韓流時代小説 秘苑の蝶 龍の叫びー俺は必ずそなたを取り戻す。国王となったコンが雪鈴に急接近する | FLOWERS~ めぐみの夢恋語り~・ブログで小説やってます☆

FLOWERS~ めぐみの夢恋語り~・ブログで小説やってます☆

Every day is  a new day.
一瞬一瞬、1日1日を大切に精一杯生きることを心がけています。
小説がメイン(のつもり)ですが、そのほかにもお好みの記事があれば嬉しいです。どうぞごゆっくりご覧下さいませ。

 

 

 ✨予告✨

 Blue Lotus~夜の蓮~ 【秘苑の蝶】

著者 : 東めぐみ

発売日 :

ブクログでレビューを見る»

去年から一年に渡って執筆してきた長編「秘苑の蝶」ここに完結。

☆国王陽祖が崩御した。陽祖のただ一人の子を懐妊した最晩年の側室となった雪鈴。だが、お腹の御子の本当の父親は陽祖ではなく、世子文陽君だ。やがて即位した文陽君(直祖)は、かつての言葉を思い出させるような大胆な行動に出てー。
ー俺は、そなたを取り戻すために必ず王になる。王になるために、女を奪われた屈辱にも耐えてみせる。
シリーズ最終巻が開幕。
******************(本文から抜粋)
  コンは王衣ではなく、青灰色のパジチョゴリを纏っている。あたかも今宵の空に浮かぶ月の光をより集めて織り上げたかのような、光沢ある美しい色合いだ。一方の雪鈴といえば、当然ながら純白の薄い夜着一枚だ。良人でも恋人でもない男の前で見せる姿ではない。
 コンが切なげに綺麗な眉を寄せた。
「そなたを忘れたことはなかった」
 そう、まるで去年の初夏の別離にまで刻を遡ったかのようだ。その間にコンと再会して交わした上辺だけの空しい言葉の応酬、あれらがすべて存在せず、雪鈴が別離を一方的に告げたあの雨の朝からいきなり今、この瞬間へと時が飛んだような錯覚さえしてしまう。
 眼前に佇む彼は、雪鈴がよく知る昔のコンだった。
 雪鈴の眼に大粒の涙が溢れた。
 コンが大きく両手を広げる。雪鈴をなおも細い理性の糸がその場につなぎ止めていた。
「そなたを苦しめるのは俺の本意ではない。だから、そなたが本当にそこまで俺を嫌うなら、もう今夜で止める。二度と雪鈴に近づくこともなく、そなたの心を乱すようなこともしない」
 やはりと、思った。コンは今夜を区切りにするつもりだったのだ。雪鈴は彼に向かって一歩を踏み出した。最初はゆっくりと歩いていたのが、いつしか早足になり駆けていた。
 コンもまた雪鈴に向かって走っていた。二人はどちらからともなく抱き合った。
 コンが雪鈴を強く抱きしめた。
「まさか来てくれるとは。夢を見ているようだ」
 コンが雪鈴の髪に顎を乗せ、想い人の香りを胸に吸い込む。雪鈴もまたコンが衣にたきしめた若葉の清々しい香りを心から懐かしんだ。
 コンの少しくぐもった声が降ってくる。
「済まぬ、そなたを追い詰めるつもりは毛頭ないのだ。そなたが止めてくれというなら、今夜を最後の歓びとして雪鈴への想いは生涯封印すると誓おう。そなたにみっともないところばかり見せて、これ以上嫌われたくない。俺にもまだ少しは男として誇りが残っていたということだ」
 雪鈴は小さく嫌々をするように首を振った。
「あなたを忘れられるなら、いっそ、その方がどれだけ楽だったでしょう」