まずは、安く豊富に石油が得られる状態が維持されてきたおかげで我々がどのような便益を得てきたか、について述べます。「石油の便利さ」と表現しても構いません。

これを理解すれば、石油が減退するに従って何が問題として表面化するかがわかります。

そして、何を解決しなければならなくなるか、がわかります。

そうすれば、現在開発中の諸々の石油の代替品や省エネルギー技術などが、来る将来どういう重要性を持ち得るのか、どういう効果を社会にもたらすと期待できるのか、それら代替品や省エネ技術が現状どういう欠点を抱えているのか、がわかります。


リンク先「持続可能な社会を目指して」の執筆者 forever2xxxさんとの対話の中で、私が「ピークオイル後の将来、社会経済をどう構築していくか」について私案(試案)を提示する旨述べました。

バイオ燃料以外の代替エネルギーや省エネルギーについても論じることになりますが、ここで書こうと思います。

ピークオイル論者の中には「ピークオイルから石油崩壊(Petrocollapse)へとつながり、近代社会は崩壊する」という発言をする人がいます。

私もその可能性を否定はしません。

しかし、少なくとも当面(20~30年くらい?)は、そうはならないだろうと思っています。

また、技術革新次第ではその後の展望 - 資源を枯渇させず、環境もそれほど破壊せずに、近代的な産業社会の果実を味わえる社会を持続させ発展させていくこと - が望めるのではないかと思っています。

記事中ではトマトの大型化の可能性について書いてありますが、バイオ燃料ブログとしては、パームヤシの実の大型化やサトウキビの大型化を期待したいところです。

日刊工業新聞 10月25日(水) p29

[概要]

・通常、細胞分裂が1回起こるとDNA複製が1回起こる。一方で、細胞分裂無しにDNAがどんどん倍増していく現象が知られている

・理化学研究所が、この細胞分裂を伴わないDNA複製を制御する遺伝子を発見

・細胞核中のDNA量が増えるほど細胞が大きくなる

・この遺伝子の利用によって、作物を大型化できる可能性がある

化学メーカーは自動車メーカーよりずっとバイオプラスティックの研究開発に積極的です。

日経産業新聞 10月23日(月) p15

[概要]

・カネカが植物油を原料に生分解性樹脂を開発

・カネカが15年前に発見した微生物を利用

・その微生物は植物油を食べ、体内で樹脂の原料を合成する

・カネカは微生物の性能を向上させ、微生物の生存に必要な器官以外のほぼ全てで原料を合成させられるようになった

・ポリエステルに近い組成のプラスティックを製造できる

・生分解性が高く、好気性菌・嫌気性菌のどちらでも分解できるので、池の底など酸素の乏しいところでも分解が進む

最近の自動車メーカーはバイオ燃料とバイオプラスティックの研究開発に積極的です。

日経産業新聞 10月16日(月) p13

[概要]

・マツダが自動車内装用樹脂に使えるバイオプラスティック(ポリ乳酸)を開発

・耐熱性、耐衝撃性を両立させた(従来は難しかった)

・三年後に実用化予定

・新しい添加剤によって、製造時間の短縮・耐衝撃性の向上などを実現した

セルロース系エタノール製造がいよいよ実用の域に近づいているようです。

AP via Yahoo! Finance 11月20日 "Iowa Cellulosic Ethanol Plant Planned"
http://biz.yahoo.com/ap/061120/ethanol_announcement.html?.v=1

[概要]

・Broin Companies はアイオワ州の会社

・(アイオワ州エメッツバーグにある)(年産)5000万ガロンの製造能力を持つ工場の製造能力を7500万ガロン増強する (増強後の製造能力は年産1億2500万ガロンとなる)

・設備投資に2億ドルを投じる

・同社がデンマークのノヴォザイムズ社、デラウェア州に本社のあるデュポン社と共同開発したセルロース分解技術を適用

・原料はとうもろこしの茎や葉

・同社CEOによると、同じ面積のとうもろこし畑から採れるエタノールの量が、この技術によって27%増加するとのこと

大豆の蛋白質を原料とする繊維を東レが実用化したそうです。

日経産業新聞 10月11日(水) p14

[概要]

・耐熱性と強度を向上させ、アイロンがけに耐えられるようになった

・綿と同等の吸放湿性

・軽い

・2006年12月から販売開始

これも石油系プラスティックと混合するバイオプラスティックの話です。


日経産業新聞 10月3日 p15

・大日本印刷は包装材を2種類開発

・一つは、ポリ乳酸フィルムと石油系フィルムを張り合わせたフィルム。水蒸気や酸素を遮断できる

・二つ目は、ポリ乳酸と「石油系生分解性材料」とを混合したもの

・いずれもポリ乳酸の割合が10~30%程度


「バイオプラスティックの研究をしてはいるが、まだまだ強度や機密性などの実用性が貧弱なので、とりあえず実用性の高い石油系材料と混ぜて使おう」という方針だということですね。

#155でブラジルからエタノールを輸入することの非効率性を指摘しましたが、ブラジルは輸出振興に力を入れています。

アメリカはすでにブラジルから輸入しています。今年は250万キロリットルと予想されているそうです。アメリカ全体のエタノール生産量に対してどれくらいの割合になるのか、私はまだ把握していませんが。

中国は今年の6月から輸入を始めているそうです。

ブラジル国内では、内陸部から海岸までエタノールを輸送するパイプラインが建設中です。

とりあえず、金銭的な評価が物理的な評価に優先されて事態が進行しています。こういう状況は、石油が安く豊富に手に入るからこそ享受できます。一旦そうでなくなると事態は一変するはずです。

新たに「安く豊富に手に入るエネルギー源」を手に入れられない限りは。

目立ちませんが、建設機械や搬送機械の動力源を非化石燃料系のものに変えようという動きが少しずつ出てきています。

例えば、パワーショベルを電動式にしようという研究開発がなされています。

もちろん、長期的には、電動式にするだけでは化石燃料の減退に対処できません。電気エネルギーを化石燃料以外の何かから得るように変えていく必要があります。

しかし「風力社会」や「太陽光社会」を実現したければ、「人間が作った動く機械」の動力源を電化する必要は間違いなくあると私は考えます。

その一方で、フォークリフトをバイオディーゼルで動かそうとしている会社があります。ケーヒンというホンダ系の会社です。10月2日の日経産業新聞16面に載っています。