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分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

 

「国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省・2019年)によると、介護が必要となった主な原因として、「骨折・転倒」「関節疾患」「脳血管疾患(脳卒中)」「認知症」が挙げられています。


私たちが、健康で人生100年時代を全うするためには、「骨・関節」「血管」「脳」をいかに健やかに保つことができるかが、大きな鍵となります。

栄養素では、特にタンパク質の摂取が重要です。


●骨とタンパク


骨のタンパク質はコラーゲンです。骨の体積の3/4を占めています。

骨粗鬆症の予防には、カルシウムを頭に浮かべる人が多いですが、骨の構造を考えれば、タンパク質が第一です。


骨には「軟骨」と「硬骨」がありますが、どちらもコラーゲンを骨組みに、粘質多糖体が加わって出来上がっています。

硬骨では、この基本構造にカルシウムなどのミネラルが沈着して石灰化組織になっています。


粘質多糖体の形成にも良質タンパクが必要で、特に硫黄を含むアミノ酸(メチオニン、システイン)が必須です。

これらのアミノ酸を豊富に含む食品はです。卵はアミノ酸バランスに優れた食品の代表といえます。


骨細胞には、破骨細胞(壊す専門)と骨芽細胞(作る専門)があり、それぞれが絶えず働き、異化と同化を営んでいます。

タンパク質は常に使われているのです。

 


 

●血管とタンパク

動脈や静脈の基本構造は、内膜・中膜・外膜の3層からなっています。

3層はそれぞれが内皮細胞や平滑筋や結合組織の組み合わせによって構成されています。


心臓から血液が押し出された時、大動脈の壁には、相当な圧力がかかります。

血管壁はこの力に逆らわず自然に拡がり、血液の流入が止めば、弾力で元の太さに戻ります。


このような血管のしなやかさは、結合組織のエラスチンという弾力の大きいタンパク質の網目構造から生まれ、きっちりと三つ編みにされた強いコラーゲンによって守られています。

 
結合組織の作り変えが遅くなることが弾力低下を招くと考えられており、血管壁で弾力低下が起こると「動脈硬化」ということになります。動脈硬化の予防にも、まずタンパク質の補給から、と理解すべきです。


 

●脳とタンパク

脳は、意識や思考や感情を生みだす特別な器官ですが、生体の一部として、その基本的な成り立ちが他の器官と異なっている訳ではありません。

同じように、細胞とそれが作り出すタンパク質の働きによって機能が担われています。

脳の働きの主役はニューロンと呼ばれる神経細胞です。

ニューロンは複雑なネットワークを作って連絡を取り合い、情報を伝えるように作られた細胞です。


すべての細胞と同じくニューロンも、タンパク質を第一の栄養素としています。
タンパク質は酵素タンパクとして、また、ブドウ糖などの運搬タンパクや、 ナトリウム・カリウムポンプのようにイオンを移動させるタンパク質として大活躍であるばかりでなく、各種の神経伝達物質の原料としてのアミノ酸を供給しています。 

神経伝達物質の種類は多く、100種以上もあるといわれていますが、三つのグループ(アミノ酸系、アミン系、ペプチド系)に大きく分類されています。

いずれもタンパク質の関連物質です。アミノ酸はタンパク質構成成分であり、ペプチドはアミノ酸をつないだ物質です。


脳内のアミノ酸の濃度は、血中に比べてとても高いことが知られています。

脳の機能を考える時、タンパク質の摂取は大変重要な条件といえます。

●細胞はタンパクを作り、タンパクは生命を作る

タンパク質は、英語ではプロテインといいます。

プロテインという命名には、この物質が“何にもまして重要”という意味があります。


血液、骨、筋肉、神経から皮膚や爪に至るまで、タンパク質でできていないものはありません。

そのため、その不足は全身に悪影響を及ぼします。


生体の代謝を握る酵素が全てタンパク質であることも、見逃せない重要なポイントです。


また、タンパク質は、抗体やインターフェロンなど、感染に対する自衛手段にも利用されます。

タンパク質が欠乏すれば、細菌やウイルスに対して無防備になってしまいます。

体を作り、機能を担う物質の全てを集合させたとき、最も多いのがタンパク質です。 

 

タンパク質がなければ、体は動くことはおろか、形を保つこともできません。 

 

タンパク質は、栄養を問題にするときに、最優先すべきものなのです。


<参考書籍>

 

 

 

 

食事は大人数で楽しく、ひとりでも美味しく食べることがとても大切です。
私たちはストレスのある状態では身体が正常に働かず、栄養素の消費量にも変化が起こります。
 

ストレスと栄養素の消化吸収
 

1977年に行われた実験では、普通の食事を食べた時には胃液やガストリン(胃酸分泌刺激ホルモン)が分泌されますが、プラスチックのチューブをただ噛むだけでは胃酸やガストリンは分泌されませんでした。
つまり、食べた瞬間に美味しいという感覚が刺激となり、消化酵素や消化ホルモンを分泌させるため、美味しいという感覚がなく、食べることがストレスになってしまうようでは分泌されないことが分かったと報告されています。
美味しいことが大脳に伝わることで、その情報が自律神経系を介して消化管に作用し、消化のための準備態勢を整えていると考えられます。
食事の感覚は消化吸収だけでなく、食後のエネルギー代謝にも影響していると言われています。

ストレスとタンパク質

ストレス状況下ではタンパク質の代謝も変化すると言われています。
学生を対象に行われた実験では、断眠、昼夜逆転、試験の精神的ストレスなど様々なストレスによって窒素排出量が6〜20%増加していることがわかりました。
窒素排出量が増えるということはタンパク質の消費量が増えていることを表しています。
ストレスによるタンパク質の必要量の増加はドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンなどの神経伝達物質や副腎皮質ホルモンなどのホルモンの分泌量の増加により、タンパク質の分解が亢進するためだと考えられています。
神経伝達物質はタンパク質の構成成分であるアミノ酸から合成されています。

また、ある動物実験ではストレスをかけると動きが減少し、脳内のノルアドレナリンの分解が増加しましたが、チロシンを与えるとストレスに伴う行動の変化が消失し、ストレスへの対応が起こったと報告されています。
チロシンは肝臓で合成できるアミノ酸ですが、脳では合成することができません。
ストレスに対応するためにタンパク質とともに、チロシンが多く含まれる食品の摂取もおすすめです。
チロシンはチーズや納豆、豆腐、バナナ、ナッツ類に多く含まれています。

 

ストレスとビタミン・ミネラル

ストレス状況下で特に必要となるビタミン・ミネラルはビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、マグネシウム、鉄などです。
ビタミンB1はブドウ糖からエネルギーに変換する際に重要な働きをしており、さらに脳内の神経伝達物質の合成にも関与しています。
ビタミンB6は神経伝達物質の合成に関与しており、脳の働きに大きな影響を与えています。
ビタミンCは強い還元力を持ち、副腎に高濃度に存在し、ストレスに対抗するホルモンと言われる副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の合成に関与しています。また、コルチゾールの合成にはビタミンEも関与しています。

カルシウムは脳のシグナル伝達で重要な働きをするため、血液中の濃度が維持されています。
マグネシウムは神経伝達物質の合成に関与しています。
ストレスがかかると腸管でのカルシウム・マグネシウムの吸収率が減少すると言われており、さらに、ストレス時に分泌されるコルチゾールやノルアドレナリンはカルシウム・マグネシウムの尿中排泄を促進してしまいます。
鉄が欠乏するとヘモグロビンの濃度が低下し、酸素が運べなくなり、ブドウ糖の利用率が悪くなります。また、神経伝達物質の合成にも関与しています。
 

そしゃくの大切さ

子供のころ、食事の時に多くの方が一口30回以上噛んで食べなさいと言われたことがあるのではないでしょうか。
そしゃくには肥満防止、味覚の発達、口周辺の筋肉の発達、脳の発達、歯周病や口臭の予防、消化吸収の補助など多くの効果があります。
さらに、唾液中にあるペルオキシダーゼという酵素には活性酸素を除去する働きがあり、ガン予防になるともいわれています。
そしゃくして、唾液と食物を混ぜ合わせることで、食物に含まれる発がん性物質によって発生する活性酸素を除去するということが報告されています。
現代人は忙しくてゆっくり食事をする時間がなかったり、噛まなくてもいい食事をするようになっており、昔に比べてそしゃく回数がかなり減少していると言われています。
健康のためにも楽しく、美味しく、たくさん噛んで食事をすることが大切です。

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参考
ストレス事典 河野友信、石川俊男編(2006)朝倉書店
 

咀嚼とがん予防
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshaku1991/1/1/1_1_25/_pdf
 

 

 

冬になると肌がかさつき、かゆくなるという人は多いのではないでしょうか。
特に頬や目や口の周り、ひじ、膝、脛、足の裏などが乾燥しやすくなります。


肌の乾燥やかゆみの症状は、どのようにして発生するのでしょうか?
まずは、皮膚がどのような構造でできているのかを見ていきましょう。
 

●皮膚の構造

 
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層から成り立っています。
表皮はさらに、角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分かれています。
 
この中で、肌の潤いに関係しているのが、「角質層」です。

角質層は、紫外線や摩擦、ウイルスや細菌などの外的刺激から肌を守り、肌内部の潤いを逃さない「バリア機能」という役割を担っています。
 
バリア機能には、「皮脂膜」「天然保湿因子(NMF)」「細胞間脂質」という、肌に元々備わっている3つの保湿成分があり、これらの働きによって肌の潤いは保たれています。
 
 
「皮脂膜」「天然保湿因子(NMF)」「細胞間脂質」には、それぞれ下記のような役割があります。
 
●皮脂膜
天然の保護膜で天然のクリームとも言われています。
皮脂腺から分泌される皮脂(油分)と汗腺から分泌される汗(水分)が混ざりあって薄い膜を作っています。
中性脂肪(トリグリセリド)、脂肪酸、スクワランなどで構成され、肌全体を覆いながら保護しています。
皮膚の水分の蒸散を抑えて、皮膚のつや・滑らかさを良くすると同時に、弱酸性を保ち、細菌の繁殖を抑制する役割があります。
 
●天然保湿因子(NMF)
肌が作り出す天然の保湿剤です。
約40%はアミノ酸(セリン、グリシン、アラニン 、スレオニン、アスパラギン酸など)で、その他はピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸、尿素、ミネラル塩類、有機酸などで構成されています。

吸湿性、保湿性があり、角質層の水分保持に重要な役割を担っています。
 
●細胞間脂質

角質層の潤いの80%以上を担っています。
細胞と細胞を結合させる糊のような役割を担っており、紫外線や雑菌、細菌などの外的刺激から肌を守るバリア機能や、体内の水分の蒸発を防ぐ保護機能があります。
全体の50%がセラミドで、残りの30%がコレステロール、20%が脂肪酸で構成されており、水分と脂質(セラミド)が交互に層状に重なる構造をつくることで、水分を挟み込んで保湿をしています。
このセラミドが保湿の重要な役割を担い、バリア機能を正常に導いています。
加齢や気候の変化、環境の変化などによってセラミドは減少します。
30歳ぐらいから減少が著しくなり、40歳を迎える頃には20代の半分ほどに減ってしまいます。

 

上記のように、乾燥と密接な関係にあるのが、角質層です。
正常に肌のバリア機能が働いている状態であれば、角質層が外的刺激から肌を守り、肌内部の水分・脂質が逃げるのを防ぎ、潤いのある肌を保つことができます。

つまり、乾燥を予防するためには、肌のバリア機能を守ることが何より大切です。

 

バリア機能が低下する主な原因

バリア機能は、ターンオーバーの乱れ、ホルモンバランス、ストレス、紫外線、乾燥、栄養不足、血行不良、加齢による皮脂分泌量の減少などで低下します。

 

●ターンオーバーの乱れ




健康な肌は、ターンオーバーによって常に新たな細胞に入れ替わり、バリア機能が保たれています。
ところが、加齢、ストレス、栄養不足、生活習慣の乱れなどでターンオーバーのサイクルが早まったり遅れたりすると、バリア機能が低下し、天然保湿因子(NMF)や細胞間脂質が生成されにくくなり、保湿機能が低下します。


※ターンオーバーには周期があり、この周期が遅くても早くても肌トラブルに繋がります。
20代の健康な肌で約28日、30代では約40日、40代では約55日、50代では約75日、60代では約100日と年を重ねると代謝が落ちていくため、ターンオーバーにかかる日数が増えると考えられています。

 

肌の作りかえが行われる際に必要な栄養素が不足していると、正常な皮膚ができなくなってしまいますので、栄養対策の強化は欠かせません。

 

●肌の潤いを守る栄養対策

 

皮膚の材料である良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム等)、コエンザイムQ10などの栄養素の摂取が必要不可欠です。
良質タンパクの摂取によって、皮膚トラブルの多くは改善されるとも言われています。

角質層に含まれる天然保湿成分(NMF)は、約40%がアミノ酸で構成されていますので、良質タンパクの摂取は重要です。

中でもビタミンAは、皮膚の角化を抑制し、皮膚の細胞分裂を正常化する働きや、皮膚の保湿機能を保ち、天然保湿因子(NMF)の生成も促します。

 

さらに、必須(不可欠)脂肪酸の摂取も欠かせません。

必須脂肪酸は、肌を外的刺激から守る「皮脂」の原料となる栄養素です。皮脂が不足すると、肌の水分と油分の潤いバランスが乱れて肌のバリア機能が低下し、乾燥につながります。

 

※必須(不可欠)脂肪酸については、こちらをご覧ください。

知っておきたい脂質の問題点-1 トランス脂肪酸 | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)

 

また、冷えにより血流が悪くなると、せっかく摂った栄養素が、各組織まで行き届かなくなるので、ビタミンE、イチョウ緑葉フラボノイドなどの血流をサポートする栄養素の摂取にも重要です。

肌の乾燥に加え、皮膚のかゆみがある場合は、炎症の度合いが症状を左右しますので、炎症防止の対策も非常に重要です。
炎症対策には、抗酸化作用のあるビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、コエンザイムQ10の摂取が大切です。
さらに炎症を引き起こす1つの要因となっているのが、免疫異常です。
免疫調節には、ビタミンA、EPA、DHA、γリノレン酸などの栄養素が必要です。

 

日常生活で最も注意したいのは「入浴時」です。


熱すぎるお湯は、皮膚を保護している成分(天然保湿因子:NMFやセラミド)が流れ出てしまいます。
湯船のお湯は40℃以下に設定し、20分以内の短め入浴にしましょう。

乾燥が気になる時は、ボディタオルを使わずに、石けんやボディソープを充分に泡立てて、優しく洗いましょう。

お風呂あがりはすぐに保湿がおすすめです。
ビタミンEオイルや保湿クリームなどを塗布して水分蒸発を防ぎましょう。