肌の潤いを守る栄養対策 | 分子栄養学のススメ

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分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

冬になると肌がかさつき、かゆくなるという人は多いのではないでしょうか。
特に頬や目や口の周り、ひじ、膝、脛、足の裏などが乾燥しやすくなります。


肌の乾燥やかゆみの症状は、どのようにして発生するのでしょうか?
まずは、皮膚がどのような構造でできているのかを見ていきましょう。
 

●皮膚の構造

 
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層から成り立っています。
表皮はさらに、角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分かれています。
 
この中で、肌の潤いに関係しているのが、「角質層」です。

角質層は、紫外線や摩擦、ウイルスや細菌などの外的刺激から肌を守り、肌内部の潤いを逃さない「バリア機能」という役割を担っています。
 
バリア機能には、「皮脂膜」「天然保湿因子(NMF)」「細胞間脂質」という、肌に元々備わっている3つの保湿成分があり、これらの働きによって肌の潤いは保たれています。
 
 
「皮脂膜」「天然保湿因子(NMF)」「細胞間脂質」には、それぞれ下記のような役割があります。
 
●皮脂膜
天然の保護膜で天然のクリームとも言われています。
皮脂腺から分泌される皮脂(油分)と汗腺から分泌される汗(水分)が混ざりあって薄い膜を作っています。
中性脂肪(トリグリセリド)、脂肪酸、スクワランなどで構成され、肌全体を覆いながら保護しています。
皮膚の水分の蒸散を抑えて、皮膚のつや・滑らかさを良くすると同時に、弱酸性を保ち、細菌の繁殖を抑制する役割があります。
 
●天然保湿因子(NMF)
肌が作り出す天然の保湿剤です。
約40%はアミノ酸(セリン、グリシン、アラニン 、スレオニン、アスパラギン酸など)で、その他はピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸、尿素、ミネラル塩類、有機酸などで構成されています。

吸湿性、保湿性があり、角質層の水分保持に重要な役割を担っています。
 
●細胞間脂質

角質層の潤いの80%以上を担っています。
細胞と細胞を結合させる糊のような役割を担っており、紫外線や雑菌、細菌などの外的刺激から肌を守るバリア機能や、体内の水分の蒸発を防ぐ保護機能があります。
全体の50%がセラミドで、残りの30%がコレステロール、20%が脂肪酸で構成されており、水分と脂質(セラミド)が交互に層状に重なる構造をつくることで、水分を挟み込んで保湿をしています。
このセラミドが保湿の重要な役割を担い、バリア機能を正常に導いています。
加齢や気候の変化、環境の変化などによってセラミドは減少します。
30歳ぐらいから減少が著しくなり、40歳を迎える頃には20代の半分ほどに減ってしまいます。

 

上記のように、乾燥と密接な関係にあるのが、角質層です。
正常に肌のバリア機能が働いている状態であれば、角質層が外的刺激から肌を守り、肌内部の水分・脂質が逃げるのを防ぎ、潤いのある肌を保つことができます。

つまり、乾燥を予防するためには、肌のバリア機能を守ることが何より大切です。

 

バリア機能が低下する主な原因

バリア機能は、ターンオーバーの乱れ、ホルモンバランス、ストレス、紫外線、乾燥、栄養不足、血行不良、加齢による皮脂分泌量の減少などで低下します。

 

●ターンオーバーの乱れ




健康な肌は、ターンオーバーによって常に新たな細胞に入れ替わり、バリア機能が保たれています。
ところが、加齢、ストレス、栄養不足、生活習慣の乱れなどでターンオーバーのサイクルが早まったり遅れたりすると、バリア機能が低下し、天然保湿因子(NMF)や細胞間脂質が生成されにくくなり、保湿機能が低下します。


※ターンオーバーには周期があり、この周期が遅くても早くても肌トラブルに繋がります。
20代の健康な肌で約28日、30代では約40日、40代では約55日、50代では約75日、60代では約100日と年を重ねると代謝が落ちていくため、ターンオーバーにかかる日数が増えると考えられています。

 

肌の作りかえが行われる際に必要な栄養素が不足していると、正常な皮膚ができなくなってしまいますので、栄養対策の強化は欠かせません。

 

●肌の潤いを守る栄養対策

 

皮膚の材料である良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ミネラル(亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム等)、コエンザイムQ10などの栄養素の摂取が必要不可欠です。
良質タンパクの摂取によって、皮膚トラブルの多くは改善されるとも言われています。

角質層に含まれる天然保湿成分(NMF)は、約40%がアミノ酸で構成されていますので、良質タンパクの摂取は重要です。

中でもビタミンAは、皮膚の角化を抑制し、皮膚の細胞分裂を正常化する働きや、皮膚の保湿機能を保ち、天然保湿因子(NMF)の生成も促します。

 

さらに、必須(不可欠)脂肪酸の摂取も欠かせません。

必須脂肪酸は、肌を外的刺激から守る「皮脂」の原料となる栄養素です。皮脂が不足すると、肌の水分と油分の潤いバランスが乱れて肌のバリア機能が低下し、乾燥につながります。

 

※必須(不可欠)脂肪酸については、こちらをご覧ください。

知っておきたい脂質の問題点-1 トランス脂肪酸 | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)

 

また、冷えにより血流が悪くなると、せっかく摂った栄養素が、各組織まで行き届かなくなるので、ビタミンE、イチョウ緑葉フラボノイドなどの血流をサポートする栄養素の摂取にも重要です。

肌の乾燥に加え、皮膚のかゆみがある場合は、炎症の度合いが症状を左右しますので、炎症防止の対策も非常に重要です。
炎症対策には、抗酸化作用のあるビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、コエンザイムQ10の摂取が大切です。
さらに炎症を引き起こす1つの要因となっているのが、免疫異常です。
免疫調節には、ビタミンA、EPA、DHA、γリノレン酸などの栄養素が必要です。

 

日常生活で最も注意したいのは「入浴時」です。


熱すぎるお湯は、皮膚を保護している成分(天然保湿因子:NMFやセラミド)が流れ出てしまいます。
湯船のお湯は40℃以下に設定し、20分以内の短め入浴にしましょう。

乾燥が気になる時は、ボディタオルを使わずに、石けんやボディソープを充分に泡立てて、優しく洗いましょう。

お風呂あがりはすぐに保湿がおすすめです。
ビタミンEオイルや保湿クリームなどを塗布して水分蒸発を防ぎましょう。