「世界国勢図会 2007/08」の pp192-195 を参照します。


・中国国内の原油埋蔵量(2006年推定値):
2,544百万キロリットル(160億バレル)

・中国国内の年間原油産出量(2006年推定値):
214.73百万キロリットル(1351万13億5100万バレル)

・可採年数: 11.8年

・参考: 中国国内の原油消費量(2004年実績値)は 249.96百万トン


20億4300万トンが2006年時点の(重量表示)埋蔵量だとすると、それが160億バレルだ、というわけですね。

中国の原油は平均で1バレル当たり127.6875kg の重さだと計算されます。

それは1リットルあたり803g。水の比重の8割。油ですから、まあそんなものですね。

前述の数値はだいたい正確だ、という理解をしたいと思います。


ということは、2004年の中国国内の原油消費量実績は、19億5700万バレルだと計算されるということです。

仮に年間3%の増加率だとすると、2006年の消費量は 20億7680万バレル程度と計算されます。

だいたい年間20億バレル消費、ということですか。

古い記事ですが、中国も結構深刻だということですね。


日本経済新聞 2007年4月1日(日) 5面
「中国の原油埋蔵量、消費6年分」

(Quote)【北京=宮沢徹】中国の国土資源省は商業生産可能な原油の国内埋蔵量が国内消費量の約六年分に当たる二十億四千三百万トンとの調査結果をまとめた。経済成長に伴う原油の需要拡大が続けば国内で供給不足になる懸念が強まっており中国政府は海外油田の権益確保を積極化する。天然ガスの商業生産可能な国内埋蔵量は二兆四千四百九十億立方メートルだった。(Unquote)


別の資料で裏を取ってみましょう。

世界国勢図会 2007/08 を買いました。

192~193ページに世界の「原油の産出量と埋蔵量」という表が載っています。

昨年の世界最大の産油国はこの表によるとロシアです。

ロシア         54,988万キロリットル
サウジアラビア   52,173万キロリットル
アメリカ合衆国   29,801万キロリットル
イラン          22,343万キロリットル
アラブ首長国連邦 15,035万キロリットル

そのロシアの可採年数は17.3年です。

昨年の産出量をもしこのまま継続すると、埋蔵量が新規に大量に追加されない限り17年で枯渇するわけです。

サウジアラビアは 79.2年。アメリカは11.6年、イランは97.6年、アラブ首長国連邦は103.4年。

8月27日にロシアの今後の産油量について懸念を表明しましたが、やはりそれを繰り返したいです。

ピークアウトすると激減する傾向があることを考えると、これから激減する局面がやってくるはずです。

今年とか、来年とか、再来年とか、そこまで正確には言い当てられませんが、近い将来ですよ。

11.6年しか無いアメリカは、1970/1971年がピークでした。

ロシアは1987年に一度ピークをつけ、1990年代に激減した後、2000年以降復活しています。しかし、可採埋蔵量は危機が近いことを示しています。

燃料だけでなくプラスティックもバイオマスから製造しようと、本田技研工業とRITEは研究を進めていると報道されました。


日本経済新聞朝刊 9月7日(金) 15面
「汎用樹脂ポリプロピレン 雑草から合成 地球環境機構など
 CO2排出、石油の3割 3-4年後実用化めざす」

(Quote) 地球環境産業技術研究機構は本田技術研究所と共同で、雑草を原料に汎用樹脂のポリプロピレンを合成する技術を開発した。ポリプロピレンは自動車部品や包装材など様々な分野で使われている。量産化できれば石油を原料にしなくても済むようになり、地球温暖化対策に役立つ。三、四年後目標に実用化する。

 脱石油の技術開発はバイオエタノールなど燃料分野で先行していたが、プラスチック分野にも拡大してきた。

 植物に含まれる繊維(セルロース)を糖に分解した後、遺伝子を組み替えた大腸菌などの微生物を利用してアルコールの一種「プロパノール」を作る。これを使ってポリプロピレンを合成する。雑草二-三キログラムからポリプロピレン一キログラムができるという。

 植物を原料にしたプラスチックとしては、従来もトウモロコシなどを原料にポリ乳酸と呼ぶ樹脂が作られている。ただ食糧のために原料価格が高騰している。また、性能面でも耐熱性や強度で課題があり、用途が限られていた。

 ポリプロピレンはフィルムや容器、自動車部品として使われる汎用樹脂で、国内生産量は年間約三百万トン。開発した技術を利用すれば、幅広い用途での代替が期待できる。石油からポリプロピレンを作る既存の設備も活用できるため、量産が可能という。

 植物原料のポリプロピレンはバイオエタノールと同様に地球温暖化対策として期待される。原料となる植物の生産工程などを考慮しても、石油からつくる場合に比べ、二酸化炭素(CO2)を約三分の一に削減できる。

 世界的にトウモロコシやサトウキビを原料にしたガソリン代替燃料のエタノールが急速に普及しているが、この流れが樹脂の分野でも広がる可能性がある。ポリプロピレンの国内取引価格は現在、バブル期以来の高水準に跳ね上がっている。

 植物から汎用樹脂を作る試みは海外でも盛ん。米ダウ・ケミカルはブラジル企業と共同で、サトウキビ由来のバイオエタノールを原料に、レジ袋や容器などに使うポリエチレンの生産に乗り出している。 (Unquote)


5月にバイオマスコンビナートについて連載しましたが、その中の

5月20日の投稿:「#332 コンビナート(3)」
http://ameblo.jp/mattmicky1/entry-10033438114.html#cbox

5月21日の投稿:「#333 コンビナート(4)」
http://ameblo.jp/mattmicky1/entry-10033439233.html#cbox

と技術的に良く似ている感じがしますが、記事には明確に書いてはありません。

今日はOPEC定例総会の日です。

注目しましょう。

産出量枠を更に減らすのか、現状維持なのか。

9月7日(金)の日経朝刊一面トップ記事は、「ハバートのピーク」に関する報道です。


日本経済新聞朝刊 9月7日(金) 1面
「工業ガス各社 半導体向け供給削減 電子機器生産影響も」

(Quote) 大陽日酸や岩谷産業など工業ガス各社は、半導体や薄型テレビの製造に使うヘリウムガスの供給量を十月から減らす方針を固め、国内需要化と調整に入った。最大手の大陽日酸の削減率は平均三〇%。世界的に需要が増えているうえ、主要産出国の米国のガス田で老朽化設備の大規模改修が始まり、供給が細るため。代替ガスですぐに対応することも難しく、年末商戦を控え、様々な電子機器の生産に影響が出る可能性がある。 ...(中略)...

 ヘリウムガスを生産するのは米国やロシアなど五カ国だけで供給源は限られる。 ...(中略)...

 シェア首位の大陽日酸は一部の需要家に供給削減をすでに通知、今後約三千の顧客に通知する。二位の岩谷産業は平均一〇-二〇%、三位の日本エア・リキードは平均二〇-三〇%供給を減らす方針。四位のエア・ウォーターも検討している。各社は緊急性が低い風船など娯楽分野向けの削減幅を大きくし、半導体など主要産業向けは一〇%前後にとどめる。

...(中略)...

 今回の供給削減は米国の生産事情の影響が大きい。日本で使われるヘリウムガスの大半が米国産だが、現地では老朽化しトラブルが相次ぐガス田設備の改修が本格化。これに伴い日本への供給が減る見通しだ。

 大陽日酸と日本エア・リキードは、主要調達先の米エクソンモービルから十月以降の大幅な供給削減を通知されたもよう。米ワイオミング州のガス田で十月から、大規模な設備改修に着手する影響とみられる。

 改修には二週間から一カ月かかるとみられ、その間は生産が減る。他の調達先でも設備改修の可能性が浮上、「日本への影響は少なくとも年内いっぱい続く」(工業ガス大手)という。 (Unquote)


上の記事だけだと「設備の老朽化のせいであって、地下に埋まっている資源量とその産出(噴出)の時間当たり量の問題ではない」と主張可能ですが、同じ日経朝刊の別のページに掲載されている続きの記事を読むと、日本経済新聞社が、この問題が「ハバートのピーク」に関するものであることを理解していると暗示していることが分かります。


同 11面
「資源争奪、希少ガスにも ヘリウム供給削減 代替品決め手なく」

(Quote) ヘリウムガスの供給削減という異例の措置は、米国での設備改修が直接の引き金になっている。ただ背景にあるのは、慢性的な供給不足と加熱する資源争奪戦だ。新たな大規模ガス田が発見されない限り、世界需給の逼迫(ひっぱく)は当面続く見通し。 ...(後略)... (Unquote)

UOPという会社がイリノイ州にあります。Honeywell の子会社です。

石油精製に関わりのある方なら、この会社の名前を一度は聞いたことがあるはずです。私も職業柄、就職直後から知っています。

世界中の製油所の多くで、この会社の技術を使っています。その技術ライセンス料で食っている会社です。

さて、このUOPがペンタゴン傘下のDARPAから、「植物油や藻油からジェット燃料を製造する技術の研究開発」を受託していることがわかりました。

http://www.uop.com/  
http://www.uop.com/pr/releases/PR.DARPABiofuel.pdf

ペンタゴンが探りを入れているのは石炭液化だけではなく、再生可能資源も視野に入れていることがこれでわかりました。

ジェット燃料って、航空機用だけじゃないんですよ。

戦車、戦場用の小型発電機、水上艦船もケロシンを主原料とするジェット燃料で動いています。ジェットエンジンと同じ構造のガスタービンが動力源として使われているからです。

ガスタービンはディーゼルエンジンと違って、燃料の消費量が多いので、現在のアメリカ陸軍が遠征すると兵站のざっと4分の3は燃料で占められます。

軍隊の戦闘能力を維持することを真面目に考えたら、イラク一国占領する価値はありますよ。政情を安定させて生産と輸送を滞りなく実施できるようになる、という前提つきですが。

8月25日(土)の夕刊にこういう記事が載りました。

日本経済新聞夕刊 8月25日(土) p1
「中東産油国、省エネ競う 石油消費を抑制  UAE 太陽光軸に  サウジ 風力を研究」

概要だけ記載しておきます。

(概要)

・アブダビ: 「グリーンシティ」を設。消費電力のうち4万kWを太陽光発電で。

・ドバイ: 「新エネルギー・環境技術企業向け経済特区」を建設。

・サウジアラビア: キングファハド石油鉱物大学に新エネルギー開発センターを設置。太陽光、風力の研究を。

・オマーン: ナツメヤシからエタノールを生産するベンチャー企業に工場建設を許可。2008年から生産開始。8割の輸出を狙う。

何でこんなことするんでしょうね? 産油国が。

よくよく読んでみると、記事にはこう書いてあります。

「原油価格が高騰し、輸出で潤う中各国が新エネルギー開発を手掛ける理由は、①国内の石油消費を減らし、一定の輸出量を確保②化石燃料の消費拡大を推し進める地球温暖化の現況と言う悪いイメージの払拭(ふっしょく)③急成長が見込まれる環境関連産業への参入--などだ。」

大半のエコノミストや石油会社首脳が言うように、もし本当に埋蔵量が潤沢だったら、自国内の石油消費を減らさなくても輸出量を確保できるはずです。

8月25日の日本経済新聞には、興味深い記事が2つ載りました。

1つ目は朝刊

日本経済新聞朝刊 8月25日(土) p6
「ドイツ向け石油供給量3割削減 ロシア石油大手」

(Quote) 【モスクワ=古川英治】ロシアの石油パイプラインを独占する国営トランスねふちは二十四日、同国石油大手ルークオイルが七-八月のどいつ向けの供給量を三割削減したと発表した。全体の輸出量が減少しているかは不明。ロシアはこれまでも石油や天然ガスの供給を止め、欧州各国で影響が出ている。 (Unquote)

Financial Times も報じています。

FT.com 8月24日 "Russia cuts oil supplies to Germany"
http://www.ft.com/cms/s/0/e9336464-523f-11dc-a7ab-0000779fd2ac.html

2段落目の "..... had been reduced by about one-third in July and August but refused to explain why the reduction had occurred." という部分が気になります。

その次の日の記事では、独側の輸入業者とルークオイルとの間に紛争がある、という観測を載せています。

FT.com 8月25日 "Russia cuts oil supplies to German refineries"
http://www.ft.com/cms/s/0/df7cf6b0-52a3-11dc-a7ab-0000779fd2ac.html

8月25日の日経の2つ目の記事は、この次の投稿で。

ヴァージン・グループがブタノール開発に乗り出したことを昨年11月4日の投稿#142で述べました。

同社がボーイングと共同で航空燃料開発に乗り出したことが報道されました。

日本経済新聞夕刊 6月15日(金) p3
「航空機、CO2削減急ぐ」

(Quote) 【シカゴ=毛利靖子】ボーイングは新型の中型旅客機「787」で燃費を従来の同景気に比べ二割改善することで、温暖化ガスの排出を同じ比率で削減する。乗客一人を同じ距離運ぶのに必要な燃料の量を多目的スポーツ車(SUV)の五分の一近くに抑える。燃料の消費量の抑制で、温暖化ガスの排出削減を実現する考えだ。

 燃費改善は主に機体軽量化で進める。エンジン設計の見直しなどで金属の使用量を減らす一方、胴体など機体の四割強に炭素繊維など軽量新素材を使う。軽量化によってNOxの排出量も三割以上減らせる。

 英ヴァージン・アトランティック航空と、バイオ燃料を世界で初めて航空機に使用する試験にも二〇〇八年から共同で取り組む。植物からつくるバイオ燃料はCO2排出にカウントされないため、航空会社として温暖化対策になるためだ。

 燃費改善は温暖化対策だけでなく、燃料高騰に悩む顧客の航空会社の経費削減にもなる。新中型機の開発で蓄積した技術の転用で、大型旅客機[747-8」では乗客一人当たりの燃料使用量を一五%低減を目指す。 (Unquote)

記事には明確に書いてありませんが、ケロシン主体のジェット燃料にブタノールを混合する方向で検討が進んでいるのではないかと私は考えています。