オランダv.s.アルゼンチン戦が終わった。
いやぁ、まったく退屈きわまりないゲームだった。
ものすごい守り合いだったとテレビは言うが、本当にそうだったか?
あんなにシュートチャンスすら創り出せない両チームによるゲームを見せられて、楽しかったか?
ワタシは実は、オランダを応援していた。
それは、スペイン流の進化系トータルフットボールを体現するドイツの相手としてふさわしいのは、ディ・マリアとアグエロを失ったアルゼンチンではないと思っているから。
すなわち、面白い決勝戦を見たいのである。
今回のw杯は、Round16のゲームがすべて、めちゃくちゃに面白かった!幸せだった!
それに引き替え、Quarter-Finalのゲームがまったくつまらない!
この元凶は疑いもなくオランダ、いや、ファン・ハールである。
ワタシはやはり、クライフを支持する!
想像するに、ファン・ハールは、ファン・デル・ファールトを失った時点で5バックシステムで闘うことを決断したのだろう。
確かに、メンバー個々の実力差やチームとしてのレベルの違いを考えると、スペイン戦でのこの捨て身の戦術は仕方がない。事実、5バックの宿命である「結局は、フォワードの個人技で点を取る」ことが功を奏した。だが、悲しいかなオランダのメンバーは、ファン・ペルシーとロッベン以外は、本当に2流揃いである。アジアのオーストラリア戦でスナイデルはなにができたか?その後のゲームでも、オランダの中盤はしっかりチャンスをつくれたか?ロングフィードとダイレクトな長めのスルーパス以外で有効な攻撃はあったか?
こんな戦術は90年代に終焉を迎えたのではなかったか!
本当に120分に渡って、メンバー不足と実力不足の退屈なゲームを見せられた!
こんなチームに負けてしまったスペインが最も罪深い。対戦前のスペインのインタビューにも表れているように(このグループで厄介なのは、チリだけだ)、ちょっとスペインは過剰なまでにオランダを舐めていた。いっこうに本気モードにギアを変えられないスペインにはかなりアタマにきた。
だが、オランダとアルゼンチンのゲームを見て、そこまで舐めていた彼らの気持ちも理解できた。
オランダはかなり弱い。初戦でも、どうみてもタダのへたくその域を出ないヤンマートがなぜ使われているのか不思議に思ったが、ムリもない、ほかのメンバーもたいして変わりがない。
5バックシステムを選択した段階で、点を取る可能性はフォワードの個人技による‘奇跡のスーパーゴール’か、相手のボンミスか、セットプレイしかなくなる。
もういや!と言うほど、’90年代のイタリアに見せられてきたではないか。
オーストラリア戦、前半は5バックの戦術同士のロングキック合戦。ともにスーパープレイで同点。オランダは本能的に中盤でパスを繋ごうとするが、残念ながら、シンプルに、人が足りない(笑)
業を煮やして、システムを通常の4-3-3に変えると、普通にやってオーストラリアを圧倒!
だが、その後のゲームでもファン・ハールは5バックに固執する。
オランダには、ファン・ペルシーとロッベンという超一流のフォワードが2人もいる。
正確に言えば、この2人以外はとてつもなく頼り甲斐がない。あとは、カイトくらいか。
と、こう考えだして気がついた。
この結果は、ファン・ハールにとっても「出来過ぎ」なのだ。
このチームには、「グループリーグすら勝ち抜けるチカラは、実は、ない!」ということに、
ファン・ハールは確信を持っていたのだろう。そうか、そうだったか、ファン・ハール。
できることなら、異次元のフットボールを刻み込まれた相手=スペインをあくまで目指す、ドイツに完膚なきまでに叩きのめして欲しかった。
‘フットボールに関しては、クライフが正しくて、ファン・ハールは間違っている’と。
安心しろ。たいていのオランダ国民は、君の選択に謝辞を述べると思う。
だが、クライフをはじめ、世界中のフットボールファンは逆に確信すると思うぞ。
「美しく負ける方が、未来を明るくするに決まっている」

ちなみに。
ワタシが今回のw杯で印象に残ったことを。
①もっともモダンなフットボールをやっていたのは、間違いなくチリだった。
素晴らしいチーム!おそらく、どんなチームにも勝つことができる!
②スイスとベルギーは次世代の欧州のメインフットボール大国となると思っていたが、
早くも、ちょっと伸び悩みを感じる。代わってフランス。ベンゼマがいるかぎり、怖い国にはなりそうもないが、20才くらいのメンツが恐ろしい!
③超人メッシはやはり素晴らしい!
ただし、オランダ戦のように後方にいたら、普通以下。
オシムが言うように「メッシに守備だと!つまらないサッカーをするな!」(笑)
ワタシは尊敬の念を込めて、強い内容のアルゼンチン戦をこう表現する!
「メッシのお散歩タイム」。
(これはまったく、皮肉などではない)
彼の‘お散歩’は、サッカーというものの本質をえぐり出しているかのようだ。
「それは、点の取り合いをするものだよ。点を取られることを恐れてはいけない。なぜなら、それがゲームをする目的であり、思い通りにいかないことの方が当たり前のことだから。」
④ドイツの成熟。
それにしても、感嘆に値するクローゼの類い稀な決定力!
超一流であれば、ひと昔前の武器も通用するのか。中盤はw杯レベルのフットボールでは十分だが、本当のことを言えば、一枚足りない......ロイスの故障がとにかく痛い。
決勝戦もクローゼは先発した方がよいと思う。マスケラーノがオランダ戦でほぼセンターバックにいたのを見逃してはいけない。進化系トータルフットボールの何たるかを知り尽くしている彼を、現在のドイツの不動の中心であるクロースから遠ざけて、ゲームから消してしまわないとドイツは非常に苦労すると思う。
彼は、バルセロナの現役の先発CBだ!
⑤アメリカの体力サッカーに浪花節的感動。
技術が決定的に足りない!だが、このフットボールには未来がある。
第2のジダンがアメリカに現れたとき(またはアメリカ国籍を取得したとき)は、世界を支配すると思う。
⑥アジアのレベルが低すぎる!
日本のどうのこうのと言うより、とにかく、枠を2つは減らすべき!
全体的にフォットボールとしてのレベルはそう高くないとは言っても、w杯である。
段違いで低レベルのエリアを優遇しすぎるのはどうか。

【追記】
もうこの記事を書いたときから10年近くも経ってしまっていることにまず驚きを隠せない笑
私は、この10年何をしていたのだろう・・・。

フットボールのトレンドも随分と変わってしまっている。
2024年の現在では、サムライブルーは世界の競合の末席にまでそのプレゼンスを高めている。振り返れば、あのホンダなにがしのWorldCupでの為体を見て、激しく失望し、我が国の代表戦に対する興味を失っていたここ10年の間に、サムライブルーは歴史的な変貌を遂げていた。

セレクションされる選手の過半数がなんと!海外リーグのプレーヤーとなっているし、欧州の強豪チームの重要なポジションに日本人選手が収まっていることも珍しくはなくなっている。

私自身に尋ねたい・・・・・どうだろう?もう一度、フットボールに対する興味を掻き立ててみないか?!