著者: カレン・エンジェル, 長野 弘子
タイトル: なぜYAHOO!は最強のブランドなのか

勝手に採点 ☆☆☆

ポータルサイトとして今や知らないもののいない「YAHOO!」

1994年にジェリー・ヤンとデビット・ファイロという二人のスタンフォード

大学の大学院生が始めたサービスが世界中を席巻。

その誕生からネットバブル崩壊に至る激動の歴史を当事者たちの

証言を基に明らかにし、巨大企業に成長した秘密に迫る。

「ヤフー」の語源がガリバー旅行記に登場する人間に似た乱暴者の

怪獣だったとは知らなかった。


最初の名前が「ジェリーのWWWガイド」っていうのも。

いつもお世話になっているポータルにも関わらず、企業としての側面

については全く関心がなかったので改めて「YAHOO!」の凄さを思い知る。

アメリカでは検索専門の「google」に追い抜かれたようだが、彼らが提供

する各種サービスは広告売上のみに依存しない強固なビジネスモデル

を構築。

その海外戦略の成功例といわれる「YAHOO! Japan」も国内ではまさに

ガリバー。なんと株式の時価総額は3兆円を超え世界の「ソニー」や

「松下」に匹敵するレベルに。

インターネットの爆発的普及に伴い、多くのポータルが登場したが、

それを勝ち残った秘訣が「お客様志向」と「マーケットイン」の徹底。

そして「こういうサービスがあればなぁ」と思うとたちどころにラインナップ
に加わるスピードとM&Aを駆使したビジネス戦略と開発力、意思決定

の早さが日米で成功を収めた秘訣らしい。

最近はホリエモンや楽天ばかりが目立ってるようだが、真の勝者は

今のところ「YAHOO!」に軍配だ。

著者: 桐野 夏生
タイトル: ダーク

勝手に採点 ☆☆☆☆

血の繋がらない父に長年反発し、遂には目の前で見殺しにするミロ。
それから転落人生が始まり、亡き父の盟友であった鄭、内縁の妻で

盲目の久恵、自らの友人でゲイの友部から執拗に追われるようになる。

偶然出会った韓国人徐の愛人となって逃亡を図るがその徐が凶弾に

倒れる。追い詰められたミロを待ち受ける運命とは・・・。

500ページに及ぶ長編だが飽きさせることなく一気に読ませる。
唐突に感じる光州事件の話題も長編のアクセントになっていて○。

事件の発端となった恋人の自殺や前夫のエピソードにあまり触れら

れていないのもミステリアスな雰囲気を盛り上げる。

次々と巻き起こる事件がスピード感とリアリティを盛り上げ、息つく暇
もないほど。

ただ、韓国での銃撃事件やレイプ犯への復讐、日本への逃避行場面

は、当局の追及が甘すぎてあっさりしている感は否めない。

ミロや久恵に突然訪れるダークな凶暴性がなぜ頭をもたげるのかも謎。
特に久恵は友部も手なずけるなど、あまりの変貌振りに女の怖さを感じる。

とりわけ不可解だったのはミロの「40歳で死ぬ!」宣言はどうなった!?
これがポイントになると思いきや全く無視した形でストーリーは進む。

中盤ではこれから「皆殺しか!?」と思わせるも、出産でトーンがガラッと
変わって、あれほど憎みあっていたのにかなりアッサリ目へ。

おかげでいい意味で期待を裏切られる展開。

桐野氏の描く女性像は不気味に意地が悪く、暗い印象でなおかつ、何を
やらかすか分からない狂気と危うさを秘めている。

著者: 村上 春樹
タイトル: ノルウェイの森 下

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!

村上春樹の代表作である大ベストセラー。

主人公の大学生ワタナベと自殺した親友キズキの彼女・直子との
悲しい関係とそれを取り巻く人々を描いた青春小説。

題名であり、ビートルズの楽曲でもある「ノルウェイの森」という冷たく
暗い響きが物語全体を包む陰鬱な寂寥感を如実に表していて見事。

前に読んだのは学生時代だったが、今改めて読み返してもあのとき

味わった感覚、印象がよみがえってきてページをめくるのがついつい

もったいなく感じる。

他の作品と異なって、主人公の心象奥深くを探求するような幻想感、

象徴性は影を潜め、ワタナベがどう感じて、どう行動したかが平易に

描かれ、会話中心に話が進んでいく。

登場する人物は少ないもののみんな個性的で魅力的。
直子、キズキ、緑、レイコ、永沢、ハツミ、突撃隊・・・。

彼らとのエピソードひとつひとつが心に残り愛着を感じる。

緑やレイコさんとの親交、触れ合いによってようやく立ち直るキッカケ

を掴み始める矢先に物語りはあっけなく終わりを迎える。

その後に包まれる何ともいえないせつなさ、悲しみ、迷い、後悔、混沌、
希望は心に不思議な感覚をもたらし、深い感動が胸に刻まれる。

「生は死の対極にあるのではなく、我々の生の内に潜んでいる」
この村上作品に共通する命題を理解できるのはいつのことだろう。

著者: カズマ
タイトル: 実録鬼嫁日記―仕打ちに耐える夫の悲鳴

勝手に採点 ☆☆☆

ご存知アメブロが生み出したベストセラー。
度重なる鬼嫁の過酷な仕打ち、暴言にもめげず、健気に生抜く夫

カズマ。

最近のブログ投稿から厳選したエピソードを新ネタも交えて書籍化!

ブログの愛読者であるため、目新しさには乏しかったものの、あとがき
にはなんと「鬼嫁」も登場して見所も満載。

パニックに弱く、時々とんでもないボケをかますなど、あまりのご無体

さ身勝手さに忘れていた「鬼嫁」のお茶目な一面も再発見。

これだけの支持を集めるとなると、お嫁さんの無謀な仕打ちに腹を据

えかねているダンナがワンサカいるんだなぁと実感。

当然、自分も含めて・・・。

それと、カズマ家と比較して、「我が家は良かった~、こんなにひどくは
ないな~」と小さな幸せに浸れるのも魅力的。

初めてブログを読んだときは、会社にいながらも静寂の中になぜか笑

いをかみ殺した声が響いてひんしゅく買ったっけ。

最初にかみさんに見せたときなんて、「まさか、私まで鬼嫁なんて

思って比べてるんじゃないでしょうね!!!!」と凄まれたっけ。

本書で新鮮な驚きだったあとがき。
言いたいことを自由に言い合える家庭って、ストレスが堪らなくって
確かに良いですよね。それで家庭円満なんて最高!

ただ、カズマ氏には言論の自由がないような気もするが・・・。

著者: 吉田 修一
タイトル: 熱帯魚


勝手に採点 ☆☆

家主の娘に手をつけてしまう大工や友達の彼女に思いを寄せ、挙句

その友達と自分の彼女が寝てしまう男、休暇に民宿で働き、そこの

奥さんと奇妙な関係に陥る会社員。

何かギリギリの線で生きている現代の若者の生活ぶりをリアルに瑞々

しく描いた短編集。

「パレード」での危うさが何となく気に入って期待していたものの尻

すぼみの感。

どの話もラストに「えっ?」って感じ。
ここまで突然フェイドアウトしてしまうと、読後の余韻に浸る暇もない。

確かにどの話も引き込まれるし、この後どうなるんだろう?と展開が
気になるのだが、その後期待を裏切られる。

実際はそれが著者の企みなのだろうがその考えはどうも・・・。

ミステリーのように謎解きでない感覚的な文章にとっては、その

ストーリー展開とともに読後の納得感がとりわけ重要。

そういう意味で読み手任せではない説得力のある結末を用意して

欲しかった。

著者: 水原 秀策
タイトル: サウスポー・キラー

勝手に採点 ☆☆☆

「このミステリーがすごい!」大賞第3回大賞受賞作。

人気球団に所属するピッチャーの沢村は、一流大学卒業後、海外留学

を経てプロ入りした頭脳派サウスポー。

実績もそこそこ積んだシーズン中に見ず知らずの怪しい男から因縁を
つけられ、突然八百長疑惑の渦中に巻き込まれる。

球団や監督からも見放され、選手生命の危機にさらされた彼が、自分

を罠に陥れた見えざる敵に戦いを挑んでその真相を暴く!

主人公沢村がクールで実力もあってなかなかカッコイイ。

体育会系アスリートが集うプロ野球界でこんな男がいたら、
確かに浮きまくること請け合い。

身に覚えのない脅迫からマスコミを使った暴力団との癒着疑惑に展開

する着想もかなり信憑性があってリアル。

球団も会社組織だから、保身を考えるとこの手の報道には臭いものには
フタ的な対応になっちゃうのも頷ける。

新聞社オーナーを父に持つ若き二世が球団の実質的支配者というのも
現実的にありそう。

ただ、残念なのは真犯人とその動機。やっぱり「そこまでやるか!?」
的色彩が強い。

実行犯の元警察官も不気味な仕事人って感じでよかったのだが・・・。
これではせっかくの大投手も脳みそまで筋肉モリモリだよ。


著者: 新堂 冬樹
タイトル: 吐きたいほど愛してる。

勝手に採点 ☆☆☆☆

世にもおぞましい短編集。

被害妄想・自意識過剰な変態男、夫の浮気で精神異常をきたす妻、
性的暴力に耐えられず復讐を果たす美少女、娘からの過酷なまで

の仕打ちに耐える寝たきりの父。

「鬼子」以来、久々にその実力を見せつけられた感。
スピード、迫力、残虐性、異常性とも申し分ない出来。

文章のみでここまで不快感を味わせるのはなかなか容易ではない。
読むのを何度も中断して、気分転換しなければいけないほど。

決して文部科学省やPTAにからは推薦されることのないダークな世界。
ここまでやるか!と突っ込みたくなるお約束オンパレードの新堂ワールド。

人物を深く掘り下げて描写したり、ストーリー構成に唸らせるものが

あったりと小説として本来ならあってしかるべきの要素が完全に抜け

落ちていても全くOK。

短編作品にこそ氏の持ち味が生かされ、人間の狂気を描くその能力
が発揮されるのではないだろうか。

著者: 田口 ランディ
タイトル: モザイク

勝手に採点 ☆☆

自衛隊を除隊して精神病院の看護婦となり、その後、精神病の
疑いのある患者を病院へ移送する仕事をしているミミ。

彼女には、精神を病んだ人間の思考を読み取る特殊な能力があった。

ようやく新しい仕事に慣れてきた頃に担当したのが14歳の正也。
説得の末病院へ向かうものの、途中に失踪されてしまい追跡を
試みるが・・・。

はっきり言って難解。
具体的な設定や巻き起こる事件は興味をそそられるものの、
正也の長くだらだらと続く独白には閉口させられる。

読みにくいうえに、意味不明。
これでは両親も心配するのが当たり前。

救世主救済委員会の仕掛けもよく分からない。
かなり思わせぶりに引き付けるも、タネを読むとガッカリ。

情報化社会における携帯電話の爆発的普及、情報の氾濫、若年層の
凶暴化・無気力化など筆者の言いたいことは何となく分かるが、
ここまで幻想的だと伝えたいことがしっかり伝わってこない。

加えて終盤の大学研究者との関係も突発的で面食らう。
「何でこんなところで」という気が。

ミミと両親、祖父母、上司たちとの関係は、かなり特異で分かり
やすく興味深いので、そっち方面で話を膨らませたほうがベター
だったのでは。

著者: 浅田 次郎
タイトル: 壬生義士伝 上 文春文庫 あ 39-2

勝手に採点 ☆☆☆☆☆

幕末をまさに疾風の如く駆け抜けた新撰組。
貧困から南部藩を脱藩し入隊した吉村貫一郎中心に描く異色作。

随所に「泣かせ」が散りばめられ、気を抜くと涙が頬を伝う。
理由は、吉村貫一郎の独白で吐露される本心。

あの時代に「公」を捨て、守銭奴と蔑まれても妻子のために「私」
にこだわり続けた頑なさ。

武士道を捨て、あくまで家族と故郷にこだわり続けたその愛情は
次第に周囲の人間をも感化させていく。

みすぼらしい姿に成り果て、命の如く大切な刀剣が日々の死闘で
痩せていっても、自身には金を使わず田舎に金を送り続けた執念。

藩校の助教としての高い教養と北辰一刀流免許皆伝の卓越した

腕前を持ちながら、身分の低さから職に恵まれず、家族を養うため

脱藩せざるを得なかった悲しい運命。

人殺しに明け暮れ、身も心もボロボロになりながらも郷愁と妻子を
支えとして、狂乱の時代を生き抜いていった男。

さらに、涙を誘うのは幼馴染みで親友、そして南部藩の重職に

あった大野次郎右衛門との悲しすぎる結末。

藩の存続のため傷ついた友を見捨て、過酷な仕打ちをしてまで

引導を渡さねばならなかった悲劇。


特に貫一郎の亡骸にすがり、握り飯を食べさせるシーンは心に

焼き付いて離れない。

浅田文学の真骨頂ともいうべき作品は、壬生浪となった男の愚直

なまで生き様を浮き彫りにし、人々の心を揺さぶり、引き付けてやまない。

著者: 宮部 みゆき
タイトル: 淋しい狩人

勝手に採点 ☆☆☆

下町にある古書店の雇われ店主のイワさんとその孫・稔を中心に
繰り広げられるヒューマンドラマ。

日常のちょっとした謎を年の差コンビが解消していく短編集。

雇い主が死んだ親友の息子で刑事という設定がいかにもといった
気がするものの、その分展開に幅が出ている。

最も印象的なのは名刺に纏わるお話。
今時そんな営業方法もないだろうと思うが、ラストの展開には
ちょっとビックリ。

社交的で明るい営業マンの無残な最期。
上司の女としての悲しみ、焦り、憔悴が伝わってきて物悲しく切ない。

それと死んだ作家の未完の著書を引き合いに発生した殺人事件の話も
なかなか読ませる。

導入部分の娘との何気ないやり取りから発展していく、ストーリーの
組み立ては宮部氏ならではのうまさが光る。

ただ、犯人が襲ってくるのは蛇足の感。ちょっとやりすぎな気も・・・。

氏の時代物やこういった現代が舞台の連作短編集は、まったく危なげなく
(落胆することなく)堪能できてとってもオススメ。