政府暗号通貨「松田プラン」第6回~そもそも国債とは何なのか…赤字国債を退治するMMPの意味~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

[財政と金融の究極の一手、政府暗号通貨「松田プラン」MMP第6回]

 

新型コロナウイルスで緊急事態宣言とともに政府が決定したのが史上最大の緊急経済対策だった。これを実施するための二度にわたる補正予算で、2020年度の新規国債発行額は当初予算の32.6兆円から90.2兆円へと57.6兆円も増えることになる。対策に伴う財投債の増発42兆円と合わせれば、今年度の国債発行額は、借換債も含め、153兆円から253兆円へと、約100兆円も増える。

日銀が国債を無制限に購入する方針を示している以上、国債発行を渋る必要はない。ましてや、日銀が持つことになる国債は「松田プラン」(以下、「MMP」と称する)でいずれ、デジタル円という便利なお金になるのだから心配ない。

では、もしMMPがなかったら、日銀が気前よく国債を買ってくれなかったら・・・。

一般には、米国も日本もこれだけたくさん国債を発行するので、このあとが大変だと心配する人々が多いようだ。では、そもそもなぜ、国債発行は望ましくないとされてきたのか。今回は、あまり知られていない国債の本質について、少し詳しく述べてみたい。

 

●国債が増えるのがいけないこととされている理由

最近ではMMT(現代貨幣理論)が現われ、自国の通貨で国債を発行している限り、経済がインフレで困ることにならない範囲なら、財政支出を増やすためにいくらでも国債を発行して問題ないと説いている。ただ、これは各国の政策当局の考え方にはなっていない。

財政状態が先進国で最悪の日本だけでなく、どの国々も、財政運営に当たっては、極力、国債の発行を少なくするよう努めている。なんとか国債発行残高を減らす・・・これが多くの国が採っている財政健全化目標だ。

いきなりそこまで行けない日本は、プライマリーバランス、つまり毎年度の国債発行額が国債の元利返済の金額の範囲内に収まる状態を達成することを目標に掲げている。支出を抑え、税収を増やし・・・しかし、その目標達成にはほど遠く、しかも、いつか達成されたとしても、ほかの国からからみると中間目標を達成するに過ぎない。それでもまだ国債発行残高自体は増え続けるからである。

各国の財政当局が国債発行を抑えようとする理由は、主として、次の3つである。①本来ならもっと生産的な投資に回るはずの民間のお金を政府が吸収してしまう。結果として金利が上がる(クラウディングアウトと言う)。②政府がいずれ国債の元利の返済ができなくなって財政が破綻する(デフォルトと言う)。③将来の国民が国債の元利返済のための税負担に苦しむことになる(子や孫への「ツケ回し」と言われる)。

ただ、①については、デフレのときはあまり問題にならない。民間の資金需要のほうが足りないのであるから、現在は多くの主要国で中央銀行が国債を大量に買っている。だから、金利が大きく上がって困る状態でもない。

また、②についても、日本はあまり関係ないだろう。ギリシャのように財政が破綻するのは、外国からの借金が多い国だ。日本は国債のほとんどを国内の金融機関や投資家が買っている。それだけでなく、日本は世界ダントツ一位の対外純資産国であり続けている国である。元利が払えなくなるデフォルトになることは、まず考えられない。

そもそも「財政破綻」とは何なのかという問題もあろう。日本の場合についていえば、国債に対する信頼が低下して国債の市場価格が下がる(国債の金利が上がる)場合が考えられる。そうなると、国債を莫大に保有する銀行の資産が劣化するので、銀行の融資対応力が低下し、経済のお金の回りがストップするという信用収縮の事態に至る可能性がある。

2010年に起こった欧州債務危機がそうだった。これは財政がもたらす経済破綻のようなものといえる。

ただ、異次元の金融緩和を進めている現在の日本では、日銀が国債を大量に買っているため、国債の価格は大きくは下がらないと認識されている。

 

●建設国債はOK、赤字国債は本来は禁止

問題は③だということになる。但し、民間企業や家計でもそうだが、借金をしても、それで良い資産を残すのであれば、つまり、資産の価値と負債の金額がバランスシートで見合っているのであれば、借金しても問題ないと考えるのが一般的だ。

国の財政も同じである。将来の世代に道路や橋などのインフラとして資産を残すための国債発行であれば、将来の世代もそのインフラを使うわけであるから、その世代が国債の元利返済の負担をしても、受益と負担が見合っていると考えることができる。

日本の財政運営の基本原則は「非募債主義」、つまり借金をしないことが原則だが、こうした趣旨から、財政法第4条で、政府の支出のうち公共事業や貸付金や出資金は資産になるということで、その財源であれば国債発行が許されている。この場合の国債を「建設国債」(4条公債)と言う。

むしろ、将来の世代に残る資産であれば、今の世代だけでなく将来の世代にも受益が及ぶので、国債を発行して負担を各世代にならしていくことが公平であり、合理的である。政府の公共事業の財源は基本的に建設国債によって賄われている。

しかし、税収が不足するからといって、これ以外の使途のために政府が借金をすることは原則禁止だ。資産を残さず、ツケ、つまり負担だけを将来世代に残す借金になってしまうからである。そのような借金は「赤字国債」と呼ばれ、特例公債法という法律をつくって、あくまで例外ということで特例として発行されている。特例公債とも言われる。

ところが、財政状況が悪いため、この例外が常態化し、赤字国債は毎年度の発行額(20年度当初予算で約25兆円)も発行残高(20年度末見込みで約625兆円)も、建設国債(20年度発行額約7兆円、20年度末残高見込み約275兆円)を大きく上回っている。

こうなった最初のきっかけは、第二次石油ショック直後の不況で税収が大幅に不足した1975年度予算だった。このときの大蔵大臣で、その後、総理大臣になった大平正芳氏はこのことを最後まで悔やみ、将来に負担を残さないよう、今の世代で早期に償還すべきだと述べていたそうである。当時は一時的な発行のつもりだったのが、その後、バブルの時期を除き、日本の財政は一貫して赤字国債の発行に依存していく。

 

●国債の種類と60年償還ルール

日本では国債を60年かけて全額返済する「60年償還ルール」が営まれている。10年が満期の国債でも、10年後に税金で返すのは6分の1、残りは「借換債」という名目で国債を発行して返すということを6回繰り返して60年。つまり、政府が借金をすると30年後の子の世代、60年後の孫の世代まで、その返済のための税負担が続くことになる。

こうした60年償還ルールという「減債制度」、つまり国債残高を減らしていく仕組みを営んでいる国は世界の中で日本だけである。財務省はこれを財政規律の根本と位置付け、毎年度の一般会計予算には、国債の金利を支払う利払費(20年度当初予算で約8兆円)のほかに、国債発行残高の60分の1に相当する元金の返済費用として「債務償還費」(同約15兆円)を計上している。

ところが実際には税収が足りず、これら国債費を賄うために毎年度、新規に赤字国債を発行している。従って、国債残高はこの「減債制度」によって減っているというところまでには至ってはいない。つまり、税収によって国債を返すというのではなく、国債を発行して国債を返すという「自転車操業状態」になっている。

60年償還ルールは「減債制度」としては実質的には機能していないといえる。

国債には、以上のような、国の歳入として毎年度の予算で新規に発行される①赤字国債(20年度当初予算で約25兆円)と②建設国債(同約7兆円)のほかに、③過去に発行された国債を返す財源を調達するために発行される借換債(同約108兆円)がある。これらは最終的には税金で返さなければならない国債であり、「普通国債」と呼ばれる。

そのほかに、政府の貸付金の財源として発行されるため償還は税金ではなく貸付金の返済で賄われることになる④「財投債」(同約12兆円)があるが、財政問題とは将来の国債返済の税負担の問題なので、①~③の普通国債の残高が議論の対象になる。

20年度当初予算での国債発行額は①~④を合わせて153兆円にのぼる。新型コロナ対策で二度にわたり補正予算が編成されたので、これに伴って国債発行は99.8兆円追加され、20年度は253.3兆円もの国債が発行されることになった。

上記のうち、①と②が毎年度の一般会計の歳入に計上される。③の借換債は国債整理基金という特別会計が発行しており、60年償還ルールを営むため国債発行額のなかでは最も金額が大きくなっている。国債残高が莫大なのだから、当然、そうなる。

 

●赤字国債も60年償還ルールに入れた大蔵官僚の手口

国債は60年かけて償還されると述べたが、建物の耐用年数が一般に60年となっていることと見合うものなのであろう。ということは、これは公共事業で施設を建設する建設国債が念頭にあるルールだということになる。問題は、こうした資産を残すわけではない赤字国債まで60年償還ルールが適用されていることである。

これは前記の大平正芳氏の思いを裏切るものだ。今は主として社会保障で増えているのが赤字国債。ツケだけが残る国債なのに子や孫の世代に負担をさせる。親としてとても罪なことだが、実は、1975年度に赤字国債の本格発行に追い込まれた当時の大蔵省が、これも60年償還ルールに入れてしまったのである。10年で返すよりも60年かけて返したほうが、毎年度の財政負担は小さく、予算も編成しやすいからだ。「これには理屈がなかった」…大蔵省の私の大先輩が退官後、そう、つぶやいていた。

この財政当局の都合の結果、国民にとって国債発行の痛みは小さくなり、これも日本が赤字国債に依存し続ける原因の一つになったのかもしれない。このことも罪なことである。

 

●親心としての消費税増税と赤字国債

さて、安倍政権のもとで2014年と19年の二度にわたり消費税率が10%まで引き上げられた。この消費税は、多くの国民にあまり正確には理解されていないことなのだが、その税収の全額が年金、医療、介護、子育て支援といった社会保障給付に充てられている。従って、国民の誰かが負担した消費税は国民の誰かへの社会保障給付(年金給付、医療や介護や保育園などの自己負担分の軽減)として全額、還元されていることになる。

つまり、消費税は政府の政策経費や議員の歳費、公務員の給与や補助金などには充てられていないし、法人税減税の財源などにもなっていない。政府は国民から国民へのお金の移転を仲介しているだけの存在である。従って、消費税を増税しても、全体としての国民負担は増えず、マクロ的には景気を悪化させないはずだ。しかし、実際には、景気を悪化させた。なぜなのか。

実は、社会保障とは一種の保険システムである。基本は現役世代が負担している社会保険料によって財源が賄われるべきものだ。しかし、高齢者が増えて現役世代の人口比率が減ると、社会保険料では賄えなくなり、そこで、政府が公費を投入して社会保障給付の財源を補っている。この公費に消費税の全額を充てても必要額の半分ちょっとぐらいにしか届かない。残りを赤字国債を発行して60年にわたって子や孫の世代に負担をツケ回しすることで、今の社会保障が維持されている。

野田政権のときに自民党と公明党と民主党の三党が合意した「社会保障と税の一体改革」では、消費税率を5%から10%へと5%引き上げて、うち8割の4%分はこれまでの社会保障を維持する財源を国債から消費税に置き換える形とし、残りの2割の1%分だけ、社会保障給付を新たに増大させることとした。これは何を意味するか。

将来世代に負担を回していた分を自分たちの世代で負担しようというのは、子どもや孫たちのために親としての責任を果たすという意味で、道徳的な正義である。消費税の増税は、そのために行うものなのである。しかし、それは私たちの世代の負担を増やす。増税のうち2割分は社会保障給付が増えるかたちで国民に還元されるが、この「正義」の部分は、私たちの世代にとっては純粋な負担増である。

2014年のときの消費税増税(5%から8%にアップ)のときは、この部分が8割もあったのであるから、景気が悪化したのは当然である。では、なぜ8割もあったのか。

それは、社会の高齢化で社会保障の給付が増え続けているのに、前回の1997年の消費税増税(3%から5%にアップ)から17年間も増税が先送りされてきたため、この「正義」の部分がその間に、膨らんでしまったからである。私たちはすでに、これまでの将来世代への負担のツケ回しの被害を受けていることになる。

景気の悪化に懲りた安倍政権は、19年の2%の増税のときは、教育無償化を消費税の使途に加え、国民への還元分を2割から7割に増やすなど、景気への万全の配慮をした。しかし、その効果が現れる前にコロナショックで景気が大幅に悪化してしまった。

 

●経済成長でもインフレでも減らない国債の負担

私がこのような説明をすると、インフレになったり経済が大きく成長すれば赤字国債は将来の世代にとって実質的な負担にならなくなる、それは間違いだ、と反論される方がたくさんいる。しかし、簡単な算数をすれば、そうした反論が間違いであることがすぐに分かる。

前述のように、日本政府は財政再建目標としてプライマリーバランス(基礎的財政収支、以下「PB」と表記)の達成を掲げている。これは国債発行額が国債費(利払費と元本償還費の和)と一致するところまで減った状態のことを意味する。現在、国の財政はPBに届いておらず、その差額分の「PB赤字」の額は20年度当初予算で約9兆円。元本償還費分の国債発行は、国債発行をして国債を返すわけなので、国債残高を増加させないため、国債残高は、利払費とPB赤字分だけ、毎年度、増えていくことになる。

PBが達成されれば、利払費の分だけ国債残高が増えることになるので、国債残高は金利(利率)と等しい増加率で増えることになる。PBのもとでは、金利と経済成長率とが同じ水準なら、その年の国債残高=前の年の国債残高×(1+金利)に対し、その年の名目GDP=前の年の名目GDP×(1+名目経済成長率)なので、前者を後者で割った「国債残高のGDPに対する比率」は一定になる。

日本が財政再建目標として、こうしたPBの達成をめざしているのは、国債残高/GDP比率、が上昇しないための条件の一つが成り立つようになるからである。

もう一つ必要な条件が金利と名目経済成長率が一致することであるのは言うまでもない。ところが、昔のバブルの時や、現在の異次元の金融緩和政策による異常な超低金利といった例外的な時以外は、金利が名目経済成長率よりも高いのが正常な状態である。日本がインフレ率2%目標を達成した時には、金利が正常化しているので、金利のほうが名目経済成長率よりも高い普通の状態に戻る。そうなると、PBを達成していても、上記の分子が分母を上回り、国債残高のGDPに対する比率は上昇していく。

ましてや、PB未達成の状態では、この比率の上昇はさらに大きなものになる。経済に占める国債のウエイトが上がっていくのであるから、将来世代にとって国債の負担が実質的に減るどころか、インフレによって逆に、増えてしまうのである。

 

●正常性バイアスに陥っているMMT(現代貨幣理論)

MMTは、インフレになるまで国債発行を増やし続ければよい、インフレになったときに減らせばよいのだから、と主張している。しかし、いざインフレになったときに金利(>名目経済成長率=実質経済成長+インフレ率)はインフレ率よりもずっと高くなって、利払費のために発行しなければならない国債が雪だるまのように膨らむことになる。そこで、国債発行を減らそうにも減らせず、アンコントローラブルな状態になるのではないか。

「正常性バイアス」という言葉がある。人間には、現在の心地よい状態が異常であっても、イヤなものは見たくないという心理が働いて、現在の状態が正常な状態だと思い込む傾向があるという意味だ。今はアベノミクスで異常な低金利であるため、金利が名目経済成長率を下回っている。この状態が続くと仮定すると、PBが達成されていなくても国債残高のGDP比率は低下を続ける。

政府の試算も今後、10年近くにわたってこの状態が続くと仮定して、この比率が低下を続ける絵を描いているが、このような仮定を置けば結果として当然そうなるので、トートロジー(同義反復語)のようなことを言っているようなものといえよう。

そんな状態がずっと続くと、必ず起こるのがバブルだ。バブルは必ず崩壊する。日本はバブル崩壊で失われた20年、30年を経験した。「正常性バイアス」の落とし穴から目を覚まさないと、冷静な財政論議はできないだろう。

 

●民主主義に反する赤字国債で格差が拡大

このほかにも、国債は政府にとっては負債であっても、国債を保有する民間にとっては資産なのだから問題ないという主張がある。確かに、国債を持っている人からみれば、それは元本とともに金利が返ってくる資産である。

問題は、その資産が何によって裏付けられているかである。建設国債ならインフラという資産に裏付けられる。企業が発行する株式や債券であれば、企業の生産活動を通じて生み出される富に裏付けられる。

しかし、こと赤字国債となると、それは富を生み出さず、将来世代の税負担によって裏付けられた資産だということになる。

また、日本のように国債のほとんどが国内で消化されているのだから、それは家の中でお父さんがお母さんから借金しているようなもの、何も問題はないという主張もある。

これもよく考えてみれば、正しくない。なぜかというと、将来、国債が税金で返済されるときに、国債を持っている人にお金が渡るそのお金は、広く、一般国民に課税する形で集められる。国債を持っている銀行や金持ちに対して、国債を持つ余裕のない一般庶民からもお金が渡されることになり、格差は拡大するであろう。国債残高が多ければ多いほど、将来世代において所得分配の不平等化が大きく進むことになる。

さらにいえば、いまは一般会計(20年度当初予算総額102.7兆円)のうち4分の1強(同23.4兆円)を占める国債費が、いずれ、3分の1に、そして半分に・・・と膨らんでいくと何が起こるであろうか。将来世代の方々は、働いて税金を納めても、そのうち半分が、過去の世代の社会保障の返済に回ってしまい、自分たちのための公共サービスに回る部分が半分しかないことになるのである。

私たちの世代だと、納めた税金の8割近くが公共サービスで返ってきているのに、子や孫の世代だと半分・・・?となると、これは世代間の大きな不公平である。民主主義で税金の使途を決めようにも、選択の自由がきく範囲は大きく狭まってしまうのは、その世代にとってはいかにも理不尽だ。選択の自由を旨とする自由主義の考え方に反している。

これは、こんなことを決めた現在の世代の意思決定に対して将来世代は投票権を行使できないのであるから、民主主義の考え方にも反するといえる。

 

●「投資国債」は増やすべし

ただ、こうした弊害は将来世代に資産を残さない赤字国債の問題である。建設国債ならあまり問題にはならない。とはいえ、先に見た財政法第4条は、少し考えものだろう。出資金や貸付金以外に、公共事業だけOKというのは、実物資産しか資産計上できない古い時代の会計を前提にしているからだ。

政府がつくる資産は「トンカチ事業」以外にも色々とある。いまや経済価値の多くの部分を知的財産などの無形資産が占めるようになっている。民間ではそれらを資産計上することが進んでいる。科学技術振興費など、将来に向けて生産性を向上させていくような政府支出であれば、これを広い意味での資産とみなすことができるはずだ。人的資本への投資もそうかもしれない。

私は財政法第4条を改正して、こうした無形資産も含めた広義の「政府投資」の財源として、建設国債から「投資国債」へと、国が発行することが許される国債の範囲を広げるべきだと主張している。財政再建で赤字国債を減らしても、それ以上に投資国債の発行を増やして政府投資を推進すれば、景気にはむしろ良い影響を与えるはずだ。

このようにみてみると、財政規律の焦点が、「赤字国債を減らす」ということに絞られてくることがお分かりであろう。現在のように、赤字国債も建設国債も区別なく、言葉はよくないが「ミソもクソも一緒」に60年償還ルールを一律に適用し、とにかく国債は減らすべきだという考え方から脱却しなければ、経済と財政の両立は達成できない。

PB目標も投資国債を外して、もっぱら赤字国債について設定すべきものだろう。そうした財政運営の改革が望まれる。前述のように、対外純資産残高世界ダントツ一位の日本は財政破綻からはほど遠く、国債全体を何が何でも減らさなければならない状態にはない。むしろ、国内で有効な投資が不足していることが問題なのであるから。

 

●デジタル円で財政健全化を実現する「松田プラン」

MMPでは、赤字国債を消すということが大事な目的の一つになっている。国債には何種類かあると述べたが、それは国債の使途に応じた分類に過ぎない。「国債」という金融商品は、使途による色目はついていない。

従って、日銀が保有する国債(20年3月末で486兆円)は全額、赤字国債(20年度末で625兆円も発行残高がある)だとみなせば、MMPでは、これを「デジタル円」で償還することで消していくことになるため、まさに財政規律に最も大きく寄与するプランだということになる。

もう一つ、MMPが財政再建に貢献するのは、日銀保有国債をデジタル円に変換するというバランスシート上の「ストック処理」を通じて、将来、金利が上がっても、毎年度のフローとしての財政への圧迫を大きく軽減できるということがある。

もし、日銀保有の国債のほとんどがデジタル円に姿を変えれば、国債発行残高の半分が消えるため、将来の国債利払費も半減する。金利の上昇による利払費の大幅な増加を抑えて、その分、他の政府支出にお金を回したり、消費税率の引上げをできるだけしなくても済むようにすることができることになるのである。

新型コロナへの経済対策として消費税の減税論が野党や自民党の一部でも盛り上がり、中には、消費税の廃止論まで叫ぶ向きもあるが、減税を唱えるのは簡単であり、では、どうすれば実際に減税がするのかについては、ほとんど不正確な知識による提案しか出ていない。もし、減税論をもって現実を動かす政策論としたいのであれば、減税ができるための財政の仕組みを組み立てる提案するのが先である。

MMTは、そのような可能性をも拓き得る、ほとんど唯一の現実的な提案であると考えている。

 

【政府暗号通貨「松田プラン」シリーズ…バックナンバー】

第5回 「マイナンバーが諸外国並みになれば、こんなに便利な世の中に」

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12607168836.html

 

第4回 「マイナンバーと結びつくデジタル円で経済対策も大きく変わる」

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12600751401.html

 

第3回 「デジタル円はなぜ政府発行でなければならないのか」

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12587220244.html

 

第2回 「国の借金をお金に変える政府暗号通貨「松田プラン」の概要」

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12583865760.html

 

第1回 「日銀保有国債が返済不要な債務になっているカラクリとは!?」

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12580608352.html