一般的に、特効薬であればどの病院のどの先生が投与しても結果はそれほど変わりません。アザシチジンは特効薬ではなく、よく効く例が1~2割、少し効く例を入れても5割弱程度で、しかも効果の持続はそれほど長くはありません。

この表は、アメリカ、フランス、日本、イタリアのMDSの治療例の多い病院の治療成績(特に生命予後の悪いHighRiskとVeryHighRiskの成績)です。

左端の数字はビダーザ治療を受けていない方の予後で、VeryHighRiskでは生存中央値9ヶ月程度です。右端のイタリアの移植成績では生存中央値の改善はなく、日本の大学病院でビダーザ治療を行った報告でも生存中央値の改善はありません。

私たちの施設を除けば、米国のMDS治療に傾注している病院の成績が最もよく、生存中央値が倍程度に延長しています。

 

私たちは、ほぼMDSだけの研究・治療を行っており、最も良い生存中央値が得られています。

私たちの施設ではVeryHighRiskの生存中央値が28ヶ月程度で、これはかなりの改善と言えますが、一方で半数の方が28ヶ月程度までに亡くなるということを意味しています。これをさらに改善するために、私たちは臨床研究・基礎研究に力を入れています。

MDSに対しては通常の急性骨髄性白血病の抗癌剤治療が効きにくいため、抗癌剤を減量した少量化学療法もいろいろと試されてきました。この図はキロサイド少量療法の効果を、輸血などの治療と比較したものです。残念ながらこの少量療法も生命予後を改善することはできません。

 

急性骨髄性白血病ではまず抗癌剤治療を行い、一般的には70%程度の方を寛解(芽球の減った良い状態)に導入することができます。寛解になると長期生存の可能性が出てきます。上の図は急性骨髄性白血病で寛解になった人達について、抗癌剤治療を継続した人達、幹細胞移植を行った人達の生存を追跡したグラフです。どちらの治療でも一定の比率の方々が長期生存しています。

移植治療が話題になることが多いですが、抗癌剤治療でもかなりの方が長期生存していることが分かります。

 

下の右図はMDSで移植を行った人達の生存を追跡したグラフです。このグラフの横軸(時間)のスケールを上図(急性骨髄性白血病)にあわせたものが下の左図です。MDSでは移植後2~3年以内で亡くなることが多く、急性骨髄性白血病とは異なった結果です。

 

急性白血病は芽球が急激に増える病気であり、発症時の検査で芽球は20%を越えている。このため検査時に芽球が20%を越えている場合、急性白血病と診断する基準が採用されています。

一方、MDSでは発症時の芽球は20%未満ですが、しばしば経過中に次第に芽球が増え20%以上となり、急性白血病の診断基準を満たすことになります。

この時点で多くの病院では「白血病になりました、白血病の治療をします。」と言われます。しかし実際にはMDSと白血病は異なる性質を持つため、先述したように白血病の抗癌剤治療は多くの場合効きません。

 

MDSウィーン会議の主唱者であるValent博士(イタリア バレンチノ家の一族)、オランダのVon de Loosedrecht博士、ハンガリーのVarkonyi博士らと共に白血化したMDSの予後を調査した論文です。

白血化したMDSの余命(生存中央値)は4ヶ月であり、急性白血病に対する治療は効果がありませんでした。