazu(7:10)

ハーモニクスと指弾きの美しいアルペジオ、ベースもハーモニクスと複弦弾き、金属モノ主体で空間を作るタイコのテクニック、そしてトニーの真骨頂とも言えるアンディ・サマーズばりの空間シンセとリリカルなピアノ。静かに語るようなD/Bのウタがとても柔らかに聴こえます。

 

6.The Crash(3:53)

タイトなキメフレーズからシンプルでご機嫌なロックになりますが、この曲が素晴らしいのは珍しくD/Bのウタです。爽やかなメジャーの、一見、なんの変哲もないロック・ソングですが、D/Bのウタのおかげでかなり優しく“英国の田園風景”ぽい楽曲になってます。勢いがあるロックではなく、ヨーロッパ的でどこか醒めているような...ちょっと珍しい感じです。

 

7.Planet Earth(6:15)

ピーター・ゴドウィンとの共作というのがとてもわかりやすいミディアムテンポのフォークソングですね。曲としてはまぁ、普通のフォークソングでちゃんとしたVo.が歌えばなんとかなるかもという感じですね...汗

2分くらいある長めのアウトロにおける、GiblinさんとPhillipsさんの演奏で救われている感じです。

 

 

◯プログレッシブ・ロックの“一つの究極”とはどういうことか?

KingCrimsonとかPinkFloydとかを、TheBeatlesと同じくらい好きでとにかく聴きまくっていた中学生とか高校生あたりの頃から、それぞれのプログレバンドがさまざまな音楽的進化(?)を遂げていく中で、もっと研ぎ澄まされたり洗練されたりしたら、プログレッシブ・ロックってどんな感じになるのだろう...と漠然と考えていたことを覚えている。

このD/Bの「TheWildPlaces」というアルバムに出会ったのは、高校2年生くらいの頃だっと記憶していて、たとえば、マイク・オールドフィールドの「Ommadawn」(1975年)とかクリムゾンで言えば「Red」(1974年)とかフロイドで言えば「炎」(1977年)とかを比較的よく聞いていたと思う。

で、当時は実は確かに好きだったけど、それはJohnGiblin+SimonPhillipsの2人が好きだという理由だったと思う。つまり音楽性というより演奏が好きだった気がする。

それがなぜ、〜これこそプログレの究極の姿ではないだろうか〜なんて大袈裟に捉えるようになったのか・・・?

おそらくだが、それはマイクオールドフィールドが全欧州で人気を獲得することになるアルバム、「Crisis」(1983年)および「Discovery」(1984年)がめちゃめちゃ好きになったせいだと思う。ちなみにあのYesの「90125」も1983年リリースです。

あの「TublarBells」(1973年)のアーティストが、このPOPサウンド???それも極上の???しかもヒットチャートTOPのバカ売れアーティストの仲間入り???

あらためて聴いても、この頃のマイク・オールドフィールドのウタ入り楽曲の演奏は、偏執狂ぽいほどの完璧主義志向を持つプログレのソロアーティストが創ったとはにわかには信じられず、完全にその爪を(テクニック的にも指向性としても)隠し切っているんです!

でも、たとえば米国で当時あたり前にスタジオミュージシャンの起用のプロデューサー主導でしっかりと細部まで整備できた金太郎飴ぽい「売れ線」サウンドとは真逆のちょっと変わった個性的な音づくり。

「うーん、ちょっと待てよ...なんか同じような違和感を感じたサウンドがどっかにあったよなぁ...」という白羽の矢が刺さったのがこのアルバム「TheWildPlaces」であり、そのアーティストD/Bだったという感じだったと思う。

要するに、とても普通の努力だけなどではたどり着けないような超絶テクニックとどう頑張っても隠し切ることができない個性を使って、POPソングを演る=創造するということ。

これがプログレロックの『進化』かもしれない...と強く確信したわけです。そしてそのマイク・オールドフィールドの一連の「ウタもの」楽曲を凌ぐ究極のプログレ作品がこのアルバムということです。

マイク・オールドフィールドの一連の「ウタもの」楽曲は、間違いなくサウンドとしては個性的で独特ではあるけれど、プログレの定番とも言える“変拍子”や“変調”は見られない。というより、それらをてんこ盛りにした長尺のインスト曲用にLPの片面を贅沢に使っているスタイルを基本としている感じだ。

D/Bの作品「TheWildPlaces」と次作の「StreetsOfFire」(1979年)はメンバーを固定化し、「ウタもの」楽曲の演奏の中に“変拍子”や“変調”を見事に盛り込んでいる...というわけです!ヨーロッパ的な憂いや諦め、デカダンスなニュアンスなどの“匂わせ”にも成功している!

 

「StreetsOfFire」(1979年)

 

特に私がD/Bの創造した楽曲の中で、もっとも好きな1曲は、アルバム「StreetsOfFire」収録の「Fauvette」では、これだけPOPな曲なのに“変拍子”と“変調”が盛り込まれ、そこら辺の腕自慢レベルのミュージシャンではとてもコピーできないレベルの演奏なんです。

 

「この『1拍』は何?なんで入っているの?」

 

普通に演奏するとリズムが裏返っちゃうような感じがするし、いわゆる“ノリ”がまったく作れないし・・・

 

そうです。プログレロックを演る凄腕ミュージシャンだからこそ、つまり超絶テクニックを持つ職人だからこそ創ることができる音ということなんです!

 

死ぬまでに、ボケる前に、どうしても「Fauvette」を1度は演りたい!

 

みっともなくも赤裸々に、私の夢を告白して、このメモを締め括ろうと思います!

現在の人格の最も主要な部分を形成するのに影響した音楽とそれを創造した3人の神についての独語です。のっけから恐縮ですが、メインはボケてしまったときの私に向けてのメモという趣旨でメモっていますので、もろもろよろしくお願いします...笑

 

ピーター・ハミル、デヴィッド・ボウイ、プリンス。

 

上記の【3人の神】について、全く私個人のみの視点から、どんなアーティストで、どのように変遷し、何が優れているのかなどをメモっていきたいと思っています。

このメモを認(したた)めている2025年に生存しているのは、ピーター・ハミル(以下、PH)1人のみ。現在は77歳です。

正直なところ、この3人の創造した音楽について、心から素晴らしい!と感じるという理由で、きちんとした冷静な感覚で聴くことが本当に難しいことはまず告白しておかなければいけない!

 

では、まずは、デヴィッド・ボウイ(以下、DB)。

※続いてピーター・ハミル、さらに殿下プリンス(以下、殿下P)と続けていく予定です。

 

DBは、【3人の神】の中でも、おそらくyouTubeやブログなどで取り上げられることが圧倒的に多いのではないかと思います。それは、DBの音楽(LP、CD、シングル)が英米のチャート上位にほぼ必ず顔を出してきたと同時に、映画業界をはじめDBの多彩で長期にわたる活動が、ROCKというジャンルを超えた音楽業界にとどまらず、に大きな影響を受けた夥しい数の輩連中が存在しているからだと思います。

 

【3人の神】の音楽創作の歴史を冷静にアルバム単位で時系列としてまとめると以下のようになります。西暦の脇の数字は神の年齢です。それぞれのアルバムを発表した年に、他の神はどのようなアルバムを発表していたのか。そしてその当時の私はそれをどう体験してきたのかを自覚するために、この年表まとめはとても大事なアプローチで、【3人の神】の所業を語る際には必ず、下の年表を掲載しようと思います。

DBは【3人の神】の中では一番年長にあたります。実はDBは一つ年齢が下のPHの歌唱スタイルが好きで、とても影響を受けたという話があり、私がDBを初めて聴いた1976年あたりすでにPHの名前は聞いたことがありました。後に、ジョン・ライドンが幾分ヒステリックにDBのことを“歌い方も多くの曲もPHのパクリ”と批判する発言をしたことがありましたが、こうして年表にすると、ひょっとしたら、1972〜73年当時は、DBよりもPHの方が英国内では有名だったのかもしれませんね。時系列を整理してみるとそんな想像もできるようになります。

かなり便利でしょ、これ...笑

 

で、ここからは【3人の神】についてのメモにおいては、共通の切り口とテーマに従ってメモってみたい。

その切り口とテーマは

①最大の魅力とは

②創造した楽曲の特徴とは

③すべてのアルバムについて(記憶を失った「私」に向けて...極私的ランキングを含む)

以上でいきたいと思います。

 

では、DBについて。

 

①最大の魅力とは

 

『超絶ハンサムなのに超絶マニアック』

 

口語的に翻訳すると、

DBとは、段違いに「カッコイイ」のに、段違いに「ヘン」ということです。

 

(ブランディングという仕事においてこのようなアプローチは、いわゆる「墓碑銘プロジェクト」と呼ばれるもので、そのブランドの内部発祥による「認識」と外部発生の「認知」をオーバーレイさせるためのブランド・ステイトメントを策定するためのアプローチですね)

 

突き詰めていけばDBとは、こういうことだと思います。こういう一種の“ラベル貼り”は自分と認識する対象との付き合い方、さらに以降の態度をシンプルにするのにはかなり役に立ちます。

つまり、超絶ハンサム=ルッキズムを含めて常にアドバンテージがある存在→カッコイイ

つまり、超絶マニアック=カルト/オタク世界での突き抜け→ヘン

この2つの要素の極めて稀な両立こそ、DBなのです。

 

DBは映画にも出てるけど、本当に映画スター顔負けなくらいハンサムだと思います。

ミュージシャンにとって、外見はある程度しか関係しないかもしれませんが、DBほどの桁違いなハンサムとなると、話は全く違う...と私は思います。名作MV「Ashes to Ashes」を観てDB以外で名作になる内容だと思いますか?私は思いません。たとえば、ミートローフあたりがあの楽曲にあのMVを作っても、多分、2度は観ません。極端ですか?では、ピーター・フランプトンではどうでしょう?やっぱり、お気に入り登録はしないと思います。

加えて。

DB自身が、特にそのキャリアの初期で言っているように、音楽的なインスピレーションは他人の音楽から得ることが多いようです。ゼロイチで楽曲を作るというよりも誰かの作品にインスパイアされてDB流の処理が施され新たな楽曲として創造される感じです。“DBの魅力”の核心はその処理によって生み出された「新しさ」や「良さ」のレベルが格段に高いことです。ときには基となった作品の存在の意義がなくなってしまうほどのレベルです。おそらく彼の中では、この“誰かの音楽の聞いてピンときた部分をときには方法論ごと丸ごとパクる”手法について、音楽活動初期は密かに大きなコンプレックスであったと思います。でも、米国ライヴ遠征なんかで大量のアーティストと交流して、なぁんだ皆おんなじじゃん、とわかったんだと思います。つまり、言葉を選んで言えば、それまで自身の心のうちではほとんど“パクリ”だと思っていたものが、そうでもなくて、もともと作曲なんてそんなもんだったとわかれば、あとはインスピレーションの源の自身の嗜好のマニアックさとさらにそのマニアックさの度合いを増す料理の仕方が、他者の追随をまったく許さないほどの超絶っぷりなところなのではないかと思います。・・・わかりにくい・・・では。

ちょっとしつこいですが、“あんなにカッコイイ人がほかの人では絶対にしないヘンなことばっかりする”ところが最大の魅力だと思います。

メロディとか歌唱力とか詩の凄さとかではないです。視点と資産を捨て続ける勇気が、その突出具合が天才だと思います。遺作となったアルバム「Blackstar」もそうですが、定期的に新しいサウンドの領域に思いっきり突っ込む“実験作”みたいなアプローチを図るのですが、このときのDBの感覚/センスの鋭敏さはおそらくは人類最高峰のもので、“実験作”と呼ばれるものは例外なく他の追随を全く寄せ付けない大傑作で、そこもDBの大きな特徴であり魅力です。

 

ただし!ルー・リードやイギー・ポップやミック・ジャガーが言っているように「ウタ」はものすごくうまいです!!!!!

 

②創造した楽曲の特徴

 

「変化し続けた楽曲を入れる“器”とずっと変わらぬメロディな曲自体」

DBの楽曲の特徴は、オーソドックスなテーマ部と恐ろしいくらい起伏のあるメロディアスなサビ部とあえて大きめの落差をつけてできるだけドラマチックな印象に落ち付けようとしていることだと思います。ある意味で、作曲家としてはとてもトラディショナルなタイプではないかと思います。よく一般的に言われることは、アルバムごとに全然、音楽が異なると言われますが、それはDB自身が意識して、あるいは意図的にやっていることは明らかで、創造した音符の連なりを納める“箱=器”をできるだけ大きく装いを変えることで楽曲の印象に変化をつけようとする姿勢をしっかりと貫いているからです。おそらくDB自身、「自分の作曲したものはどれも同じような感じだなぁ」と思っていたのではないでしょうか。フォークシンガーソングライターから始めたアーティストにとってはあるあるだと思います。私は、今でも、ボブ・ディランの曲の5割くらいはサビ以外では曲と曲の区別がつかないです...笑

以下は、楽曲の印象の変遷を、その“箱=器”の移り変わりを軸としてまとめておきますね。

 

「ルー・リードのような音楽をイギー・ポップのようにパフォーマンス、グラムサウンド期」

あまり知られていないことかもしれませんが、DBはデビューして6年間ぐらいは鳴かず飛ばずの下積み時代を経験しています。初期の「ハンキードリー」あたりまではアコギ中心のフォークソングの作り方だったと思います。つまり、コードとメロディで自分の部屋で小さなテレコに録音する、みたいな。

この6年間で、DBは自身の感性に響くもののうち、ある程度大衆の支持を得る可能性があり、また、本家よりもはるかに上手くやれるんではないかとのインスピレーションを得る出会いを果たします。二人の米国人=ルー・リードとイギー・ポップです。

作曲方法はこれまでと変わらずアコギ中心で、「ジギー」もおそらく何曲かは楽曲のdemo版を一人で録音していたと思います。だけど、このアルバムが名盤である一つの理由はバンド=スパイダーズ・フロム・マーズとそのバンマスであるミック・ロンソンの優秀さにあると思います。(ちょうど、StoogesとJamesWilliamsonのような)たとえば、A面02の「ソウル・ラヴ」とかB面02「スター」05「サフラジェット・シティ」とかはリハしながら創っていったと思います。この傾向は次作の『アラジン・セイン』ではむしろスタンダードになりB面の01「タイム」02「プリティエスト・スター」05「レディ・グリニング・ソウル」以外はおそらくスタジオで合わせながら創っていったと想像します。マイク・ガーソンというJAZZピアニストのこのアルバムへの参加は、演奏以外においてもJAZZ的な作曲手法の導入がとてつもなく大きな化学反応を起こしていて、基本的に『ジギー』とほぼ同じメンバーで録音したにも関わらず、まったくと表現しても良いほど違うサウンドのアルバムになっているのはそのせいだと思います。つまり、もう「フォークシンガーソングライターのデヴィッドジョーンズさん」はいなくなったということです。『ジギー』と『アラジン・セイン』はこのような意味でもDBの楽曲を理解する上で重要なアルバムだと思います。

 

「自分以外にサウンドづくりの全権を担うバンマスを配置、ソウルサウンド期」

『ヤング・アメリカンズ』からはほぼ完全にオケありきの作曲手法だと思います。全米1位になったシングル「Fame」も延々と繰り返すリフ...という楽曲です。(米国に移住して最初のアルバムは『ダイヤモンド・ドッグズ』ですが、このアルバムは全英1位、全米5位とヒットしたとは言え、ブギーのリズムを主体とするグラムを引きずりながら米国人好みのR&Bぽいアレンジやロックオペラのようなコンセプトの断片を残す等、散漫な印象なので後述まで無視しましょう)『ヤング・アメリカンズ』ではバックバンドの主要なメンバーに白人を揃えて“プラスティック・ソウル”なんて呼び方を自らもしてますが、サウンドを作っているのは間違いなくカルロス・アロマーですね。このアルバムは参加ミュージシャンがたくさんいるので、よりカルロス・アロマーのまとめ方が冴えてる感じがします。次作の『ステイション』になると、シン・ホワイト・デュークという新たなペルソナの登場と同時に、サウンドはガラッと変わります!今度のバックバンドはピアノのマイク・ガーソン以外は黒人を揃えて、オーセンティックなソウルサウンドでプログレちっくな1曲目も演ってますね。カバーソングであるソウルバラード曲を聴いても、もうれっきとしたソウルサウンドです。ただ、DB本人も後年、言ってますが、かなりひどいコカイン中毒で、この時期はおそらくまともなシラフの時間はほぼなかったと思われ、ラリってる状態での作曲なんてかなりの部分でカルロスの力を借りたのだろうと想像してます。いずれにしてもこの時期の楽曲の特徴は、サビがあってもなくても良いような、むしろソウルミュージックとしてありきたりなメロディの、それゆえ、ソウルミュージックとしてまさに正統な、楽曲ばかりです。

 

「インスピレーションがそのままメロディに。シンセ×ファンキーサウンド期」

実際の引き金はスキャンダラスなジークハイル騒動ですが、1996年にアメリカを脱出してからのベルリン期になると、楽曲は一気にシンセサイザー中心の、しかもその最も先鋭的な活用を取り入れたアバンギャルドなサウンドになります。もちろん、当時、DBがよく聞いていたとされるクラフトワークとかノイなんかのクラウトロック(ジャーマンロック?)の影響やブライアン・イーノとの共同作業も大きいのですが、クラウトロック自体やその後のテクノとかと根本的に違うのは、リズム隊がプラスティック・ソウル期の3人(カルロス・アロマー、ジョージ・マーレイ、デニス・デイヴィス)の黒人が引き続き支えていることです。おそらくアレンジはイーノやカルロスの意見をほぼ取り入れて、DB自身はメロディづくり、あるいは浮かんだメロディを提示することを主体としていたのではないかと思います。特にアルバム『ロウ』では、その異質なメロディと硬質なサウンドを黒人のリズム隊が奏でていることによる、どこをとっても違和感を引きずっているような奇跡のサウンドになっています。次作の『“ヒーローズ”』では、『ロウ』のリズム隊が本領を発揮すると同時に、もう一つ、まったく異質な音源としてクリムゾンのロバート・フリップのサスティンの効いたエレキギター音を加えた上で、より洗練されたサウンドになってます。このアルバムの曲そのものは、よく聴いてみると、実は、かなりファンキーでソウルっぽいです。ちなみに全ての制作工程をベルリンで行ったのはこのアルバム『“ヒーローズ”』のみです。

 

「映像と音楽のシンクロニシティ(共時性)、New Waveサウンド期」

薬中毒からのリハビリツアーを終えたDBは、1年かけて『スケアリー・モンスターズ』を作るのですが、このアルバムは見方によってはこれまでの活動の総決算的にも見えると同時に、このアルバムからまったく新たな再スタートをきるという感じにも受け取れます。

どういう意味かというと、

総決算的な見方を説明すると、欧州的な、ベルリン期の楽曲をオーケストラアレンジで再現した現代音楽化のフィリップ・グラスの言葉を借りれば「かなり複雑なものをシンプルなものに見せかける」屈折したシニカルなアプローチは一旦このアルバムでやめます。その総括が大ヒットシングル「Ashes to Ashes」の“トム少佐の種明かし”なのではと思われます。

再スタート的な見方の方はと言うと、これまでは自身の特異なアンテナ(その特異さこそがDBを唯一無二の存在としている..)に引っかかるという基準で選んできた楽曲として成立させる“箱=器”を、自身の好き嫌いではなく、流行りの“箱=器”を追いかけるようになりました。まず『スケアリー・モンスターズ』は当時の潮流であったMTVへのアプローチがしやすくそれまでより格段にコマーシャルなものを意識したNEW WAVEサウンドによる制作です。ちなみに、このアルバムは、『ステイション』以来の黒人3人のリズム隊の最後の作品となりました。

 

「全世界のチャートのトップを制覇=最高の成果と最低の作品、ディスコサウンド期」

次にDBが選んだ“箱=器”はディスコサウンドです。

DBが初めて、“ウタ以外には演奏しない”ことを選択した時期です。私の後輩のバンドメンバーはソウル期とごっちゃにしてましたが、全くスタンスが違います。極端に言うと、原曲は作ってデモテープで渡すから、あとは作って〜とプロデューサーに渡す感じです。その意味では、全世界でアルバムチャート軒並みNo.1を記録したアルバム「Let's Dance」(1983年)は、半分はプロデューサーのナイル・ロジャースが作ったアルバムと言ってもいいでしょう!

ナイル・ロジャースは自身のバンドCHICの大ヒット曲「Le Freak」でも明らかなように、ファンクでちょこっと味つけしているものの紛れもないディスコサウンドフリークです。そして、ほぼ全世界で知らぬものがいない=メインストリームのスターとなりました。14歳くらいのデイヴィー・ジョーンズ少年の「宣言」がようやく実現したと言うことですね。めでたい!

DBのサウンドはいつも変化していくのですが、続くアルバム「Tonight」、「Never Let Me Down」がリリースされるこの時期(1983〜1987)あたりはよほど居心地が良かったのか、なにも変わりません。本人はこの時期を“Phill Collins Years”と呼んでいるそうです...笑

私は、フィル・コリンズの一連の作品ほど酷くはないと思います。

この後、批評家の評価も売上で明確にわかる世間的な評価も最低レベルに落ち込んだ後、DBは自らを1メンバーとして配置させたバンドTinMachineを結成し、3年くらい活動します。DBは晩年、ずっとバンドとしての活動に憧れていたような発言をしますが、バンドとはどうも相性がよくないようで、スーパースターDBを確立した後においても、バンド活動はうまくいきませんでしたね。

 

「アルバム毎に明確に違いがわかる器を、バラエティサウンド期」

作品として完全に底辺に低迷していたディスコ期〜バンド期でしたが、良いこともありました。DBは結婚しました。それも本当に理想と思えるような人と巡り逢いました=スーパーモデルのイマンです。子宝にも恵まれ、亡くなるまでずっと仲睦まじい二人を見ると、もう引退しても良さそうな気もしますが、アルバム「ブラックタイ、ホワイトノイズ」(1993年)では、バンドからのソロ復帰作として十分な気力とクオリティをもつ楽曲が並んでいます。このアルバムは全編をしっかりとR&Bサウンドでまとめています。プロデュースは「Let's Dance」以来、10年ぶりとなるナイル・ロジャースです。

ここから2003年までの10年間、「ブラックタイ」を含めて7枚のアルバムを出すのですが、

かなり明快なサウンドの変化=“器の借り物競走”のような光景が繰り広げられます。各アルバムの紹介でメモっておきますね。

2003年のアルバム「Reality」リリース後のツアー中に急性冠動脈閉塞(心臓発作)で倒れ、以降6年くらいまったくと言っていいほどDB関連情報はなく、誰もが引退と思ってましたね。

そして2013年、全く何の前触れもなく新曲「Where are we now?」のMVとアルバム「ザ・ネクスト・デイ」が発売され、めちゃくちゃ驚かされることになります。

 

 

③すべてのアルバムについて

 

「David Bowie」(1967年)<個人的に好きな順位 26/26>

デビューアルバムは、フォークギターの弾き語りをベースにPOPな曲が中心ですが、タイコや鍵盤の音も当時としてはひと工夫あって、一見、バラエティに富んでます。曲によってはちょっとサイケぽいものもありますが、まぁ、聞かなくても良い、と言うより時間もったいないです。このアルバムの中の2曲くらいとこの時期のシングルの曲を現代ぽいサウンドプロダクションで焼き直すというコンセプトで「TOY」というアルバム制作が2000年くらいに進められましたが、聞くならそっちを聞いた方が絶対に良いです!ちなみに下です↓

「TOY」(2021年)※2011年に音源がyouTubeに出回りました。私はそちらを聴いたので、この2021年リリースのアルバムは聞いたことがないです。ごめんなさい。

 

「David Bowie」(1969年)<個人的に好きな順位 25/26>

一般的には A面の1曲目「Space Oddity」がアルバムタイトルぽくなっているのかもしれませんね。イギリス臭というわけではありませんが、甲高くて刺さるような高音の声がやたら耳につきます。B3Wild Eyed Boy From Freecloudのように、じっくり聞くとちょっと良い曲ぽいのもありますが、時間もったいないので、「Space」だけ入っているBEST盤コンピを買う方がマシだと思います!

 

「The Man who Sold the World」(1970年)<個人的に好きな順位 17/26>

3作目となる本作は割り切って言うと、ハード・ロック・アルバムですね。DBにおいては異色作と言っていいと思います。

ミック・ロンソンはここから参加です。このアルバムはなんと言ってもA面1曲目の「The Width of a Circle」が秀逸です。全体的に狂気を表現した曲ばかりで、おそらくはこの時期、お兄さんのテリーが精神病院に入院したことが影響していると思います。

後年、ニルバーナがアコースティックカバーしたタイトル曲はこのアルバムの中ではおとなしめの、地味めの曲で、批評家の評価は高かったようですが、私には全く響かなかったです。ラストの「The Superman」は米国コミック/映画の大ヒーローであるクラーク・ケント氏=スーパーマンではなく、哲学者のニーチェの“超人思想”が題材ですね。

ちなみに、このアルバムは現在、流通しているものはジャケットが変わってます↓

私は、断然、私が持っている方が好きですね〜

 

「Hunky Dory」(1971年)<個人的に好きな順位 16/26>

実質的にバックバンドがついたと言って良いと思います。このアルバムを最高傑作に推す人もかなり多いと思います。次作以降と違って、とても“ふんわか”しているアルバムです。A面04「Life on Mars?」とか最後の「?」に表れているように、ちょっと捻くれてる部分もありますが、これだけ明るい曲調の曲が並んでいるのはDBとしてはこのアルバムだけで、アレンジや音色(サウンド・プロダクション)も昔の生音のまんまなので、そう感じるのかもしれません。“このアルバムが1番好き”という人は、たぶん、DBの楽曲はそれほど好きではないのではないかと思います。ちょうど、ルー・リードの「Transformer」が彼の最高傑作と思っている人と同じように...汗(言い過ぎ???)

レコーディング参加メンバーは名前がつく前のThe Spiders from Mars+RickWakemanという豪華ラインナップですね。

アレンジ自体に革新性はありませんが、曲自体はもう全11曲すべて名曲だと思います。ただ、ウタそのものに関して言えば、楽曲によって、ちょっとボブ・ディランの影響がモロすぎて私はそこが少し不満です。

 

「Ziggy Stardust」(1972年)<個人的に好きな順位 1/26>

とにかくすごいアルバムです。最初にレコード盤に針を落とした瞬間から、TheBeatles、TheRollingStones、KingCrimson、PinkFloydのようやく手に入れた数少ないアルバムを回し聴いてばかりするくらいだった私を一瞬で虜にしたアルバムです。“あと5年で地球は滅亡します”ということを“我々が涙を流せるよう残された時間は5年”と美しく伝えるA面1曲目の「FiveYears」にいきなりガーンっと魅せられてから、「Starman」〜「LadyStardust」〜「ZiggyStardust」〜「Rock'N'RollSuicide」...

この瞬発力、色褪せない持続力、深掘りしても届かないカリスマ性...おそらくAllTimeBestのアルバムを選ぶとしても3本の指に入ることは間違いないと思います。このアルバムを聴いたことがなくて、音楽のことを語る資格はないと思います。ちょっと強い言葉かもしれませんが、これはマジです!

 

「Aladdin Sane」(1973年)<個人的に好きな順位 2/26>

Ziggy&TheSpidersは、さらにラフで大仰で耽美な音楽を生み出しました!

これは一言で言えば“奇跡”で、その奇跡は英国に大きな文化的な大地震と生み出した一人の若者の精神の崩壊をもたらしてしまいました。まさに「これがグラム・ロック!」というアルバムです。

ペルソナZiggyの2枚のアルバムが、この時代、そのほかのあらゆるアーティストのアルバムと比較にならない影響力を持っていることは紛れもない『歴史的』事実です。

 

「Pin ups!」(1973年)<個人的に好きな順位 19/26>

ペルソナZiggyとバックバンドTheSpiders、そしてグラムサウンドいったんお別れの、けじめをつける漢気あるカバーアルバムですね...笑

The WhoとかPretty ThingsとかSydBarrettとか...ポップスターになる!って決めたデイヴィー・ジョーンズくんのフェイバリットを独特のグラムサウンドでカバーしてます。

いろんなものに変身していくのDBの、むしろ、絶対に変わらない「嗜好」が記されているということだと思います。

 

「Diamond Dogs」(1974年)<個人的に好きな順位 23/26>

DBが本格的に米国を征服するための第1弾となるアルバムです。一般的には、DBの最後のグラムサウンドのアルバムと言われてますが全編を通して思いっきりダークです。

最初に聴いた時から、私はとても散漫な印象を受けた記憶があるのですが、それもそのはずで、このアルバムには当時のDBがやろうとしていたプロジェクトの3つ分の楽曲が入っているそう。

1つは、Ziggyをミュージカル化しようとしたもの=A6.Rebel Rebel(DBの楽曲で最もカバーされたことが多い曲とも言われています)やB2.We Are The Dead、

2つ目はジョージ・オーウェルの小説「1984」をベースとした物語とZiggyに変わる新しいペルソナ=ハロウィン・ジャックの設定=A1.Future Legend(語りです...笑)&A2.Diamond Dogs、

そして3つ目は当時新しく台頭してきた黒人サウンド・ソウル/ファンクへの挑戦=B1.Rock'N'Roll With Me、B3.1984、B4.Big Brother、A3.〜A5.Sweet Thing、です。

私にはこのちょっととっ散らかったままの印象が難しすぎて、あまり好きになれないのですが、このアルバム全体を通してのちょっと暗い感じは“ダークグラム”などと呼ばれていて、数年後のPunkロックへの影響やその先のBAUHAUSなどのゴシックROCKへの直接的な影響がよく言われてました。

ただ、この同じ年にリリースされたライヴアルバム「DavidLive」↓はとても好きで、どこがそんなに好きかと言うと、“スタジオ版とまったく異なるアレンジで全ての曲が演奏されている”点です。特にこの中でショーの最後(アンコール除く)に演奏されている「Rock'N'Roll Suicide」はこのライヴバージョンがあまりに秀逸でカバーさせてもらったことがあります。あと、瑣末なことかもしれませんが、このアルバム「DavidLive」が「YoungAmericans」より先にリリースされたこと(つまり、「YoungAmericans」は米国ツアーを回った白人ばっかしのバンドメンバーに、カルロス・アロマーを加えて制作されリリースされたということ)はけっこう重要な事実だと思っています。

DB本人はこのジャケット写真が“墓から出てきたみたい”で嫌いだそうですが、1974〜77あたりのライヴ映像をyouTube等で見かけたら是非みてみてください!人間とは思えない暗い痩せたDBのウタの、あまりの迫力と上手さ!そして凝ったステージングとバンドの演奏の凄さに、ぶっ飛ぶと思います!確かに、このままだとあと3ヶ月くらいで死んでしまうのでは、と思わずにはいられません!

 

「Young Americans」(1975年)<個人的に好きな順位 11/26>

DBが米国で本格的にブレイクスルーしたアルバムです。もうグラムサウンドはかけらもありません。この白人プレイヤー主体で作られたソウルアルバムは批評家からは「ブルー・アイド・ソウル」と呼ばれ、DB本人は当時の黒人たちから揶揄されたフレーズを逆に気に入って自ら「プラスチック・ソウル」と呼んでいました。ジョン・レノンとの共作「フェイム」で全米No.1になるなど、一気にブレイクしたDB流ソウル/ファンク・サウンドですが、このアルバム以後は、黒人アーティストのアルバムもこんな感じのサウンドに変わっていきました!とにかく、かっちょイイんです!

フォークシンガーからグラム・ロックへ...というのも確かに大きな変化ですが、ここでもはやROCKまで捨ててソウル・サウンドに徹底して変換できたこと=成功したことが、その後のカメレオン的に“音楽の器”を変化させていく「唯一無二の道」を確定させたのではと思います。

この当時のサウンドマスターは紛れもなくカルロス・アロマーです。前年に出たライヴアルバム「DavidLive」とのリズムの取り方の違いがかなり顕著で、白人プレイヤーが演奏する本格的ソウル/ファンク・サウンドというそれまでになかった感じになっています。DBはおそらくコカイン摂取のしすぎでカルロスに音作りの全権を委ねていると思います。女性シンガーのシェールとデュエットしたりしてたこの頃の米国のTVショーの出演映像なんかは割と残っているので、機会があればみてみてください。ほとんど会話が成立していないことがわかると思います。DBはこの頃、完全に逝っちゃってますね〜

 

「Station to Station」(1976年)<個人的に好きな順位 8/26>

前作と違って、(ここが大事です前作と同じ感じと思ってはいけません!)このアルバムは完全に“黒人ミュージシャンとつくったソウル”サウンドです。ホンマもんです!

バンドを長く演っている人にはわかると思いますが、リズムの取り方が前作とは全然違います。例えると「ワンツースリーフォー」ではなく「ワンッア、ツーッア、スリーッア、フォーッア」みたいな感じ...つまりウラのウラが自然に入ってくる感じです...ってわかりづらいですね汗...すんません!

A1.のタイトル曲は構成がプログレですね。ムーグ・シンセとメロトロン入りの10分超の長尺曲ですが、途中のとってつけたような展開がもうファンキーでたまりません!この黒人ファンクでプログレ演るんですから、そりゃ「唯一無二」の世界ですよ、今だに!

その後の活動で1980年まで続くこのファンキーなリズムトリオ=カルロス・アロマーg/ジョージ・マーレイb/デニス・デイヴィスdsはこのアルバムからです。ピアノがJazz系のマイク・ガースンからスプリングスティーンのバックバンド=E・ストリートバンドのロイ・ビタンに変わってるくらいで、かなりパーマネントなバンドサウンドを目指していたことが伺えます...というか、この当時は、DBは完全にコカイン中毒で3〜4日間寝ずにスタジオ漬けみたいな毎日だったそうなので、アレンジのイニシアチブはカルロスさんなんでしょうね。

ジャケットを見ても、使われている写真はこの時期に主役を務めたB級ムービー「地球に落ちてきた男」のワンシーンで(次作の「LOW」もそうです)ジャケ写の撮影すらなかったようですし、ウラジャケも白地にヘルベチカでなんの工夫もなく、曲名を並べただけのものですし、しっかりと“役者”していた前作「YoungAmericans」のきらきら感なんてまるでなくて、とても同じアーティストとは思えないほど音以外はテキトーぽいですね...笑 音と楽曲、詩とメロディ、そしてウタ...そのほかはなんにもやってないんだと思います!当時のインタビューでも「このときのレコーディングは、カメラのフラッシュしか記憶にない」と逝ってますからね〜汗 でも、このアルバムが最高傑作という人がいてもちっとも不思議ではないくらい、おっそろしいくらいのファンキーな名盤ですよ!

 

「LOW」(1977年)<個人的に好きな順位 4/26>

これは驚異的なアルバムです。

私は好きな順位として4番目としていますが、ターンテーブルに乗った回数でいけば、Ziggyとどっちが多いか...というくらい、むちゃくちゃ聴きまくったアルバムです。

あえて短めの語でこのアルバムを表現すれば『虚無』とか『耽美』とか『無慈悲』とかですかね...明るいメロディの曲も軽快なテクノぽいアレンジも、すべて“不安”な気持ちにつながります!

冷静に楽曲それぞれを分析してみても、まず、どう聴いてもおそらくほぼイーノが作ったと思われるB面の1曲以外のメロディが素晴らしすぎます!仮にヴォーカルが入ってなくても、完全にウタとして成立しています。逆にウタがついているA面に並んでいる曲もDBの声はまるで効果音のように聴こえてきて、まっすぐ無機的に『虚しさ』に導きます...

ドイツ・クラウトロックの影響とかエレクトロニクス音の大胆な取り込みとか、まぁ、どうでもイイと思うくらい、ある意味、気持ち良いアルバムです。CDになって、1枚通して聴くと、なおさら気持ち良い状態のままあっという間に終わります。

A面の全7曲は、どれもまるでオリジナルデモのような、途中で終わっちゃう感じの短い曲ばかりですが、必要にして十分な長さとアレンジで、これぞ俗に言う「奇跡」だと思います!その意味でこのアルバムはファンクリズムとエレクトロニクスとアンビエントの融合=アートロックだと思います!

ピストルズやストラングラーズやジャムやダムドあたりと一緒に、聴いていたんですよ!

その中でも間違いなく、ダントツで最も刺激的なアルバムでした!

 

「“Heroes”」(1977年)<個人的に好きな順位 3/26>

このアルバムを短めの語で表すと『狂気』とか『暴力的』でしょうか。前作よりもかなりヘヴィになったこのアルバムを個人的に前作より好きとしたのは、このアルバムから3曲もバンドでカバーしたからです。

〜「Blackout」「The Secret Life of Arabia」そして「Heroes」。

当時のバンドがまぁ、わりとみんなテクニックがあったので出来た感じですが、本当に、かなり難しかった!フリップ先生に代表される難しいフレーズというよりもやはりリズムです。ノリ...というか、シンコペーションというか...汗

演ってみればおそらくみんなわかると思います。どちらかと言うと、このアルバムに収録されている曲の印象は欧州ぽい硬質なものと感じるのではないかと思いますが、実際に演奏してみると、くっそファンキーです!大げさなくらいでちょうど良いくらいの感じです。そして初めて、この時期のDBのオンリーワンのサウンドの秘密の一端がわかるんです・・・あぁ、カルロスとジョージとデニスのリズム隊だぁ〜って。

フル参加したフリップ先生のギターはもうサイコーに滅茶苦茶です!エッジの効いたカミソリのような音でフレーズとしてはかなりぶっ壊れたプレイで全編に渡って主役顔しています。こんなフリップ先生はホームのクリムゾンでもお目にかかったことはないし、イーノとのコラボでもフリップ先生自身のソロでも出てこない“狂ってしまったインテリ”です。B面に並ぶインスト曲は「耽美」だった前作とは違って、かなり「陰鬱」です。

このアルバムがDBの中でも私が特に好きなのは、DBのキャリアのピークを飾る時期のサウンドの完成形がこのアルバムだと思うからです!

 

「Lodger」(1979年)<個人的に好きな順位 21/26>

スイスのスタジオで大部分が録音され、ニューヨークで追加ダビングされたこのアルバムが「ベルリン三部作」の最後のアルバムと呼ばれるのに、もうそこまで「それは間違っている」と主張することに拘ってはいないので黙認しますね...笑

でも「LOW」「“Heroes”」と全然違うクオリティとサウンドであることは間違いありません。世界一周の旅をやってみよう〜みたいなコンセプトと基本文明批判の歌詞で作られたと思われるこのアルバムは、おそらく意図的だと思いますが、リズムがまるで信号で制御されているみたいに平坦です。よくワールドミュージックの先駆け的作品などと好意的に評価されていますね、ま、イイことですので、そのままにしておきましょう...笑

B面の3曲、「D.J.」「LookBack in Anger」「BoysKeep Swinging」はかなり秀逸です!

 

「Scary Monsters」(1980年)<個人的に好きな順位 10/26>

このアルバムを買って初めて聴いた時はもう感激しましたよ!〜久々にカッコいいロックスターのボウイだぁ〜みたいな感じでした!A面1.の日本語ナレにもびっくりしましたが、なんと言っても「Ashes to Ashes」ではないでしょうか...恥ずかしながら、いまだに私のヘビロテ曲の1曲です!ただ、この曲、実際のライヴでは全然カッコ良くないんです...涙

なんか、やっぱりリズムがスタジオ版がサイコーなんですよ。何度もアレンジを変える工夫をしてカバーしようとしたのですが、DBのその後の本人たちのバンド演奏を含めても、どうしてもスタジオ版の無性にカラダが動き出してしまう感じが出ない・・・

当時、急速に浸透しつつあったMTVと好相性のNEW WAVEのサウンドを取り入れたとよく言われますが、それにしてはアバンギャルドだし、独特です。私は、一般的には評価が低いB面の1〜4.のこれぞ“いわゆる”ロック!という楽曲たちがかなり好きです!

 

「Let's Dance」(1983年)<個人的に好きな順位 20/26>

このアルバムには本当にびっくりしました。

まず、ナイル・ロジャースのギターのカッティングとオマー・ハキムの抜群の躍動感のあるドラムには完全にノックアウトされましたね〜。

でも、それだけでした。あとはもう凡庸なマジでつまんないディスコサウンドで、ベルリン期にイギーに歌わせるために作った名曲が台無しでしたね〜笑

おまけに、ヨーロピアン・モダンプログレを代表するダンカン・ブラウン(メトロ)の名曲「CriminalWorld」まで、なんの抑揚もないゴミ屑のような演奏にカバーされちゃって...涙

ご安心ください、一般的には、このアルバムでDBはカルトのメジャーな帝王から世界のチャートを征服したメインストリームのスターになったことは歴史上の事実ですから。

当時の無知な私の率直な感想は、「世界って、バカばっかしですね〜」...現在も、ほぼ変わっていませんが笑 いや、こればっかしはナイル・ロジャースの責任ではありません!あと、スティーヴィー・レイ・ヴォーンは文句ばっかし言わないで感謝しないと...多分、このアルバムにナイルと口論してまで君を参加させたDBがいなかったら、君、おそらく世界に認知されてないぞ!

 

「Tonight」(1984年)<個人的に好きな順位 22/26>

このアルバム収録で、短編ムービーぽくて世界的にもヒットした「ブルー・ジーン」。MVもとてもよくできていたし、カッコよかったですね〜。でもカラオケでこの曲を歌うと、ちっとも面白くなくて(ほとんどコーラス)、なんなんだこの落差は?!とさらに驚いた記憶があります。

この頃のDBは、どちらかというとムービースターかもしれないですね。

 

「Never Let Me Down」(1974年)<個人的に好きな順位 24/26>

DB本人曰く“PhilCollins years”の最後を締めくくるアルバムです。

いやぁ、マジでくっだらない音楽ですね...笑 そのくだらなさはまるでアートのようです!

ただ...これだけ、けちょんぱんに評していても、初期の2枚よりは好きというのだから、いかに私にとって初期の2枚をDBの作品とみなしていないか、ハッキリしてますね...笑

なんの新規性も発展性もない内容に流石にまずいと気がついたのか、このアルバム発表の後、TinMachineというバンドを組んだりして新たな展開を模索しますが、全くうまくいかないです...汗 今になって思えば、TinMachine結成後は、このアルバムの楽曲を全てグランジロック/ハードロックに徹してアレンジし直して、TinMachineで演れば良かったのにとも思います!

でも、この時期、“お金持ちの”有名人になれたことは全て悪いことばかりでもなくて、最愛の伴侶イマンとも出会えたし、これまでとは違ういろんな力を創造生活のために借りることができるようになりました。実はこの時期、他のアーティストとのコラボや出演した映画のサントラ用の曲なんかでわりと良い曲を連発して残しています。

例えば、

・パット・メセニーの曲にメロディと歌詞をつけた「This is not America」(1985年)

・ミック・ジャガーとしっかりとデュエットしたチャリティーカバーソング「Dancing in the Street」(1985年)

・映画はヒットしなかったが、主題歌は世界的なヒットとなった「AbsoluteBeginners」(1986年)ピアノはリックウェイクマンが弾いてます。The Prettiest Star以来ですかね。

・映画ラビリンスのために書かれた曲で、名バラード「As the World Falls Down」

などです。

フィル・コリンズというのはプログレバンドGenesisの優秀なドラマーでしたが、vo.のピーター・ゲイブリエル脱退後にどうしても良いシンガーが見つからず、代役として歌ったのがわりと好評価で、すっかり勘違いしてしまい一端のヴォーカリスト気取りで、本当にくだらない商業バラードソング作品ばかりを作っていた人ですね。ただし、どういうわけか世界的に大ヒットの連発で大金持ちになっちゃった恥ずかしい人です。DBがこの時期の自分を“フィル・コリンズ・イヤー”と呼ぶのはそっくりだと思っているのでしょう...いやいや、随分、マシですよ〜

 

 

「Black Tie, White Noise」(1993年)<個人的に好きな順位 12/26>

このアルバムDB本人としては“復帰作”でしょうね。当時もそんな言われ方されていたような気がします。プロデューサーがナイル・ロジャース再び...なので、あんまし期待できないかと思ったら、とっても良いサウンドでした!全英アルバムチャート1位になりますが、前前作でも1位になってるので、こればっかりは作品の質とはあまり関係ないですね...笑

ただ、「Let'sDance」もそうですけど、ナイル・ロジャースのプロデュース、特にサウンド・プロダクションって、10年後とかに聞いてみると明らかに“時代”を感じますね〜。それでこそブームを作れるプロデューサーなんでしょうけど...それにしても、ミュージシャンの多くがなりたくてもなれない、全英1位とかにこのレベルの作品でいけるんですから、DBの人気って特に英国においてはやはりすごいんですね〜(なんか上から目線で...恥ずかしい汗)

もう、当時のR&B色の濃いブラックコンテンポラリー・サウンド完全再現という感じです。

最愛の人、イマンと結ばれたこともあって、全編にハッピーな雰囲気が漂っているDBとしてはかなり異質なアルバムです・・・なんだかね...穏やかなんです...笑

旧友ミック・ロンソンと久々にクリームの曲のカバーを演ったりしてますが、このアルバムのリリース時にはすでに、ミックは亡くなってたりしちゃいます...涙

最後の演奏はとても良いですよ!

 

「The Buddha of Suburbia」(1993年)<個人的に好きな順位 9/26>

このアルバムは、一度も聴いたことがないという人の方が多いと思います。

かくいう私もこのアルバムを初めて聴いたのは、再発された2007年CDですから...汗

でもこのアルバム、かなり良いですよ!

一応、サウンドトラックみたいな扱いになってますが、全然違います!これはちゃんとした「Black Tie」に続く、DBのオリジナルアルバムです。前作のブラコン・サウンドから一転、無機質ながら強烈なキックの音が腹の底を打つハウス・ビート・サウンドを基軸にアシッド・ジャズとアンビエントを基本的にはDB一人で創ったアルバムです。

私は前作よりもこちらの方が数倍好きです!

01のタイトル曲はレニー・クラヴィッツがハードなギターで参加したバージョンも収録されてますが、私は冒頭のアレンジの方が好きですね!キャッチーな名曲だと思います。02〜04はインストぽくとらえられがちですが、デジタルの無機質なクラブ・ビートにDBのヴォーカロイド処理を施した効果音が強烈な02、マイク・ガースンの超絶JAZZピアノが聴ける完全なAcidJAZZ(DBはフリーキーなsax演奏)の03、どこか「“Heroes”」のMossGardenを彷彿とさせる弦をつまびく音が心地良いアンビエント7分超えの04とバリエーションに富んでます。05〜08の4曲は、この時期のDBの閃光のようなメロディが特徴的な佳曲ばかりです!どうやらあっという間に作曲され、録音され、ダビングされ、ミックスされたみたいで、前作と違って、かなりシンプルな生音に近いサウンドプロダクションとリズムマシンの無機質なビートが良い融合を果たしてます。音自体、エッジがとんがっているわけではないので、それほど先鋭的とは感じないのですが、高水準のメロディが連なっています。しかも、次作「1.Outside」のラストを飾る名曲「Strangers when we Meet」のオリジナルが入ってます。

私自身は、次作を先に聴いて、しかもとても気に入ってましたので、こちらの方が別バージョンとなってしまうのですが、この、Vo.のバランスを抑えてバンドサウンドを志向し、異様に軽やかになったバージョンも本当に素晴らしい!と感動した記憶があります。

ちょっと語弊がありますが、私が最初にこのアルバムを聴いたときは「ベルリン三部作」の私生児的作品と呼んでも良いのではないかとさえ感じました。大袈裟かもしれませんが...笑

 

「1.Outside」(1995年)<個人的に好きな順位 5/26>

このアルバムは紛れもなく、名盤です!ただ、めちゃめちゃに重い内容です!

私はこのアルバムを聴くといつも、ルー・リードの「ベルリン」を聴きたくなり、実際に流れで聴いてしまうことが多いです。冷静に振り返れば、収録70分を超える長さのコンセプトアルバムとしては、DBとしては唯一で、おそらく制作に向けての気合の入り方も全然違ったのではないかと思います。

コンセプトアルバムのテイですが、ストーリーは架空の町オックスフォード・タウンで起こった少女殺人事件を探偵ネイサン・アドラーが捜査するというものです。そう、当時流行っていたテレビドラマシリーズ「ツインピークス」にインスピレーションを受けて、DBと久々にイーノがタッグを組んで作った実験的なアルバムです。サウンド的には、インダストリアルROCKの金属的でヘヴィな響きが全編を覆っている感じです。

実験的とは言っても、楽曲はそれぞれしっかりと創られてます!

特にブラッド・ピット/モーガン・フリーマン/ケヴィン・スペイシーらの名演で有名なサイコサスペンス映画「セブン」で使われた「The Hearts Filthy Lesson」をはじめ、マイク・ガースン本領発揮の「A Small Plot of Land」、ミュージカルチックな「The Motel」、「The Voyeur of Utter Destruction (as Beauty)」など名曲が目白押しです!私にとっては、DBのベルリン期の2枚に次ぐ傑作です!

ただ、どの曲も本当にハードで真っ暗な感じの曲ばかりなので、気にいるかどうか、人によって大きな差が生まれてしまうことは私にもわかります。そんな真にアートな作品です。

 

「Earthling」(1997年)<個人的に好きな順位 18/26>

このアルバムはよく“ドラムンベースを取り入れた”サウンドと形容されますが、正確に言うと“インダストリアル+ドラムンベース+エレクトロニカ+テクノ+ジャングルビート”と複数のサウンド形態をミックスさせて楽曲を演奏した作品です。実は、“良い曲”と言う意味も含めてサウンドとしての特殊さ以外のものはまったくないというのがこの作品の驚くべき特徴だと思ってます...笑

 

「Hours」(1999年)<個人的に好きな順位 13/26>

いきなりの「Thursday's Child」のDBの弱々しい声に驚きが隠せませんでしたね!

このアルバムはビデオゲームのサウンドトラックとして制作されたということがまた驚きです。TinMachineでも一緒に演っていたギタリストのリーヴス・ガブレルズとの共作という雰囲気なのですが、よくアルバム全体の雰囲気が初期の名作「Hunky Dory」に似ていると言われています。不思議なのは、このアルバムにおけるDBは一切の攻撃的な側面がありません。なんだかほんわかしていて、終始メランコリックで、ノスタルジックで、ろくすっぽアタマを使わない青年のようなのです。

ひょっとすると、この時代、DBの目には世界はこんなふうに映っていたのかもしれません。

DBとしてはとても珍しいことなのですが(この作品と次の2つだけ)、DBのヴォーカリストとしての“老い”を感じる数少ないアルバムです。

 

「Heathen」(2002年)<個人的に好きな順位 15/26>

ヒーザンとは、ユダヤ教から見た異教徒のことで、馴染みのある言葉に置き換えれば異邦人ですね...笑

このアルバムは久々にトニ・ヴィスコンティと一緒に頑張りました!という感じですが、率直に言って、ヴォーカルが弱く感じます。でも老人ならではの前向きな活力がいっぱいな感じです。すっかりちゃんと今の音を出す“ロックミュージシャン”としてのDBの名刺がわりの1枚とでも言いますか...笑

ちなみに、この当時のライヴやコンサートの映像を見ると、アルバムに覚えた“老い”はちっとも感じられないので安心しました!急速に復活したのだと思いますが、“老い”た声をアルバムとして残していることが、今となってはとても貴重だと思います。また、ライヴ活動に関しても意欲が復活したようで、ライヴ向きの楽曲が多いですね。特に「Afraid」やタイトル曲の「Heathen」なんか、すぐにでもバンドで演りたいくらい大好きですね。

 

「Reality」(2003年)<個人的に好きな順位 14/26>

アルバム全体を通して、バンドサウンドですね。実に小気味が良いです。

このアルバムを出した後のツアーも元気いっぱいでぜんぜん年齢を感じさせない素晴らしいライヴです。「ヒーローズ」なんか歴代で一番素晴らしい演奏じゃないかと思います!

一方でこのアルバムには、うっすらと「死」の影がアルバム全体を覆っているような印象を受けます。決して暗いというわけではないです。いくつかの曲、例えば「Days」などにはコード進行とリズムからは軽快なPOPソングになるはずなのに、全くそうではなく、なんというか諦観みたいな、空虚でうつろな感じに包まれているのです。

DB自身が痛いほど感じる“老い”の負の力の強さをそのまま記録しているのかもしれません。ここら辺、最初に聴いたときはまったくわからなかったんですが、今では、ものすごくわかるんです!

 

 

「The Next Day」(2013年)<個人的に好きな順位 6/26>

10年の空白期間を経ていきなりリリースされた超名作です!

もちろん、遺作となる次作「Blackstar」も大傑作なのは間違いないですが、そっちの方はどちらかというと実験色が前面に出てきて、もちろん、だからこそDBなのですが、JAZZの全く新しい音楽性のアルバムという感じで、ちょっと疲れるんですが、こちらの方は完全にROCKですね。しかも上質の。なんとなくですが、DBは自身のキャリアの総決算のようなアルバムを作りたかったのではないかと思います。グラムぽい曲、ハードロックぽいもの、不安定なヴォーカルのバラード、JAZZフレイバー溢れるサウンド、ストレートな疾走感のあるロック、金属的なインダストリアルなアレンジ、ライヴで大合唱が起きるようなアンセムちっくなミディアムテンポ・・・全部、このアルバムに詰まってます!

メロディだけに注目しても、いやはや、名曲がずらりと並んでいます!私は、DBファンならずとも必聴のアルバムだと思います!

「Black Star」(2016年)<個人的に好きな順位 7/26>

このアルバムがリリースされて二日後か三日後に急逝するんですが、最後の作品がまたこんなにすごい実験作=問題作というのが本当にすごいですね!

なにせ、このアルバム、若くて革新的なJAZZミュージックをやっているバンドをまるまんまアルバムのパートナーとして参加してもらうんだから、発想そのものがDBにとっても初挑戦なんですよね〜

このアルバムは、なんと言っても演奏がすごいです!DBの狙って演っている不安定なヴォーカルがこの“JAZZプレイヤーによるJAZZではないプレイ”に乗っかると、恐ろしいくらい神秘的なサウンドになっています。04の「Sue」という楽曲はこのアルバムの前に、マリア・シュナイダーというJAZZ作編曲家とのコラボバージョンもありますが、これがまた素晴らしいデキです!アルバム収録の正確無比なタイコに引っ張られる早急な印象を活かしたアレンジもどちらも大好きです!

また、ここに記録されている音楽が完全に新種のJAZZサウンドで...いやぁ、スゴイっす!

ロックンロールになるのを避けるためにJAZZバンドをバンドごと採用したにも関わらず、コードも、ハーモニーも、JAZZの要素が微塵もないサウンド...「遺作であり最高傑作」と言われることが多いこのアルバムは、もっと聴き込む必要がありますね・・・

 

ちょっと、長くなりすぎましたね。すみません。

ひとまずはここんところで。

どうでしょう?

お役に立ちますかね?

(その1からの続きです)

 

『Out fo Water』(1990年)

 

さて、次は【DISC2】『Out of Water』ですね。

 

このアルバムは、前作「In A Foreign Town」同様にMIDI音源がベースとなっている1枚ですが、g.のJohn Ellisが3曲、sax.のDavid Jacksonとb.のNick Potterが2曲、vln.のStuart Gordonが1曲に参加して、少しだけバンド形態に近くなっています。

PHの当時の発言は「いまや私はテクノロジーの頂点を極め、それと格闘するというよりも、パレットの一部として使うことが出来ると感じていた。結果として種々雑多な作業方法、作曲、主題のあらゆるものがここで提示されている」と自信に満ちている。明確に、前作での様々な“実験”で得たものをさらに発展させてひとつの宅録の極みに達しました...という宣言なんだろう。

このアルバムの評判はとても地味なものだった記憶があります。前作ほどクソミソに言われることはなかったですが...汗

 

私は・・・と言うと、このアルバムは「神」の作品には珍しくあまり好きではないアルバムでした!まずね...好きな曲がない(...なかった...過去形です...笑)

 

前作がファンのみなさんのボロクソな言われ方に反して、メチャメチャに好きだったせいもあって、このアルバムは確かに“落ち着いて、エレクトロニクス音ともしっくりと馴染んで”いたけれども、「いやいや、大人すぎるでしょ」という印象だったんです。

g.のJohnEllis作というジャケットも、当時、PHと二人で来日公演をしたこともあって、モロに日本イメージの絵画だし(ちょっと、この感覚はついていけない...笑)。やはり当時のPHのノートに「この作品はひとつのターニングポイントだ」とあったのだが、その意味もよくわからなかったです。

 

だが、2023版を聴いて、PH自身がターニングポイントという意味がよくわかるとともに、このアルバムがとても好きになりました!

 

収録された8曲のすべてが、驚くことに、1曲1曲、個性的で鮮やかな起承転結があるのです!あらためて、1990版を引っ張り出して聴き直してもみたのですが、幾分はなるほどと感心する箇所を見つけられるけれどやはり33年前と同じような今ひとつピンと来ない感が拭えない・・・でも2023版を聴くと全く違う...シニカルに一瞬、唇の端が上がる瞬間とじんわりあったまる感じが確実にある!

 

あぁ、そういうことだったのか...

 

うん、そう。この感覚は、PHのその後の『Everyone You Hold』(1997年)以降の作品を聴くときと似た感じです。

当時の“ターニングポイント”と言っていた意味が少しだけわかる気がしました。

私なりの解釈で言えば、それってPHにとってのプログレを中心とするROCKの“様式美”からの卒業みたいなものなのではないかと。

このアルバムのその後、『The Fall of The House of Usher』(1991年)では妙に楽器の音の少ないミュージカルかオペラかのサウンドトラックだし、『Fireships』(1992年)はPH自身で「Be Calmシリーズ第1作」みたいに書いてるし、次の『The Noise』(1993年)では「A Loudシリーズ第1弾」になってるし、(もっとも、静かな楽曲とやかましい楽曲をそれぞれ別のアルバムとしてリリースしようというこの計画はこの2作で頓挫したようですが...笑)その次の『Roaring Forties』(1994年)では実に19分に及ぶ組曲、それもプログレぽいものではなく、完全にクラシックぽい感じの楽曲が収録されているし。

そうです。PHの創作活動は、あえて言うとすれば、よりクラシック音楽のアプローチに変わっていったのだと思います。そしてそのターニングポイントがこの『Out of Water』(1990年)だったということなのでは・・・と。この2023版は私にそんなことを感じさせてくれました...涙

 

では、1曲ずつメモを。

 

【DISC2/Out of Water】

 

01.Evidently Goldfish

1990版では、なぜか和っぽいジャケット絵画の作者でもあるg.のJohnEllisのEボウ(バイオリンや二胡のようなサスティンのきいた音を出せるピック代わりのエフェクターの一種ですね。ジミー・ペイジで有名なViolinの弓のカタチとは異なり、現代の機器はコンパクトで右手でピックの代わりに弦に近づけて使用するカンジです?!サスティンがどこまでも伸びる感じで、JohnEllisはThe K Groupの時から使用していますね)のオリエンタル(東洋)ちっくなイントロでしたが、2023版ではPHのディストーションを効かせたエレキギター3本の重ねで全く違う雰囲気になってますね。1990版のイントロは周波数は違いますが、ちょっと二胡に似た音色だったので、日本人としての耳ではむしろ“中国っぽい”感じに聞こえてました。2023版は全体的にヘヴィなROCKの感じになっててとてもGoodです!アルバム全体に言えることですが、いろんなMIDIの音源をPHの歪んだエレキギターに差し替えているため、さらにJohnの流麗なフレーズではなく相変わらず“たどたどしい”PHの演奏なので、リズムのカチッと感が壊され、ライヴのような立体感が増してますね...良いことだと思います!この1曲目も1988版では特に印象に残る箇所もなく曲が終わっていたのですが、2023版ではしっかりと抑揚がついてて、“ちょっとフレーズをコピーしてみたくなる”感があります...笑

 

02.Not the Man

1990版の頃から、アルバムで唯一のシングルとしてもカットできそうなキャッチーな曲でしたが、この曲もエレキギターがPHに変わっているので、イントロのカッティングからモタモタしてて(決して悪い感じばかりではありません)もうシングル向けの感じは消えてますね...笑

ウタに入って2ヴァース目のところのベードラの位置が変えられていて、2023版ではよりシンコペーション具合が強調されている感じがします。MIDI音源の宅録がベースなのに不思議ですね〜

さらに2023版で不思議なのは、エンディングのところの不協和音コードの2小節ですね・・・確認しましたが、1990版には入っていないので、新たに加えたもののはずですが、いったい何の狙いがあるのか...汗

 

03.No Moon in the Water

2023版は1990版よりも、基本的にヴォーカルを重視してMixされていることが明白なのですが、この曲はその効果が一番わかりやすい曲だと思います。「水おけが粉々になると、月はもうそこにはない」・・・禅の有名な「心は水月とともに涼し」に通じる悟りの境地をテーマとする歌詞が、歳を重ねたPHの円熟したウタのチカラでとても沁みるものになっています。この感じは1990版に欠けていた最も大きなものだと思います。

〜No moon in the water No more ego now〜

 

04.Our Oyster

正直に言えば、この曲を「リワーク」する際に、何か新しい試みや解釈が存在したのかどうかがわからない...汗

何度も何度も、折につけ、1990版と2023版を続けて繰り返してみてはいるのです。もちろん、ヴォーカルが新録音だし、ライヴぽさが増しているほかPH自身が弾くエレキギターの音が2023版には入っているので、“区別”はつきますが、どうしようもないくらい地味な曲という印象がまったく変わらない・・・・・33年の時を経て「印象がまったく変わらない」ということを狙ったのだろうか...笑

この曲のおかげで、実はこの『Out of Water』(1990版)というアルバムを聴くことが億劫になっている気がする。03.NoMoon〜はどんな曲か、05.Ysabel'sはどんな雰囲気か、記憶は明快だ!だけどこの曲だけは、もちろん、聴けば「あぁ〜、それそれ」ってなるけれど、記憶だけでどんな曲だったのかが頭に上がってこない。PHの楽曲の中では、こんな曲はほんの数曲しかなく、そのうちの一つがこの曲なのです。弾き語りをベースにした、内省的な独特の世界が拡がる静かめの曲をPHはなぜ3曲も並べたのか(03、04、そして05)?

う〜む、2023版をしっかりと聴いたつもりの今でも、あい変わらない謎のままです!

 

05.Something about Ysabel's Dance

曲全体を通しての、ほとんどアドリブソロのようなStuart GordonのviolinとPHの弾くアコギをベースとした弾き語りの曲という風情は1990版と同じです。もちろん、新録されたヴォーカルのせいでより深みというかダイナミクスが増していることは確か!しかもヴォーカル2ヴァースめの後、あの〜There's no Charlie Mingus, his Tijuana's gone...のくだりの直後に、フラメンコのリズムの展開が短く、新しく、設けられています。

 

06.Green Fingers

この曲は2023版になると、めちゃめちゃダイナミクスが拡がってPHの楽曲にはとても稀な“ノリ”が良い曲に変貌してますね〜

1990版との違いはかなり大きいです。と言うのも、VDGGからの盟友David JacksonのSaxがPHの弾く歪んだエレキギターに置き換えられています。VDGGを彷彿とさせるSaxメインで暴れまくる楽曲だったのが、一歩間違うと“グランジ?!”という感じになってます!

この、ミディアムの強いビートの曲としては、後のアルバム『TheNoise』の中にあってもおかしくない感じです。いやむしろ、『TheNoise』を予言する曲と言った方が良いかも。

 

07.On the Surface

この『Out of Water』というアルバムのハイライトの曲が、8分を超えるアルバム中最長尺のこの曲です。この曲は10/4拍子という変則的な拍子の曲なのですが、ROCKぽくない曲です。通常、10/4拍子と言うと、ROCKの場合は6拍子+4拍子とか、4拍子+3拍子+3拍子とかに分解できるのですが、この曲は10/4拍子そのままで分解不可能なんですよね〜

モーリス・ラヴェルのBoleroのように(こっちは3/4拍子ですが)、クラビアのような鍵盤の音色で奏でられるベーシックなメロディラインが繰り返され、だんだんと弦楽楽器の音が積み重なっていきます。完全にクラシックの技法を意識して取り入れてますね。

Codaに差し掛かるところで、1990版ではJohnEllisの流麗なギターアドリブのソロが、2023版ではPH自身の歪んだエレキギターによるたどたどしいギターソロが、ROCKとしての横顔をかろうじて保っている感すらあります。

1990版のクラシックミュージックをシニカルに表現したバージョンも、2023版のよりリヴァーブを効かせたヴォーカルを中心としたどこかオペラちっくなバージョンも、どちらもとても素晴らしいですね!

 

08.A Way Out

この曲は、1990年に発表された当時のPH本人による曲の解説メモの中でも「語るつもりはない」とだけ記されていた、バラードというにはとても重たい歌唱が似つかない名曲ですね。

多くのファンの方はご存知だと思いますが、この曲は発表の少し前に自殺した実弟への追悼として書かれた楽曲と言っても差し支えないでしょう。

ライヴではとても人気の曲で、youTubeで観るだけで、いつの間にか泣いてしまいます!

曲を歌唱しているを観て涙してしまうなんて、PHと玉置浩二さんくらいですか...

曲のCoda部の繰り返されるリフレインが胸に沁みます!

〜I wish I'd said "I love you"「愛してる」って言えばよかった〜

 

 

 

さて、2023版の楽曲でどう変化したのかを中心に語ってきましたが、メモとしては、ここからが言わば本題かもしれません。

 

1988版『In A Foreign Town』と1990版『Out of Water』

片や私がとても好きでずーっと継続して聴いているアルバムとどうにも捉えどころがなくて少なくとも20年くらいは1枚通して聴いた記憶がない私にとって珍しく好みでないアルバム。

 

結論から言うと

 

プロダクション(簡単に、「音色」)を刷新することで楽曲の良さをあらためて現わす狙いを持つ『In A Foreign Town』

→完全に◎

2023版の方がアルバムとしての統一感と収録楽曲の素晴らしさを出すことに成功している。

➡︎私は全編を通して、明らかに1988版の方が好きです!ノスタルジックな判断ではなくて、若いPH(と言っても40歳!?)の前のめりなSPIRITがまんま表現されていて、カバーしたくなるため。

 

少ない楽曲編成を最新の“普遍的な音源”と自らの演奏に差し替えることでライヴっぽさ、ダイナミズム増幅に繋がっている『Out of Water』

→ちょっと△

1990版の方が演奏者の素晴らしい演奏を活かしている。2023版はほぼライヴバージョン。

➡︎私はほとんどの楽曲で、2023版の方が好きです!地味な印象しかなかったこのアルバムの楽曲のいくつかがかなり素晴らしいことを発見しました。1990版でどうしても捨て難いのは07におけるJohnEllisの見事なギターのパート!私が1990年版の方もかなり好きなのは03と07と08です。

 

というところが率直な感想です。

 

まさに2023年のリリース以来、1年くらいはPHの音楽はほとんどこの3枚に含まれている曲しか聴いていない気がします。そんな集中的にしっかりと聴き込むきっかけを与えてくれたPHの「リワーク」の意欲に、私は心底、感謝しなければいけないでしょう!〜どうか、おカラダだけはくれぐれもお大事に!あなたと一緒の時代に生きていることだけが、今の私にとっては、論理と言語の及ぶ領域のすべてをひとまたぎして幸運を確信させてくれるものなのですから。

 

また、蛇足にはなりますが、この2023版をまだ聴いていないという幸運な方がいらっしゃいましたら、是非ともすぐに聴かれることをおすすめします!

決して1988版『In A Foreign Town』や1990版『Out of Water』と聴き比べてみよう・・・などとは思わずに、純粋に新譜ぽく2023版のおよそ2時間に及ぶ長丁場の視聴に没頭してください。

特に日本であれば、最近の、妙にリズムと音階に凝りまくっていながら耳障りの良い高度で出来の良い楽曲!?とは根本的に異なる、けれども確かに存在感のある骨っぽいウタとアレンジと演奏に、新鮮な驚きを見つけることができるかもしれません...笑

 

PHというだけで世間的には、極めてマニアックな部類だとは思うのですが、その中でも名盤解説というわけでもなく、「リワーク」として言わば世の中に“再発表”された作品について、多くの方にとっては常軌を逸していると思われても仕方ないほど長々とメモらせていただいたわけですが、どうだったでしょうか?

 

 

PH自身のおよそ10年くらい前のインタビューの締めくくりの言葉を記して、このメモも締めくくりましょうか。

 

I hope, perhaps, that some of the work will still resonate. But I’ll be well out of here.