著者: 市川 拓司
タイトル: いま、会いにゆきます

勝手に採点 ☆☆☆☆☆

すでに映画化され、先頃ドラマ化も決定した超話題の純愛小説。
妻・母に先立たれた父子に訪れる運命の悪戯。

悲しみを乗り越えた矢先の突然の出来事に戸惑う二人。
最愛の人の再来に嬉しさと一抹の不安を覚えながら過ごす日々。
この出来事は現実なのか幻なのか?

涙、涙、涙・・・。
涙なくしては語れない究極のラブストーリー。

あまりに不器用な生き方しかできない父と息子。
その現実離れした生活ぶりにまず驚かされる。

車も電車もエレベータも乗れないなんて。
小まめにメモを取らないと、どんどん忘れてしまうなんて。

喫茶店で自分の考えに没頭してしまい、
夜まで映画館に置き去りにされた子供の気持ちを思うと

胸が締め付けられる。

二人とも髪はボサボサ、服はヨレヨレで臭く、家の中も荒れ

放題の毎日。でも、そんな荒んだ環境を救ったのが死んだ

はずのママ。

やっぱり小さな子供にはお母さんの温もりがなくてはならない。
ほんの短い瞬間だったけど、また会えた喜びはどれほどか。

その微笑ましくも意地らしい三人の新生活が、いつまでも長く

続いて欲しいと心底願わずにはいられない。

そして突然訪れる当然の帰結。
当事者として感情移入してしまい、言い知れぬ深い悲しみを味わう。

奥さんの独白も印象的で効果的。
悲劇的な不幸によって大きく狂う人生にも果敢に立ち向かう強さと

勇気と優しさ。

思いがけず二度の別れを経験した父子のこれからが幸福なもので

あって欲しい。

著者: 法月 綸太郎
タイトル: 生首に聞いてみろ

勝手に採点 ☆☆

このミステリーがすごい!2005年度版第1位に輝いた話題作。
死期の迫った有名彫刻家が最後の力を振り絞って完成させた遺作。

愛娘をモデルにしたその作品から頭部だけが切り離された状態で

発見される。

そして現実に娘までもが殺害され、その生首が届けられる・・・。

猟奇的匂いが強い殺人の犯人は誰か?
彫刻家が自らの作品に託したダイイングメッセージとは!?

ハッキリ言って期待外れ。机上の空論的色彩が強く、こういった

本格ミステリーとやらにはもうついて行けないのかもしれない。

決定的違和感は作家「法月綸太郎」の存在。
親が警視庁の警視だからといってなぜあれほどまで捜査に参加

できるのか?

お約束といえばお約束なのだろうが、どうも納得出来ない。

それと謎解きのキーポイントになる「なりすまし」も現実感に
乏しくいただけない。アイデアとしては優れているかもしれないが、
ホントにここまでやるかな。

娘と元ストーカーのカメラマンとの関係ってどんな感じ?
最後までストーリーに絡んでいるのかいないのか分からない

中途半端さ。

身内の犯罪なんだから何も殺す必要はないし、まして首までを

切ってしまう必然性はどこにあるんだろう。

あまりにコンセプトに引っ張られすぎた、こじつけのオンパレードに
いささか食傷気味。

「リアリティ、現代感覚、社会性」の欠如したミステリーは
後味が悪く胃にもたれる。

著者: 宮部 みゆき
タイトル: ICO -霧の城-

勝手に採点 ☆☆

人気ゲームを下敷きにしたファンタジックアドベンチャー。
「霧の城」に人質として献上される主人公ico。

彼は角を持ち、「ニレ」と呼ばれる呪われた運命にある一族。
「霧の城」に隠された恐るべき謎と君臨する闇の支配者とは?

まさにRPG小説。最近のゲームはやったことがないが・・・。
前半の城に入場するまでは、目の前に画像が浮かんでくるような
錯覚にとらわれるほど。

ただ、風車を伝って競技場へ向かうシーンや鳥かごが吊るされている応接間など
城の内部でのアドベンチャー描写は具体的映像イメージが浮かべにくく難解。

ついつい斜め読みしてしまっても、後々のストーリーに支障はないほど中身が薄い。

その点、ハリーポッターは映画で確認すると一目瞭然だが、映像イメージが
浮かべやすく、解りやすし、なにしろハラハラドキドキさせられる。

ストーリーもicoと少女の場面展開があるものの、特別驚くような仕掛けはなく、
ゲームに依存しているため、先の展開が簡単に読めてしまう。

散々やられた後でも、アイテムゲットでエネルギー補充にみたいな。

やはり、ただ戦って剣を突き刺して勝負ありでは、いかにもラストとしては
稚拙すぎる。戦いの過程でそんなラストを納得させられる材料があれば・・・。

ドリームバスターやブレイブストーリーそしてこれと氏の趣味であるゲームに
インスパイアされた小説はどうも完成度に難あり。

著者: 石田 衣良
タイトル: ブルータワー

勝手に採点 ☆☆☆

余命幾ばくもない末期ガン患者の主人公。
新宿の高層マンションで妻の介護を受けながら絶望的
な余生を過ごしている。

そんな彼が奇妙な夢を見るようになる。
それはこの世界の未来そのものなのであろうか・・・。

宮部氏のドリームバスターを彷彿とさせるファンタジック
アドベンチャーとスターウォーズを足して2で割ったよう!?


元の部下と浮気をしている美貌の妻から逃れるように

職場の女性との精神的な結ぶつきを強め、より夢の

世界に逃避していく主人公。


かなり奇抜な設定で最初は「???」って感じを受けるも、

次第に引き込まれていく。


幻想的な近未来の世界は、ダークでディープな印象。

文字通り垂直問題を抱えた青の塔での激しい闘争。


追っ手から逃れる逃走劇は手に汗握るも、全体的に都合

の良すぎる展開は否めない。


ウィルスの開発者が現代のそんな身近にいるのも違和感。


ただ一番の気がかりはラスト。

あまりにこじつけた妥協の産物の感。



著者: 歌野 晶午
タイトル: 葉桜の季節に君を想うということ

勝手に採点 ☆☆☆

自身初の歌野作品

はじめての作家との出会いは期待と不安が交錯し
まるで初対面の女性とデートするみたい!?

のっけからの文章は衝撃的で鮮烈。
題名もかなりユニークだがそれ以上。

書き出しで著者の技量はかなりのものと直感。

現代の若者の生き方、風俗をストレートに表現
していて小気味良いテンポですすむ。

知人の殺人事件からマルチ商法詐欺の実態を暴こう
と奮闘する展開も意外性あり。

しかし、腑に落ちないのは小説自体に隠された大きな
トリック。まさにだまし討ちの感。

こんな手法を使わなくても、よっぽど引き込める物語
をかけそうなのに技量がもったいない。

それと相まって、ラストが尻切れトンボであっけない。
この辺にアッと驚くような納得できるストーリーが欲
しかった。

読者の期待は良い意味で裏切って欲しい。


著者: 横山 秀夫
タイトル: 臨場

勝手に採点 ☆☆☆☆☆

「終身検死官」の異名をとる倉石警視。

そのずば抜けた観察能力、推理力、人間性に惹かれる
警察官は多くそのシンパを称して倉石学校と呼ばれる。

彼が関わる事件を通して、物語の主人公たちにもたら
されるのは一体何か・・・。

決して多くない文量なのだが、ストーリーの奥深さ、
複雑さ、巧緻さにはいつも新鮮な驚きを覚える。

最も感動したのが「餞-はなむけ-」
やはり子を持つ親としては、親子ネタにはめっぽう弱い。

引退間近の刑事部長という老練、剛直なイメージと自殺
した老婆との取り合わせ、母親の悲壮なまでの気持ち
が琴線に触れ中盤から涙が止まらなくなった。

さらに輪をかけたの倉石調査官の刑事部長に対する態度。
これぞ男の中の男というべきもの。

これまでの横山作品に登場する警官像として、沈着冷静で
クールなイメージが強かったが、倉石警視はかなりの人情
家で共感を覚えやすい。

ぜひともシリーズ化が期待される魅力的なキャラの登場に
大きな期待を抱かずにはいられない。


著者: 横山 秀夫
タイトル: 動機

勝手に採点 ☆☆☆☆☆

犯行の影に必ず存在する動機。

その動機に隠された謎にスポットライトをあてた短編集。

相変わらずの鋭く練り込まれたストーリー展開に息を飲む。

本当に心に迫る文章は字数やページ数に全く左右されない。

短く読みやすい文章からは想像できないリアルで迫力ある
世界が眼前に鮮やかに浮かび上がる。

白眉は「密室の人」
あまりの切なさ、悲しさ、痛々しさに心が凍える。

美人で若い後妻を迎えた裁判官に訪れる悲劇。
予想外の結末に残るのは深い自責の念とほのかな希望。

この物語は生涯に残るほどの傑作。


著者: 金城 一紀
タイトル: GO

勝手に採点 ☆☆☆☆

在日韓国人の高校生が主人公の青春ドラマ。

友情、恋愛、親子の絆、そして死。

これらを通して一歩一歩大人の階段を登る成長ぶりを描く。

さわやかなで心地良い感動にパッピーな気持ちに。

それでも日本人からの差別や朝鮮学校でのいじめは
凄まじく壮絶なほど。

最近では韓流ブームの到来で韓国に対する偏見や差別
がかなり減ってきている傾向にあるが、在日の方々に
対してはどうか。

ああいった文化の大波が両国のわだかまりを押し流し
てくれることを期待するとともに、我々日本人が持っ
ている見識の狭い偏見はなくさなければならない。

本書の主人公が厳しい生活環境の中、明るさを失わず
逞しく育っていく姿は清々しい。

お父さん、お母さんも個性的で魅力的。

何より共感できるのは、愛に国境はないということ。
この普遍的メッセージは何者にも代え難い。


著者: 雫井 脩介
タイトル: 犯人に告ぐ

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!

神奈川県内で発生した男児無差別連続殺人。

県警本部長に就任した曽根は、停滞する捜査に新たな
人材、手法を取り入れることを画策。

その特別捜査官に抜擢されたのが、過去の捜査の失態
から長らく地方勤務を余儀なくされた巻島警視。

史上初のテレビを使った「劇場型捜査」で憎むべき犯人
を追いつめる!

今年読んだ中では文句なしにナンバーワン!

スピード感、臨場感、緊迫感とも文句なし!

巻島の人物描写に若干甘さが見られるものの、それを
補って余りある手に汗握るストーリー展開。

何と言っても、捜査失態を隠蔽する記者会見でプッツン
した窓際デカの復活劇に思わず拍手を送りたくなる。

四面楚歌のなかで忠実な部下に支えられながら独自の捜査
手法を貫く意志の強さ。

上司をトラップにかけてまで犯人逮捕に挑む真摯な姿勢は
読み手を強く惹きつけ共感を感じないわけにはいかない。

さらに秀逸なのは犯人の描き方。

異常な残虐さを焦点に犯人メインで描かれる小説が多い中、
あくまで誰が犯人かは二の次。

地道な聞き込み捜査の結果、現場の刑事が容疑者を逮捕する
といういたって平凡な結末に逆に新鮮味を覚える。

雫井氏は「火の粉」でその実力の片鱗を見せつけ、本書で
ついにその才能が開花した感。


著者: 東野 圭吾
タイトル: ゲームの名は誘拐

勝手に採点 ☆☆☆☆

某自動車会社副社長令嬢と取引先のやり手広告
プランナーが企てた狂言誘拐。

まんまと副社長から身代金をせしめ、山分したうえで
人質の振りをした令嬢を返したはずが・・・。

映画化もされた話題作。

軽快なテンポで展開するストーリーにすんなり感情移入
でき、登場人物も多くないことから、非常に分かりやすい。

人生そのものを仮面をかぶったゲームに例え、刹那的な
生き方を目指す主人公。

大型プロジェクトから外した腹いせに、その張本人である
副社長に復讐する誘拐ゲームを計画。

あまりに短絡的な発想に、薄っぺらな印象を拭えないが、
今の若い世代では、最も受け入れられる考え方かも。

東野氏の作品では、「そこまでやるかな~」的印象が強くて
若干リアリティーに欠ける傾向があるがこれも同様。

それでも、全編に散りばめられたトリックの数々とスピード
感がそうした印象を補って余りある。

殺人事件を隠蔽するために仕掛けられたゲーム。
最後に笑ったのは誰だろう?