ビジネス法・金融法研究ノート
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Bitcoin(ビットコイン)は合法なのか?

Bitcoin(ビットコイン)とは、インターネット上の仮想通貨(通貨単位)です。

単位としては、一般的に「BTC」が使用されています(例:100 BTC)。ビットコインは無形通貨であり、ビットコイン口座アドレスと関連付けられることで使用できるようです。

ビットコイン口座(ビットコイン財布)とは、「お客様が自由に世界中に支払いを行うために使用できる無料のビットコイン用財布です。携帯電話やコンピュータからビットコインで簡単かつ安全にどこへでも支払いが可能」とされています。

銀行ではないので、「お客様にビットコインの完全な所有権があり」、「お客様のビットコイン残高、取引の参照、そしてお客様に代わって支払いを行うことはでき」ないとされています。


ビットコインは、以下のとおり、商品や役務の支払いに利用されることが分かります。

①ビットコインクライアントソフトをダウンロード、またはblockchain.infoで無料の口座を開設する
②商品購入者にクライアントソフトより相手口座へビットコイン口座アドレス情報を送信する
③相手より代金の支払いが確認された後、商品の発送やサービスの提供を行う
④返品や返金の際は、相手のビットコイン口座アドレスを送信してもらい、そちらにビットコインを送信する。


ビットコインを利用できるサイト」なるものもあります。

ビットコイン(BTC)には相場があり、専用のチャートページが設けられています。

通貨のコンバーター(両替率)ページにより計算すると、2013年11月28日0:15分現在で、「100BTC」は、「9067112.79日本円」でした。

ビットコインは、日本円など現物通貨と交換できるようです。

以上が、私が現状理解したビットコインの特徴ですが、私は、資金決済に関する法律(資金決済法)の「前払式支払手段」(同法3条1項)に該当し、第三者型発行者の登録が必要になると考えられます。

資金決済法上の「前払式支払手段」は、「証票、電子機器その他の物(以下この章において「証票等」という。)に記載され、又は電磁的方法・・・により記録される金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。以下この号及び第三項において同じ。)に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される金額に応ずる対価を得て当該金額の記録の加算が行われるものを含む。)であって、その発行する者又は当該発行する者が指定する者(次号において「発行者等」という。)から物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの」(同法3条1項1号)と定義されています。

上記の定義は、①書面の前払式支払手段のほか、サーバ型の前払式支払手段も対象としており、②下線のとおり、金額を他の単位に換算して表示していると認められるものも含みます。ビットコイン(BTC)は、サーバ型で、現物通貨に換算できることから、「前払式支払手段」に該当すると考えざるを得ないと思います。

発行者については、「第三者型発行者」の登録(同法7条)および発行保証金(基準日未使用残高の2分の1以上(最低1000万円))を供託、保全契約、または信託契約(14条~16条)をしなければなりません。

ビットコインの場合、誰が発行者であるかがよく分からず、登録および供託等の主体が分からないので厄介ですが、だからといって登録をしていない前払式支払手段を利用することが合法ということにはなりません。

例外として、「特定の施設又は場所の利用に際し発行される食券その他の証票等で、当該施設又は場所の利用者が通常使用することとされているもの」(資金決済法4条7号)が適用除外とされていますが、これは特定のゲームセンター等一定の場所で利用できる場合を想定していますが、オンラインゲームだけに利用できるのであればともかく、ビットコインはインターネット外での決済等にも利用されることに鑑みると、これに該当するのは困難であると考えられます。

「6か月以内しか利用できないもの」(資金決済法4条2号、同法施行令4条2項)であれば、第三者型の登録は不要となりますが、ビットコインにはこのような例外はないようです。

さらに、上記のとおり、ビットコインは、現物通貨に換金可能という特徴も兼ね備えております。これは、銀行法上の「為替取引」(同法2条2項2号)に該当する可能性があり、銀行法上の銀行免許を取得するか、100万円以下に相当する送金のみをする場合は資金決済法上の資金移動業の登録が必要となります(同法37条)。最高裁判例(最決平成13年3月12日刑集55巻2号97頁)によれば、銀行法2条2項2号にいう「為替取引を行うこと」とは、「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう」とされています。現金換金ができるとすれば、この定義にも該当し、銀行免許か資金移動業者の登録(100万円相当以下の送金)が必要と言わざるを得ません。

実際、ビットコインは、マネー・ローンダリング(資金洗浄)に利用できるとのことであり、犯罪収益移転防止法の特定事業者に該当する銀行または資金移動業者として、①取引時確認、②確認記録の作成・保存、③疑わしい取引の届出が必要と言わざるを得ません。

また、資金の保管(預り)をしていることから、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)上の「預り金」(同法2条)をしているとみられ、銀行でなければこれができないと考えられます。

以上のとおり、ビットコインは違法と言わざるを得ないのではないかと考えます。

未来の通貨として画期的という人もいますが、マネー・ローンダリング防止の観点から、国際的に早急に取り締まるべきものと考えます。

キャプティブローンのその後・・・

久しぶりに投稿いたします。

更新は止めておりましたが、近時、キャプティブローンを中心とする提携ローンが反社との関係で問題となっているため、サイレントでいるわけにはいきませんので、この点について問題点はなんだったのかを考えていきたいと思います。

以前、キャプティブローンについて書いた記事は以下のとおりです。

改正割賦販売法と提携ローン③(キャプティブローン)

提携ローンは果たして、問題のある商品なのでしょうか?


本日の日経新聞には以下の記事がありました。

オリコ提携ローン、地銀9行中止へ 審査改善を要求

資金移動業者としての登録をご検討の方に

当職(渡邉雅之)は、資金決済法上の資金移動業の登録の支援サービスを行っています。
これまで、3件の資金移動業者としての登録実績(現在1件進行中)があります。

(内訳)
○電子版トラベラーズチェック
○中国向けの国際送金業
○韓国向けの国際送金業

資金移動業者としての登録をご検討の場合はお気軽にご連絡ください。


弁護士法人三宅法律事務所
弁護士 渡邉 雅之
TEL 03-5288-1021
m-watanabe@miyake.gr.jp

村上ファンド事件上告審判決に見るインサイダー情報に係る「決定」の具体的基準⑩

ビジネス法・金融法の最新ニュースについてお知らせします。従前は「資金決済法・割賦販売法研究ノート」でしたが、テーマを拡大しました。


まずは、下記のとおり、村上ファンドインサイダー情報事件のニュースレターをブログ形式でお知らせいたしました。


弁護士法人三宅法律事務所

弁護士 渡邉 雅之

TEL 03-5288-1021

FAX 03-5288-1025

Email m-watanabe@miyake.gr.jp

村上ファンド事件上告審判決に見るインサイダー情報に係る「決定」の具体的基準⑨

7 本判決の意義

「業務執行に関する機関」を、実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関とした本判決の判断は、証券取引法166条に関するものであるが、日本織物加工事件最高裁判決(平成11610 資料版商事法務18352頁)をはじめとする過去の判例においても示されてきたものであり、全く新しい判断を示すものではない。

同様に、「決定」の実現可能性の判断についても、具体的な実現可能性の程度を問わない点は、(証券取引法166条に関するものであるが、)日本織物加工事件最高裁判決において既に示されていたものであり、全く新しい判断を示すものとは言えない。

もっとも、証券取引法167条の「決定」について、「業務執行を決定する機関」において,公開買付け等の実現を意図して,公開買付け等又はそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされた場合と明示した点については意義が多少あろう。

本判決や第一審判決の判断は、構成要件該当性で客観的に判断するので、基準として明確である。これに対して、控訴審判決のように、主観・客観を総合的に判断して、一般投資家の投資判断に影響がある場合、すなわち、実現可能性が相当程度ある場合にはじめて、「決定」があるとする見解は、基準としては不明確である。

 市場のプレイヤーは本判決について、企業・投資家が萎縮する可能性があるとして懸念を示している者もいるが、法曹関係者は本判決の判断に好意的な者が多いと思われる[1]

 市場関係者としては、具体的な事実のいかんを問わず、社内で合併や公開買い付け等の調査検討や作業等を開始した段階から、「業務執行を決定する機関」による「決定」があると認識しておいた方がよいだろう。

 金融商品取引法166条2項1号の「決定事実」や同法167条の公開買い付け等を行うこと及び中止することの「決定」について、本判決の控訴審判決のように、実現可能性が相当程度ある場合と社内ルールで定めている会社においては、早急に見直す必要があるだろう。

 金融商品取引業者や登録金融機関においては、(ファイアーウォール規制に係る)「非公開情報」(金融商品取引業等に関する内閣府令1条4項12号、153条1項7号、154条1項4号)や、「法人関係情報」(同府令1条4項14号、117条1項14号、123条1項5号等)の判断にも影響を及ぼす可能性も考えられるが、これらの情報の定義においては、インサイダー情報と異なり、軽微基準が定められているわけではないことに鑑みると、必ずしも同様の判断がなされるわけではないと思料する。 



[1] 村上ファンド元代表の有罪確定へ 専門家の見方 」(2011/6/7 20:56 日本経済新聞 電子版)参照。もっとも、木目田裕ほか「村上ファンド事件控訴審判決の検討―「決定」の解釈を中心に」(商事法務1864号(2009年4月25日号))4頁以下参照のように、控訴審判決の判断を妥当とする見解もある。

村上ファンド事件上告審判決に見るインサイダー情報に係る「決定」の具体的基準⑧



第一審判決

控訴審判決

上告審判決

業務執行を決定する機関

実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関

実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関

実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関

証券取引法167条2項の「決定」の意義

「業務執行を決定する機関」において,公開買付け等それ自体や公開買付け等に向けた作業等を会社の業務として行う旨を決定したことをいう。

「決定」に該当するかどうかは、同条において(軽微基準も含め)客観的、具体的に定められており、投資者の投資判断に対する影響を要件としていない。

「決定」に該当するか否かは,一義的,形式的に判断できるものではなく,投資者の投資判断に影響を及ぼし得るものであるか否かという観点から実質判断をしなければならない。

「業務執行を決定する機関」において,公開買付け等の実現を意図して,公開買付け等又はそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足りる。

「決定」に該当するかどうかは、同条において(軽微基準も含め)客観的、具体的に定められており、投資者の投資判断に対する影響を要件としていない。「決定」をしたというためには,

「決定」の実現可能性の程度

「決定」に実現可能性が全くない場合は除かれるが,あれば足り,その高低は問題とならない。

主観的にも客観的にも,それ相応の根拠を持って「決定」に実現可能性があることが必要である。

「決定」の実現可能性があることが具体的に認められることは要しない。

「決定」の実現可能性が全くあるいはほとんど存在せず,一般の投資者の投資判断に影響を及ぼすことが想定されない場合は除外される可能性がある。

「決定」に該当する事実が認められる段階

平成16年9月15日の会議の段階

⇒決定の実現可能性は相当高かった。

平成16年9月15日の会議の段階

⇒一般投資者の投資判断に影響を与える程度の決定があったと認められない。

平成1611月8日の会議の段階

⇒投資者の投資判断に影響を及ぼし得る程度に至った。

平成1611月8日の会議の段階

⇒公開買付け等の実現可能性が全くあるいはほとんど存在しないという状況でなかったことは明らか。

村上ファンド事件上告審判決に見るインサイダー情報に係る「決定」の具体的基準⑦

6 本事件のまとめ・意義

(1) 「業務執行に関する機関」

本判決(上告審判決)は、「業務執行に関する機関」については、第一審判決及び控訴審判決と同様に、証券取引167条2項にいう「業務執行を決定する機関」としては、商法所定の決定権限のある機関(取締役会)には限られず,実質的にライブドアの意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関として、堀江及び宮内のライブドア社内での立場を前提として、両名がこれに当たるとしている。

(2) 「決定」の意義

「決定」の意義については、控訴審判決は、「決定」に該当するか否かは,一義的,形式的に判断できるものではなく,投資者の投資判断に影響を及ぼし得るものであるか否かという観点から実質判断をしなければならないとしていた。しかしながら、本判決(上告審判決)は、第一審判決と同様に、「業務執行を決定する機関」において,公開買付け等の実現を意図して,公開買付け等又はそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足りるとし、投資者の投資判断に対する影響を要件としていないとしている。すなわち、証券取引法167条1項の定める構成要件に形式的に該当すれば(軽微基準を除く。)、「決定」に該当するという形式説に立つ。

(3) 「決定」の実現可能性

 「決定」の実現可能性については、控訴審判決は、主観的にも客観的にも,それ相応の根拠を持って「決定」に実現可能性があることが必要であるとしていた。

これに対して、本判決(上告審判決)は、第一審判決と同様に、「決定」の実現可能性が全くない場合(又はほとんどない場合)を除いて、「決定」の実現可能性の程度を問題としていない。

(4) 「決定」に該当する事実

 第一審判決では、平成16年9月15日の会議の時点で、ライブドアが平成17年3月までに行うニッポン放送株の5%以上の大量買集めにつき,その実現を意図して,ライブドアの業務として調査,準備,交渉等の諸作業を行う旨を決定し,その実現可能性は相当高かった,と認定し、証券取引法167条2項の「決定」に該当する事実があるとした。第一審判決の基準では、「実現可能性の程度」は問題とならないが、その程度が相当高かったとしている点が注目される。

 控訴審判決では、平成16年9月15日の会議の段階では、未だ大量買い集めの可能性の検討の端緒に留まり,一般投資者の投資判断に影響を与える程度の決定があったと認められないとしたものの、同年11月8日の会議の段階までには、「業務執行に関する機関」の決定が投資者の投資判断に影響を及ぼし得る程度に至ったものとして、証券取引法167条2項の「決定」に該当する事実の存在を認めている。

 本判決(上告審判決)は、平成1611月8日の会議の段階までには証券取引法167条2項の「決定」があったとしているが、第一審判決が「決定」があったとした、平成16年9月15日の会議の段階での「決定」の有無については検討がなされていない。第一審判決と同様に、「決定」の実現可能性の程度を問わない本判決の基準によれば、平成16年9月15日の会議の段階で「決定」があったと認められた可能性は高いだろう。

村上ファンド事件上告審判決に見るインサイダー情報に係る「決定」の具体的基準⑥

5.上告審判決

(1) 「業務執行を決定する機関」

上記1(3)のとおりのライブドア内における堀江及び宮内の立場等に加え,記録によれば,堀江及び宮内以外のライブドアの取締役2名は,いずれも非常勤であり,堀江及び宮内に対し,その経営判断を信頼して,企業買収に向けた資金調達等の作業の遂行を委ねていたと認められることに鑑みると,両名は,ニッポン放送株の5%以上の買集めを行うことについて実質的にライブドアの意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関,すなわち証券取引167条2項にいう「業務執行を決定する機関」に該当するものということができ,この点に関する原判断は正当である、とした。

(2) 「決定」の意義及びその実現可能性の程度

証券取引法167条1項は,同条にいう「公開買付け等」の意義を定め,同条2項は,法人の業務執行を決定する機関が公開買付け等の決定をしたことが同条1項にいう「公開買付け等の実施に関する事実」に当たることを定めるとともに,ただし書において,投資者の投資に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準に該当するものを除くものとしている。同条は,禁止される行為の範囲について,客観的,具体的に定め,投資者の投資判断に対する影響を要件として規定していない。これは,規制範囲を明確にして予測可能性を高める見地から,同条2項の決定の事実があれば通常それのみで投資判断に影響を及ぼし得ると認められる行為に規制対象を限定することによって,投資判断に対する個々具体的な影響の有無程度を問わないこととした趣旨と解される。

(3) 「決定」の実現可能性の程度

したがって,公開買付け等の実現可能性が全くあるいはほとんど存在せず,一般の投資者の投資判断に影響を及ぼすことが想定されないために,同条2項の「公開買付け等を行うことについての決定」というべき実質を有しない場合があり得るのは別として,上記「決定」をしたというためには,上記のような機関において,公開買付け等の実現を意図して,公開買付け等又はそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足り,公開買付け等の実現可能性があることが具体的に認められることは要しないと解するのが相当である(最高裁平成10年(あ)第1146号,第1229号同11年6月10日第一小法廷判決・刑集53巻5号415頁参照)、とした。

すなわち、第一審判決と同様に、客観的な実現可能性があることのみを「決定」該当性の要件として、控訴審判決のように,主観的にも客観的にもそれ相応の根拠を持って実現可能性があることを「決定」該当性の要件としたことは相当でないとしている。

(4) 「決定」に該当する事実

 上記(2)の基準を前提として本件についてみると,(平成1611月8日の会議の段階では、)上記1(5)から(8)記載の事実に照らし,公開買付け等の実現可能性が全くあるいはほとんど存在しないという状況でなかったことは明らかであって,証券取引法167条2項の「決定」があったと認めるに十分である、としている。

村上ファンド事件上告審判決に見るインサイダー情報に係る「決定」の具体的基準⑤

4.控訴審判決

(1) 「業務執行を決定する機関」

証券取引法1672項にいう「業務執行を決定する機関」とは,「実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関」であれば足りると解されるが,ライブドアにおいて,ニッポン放送株の大量買集めの決定につき,代表取締役兼最高経営責任者として会社の業務全般を統括していた堀江及び財務面の責任者で企業買収に関する部門を統括していた宮内は,このような機関に該当すると認められ,この点に関する原判決の判断は正当である。

(2) 「決定」の意義

 公開買付け等を行おうとする者が行った当該「決定」が証券取引法1672項にいう「決定」に該当するか否かは,証券市場の公正性と健全性に対する信頼を確保するというインサイダー取引規制の理念に沿って,当該「決定」が,投資者の投資判断に影響を及ぼし得る程度のものであるか否かを,その者の当該「決定」に至るまでの公開買付け等の当否の検討状況,対象企業の特定状況,対象企業の財務内容等の調査状況,公開買付け等実施のための内部の計画状況と対外的な交渉状況などを総合的に検討して個別具体的に判断すべきであり,「決定」の実現可能性の有無と程度という点も,こうした総合判断の中で検討していくべきものである。

なぜなら,同項に規定する「決定」が,会社の機関による最終的な決議を意味する一義的なものではなく,『……公開買付け等を行うことについての決定』という文言が用いられている幅のある概念であり,抽象的,一般的な方針の検討から会社の機関による最終的なものに至るまで種々のレベルの決議があり得るのであり,それが,同項に規定する「決定」に該当するか否かは,一義的,形式的に判断できるものではなく,どうしても,上記のようなそれが投資者の投資判断に影響を及ぼし得るものであるか否かという観点から実質判断をしなければならないのであるが,その検討過程においては,その検討対象としての決議が果たして実現可能か否かという問いかけは,それがいかなるレベルのものであれ,常に問題となるのであり,「実現可能性」は,上記実質判断の検討過程における重要な指標として機能すべきものであるからである。

(3) 「決定」の実現可能性の程度

 そして,上記の観点から見ると,証券取引法1672項の「決定」に該当するといえるためには,決定に係る内容(公開買付け等,本件でいえば,大量株券買集め行為)が確実に行われるという予測が成り立つことまでは要しないが,その決定にはそれ相応の実現可能性が必要であると解される。その場合,まず,内部的に(主観的に),実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定のできる機関において,それ相応の根拠を持って実現可能性があるものと判断している必要がある。しかし,この「決定」に該当するか否かの判断に当たっては,投資者の投資判断に影響を及ぼすものであるか否かという点が重要な判断要素となるのであるから,第三者の目から見ても(客観的にも),実現可能性があるといえるか否かについても検討しなければならない。すなわち,主観的にも客観的にも,それ相応の根拠を持ってその実現可能性があるといえて初めて,証券取引法1672項の「決定」に該当するということができるのである、とした。

以上のとおり、証券取引法1672項の「決定」に該当するといえるためには,決定に係る内容(公開買付け等,本件でいえば,大量株券買集め行為)が確実に行われるという予測が成り立つことまでは要しないが,その決定にはそれ相応の実現可能性が必要であり、主観的にも客観的にも、それ相応の根拠を持ってその実現可能性があるといえて初めて、証券取引法167条2項の「決定」に該当するとした。

その上で,第一審判決が,公開買付け等の実現可能性が全くない場合は除かれるが,あれば足り,その高低は問題とならず、「その実現の可能性がなかったとはいえなかった」という事実が認められれば十分であるとしたことについて賛成できない、としている

(4) 「決定」に該当する事実

① 平成16年9月15日の会議の段階

同日(*第一審判決が「ライブドアの業務執行を決定する機関が,同社においてニッポン放送の総株主の議決権数の100分の5以上の株券等を買い集めることについての決定をしたことに当たる」とした日)は,ライブドア側にとって,村上ファンド側からニッポン放送とフジテレビの株式所有のねじれ関係などを聞いた初めての日であり,ライブドア側としては,手元に何も資料はなく,果たして村上ファンド側の説明が真実なのか否か,ライブドアとしてもこれにどのような対応が可能なのかについて全く何も検討が進められていない段階であった。このような段階では,たとえ組織として調査を開始することになったとしても,未だ大量買い集めの可能性の検討の端緒に留まる,というべきであり,これのみをもって,一般投資者の投資判断に影響を与える程度の決定があったと認めることは相当でない、として平成16年9月15日の会議の段階では証券取引法167条2項の「決定」に該当する事実はなかったとした。

② 平成1611月8日の会議の段階

 同年118日の会議の段階までには,ライブドアの担当者において極秘のうちに,買収資金の調達と買収に向けたスキーム作りの両面にわたる検討が2か月弱にわたって進められ,同社の求めによって再度村上ファンドとの会議が開催されるに至ったこと,同会議においては,同年915日と同様「N社について」との資料に基づく説明が重ねて行われたものの,村上ファンド側からは,前回の会議には参加していなかった瀧澤が出席し,同人から外国人株主についての最新の情報などが提供されるとともに,必要であれば外国人株主を紹介することができるとの話もなされ,ライブドア側からは,ファイナンス部門を担当している中村が新たに出席したこと,そして,席上,ライブドア側から,ニッポン放送の株式をライブドアが大量取得することを前提に村上ファンドの保持しているニッポン放送株について村上ファンドが引き続き保持することに関する契約締結の要望が出されたり,公開買付けの可能性などにも話が及び,ニッポン放送の経営権獲得後の同社の業務の分け方(著名ブランドの山分け的な話)などに関しても話し合いが行われたこと,以上のような事実が認められるのである。このような状況に照らせば,堀江及び宮内が,東田が村上ファンド側とのこの再度の会議(同年118日に開催)を設定しようとしたことにつき了承を与えた段階においては,堀江及び宮内は,ライブドアの決定として,既存のメディアとインターネットの融合という事業目的を達成するために必要との考えから,ニッポン放送というターゲットを設定し,同社に対する一応の調査と,買収資金の調達に関する一応の目処を踏まえ,MAとニッポン放送株に関する広汎な知識と人脈を有し,かつ,既にニッポン放送株を相当数保有している村上ファンドの協力のもとにニッポン放送株の3分の1の獲得を目指す旨を明らかにしたものというべきであり,この段階での堀江及び宮内による決定は,投資者の投資判断に影響を及ぼし得る程度に十分達しているということができ,証券取引法1672項にいう「決定」に該当するものと判断される、とした。

村上ファンド事件上告審判決に見るインサイダー情報に係る「決定」の具体的基準④

3.第一審判決の判示

(1) 「業務執行を決定する機関」

 証券取引法167条2項にいう「業務執行を決定する機関」とは,同法166条2項1号にいう「業務執行を決定する機関」と同様,商法所定の決定権限のある機関には限られず,実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関であれば足りると解するのが相当であるとした。

 そして、堀江及び宮内のライブドア社内での立場を前提として、本件の株式大量買集めにつき実質的に会社の意思決定と同視されるような意思決定を行うことのできる機関とは,堀江及び宮内であり,会社としての意思を両者が一致して決めることが必要であるが,それで十分であり、取締役会の決定は不要とした。

(2) 「決定」の意義

 証券取引法167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定をしたこと」とは,「業務執行を決定する機関」において,公開買付け等それ自体や公開買付け等に向けた作業等を会社の業務として行う旨を決定したことをいう、とした。

(3) 「決定」の実現可能性の程度

 「決定」の実現可能性は、当該公開買付け等が確実に実行されるとの予測が成り立つことは要しない、とした。すなわち,「決定」に(客観的)実現可能性が全くない場合は除かれるが,あれば足り,その高低は問題とならない、と判示した。

(4) 「決定」に該当する事実

 「堀江及び宮内は,平成16年9月15,被告人から,「村上ファンドは,議決権の18%を取得済みであるから,ライブドアが議決権の3分の1を取得できれば,両者の議決権を合わせて過半数を制し,ニッポン放送の経営権を取れる。ライブドアはお金さえ用意すれば,購入先は村上ファンドがあっせんする。」などと言葉巧みに誘われて,その気になり,ライブドアが平成17年3月までに行うニッポン放送株の5%以上の大量買集めにつき,その実現を意図して,ライブドアの業務として調査,準備,交渉等の諸作業を行う旨を決定し,その実現可能性は相当高かった,と認めることができ,これが「ライブドアの業務執行を決定する機関が,同社においてニッポン放送の総株主の議決権数の100分の5以上の株券等を買い集めることについての決定をした」ことに当たるのは疑いがない。」と判示し、平成16年9月15日の会議の段階で証券取引法167条2項の「決定」に該当する事実がある、とした。

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