AZK10形


この車両が引き出されてきた時に一番最初に思ったことは・・・
「なんて名前だったっけ・・・この車。確かトヨタの車・・・」
思い出せなかった。残念ながら、今月で廃型が決定してしまったトヨタのSAIという車です。
何世代か前のプリウスを4ドアセダンに仕立てた車。
「ラジオのCMで、”高級車SAI”って謳っていたけど、どうかねえ・・・この形で高級車と言われても・・・」
そう思いながら、運転を開始しました。ええ。本当に全く期待なんかしていなかったです。この車に。っていうか、時々このBlogで書いていますが、私は、トヨタの車に特に感想はないです。「無味乾燥」って言葉を当てはめたい。
そんな感じで、ドライブを開始したSAI。実は、最初のドライブですごく気に入ってしまって、今年は何度もこの車両を指名して借りることになりました。も~本当に意外な仕上がりのいい車でしたよ。SAI。
と言っても、まず、運転を始めて感じたのは、「違和感」でした。

この大きなハンドルがね。一つ前のカローラを思い出す大径ハンドルなんです。グリップが少し太くて、すごく操作がしやすい。
なのに旋回を開始すると・・・ハンドル操作をし始めたところで「すごくハンドルが重くなる。」感じがつきまといます。特に高速道路入り口での旋回時とかに。
「なんだこれ?ハンドル操作に明らかに何か制御が入っているな。これ・・・お年寄りは、”ハンドルが重い”って苦情にならないのか?」
一定のアクセル開度を保持したまま、ゆっくりハンドル操作をすると「よくわかってしまうステア制御」をしているようです。何度か借りるうちに慣れてしまったのか、気にならなくなりました。
「プリウスの4ドア版」って思っていたので、なんにも期待なんかしていなかったんですよ。何度も書きますが。
でも、とにかく静か。
「ハイブリッドカーなんだから、静かで当たり前だろ?」
あ、いやいや。動力系の音が入ってこない静かさじゃなくて、タイヤ周りの音がだいぶ抑えられているんです。この車両。カタログスペックに表せないところなのですが、ドライバーの感覚と切り離してしまうような”徹底的な静けさ”を狙っているのではなくて、「ちゃんと車両が動いているよ。」という感覚はドライバーに伝えてくれる静けさなんです。
何より、視界がいいです。

フロントウインドシールドは、だいぶ寝ているのですが、3代目プリウスのように額に迫ってはこないです。また、ボンネットは全く見えない着座位置なのですが、サイドに設けられた三角窓も含めて、なんというか、左右の見晴らしが良くて、かつ、上下方向もよく見える視界設計になっています。(3代目プリウスってなんだったんでしょうね。アレの着座位置。)
視界関係でいくと、不思議な装備が・・・

これ。なんだかわかりますか?
運転席ドアなのですが、ガラスの脇に空調吹き出し口が設けられているんです。
いや、確かに豪雪地帯では、「ヒーテッドドアミラーなんてあっても、そもそもガラスが曇っちゃって、ドアミラーを見られないから。」という場面がありますけどね。
どんな構造になっているんだろうと色々と点検してみると・・・

わざわざダッシュボードとドアを貫通させて、空調ダクトを通しているんです。ものすごくお金をかけてる。しかも、このドアを閉めた時にものすごく感心したのが、「ドアが閉まる時の音がすごくいい。」こと。
3代目のプリウスの後ろドアを閉めてみてください。
軽自動車のドアを閉めた時のような音がしますよ。
でも、このSAIは、全く違う。代わりにドアそのものの操作に力が必要なんですけどね。(少し重いです。このドア。)
インパネ周りも複雑な造形をしています。

小物スペースを考えると、このような3次元構造になるのか・・・最近の車両では、センターコンソールそのものがない車両も増えているんですけどね。コストを考えて。すごく複雑な造形をしています。

ただ、凝りすぎたのか・・・しっかりした木目調パネルは許せるとして、「エアコンの温度設定」をどうしたらいいのか、最後までわからなかった。この真ん中のノブを回しても、温度設定にならないんですよ。社外品のナビに換装されてしまっていたせいなのかもしれませんが。
シートもよくできています。

私がトヨタ車に対して、特に感想を抱かない理由の一つが、「シートポジションが決まりにくい。」車両群が多いことです。
走り出した後、「いつまでたってもシート調整&ステアリング調整機構をいじり回している」車両って、まずトヨタ車なんです。
でも、この車両はすんなりポジションを決めることができました。シートの肌触りが良かった・・・それだけじゃないと思う。すごく珍しいことです。こんなにすんなりポジションを決められたトヨタ車って・・・86以来・・・かな?
後席も足元空間がすごく広いわけではないのですが、うまく乗員を座らせる位置を考えていると思いました。

ちょうど後席乗員の顔が隠れるぐらいの位置にCピラーが来るんです。でも、頭上周辺にも圧迫感がないデザインになっています。(少しクラウンの後席を思い出させる着座位置でした。)
トランクルームはこんな感じ。

トヨタのハイブリッドシステムの割には、深さがあるトランクルームです。(そのようにオーバーハング部がデザインされている。)
ただ、これにゴルフバックを入れるとなると・・・真横は・・・厳しいかな。乗員3名でゴルフバックは、室内に貫通させることになりそうです。(シートバックが倒れる構造なのかは、未確認。)
このカーペットをめくってみると・・・

スペアタイヤは、入ってなかった。
ハイブリッドシステムとしては、最新のプリウスの方がずっと優秀なんだと思います。実際、ブレーキを踏んだ時に古いブレーキ協調制御システムなんだと感じさせられる時があります。
でも、ブレーキに気をつける以外は、本当に素直な動きをするいい車です。こんないい車が、あまり街で見かけることがなく、廃型になってしまうのはもったいない。
恐らく、トヨタはもう、大幅に車種整理をしなければいけない段階に入っているんだと思います。車種を削減する代わりにこのSAIのような「一つの車両に手をかけた設計を行って、代わりになが~く販売を続けることで、投資回収を行う。」という手法が必要な時期だと思います。
ここ数年、実は、「自動車業界って、数を追い求めるのは、海外市場向けであって、日本国内は違うスタンスで収益を上げるように考え方を変えないといけないのでは?」と思っていました。
国内総販売台数の4割に軽自動車が達する一方で、外車のシェアが上がっているという状況は・・・恐らく国内メーカ各社の日本市場向け売上げと台数推移を割り算した上で、統計データをとっていくと「実は、1台あたりにかける購入費用は80年代からそう大きく変わっていない。」というデータになるような気がしています。
ただ、安全や環境規制が年々厳しくなる中、車両そのものの単価は上げざるを得ない。そんな状況の中、国民の所得がそう変わっていないとなると、「単価が上がった分、小さな車両にシフトしていく。」というのが、今の日本市場の現況のような気がしてならないんです。
「日本車はつまらなくなった。」という人は、外車に流れていく。(恐らく売れ筋は、日本車でラインナップが少なくなった4ドアセダンやクーぺ)
まあ、私の周りを見ていると外車のシェアアップについては、ほっといても大丈夫だと踏んでいます。「あの排ガス規制でとんでもないことをやった国の車に乗ってみたけど、なんだかディーラーに搾取されているような気がする。」といって戻ってきている人が何人もいますから。
恐らく、「新車を売って、収益を稼ぐ」のではなくて、「売った車で、いかに継続的に利益を上げていくか。」に考え方を変えないといけないんだと思います。iPhoneに代表されるスマートフォンのエコシステムをどのように「車」というハードウエアに組み込んでいくか。
一つの答えが、このSAIのように「モデルチェンジ投資を抑えて、できる限り長く販売を続ける。」方法であって、もう一つが、「売った車を維持するための部品供給をできるだけ長く続ける。」方法なんだと思います。
「部品を長く供給したら、その分、新車が売れなくなるじゃないか。」って?
いやいや。古くはHondaが。今年は、マツダや日産が大々的に発表したじゃないですか。
あのサービスが、「普通の大衆車」にもきっと必要になっていくんです。お年寄りになると、「新しい物」苦手でしょ?多分、新車のディーラーに行くのも億劫になる。
あの「メーカー直系フルレストア」サービスは、体制維持が大変になるのが目に見えるので、街の修理工場の皆さんと連携しての「フルレストア」サービスとかね。
自動車メーカは、街の修理工場に研修費用を取る代わりにしっかり指導教育のための自社内投資を行って、きちんと定期的な研修を受けている修理工場には、例えば・・・「Vitz Premium Reseller」とかって看板を掲げさせてあげるとか。
トヨタの場合、スターレットを自分で整備していて「25年経過した車でも、電装品以外は、どんなパーツでも入手できる!」という感動体験を味あわせてくれているので、逆に他社の大げさなサービスPRに対して、鈍感になってしまっているところがあるのかもしれませんけどね。
「新車を売る以外で自動車メーカは何ができるか?」
本当に考えなければいけない段階にきていると思います。



















































































































