外国人に日本語教育を
日本にとって、今や外国人労働者はなくてはならない存在だ。
先進国の多くは移民に自国語を学ばせる仕組みを作っている。
日本の現状はどうなのだろうか?
●夜間中学
日本で暮らす外国人は昨年、300万人を超えた。
これらの人たちは日本語学校や大学に通う留学生以外は、主に自治体や支援団体によるボランティア中心の教室で日本語を学んでいる。
戦後、夜間中学は学校に通えなかった人たちの勉学の場だった。2016年には「学び直し」の場として、国が各都道府県と政令指定市に設置を求めた。
だが、夜間中学に通う8割が「日本国籍を有しない」外国人(文科省2019年調査)。しかも、その半数は「日本語が話せるようになるため」に通っていた。
日本には公的な移民向けの教育機関がないため、夜間中学が事実上、その役割を担っている。
そのため、「本来、夜間中学は日本語学校ではない」と強調するある夜間中学の校長も、教科を学ぶコースのほかに、生活に必要な日本語コース、学習のための日本語コースを用意して、外国人が生活できるように便宜を図っている。
●日本語学校
日本語学習者は約12万人、施設数は2541(文化庁、2021年調査)。
その大半が大学や国際交流基金や、地方公共団体だが、民間の日本語学校もある。
だが、学費が高いため、出稼ぎなどで来日した人にとって、子どもを通わせる余裕はない。
一方、通常の小中学校は学齢期が過ぎると、入学がむずかしい。仮に入学できても、日本語が身についたかどうかに関係なく、卒業させられ、次の進学につながりにくい。
しかし、日本語学習ボランティアを続けてきた方は、
「中学卒業資格を得られれば、進学や転職の可能性が広がる。無料で学べる夜間中学の開設はその始まりになる」と期待する。
●定住支援プログラム
これは、日本語や社会の仕組みを教える、唯一の国の制度だ。
期間は半年間。研修中は生活費も支給される。
対象は難民認定された人。
だが、難民はもともと日本を目指してきたわけではないし、教育の機会に恵まれなかった人もいる。だから、多くは「ゼロ」からの出発。
日本語572時間のほかに、銀行口座の作り方や職場のマナーなど生活ガイダンス126時間。
しかし、担当する教師は
「これで自立して生きる力をつけるのは無理」
「本当は実生活で学習する期間も含めて2年くらいあるといい」という。
技能実習生や留学生を雇う会社が増えて、競争が激しくなっている。それに伴い、職場で求められる日本語の水準も高まっているという。
●海外では
先進国は総じて、移民に対する語学教育制度が整っている。
2021年版経済協力開発機構(OECD)によると、ドイツは手厚い。年間1500億円の予算を取り、充実したコースを設ける。しかも、受講は「義務」だ。
米国は840億円。オーストラリア214億円、受講期間に制限なしだ。
日本は7億円。
この差は、OECD諸国の大半は移民全てに言語教育の場を提供しているのに対し、日本は公的言語教育を難民と求職者に限定しているためだ。
●予算の限界
在留外国人は急増しているが、日本は法的整備が遅れている。
2019年、ようやく日本語教育推進法が施行され、民間の日本語学校や自治体などによる教室が出来ていった。
だが、現場からは、使える水準になるには、全く予算が足りないとの声が上がる。
日本は「移民政策はとらない」という原則をとるため、大胆な予算を確保できないという。
しかし、少子高齢化を迎え、日本が深刻な人手不足に陥るのは明らかだ。問題解決のためには、より多くの外国人に働いてもらえるように、日本語教育の充実を図る必要があるだろう。