バイオエタノールで火力発電してしまおうとしている企業もあります。


日刊工業新聞 9月27日 p14

[概要]

・三井物産が出資して設立したGTF研究所という企業があった。(電力卸売自由化に伴い、石油火力発電所を自前で所有して売電しようとした事業)

・原油高騰でGTF研究所は苦境に陥り、営業停止を決めた。

(ここまでは記事中に明確に書いてはありませんが、分かりやすくするため私が書き加えました)

・三井物産は9月にGTFグリーンパワーなる別会社を全額出資で設立。GTF研究所から営業譲渡を受けた。

・GTFグリーンパワーはバイオエタノールをブラジルなどから輸入して発電する方針。

・カーボンニュートラルなので、環境意識の高い自治体向け販売を狙う。


うーむ... エネルギー収支はどのくらいになるんでしょうね。

ブラジル国内で消費する限り、バイオエタノールのエネルギー収支は「1:8~1:9」程度で、投入エネルギーの10倍未満程度が得られと計算されています。

そのエタノールを地球を半周する船に乗せて日本に輸入しようというわけです。

ま、ガソリンに混ぜるバイオエタノールも同じ問題を抱えていますが。

光合成は葉緑体で行われます。

葉緑体の性能を向上させたり、葉緑体の数を増やすことができれば、光合成量をネットで増加させる道へつながる可能性が出てきます。

日経産業新聞 9月8日 p9

[概要]

・立教大学の研究グループが、葉緑体が分裂して増加する仕組みを解明した

・分裂時にリング状の組織が出現し、葉緑体の中央を外側から絞り込んで切断する。これによって葉緑体が増加する

・このリング状組織の構造がある程度判明した

・葉緑体は24時間に1回分裂する。分裂の頻度を上げれば、光合成機能を向上させられる可能性がある

・研究グループでは、この成果が穀物増産技術開発につながる可能性があると考えている

バイオプラスティック開発にあたって目下の重要な課題の一つが、耐熱性を上げることです。

最近急激に改善していますが、これまでのポリ乳酸は60~70℃程度で変形してしまう傾向がありました。これだと、真夏のアスファルト路面に接触したりすると変形しかねません。

せめて100℃くらいの耐熱性はほしいですね。

日経産業新聞 8月21日 p9

[概要]

・東京農工大学の研究グループの成果

・キャッサバの澱粉と竹の粉末を混合し、170℃で2時間加熱することにより、150℃の耐熱性を得た

・電子レンジ用には180℃必要なので、更に研究中

以前の新聞記事を見直してみると、それらしきものが... ありました。

日刊工業新聞 8月3日 p12

(Quote) 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2020-2030年の実用化に向けたバイオマスエネルギー先導技術開発で、三菱重工業と産業技術総合研究所が共同で行う木質系バイオマスガス化触媒液化による輸送用製造技術など15テーマを選定した。 (Unquote)

#150で述べた研究開発に三菱重工業が参加しているようですね。

古い記事ですが、いくつかご紹介していきましょう。

色々な人が色々な試行錯誤を行っています。

7月14日 日本経済新聞朝刊 p15

[概要]
・京都大学は松下電工などと共同研究中
・植物の繊維質をほぐし、再度固めて板状にした
・鉄の5分の1の重さで同等の強度を得た

詳しく書いてはありませんが、植物から採ったセルロース等の繊維を一本一本にほぐし、それを化石燃料系の樹脂で固めなおした物質のようです。

バイオプラスティックには、こういう化石燃料系素材と混合して使用するものが今のところ多いです。

バイオ系素材だけでは、まだまだ強度が足りないのでしょう。

産経新聞をときどき読むことがあります。

このブログの内容とはあまり関連は無いですが、国際情勢・軍事関連の情報センスに関しては産経新聞が日本の大手新聞の中で「最も悪くない」新聞だと私は考えています。

異論はあるでしょうけどね。

産経を読むと、福島さんという北京特派員の方の名が出ている記事がしょっちゅう出てきます。「なかなか日経よりセンス良いわい」と思いながら読んでいたのですが、その特派員の方がこういうブログを書いてらっしゃることを最近知りました。

北京趣聞博客
http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/

さて、この11月9日の投稿に福島さんが書かれている通り、WHOの事務局長ポストを中共政権が香港政庁経由で押さえました。

私が思うに、中共が事務局長ポストを押さえようとした本当の狙いは「台湾の国連加盟阻止」で、「陳水扁総統罷免問題」と絡めてその話をしても面白いのですが、このブログではやめておきます。

バイオ燃料ブログですから、エネルギーの話をしましょう。

WHO事務局長ポスト争いほど注目を集めていませんが、現在進行中のIEA事務局長ポスト争いの方がずっと重要だと私は思います。

関連記事2つ挙げておきましょう。

まず一つ目。


10月25日(水) 日本経済新聞朝刊 2面 「首相官邸 24日」
(Quote) 10時 官邸でプレスコット英副首相。この後、中川幹事長。続いて国際エネルギー機関の事務局長に立候補した経済協力開発機構の田中伸男氏。望月資源エネルギー庁長官、北畑経産次官らが同席。 (Unquote)


安倍首相にIEA事務局長に立候補した田中氏が面会し、それに資源エネルギー庁長官と経済産業事務次官が同行しているということです。

もう一つの記事です。


11月7日(火) 産経新聞 7面 「田中氏、最終候補に残る - IEA事務局長」
(Quote) 日米欧など26カ国が加盟する国際エネルギー機関(IEA、本部パリ)の次期事務局長選で、日本の田中伸男・経済協力開発機構(OECD)科学技術産業局長(56)が最終候補の3人に残ったことが6日、判明した。 (Unquote)


以前から述べていますが、私は「日本の官僚機構の一部の人達、特に経済産業省の一部の人達、その中でも特に資源エネルギー庁の人達は、世界の化石燃料生産の将来を危惧しており(ピークオイル問題を認識しており)、代替エネルギー開発と省エネルギー化促進に向けて、真剣な努力を始めている。ただし、現時点ではまだその旨の発言を公の場ではしていないし、記者クラブ経由で大手メディアに流す情報にも『手加減』を加えている」と考えています。

このIEA事務局長立候補も、そういう一環だと私は思います。

IEA事務局長のポストを得るということは、IEAに集まってくるあらゆる情報を内部情報の段階で日本が入手/参照できるようになることを意味します。

また、外部に公開されないIEA内部での議論の様子を知ることができます。

わざわざ首相に会っておく必要もあろうというものです。

さて、福島さん、もしこれを読んでくださっているのでしたら、申し上げます。

WHO事務局長は落としても私は全然構いません。しかし、IEA事務局長の椅子は是非とも奪取してほしいです。

我らが産総研もBTL燃料を研究していました。

(独)産業技術総合研究所ウェブサイト:
http://unit.aist.go.jp/btrc/ci/research/index.html

結局、植物の繊維質から液体燃料を得る方法は2つある、ということです。

(1) 繊維質をほぐしてセルロース・ヘミセルロース・リグニンに分解し、それを加水分解して糖分子を得、糖分子を発酵させてアルコール(エタノールにせよ、ブタノールにせよ)を得る。

(2) 繊維質を高温・高圧下でガス化し、水素と一酸化炭素を得る。水素と一酸化炭素を合成して、軽油やガソリンを製造する。

バイオエタノールは(1)の製法によるものです。ガソリンや軽油などのフィッシゃー・トロプシュ燃料は(2)の製法によるものです。

どちらがより有利なのかは、まだよくわかりません。


10月19日付の日刊工業新聞25面には、biomass-to-liquids (BTL)の話が載っています。

ドイツで来年初めにBTL設備が立ち上げられる、と書いてあります。残念ながら、「立ち上げられる」の意味が「プロジェクトを開始する」なのか、「設備が完成して稼動開始する」なのか記事の内容だけでは不明です。

フォルクスワーゲン社とダイムラークライスラー社とがプロジェクトに参加しているようです。

記事には、ドイツが世界最大のバイオディーゼル生産国だということも書いてあります。


繊維質などのバイオマスから一酸化炭素と水素のガスを得たら、それから液体燃料を合成します。その合成工程は、フィッシャー・トロプシュ法(FT法)と呼ばれている、1920年代にドイツで開発された技術です。

第二次大戦中、ドイツはこの技術を使って、石炭から液体燃料を製造しました。ドイツは石炭は豊富ですが石油は産出しません。

第二次大戦後は、南アフリカでこの技術が使われ続けました。メジャー石油会社も研究開発は続けていました。

その後、1990年代半ばにマレーシアでシェルが gas-to-liquid 設備を建設しました。この設備は天然ガスから一酸化炭素と水素を得、それからFT法で軽油などに転換します。(註)

2000年代に入ってからカタールがこれに目を付け、南アフリカの合成燃料会社サソールやシェルが、カタールのプロジェクトに参加しています。

中国とインド、それにインドネシアでは、豊富な石炭を利用すべく、石炭からの液体燃料製造にFT法を使おうとしています。サソール、シェル、日本のNEDOなどが商業プロジェクトや研究開発に参加しつつあります。

この「ガス化+FT法」は、バイオマスを原料として行うこともできます。バイオマスの主成分 - セルロース・ヘミセルロース・リグニン - の中には炭素と水素が含まれており、一酸化炭素と水素を得ることは十分可能です。

- - - - - - - - - -

註: Gas-to-liquids = 「GTL」は「LNG」とは全く異なります。

LNGは「液化天然ガス」で、「地中から掘り出した天然ガスをそのまま圧力をかけ冷却して液体にしたもの」です。LNGの成分は天然ガスの主成分メタンそのものです。天然ガスに化学変化を起こさせて製造する液体ではありません。

GTLは、「地中から掘り出した天然ガスに化学変化を起こさせて、ガソリンや軽油などの液体燃料を製造すること」です。


石炭からガソリンや軽油などの液体燃料を製造することは技術的に可能です。

技術的に可能なばかりでなく、特殊な環境下ではありますが、商業的に操業してきた実績もあります。主に南アフリカです。

アパルトヘイトのために長い間石油の禁輸を受けていたため、石炭(と天然ガス)から液体燃料を製造してきています。記憶だけで書きますが、40年間くらい前からだと思います。

90年代にはジェット燃料も製造し、実際に航空会社が使った実績もあります。

石炭と水から一酸化炭素と水素の混合ガスをまず製造します。その混合ガスから液体燃料を製造します。

この混合ガスを製造する工程は、バイオマスを原料として行うことも原理的に可能です。