FLOWERS~ めぐみの夢恋語り~・ブログで小説やってます☆

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Every day is  a new day.
一瞬一瞬、1日1日を大切に精一杯生きることを心がけています。
小説がメイン(のつもり)ですが、そのほかにもお好みの記事があれば嬉しいです。どうぞごゆっくりご覧下さいませ。








☆なお、「私の辿った道(略歴)はコチラから」


 http://www.dhcblog.com/megu1/biography


☆お陰様で、「東めぐみ」は今年で筆歴21年を迎えました。アクセス数に関係なく、自分の書きたいもの、伝えたいことを自分の言葉で紡ぎ出してゆけば良い。そして、それを読んで「何か」を感じたり、良かったと思ってくれる人が一人でもいれば良い。それが私の夢であり、究極の目標です。

筆歴24年の大きな節目を迎えた今年、「一人でも多くの方に自分の作品を読んで頂きたい」という初心に戻り、これからも書き続けてゆこうと決意も新たにしています。






韓流時代小説 月の姫【後編】~王を導く娘~

  (第六話)

  本作は、「復讐から始まる恋は哀しく」の姉妹編。

前作で淑媛ユン氏を一途に慕った幼い王子燕海君が見目麗しい美青年に成長して再登場します。
今回は、この燕海君が主人公です。

廃妃ユン氏の悲劇から14年後、新たな復讐劇の幕が上がるー。
哀しみの王宮に、再び血の嵐が吹き荒れるのか?

 

 登場人物 崔明華(貞哲王后)

        (恒娥)チェ・ミョンファ。またの名をハンア。町の観相師、18歳。あらゆる相談に乗る

         が恋愛相談だけは大の苦手なので、断っている。理由は、まだ自分自身が恋をしたことも

         なく、奥手だから。

 

        燕海君  24歳の国王。後宮女官たちの憧れの的だが、既に16人もの妃がいる。

        前王成祖の甥(異母妹の息子)。廃妃ユン氏(ユン・ソファ)を幼時から一途に慕い、大王大      

        妃(前作では大妃)を憎んでいる。臣下たちからは「女好きの馬鹿王」とひそかに呼ばれる。    

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 ☆本作には観相が登場しますが、すべてはフィクションであり、観相学とは関係のないものです。本当の観相学とはすべて無関係ですので、ご理解お願いします。

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前回までのお話はコチラからどうぞキョロキョロ

 


 沈尚宮は言葉を選びながらも、自分の考えをはっきりと語った。
「このままではつぶれてしまいます」
「つぶれるというのは、主上とあの娘の仲のことか」
 沈尚宮は首肯し、続ける。
「事は面倒です。崔明華は正式に認められた後宮の妃ではありません。下町の一観相師が占いという名目で夜半、王宮に忍び込み、恥知らずにも殿下の夜伽を務めた。そのように皆は申しているのでございます」
 大王大妃の眼が面白そうに輝き、彼女を取り巻く雰囲気が柔らかくなった。
「もっとも、後半の下りは満更当たっておらぬこともないが」
 あの夜、大王大妃の目論見は思った以上に成功した。二人をより接近させる意味で図った夢占だったが、よもや、あの夜、二人が男女の仲になるとは流石に考えてはいなかった。
 扉一枚しか隔ててはいない閨の中のことなぞ、宿直した者たちには丸分かりだ。
 翌朝、大殿尚宮から事の成り行きについて報告を受けた大王大妃は、自分が思う以上の成果を出せたことに会心の笑みを浮かべたものだ。
「大王大妃さま! このようなときに、ご冗談をおっしゃっている場合ではございませぬ」
 咎めるような口調になったことも、沈尚宮は気づいていなかった。
「どうやら、観相師に肩入れしておるのは私だけではなく、そなたも同じようだの」
 大王大妃が愉快げに言う。
「いえ、そのようなことはございませんが」
 ムキになりすぎた自分を恥じるかのように、彼女は押し黙った。図星を指され、早くなりかけた呼吸を整えてから、彼女は力説する。
「夢巫女は王宮を騒がせた醜聞(スキヤンダル)の主役となりました。このままでは、王妃の座に座るのは、いささか無理がありましょう」
 王妃は国母であり、朝鮮の母でもある。耳を覆いたくなるような噂がここまで大きくなった今、明華を王妃にという計略は以前より難しくなったのは確かだ。
 沈尚宮は更に声を低めた。
「それに、お腹の御子さまのこともあります」
 大王大妃の整えられた眉がピクリと動く。六十を過ぎた今も、大王大妃は美しく装うことには手を抜かない。娘時代から主君の化粧を担当してきたのは、他ならぬ沈尚宮だった。
 年寄りかなり若く見える大王大妃ではあるが、この若さと美貌を維持する裏には、相応の時間と労力がかけられている。
 大王大妃は幾度も頷いた。
「確かにのぅ。こうも明華が首尾良く懐妊してくれるとは、私も計算外ではあったがな」
 そう、崔明華は懐妊していた。明華本人は月のものだと思い込んでいたようだが、あの出血は月事ではなかった。
 張貴人に突き飛ばされた際、下腹を打ったのが原因だ。明華自身から月のもののような出血があったと聞かされた瞬間、沈尚宮は閃いたのだ。
 明華の母どころか、祖母の歳だからこそ判る、まさに経験を積んだ女の勘であった。沈尚宮は出産経験があるのも幸いした。
 果たして、明華を診察した医官は断言した。
ーご懐妊に相違ありません。
 出血は心配ないのかと大王大妃が問えば、医官は畏まって応えた。
ー今のところは大事はありません。ですが、今日は本当に運が良かったのです。もう少し強く下腹部を打っていたら、流産になっていたことでしょう。
 医官には大枚を与えて帰した。
ーこのことは他言無用ぞ。
 言われなくとも、医官は余計なことは言うまい。口にすれば、即刻、首が飛びかねない。
 また、大王大妃の考えで、敢えて明華本人にも懐妊は告げていない。明華には王妃になるどころか、後宮にも入る気すら無いのだ。今、明華に真実を告げても益はないと、主君は言い切った。
 確かにその通りだと、沈尚宮自身も思う。懐妊を知った明華の精神的打撃は大きいはずだ。心優しい娘ゆえ、堕胎はしないだろうが、下手をすれば黙って姿を隠す危険性がある。
 ひっそりと遠くにゆき、人知れず子を産んで育てる道を選んでしまいそうだ。あの娘には王の母になりたいという張貴人のような名誉欲はない。それどころか、自分や我が子が王位継承に巻き込まれるのを迷惑がるだろう。
 しかし、それでは困るのだ。この国は一日も早い世継ぎの誕生を必要としている。明華の胎内に宿った御子は大袈裟ではなく、朝鮮に幸福な未来をもたらす、ひと筋の光だ。
 流産とは、何と禍々しい響きだろう。国王は既に一度、キム淑儀の妊った御子を失っている。現在、国王にはただ一人の御子もおらず、御子生誕は朝鮮中の民が待っているといっても過言ではないのだ。
 大事を取って出血が止まるまでは王宮で休ませ、身重の身体に負担がかからないように輿で帰らせた。
 医官が処方した流産止めの薬もゆうにひと月分は持たせ、必ずすべて飲みきるようにと厳しく言い渡した。
 本当は下町のあばら屋に置いておきたくはないというのは、恐らくは主君も同じ考えだろうと思う。後宮に身柄を引き取り、出産まで見守りたいというのが本音だ。
 張貴人は別の意味でも運が良かった。もしかしたら、あの観相師の腹に宿った御子は、世子になり得る王子だという可能性もある。張貴人の暴挙のせいで明華の腹の子が流れたと知れば、主君が張貴人を殺す前に、国王があの高慢女を処刑するかもしれない。
 王は、世子時代から連れ添った張貴人を糟糠の妻として遇していた。十四人の妃たちに対して多少の寵愛の差があるのは致し方ないが、王は基本的に分け隔てなく公正だ。その中でも、筆頭であり、夫婦としての時間も長い張貴人だけは特別扱いだった。
 もっとも、それは張貴人への個人的感情というよりは、彼女の実家や後宮での立場による配慮だとは眼にも明らかである。けれども、愚かなあの女は王の厚情を自分の都合良く勘違いをしていた。
 張貴人が明華に危害を加えない限りは、あの厚顔無知な女の好き勝手に誤解させておいても支障は無い。だが、明華に害なすとすれば話は違ってくる。たとえ王だとて、張貴人に容赦はしないに相違なかった。その点は国王も大王大妃と同じ考えだろう。
 大王大妃がポツリと言った。
「不思議な娘だ」
 そう、確かに崔明華は摩訶不思議な魅力を持っている。
 あの娘の魅力は並外れた美しさと観相師としての能力だけではない。優しさ、賢さ、あの者に悩みを打ち明けただけで、どこか救われたように心が軽くなること。