内藤瑛亮の映画は「ミスミソウ」がとても印象に残っている。
雪の中での殺戮シーン。白と赤のコントラスト、ただただ淡々と人を殺めていくだけのシークエンスが、なにかとても美しく見えてしまう背徳感。そして、女優としてほぼ無名に近かった山田杏奈の才能を開花させた作品を撮った監督。
それだけでもこの作品は見る価値あるが、そこに加えて主演が佐津川愛美というのが、更に興味をそそる。
共演も竹財輝之助と、演技巧者が作るホラーというのはそれだけで期待大だ。
「ミスミソウ」とともに、こういう作品に「何か」を求めてはいけない。
画面と音、構図に加えて役者の演技。それらが一体となったワールドが、背筋に悪寒が走るほど怖いかどうか。
「ミスミソウ」では、オープニングからずっと流れてくる不穏な空気感、そして本音では期待しつつも、決して見たくない嫌な空気が、山田杏奈演じる少女の怒りが爆発するあの名場面で、観る者に一気に襲い掛かってくる。
「毒娘」も、オープニングこそ、これから起こる恐ろしい出来事を予感させる事件を提示するものの、その後しばらくは新居に引っ越してきた、深瀬萩乃(佐津川愛美)と深瀬篤紘(竹財輝之助)、そして篤紘の連れ子の萌花(植原星空)の穏やかで一見幸せそうな日常が流れる。
しかし、その中に何とも言えぬ妙な違和感が感じられる演出がなされていて、それが得も言われぬ不安感をあおってくる。
物語のタイトルにもなっている「毒娘」である不気味な謎の少女・ちいちゃん(伊礼姫奈)。彼女が突如平穏な日常に現れて、萌花に襲い掛かる。命の危険にさらされ、家の中もめちゃくちゃにされたにもかかわらず、警察にも通報しない深瀬家。また、不気味な存在である少女の正体が判明し名前を知った後、彼女のことを「ちいちゃん」と呼ぶ不自然さ。愛し合って結婚したはずの夫婦の間に流れる微妙なコミュニケーションのズレ。その一つ一つが、何か歪んだ時空の中で過ごす居心地の悪さを感じさせる。
これらの演出に加えて静かな日常の風景の丁寧な描写、極力BGMやジャンプスケアを使わない手法で平穏な生活に突如地獄の扉が開く恐ろしさを強調している。
ちいちゃんを演じた伊礼姫奈は、その熱演が光った。最近ドラマや映画で活躍している美少女であるが、この映画ではほとんどその整った顔は見ることができない。黒髪長髪に汚れた顔を衣服。どう見ても尋常ではない佇まいだ。
そして、「トリハダ」などでも恐怖シーンに定評のある?佐津川愛美の演技が、これまた素晴らしい。この映画での彼女は、穏やかで自分の意思を前面に出さない女性を演じている。悪女から男の理想のタイプまで、どんな役でも完璧にこなす彼女。主役を張れる実力のある女優さんであることは間違いない。
佐津川愛美。愛らしい中に毒もある。稀有な女優さん。
竹財輝之助は、MATTの中では中島歩と並んでクズ男を演じたら業界一という2トップの一人だと思っている。この作品でも滑り出しの優しい夫から、モラハラぶりを少しずつさらけ出していく過程の変貌ぶりがさすが。
この二人をキャストに据えた時点で、この映画はほぼ完成していると言ってよいかも。
その他出演者は内田慈、馬淵英里何など。
内藤監督の映画はとにかく血しぶきが飛び散る。また主人公が赤い服を着るのも常套なのだろうか。
物語の終盤、篤紘はちいちゃんに殺され、ちいちゃんを撃退した萌花と萩乃は血がつながらない親子ながら、その距離が縮まり未来に明るい光が差した。しかし瀕死の重傷を負ったちいちゃんは行方不明のまま。
ラストシーン、深瀬家が退去した後にまた新たな家族が移り住んでくる。庭で楽しそうに食事をする、絵に描いたように幸せな日常がそこにあったが、その日常は突如現れたちいちゃんによって、惨くも破壊されていく。。。。
ラストはちいちゃんが二階の窓から少し顔を覗かす程度でよかったと思うのだが。。。。まあいいか。






















