政府暗号通貨「松田プラン」第4回~マイナンバーと結びつくデジタル円で経済対策も大きく変わる~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

[財政と金融の究極の一手、政府暗号通貨「松田プラン」第4回]

 

 新型コロナウイルス対策として日本政府が緊急事態宣言の発出とともに4月7日に決定したのが史上最大の緊急経済対策だったが、そのなかで注目されたのは、家計に対する給付金30万円だった。しかし、評判はいまひとつで、結局、国民に一律10万円を給付することに方針転換がなされたことは記憶に新しいところであろう。

当初の30万円の案が撤回に追い込まれた理由は、その案では、日本の全世帯数5,300万のうち、実際に30万円を受け取れるのは、その4分の1の1,300万世帯に限られていたことだった。しかも、収入が住民税非課税世帯並みまで下がったことなど、給付を受けるにはいろいろな要件があり、手続きが大変…。実際に給付金を受け取れるのは夏ごろになる場合もあるなど、あまりにスピード感にも欠け、緊急事態の対策として政府には危機感が欠けるなどと、批判が一気に盛り上がったためであった。

 

●財政規律と給付金騒動

手続きが面倒だったのは、最初の案では、給付金を申請する側として、前年の収入がいくらだったとか、コロナで所得がこれだけ激減したといったことを証明する書類を用意する必要があり、さらに自分が給付の対象かどうかも確認しなければならない。給付の実務を担う市町村の役所の側では、そうした確認の問い合わせが殺到するであろう、審査や給付の事務手続きに追われることになる。

そこまでしなければ、給付の対象を要件に合致する世帯に絞り込むことはできなかった。では、なぜ、絞り込みをしようとしたのかというと、「本当に困っている世帯」だけに給付金を配ろうとしたからである。

いま、緊急事態のときに必要なのは、たとえ多額でなくてもすぐにキャッシュが手元に届くことではないか!国民に外出の自粛を促すためには、安心して自宅での「巣篭もり」ができるだけの経済的な安心を一刻も早く届けることではないか!こんなときに細かい所得制限をして給付が遅れるなら、いったん、一律の金額で全国民にお金を給付して、お金持ちや困っていない世帯には、返金や課税などで、あとで調整すればいいではないか!

こういう議論が盛り上がるのも、むべなるかなであった。

では、なぜ、そんな所得制限が…?批判されたのは、国家緊急事態にあっても財政規律を貫こうとした財務省だった。有事のときは特別な対応を、こんなときに国民の命と財政規律とどちらが大事なのか…と。

現に財務省は、4月7日の緊急経済対策では見事なばかりのお家芸、「ふくらし粉」の芸当を披露した。最初に決めた事業規模の金額は108.2兆円だったといっても、そのうち国債の追加発行を伴う国の財政支出増は16.8兆円だけ…。「世帯限定30万円」が、のちに「国民一律10万円」に変更になり、このリアルマネーは8.9兆円増え、25.7兆円となったが、アメリカが決めた2兆ドル(220兆円)規模の経済対策は、そのほとんどがリアルマネー。歴史的な危機ではアメリカは決断も大胆で早い国である。

日本では財務省がリアルマネーを渋ってしまう。ただ、財政規律に責任を負う役所である財務省の立場からすれば、そうせざるを得ない面も理解できないことではない。

その後、また新しい問題が生じた。10万円の一律給付になっても、実際には各市町村が各家庭に申請用紙を郵送し、そこに口座番号を書き込んで申し込まなければ給付されない。マイナンバーカードの保持者はオンライン申請ができるが、役所も国民もふだんからマイナンバー制度を使い慣れていないためか、結局、役所に住民が押しかけて「三密」状態になるなどの混乱が一部で発生した。予算は4月末に成立したものの、実際の国民への給付は結局、ほとんどが早くて6月、もう緊急事態宣言は解除されたあととなってしまった。

以上、長々と家計給付金騒動のことを書いたのは、実は、ここで出てきた問題がすべて、「松田プラン」の実施で消え去ってしまうからである。では、今回のような国家緊急事態のときには、松田プランではどんなことができたはずなのか。

 

●デジタル円ならスマホで瞬時に

ここでは以下、「松田プラン」で発行される政府暗号通貨を「デジタル円」と称することとする。給付金の支給は、政府がこのデジタル円を発行して、国民が持つデジタル円のウォレットに電子的に振り込めば、瞬時に完了する。

いまの仕組みであれば、小切手を国民に郵送するか、国民一人一人が役所に申請して自分の銀行口座に振り込んでもらうしか方法はない。しかも、お金持ちは除外するとか、所得水準によって給付金額に差をつけるとになると、給付金の対象を特定するために、さらに面倒な手続きが要る。政府がマイナンバーと結び付けて発行するデジタル円なら、すでにマイナンバーによって国民一人一人の所得金額が把握されている。そのビッグデータを給付金支給額と連動させれば、所得階層別に差をつけたきめ細かな支給が、コンピューターによる自動処理で瞬時にできることになる。

これは、スマホにマイナンバーのアプリが入った状態を想像すれば、イメージをつかみやすいであろう。その状態においては、国民一人一人がスマホによって、マイナンバー制度で管理されている自らの個人情報と結びついている。同時に、そのスマホには、マイナンバーと結びついた政府暗号通貨(デジタル円)のウォレットも装着されている。

そうすると、国民は税金や社会保険料、社会保障を始めとするさまざまな料金や手数料などの支払いを、デジタル円を使うことで、そうした公的な諸制度に関係するいろいろな手続きと一体で、ワンストップで、スマホ一台で瞬時に済ますことになる。

政府から給付金が支給されるときには、マイナンバー制度で把握されているその人の所得に応じた金額のデジタル円が、スマホに装着されたウォレットに、給付と同じタイミングで政府からすぐに入ってくる。もちろん、そのデジタル円は、法定通貨としてスマホ決済ですぐに一般の支払いに使える。

 

●緊急事態でのデジタル円の緊急発行

もう一つ、重要なことがある。こうした給付を政府が決断するに際して、財政当局が財政規律をあまり気にしなくてもよくなるということだ。このことが「松田プラン」の大きな意味といえるだろう。日本政府も安倍政権も、国家の危機のときにはアメリカのような大胆な決断を後顧の憂いなくできるようになる。

そもそもデジタル円は、政府の通貨発行権に基づく法定通貨として、何の資産の裏付けもなく発行される。政府が自ら発行しようとすればいくらでも発行できるものだ。

下手をすると、そうした特徴を利用して、政府にとって自由にお金を生み出せる「打ち出の小槌」になりかねない。政治家に言われて政府がいくらでも財政支出を膨らませてしまう危険がある。それでは経済に規律が働かなくなり、日本経済の生産性は下がっていくだろう。やり過ぎると、さすがにインフレ高進の懸念まで出てくる。「パンドラの箱」を開けることになりかねない…。

そこで「松田プラン」では、この連載の第2回でも述べたように、(https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12583865760.html)デジタル円(政府暗号通貨)の発行は、民間の個人や企業などが銀行の窓口で、自らの預金や現金と交換する、つまり、デジタル円を買うときに限定して発行するという厳格なルールを設けることとしたものである。そうした民間の需要に応じた金額のデジタル円で政府が日銀保有の国債を償還することで、その金額分だけのデジタル円が市中に供給されることになる。

ただ、放っておくと国の経済が崩壊してしまうような危機に際しては、平時と違う「有事」として特別の対応を行うことは考えられるであろう。そのようなときは、政府が自らの意思で、必要と判断する金額のデジタル円を、必要とされる対象者のウォレットに送金することができるという例外的な措置が考えられる。

そのためには、平時とは明確に区別した「経済緊急事態」という枠組みを、法律で整備しておくべきだ。例外的な措置には、法律で明確な縛りをつける。その法律の根拠という意味でも、憲法に緊急事態条項を盛り込む改正を考えてもよいかもしれない。

そうは言っても、いったん、例外を認めると、例外が例外ではなくなることがあるのが世の常…。いくらでも発行できるのだということになると、政府のお金がほしいときは何でもかんでも、緊急事態宣言をして財政支出を膨らませる誘惑に政治家が駆られてしまう危険性が、将来、全くないとは言えない。

やはり、どんな事態であってもルール破りはできないようにしておく、それが、信用が第一のはずの通貨というものの基本だという考え方もあるであろう。

 

●いますぐにできる、マイナンバーを使ったポイント配布

そうであれば、そして前述のようにマイナンバーとスマホが結びついているなら、スマホのマイナンバーアプリを通して各国民にポイントを支給するという方法が考えられる。国民は、そのポイントを使ってスマホで現金と同じように支払いができるようにする。

リーマンショックのときの経済対策で麻生政権は国民1人当たり1万2千円の定額給付金を実施したが、そのときは給付金の多くが貯蓄されて消費に回らず、景気刺激効果は薄かったとされる。それを心配するなら、配布するポイントに、たとえば1年間という有効期限をつけることが考えられよう。そうすれば、国民は配布されたポイントを1年以内に使おうとするので、個人消費が刺激されることになる。

あるいは、国民に社会保障の安心を与えようという政策であれば、医療や介護などの自己負担分とか、年金保険料の支払いに充てられるポイントを配ることも考えられる。政策目的に応じて、ポイントにさまざまな設計を施せば、単なる現金支給よりも高い政策効果をあげることができるだろう。電子技術の活用で、創意工夫はいくらでもできるはずだ。

スマホを持っていない国民には、マイナンバーカードに各人が持っているポイントの種類や量を認証できる仕組みを入れていくことを考えてもよい。すでに、キャッシュレス決済を2万円分すると、マイナンバーカードを持っている人には一人当たりで5,000円分の「マイナポイント」が付与されるという仕組みが今年の9月からスタートすることになっている。

現在、国民すべての人々がマイナンバーを持っているのに、マイナンバーカードを保有している人は2割にも達していない。政府は健康保険証にマイナンバーカードを使えるようにしたり、上記のマイナポイント制を導入しようとしたりと、マイナンバーカードの普及促進に努めている。個人への給付金支給をこうした施策と組み合わせることも考えてよいだろう。

消費者からの支払いでポイントを受け取った事業者や医療機関などは、そのポイント分のキャッシュを国から受け取ることで精算することになる。政府はそのための財源を用意しなければならない。それは、国の財政が厳しい状況なので、国債を発行して調達することになる。

 

●国債の追加発行枠は無限になった!

第一次の緊急経済対策で、財政規律を守るために財務省が最初は金額を渋ったのも、国債の追加発行をできるだけ少なくするためだった。国民へのポイント配布も、それで国債発行額が増えることをどう考えるかという問題が出てくるだろう。

ただ、そもそも財政当局が国債発行額を抑えようと考える理由は、短期的には、金融市場で金利が上がる懸念である。一挙に国債を大量発行すれば、市場での需給関係で金利が上がり、経済に悪影響を及ぼすのが通例だ。金利が上がった状態が続けば、国債の金利支払いのための財政負担(利払費の負担)も増えていくことになる。

また、本来は民間の投資に回って生産性を高める投資に向かうべきマネーが国に吸い取られてしまうという、いわゆる「クラウディングアウト」が起こる懸念も挙げられる。

長期的には、将来世代の国債償還の負担を増やしてしまう弊害がある。また、財政赤字が拡大して国債発行残高が累増していくと、財政の健全性や日本国債に対する信用も低下してしまう…。かつてのギリシャや欧州債務危機のようなことが起こりかねない…。

しかし、少なくとも日本の現状では、そんな懸念はありません。

実体経済の側でみると、日本は世界最大の対外純資産国だ。外国からの借金が返せなくてデフォルト(債務不履行)が起こるような国からはほど遠い状況にある。

加えて、経済政策の側でみると、日本はすでに7年にわたり、アベノミクスのもとで異次元の金融緩和を続けており、日銀が国債を買い続けている。この政策で日銀が保有する国債は、2020年3月末で486兆円と、7年間で361兆円も増えた。日銀が国債を市中から買い続けている限り、金利は上がらない。上記の短期的な心配は不要である。

日銀がこれだけ国債を買っても、異次元の金融緩和の目的であるインフレ目標2%の達成は、現在でも覚束ない状況だ。財務省が渋った時点では、日銀は年間の国債購入額の目安を80兆円としていたが、その後、その制約もなくなった。4月27日の金融政策決定会合で、日銀は国債を無制限に購入する方針を決めたからである。新型コロナがもたらした現在の世界的な経済危機にあって、日銀も大々的に金融緩和を強化したわけである。

ちなみに、政府は5月27日に第二次の対策として第二次補正予算案を閣議決定し、第一次と併せて今年度の国債追加発行額は約100兆円に及ぶこととなった。

 

●いままで通り、国債を日銀に封じ込めるだけのこと

経済対策で増発される国債は、日銀が買うことで、日銀のバランスシートの資産の部に入り、日銀の負債の部には、それに見合う金額の日銀当座預金が積み上がる。このメカニズムは、本連載の第1回(https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12580608352.html)で解説した。

これによって市中マネーが直ちに増えることにはならない。インフレの原因にもなる市中マネーの増大は、民間の銀行による信用創造によって起こるものであって、日銀が市中マネーを供給しているわけではないということも、そこで解説したとおりである。

日銀が国債を買うことで起こる現象は、その額だけ、日銀のバランスシートが膨らむという帳簿上の変化である。それを受けて、銀行側では基本的に金利がつかない日銀当座預金という資産が増えるので、金利のつく資産である融資などを増やそうとすることになるため、市中マネーが増える。景気が悪化している日本にとっては、良いことだ。

つまり、政府が増発した国債は、日銀が買うことで日銀のバランスシートのなかに封じ込められるのである。国債は市中に過剰にあると、前記のような悪さをする。そのような悪さを封じることになる。こうした国債の一種の「不胎化」政策は、アベノミクスのもとでずっと行われてきたものにほかならない。

●「松田プラン」で財務省の懸念も日銀の懸念も解消

ただ、それでも、前記の長期的な懸念、つまり、将来世代の負担の問題とか、国債残高の累増が止まらないことへの心配は残るだろう。財務省として財政規律について責任をもつ限り、最も心配して然るべき点だ。安倍総理とて、それには耳を傾けざるを得ない。

国債についてはいろいろな議論がある。日本のように国内でほとんどが消化されているのなら、いくら発行してもよいのだ…等々。最近ではMMT(現代貨幣理論)も出てきた。そうした国債発行容認論の是非については改めて議論するが、少なくとも、現実の政策形成の場では決して主流の考え方ではない。前述のような懸念は、実際問題として国債発行を増やす上での大きなネックになっている。

これが「財務省ネック」だとすれば、もう一つ、「日銀ネック」もある。

国債を買い続けて膨らんでいくのが日銀のバランスシート。いったいどこまで膨らんでいくのか。膨らんだバランスシートが縮小する道が、もし、どこにもないのなら、つまり、「出口」がないのなら、日銀の立場としては国債を買い続けることには慎重にならざるを得ないはずだ。

当面は、バランスシートが膨らんでいっても心配はない。バランスシートを膨らませる目的であるインフレ率2%の達成は、まだ遠いであろう。将来、金利が上がると、日銀当座預金の金利を引き上げなければ銀行は困ることになるが、それは日銀の財務を悪化させる。しかし、インフレ目標の達成までは、日銀が国債を買うことで金利は抑え込まれているので、日銀当座預金の金利を引き上げなくても銀行は困らない状態が続くことになる。

しかし、この事態が永遠に続くわけではない。拡大したバランスシートを永遠に縮小できないとなると、将来、たとえそれが原因でインフレが高進する事態にはならなくても、日銀の財務や金融政策にはいろいろな面で支障が生じる可能性が否定できない。少なくとも、日銀は強く、そう懸念することだろう。

ここで登場するのが「松田プラン」だ。このプランを実行すれば、民間からの求めに応じて、日銀が保有する国債がデジタル円に変わっていく。それで「財務省ネック」も「日銀ネック」も解消する。国債は消滅し、日銀のバランスシートも放っておいても縮小していくからである。

どんな政策案も、その実現に不可欠なのは、「出口」が描かれていることなのである。

 

●将来必ずやる、その決断だけでいまの経済政策が変わる

そのために、いますぐ「松田プラン」を実行する必要はない。その準備には数年かかることも覚悟しておく必要がある。

たとえば、スマホにマイナンバーのアプリを入れるためには、現状ではセキュリティの問題がある。私は現在、情報セキュリティの最先端の学者の方々とともに、政府のマイナンバーの最高責任者と協議を開始している。そのためには既存のシステムの組み換えが必要になるので、政治を動かす必要があるかもしれない。このように、「松田プラン」の実現に向けて克服しなければならない課題はいろいろとある。

しかし、政府がやろうと決断し、関係者の合意さえ得られれば、必ず実現できる。将来、「松田プラン」という「出口」があるということがはっきりすれば、財務省は後顧の憂いなく国債を発行し、日銀は後顧の憂いなく国債を買うことができるようになるだろう。

「出口」の効果を大きくするためには、たくさんの国民にデジタル円を買っていただく必要がある。そのためには、デジタル円がそれだけ便利で魅力的な通貨にならねばならない。もしかすると、将来、各省庁はデジタル円にスマートコントラクトとして盛り込む政策や制度について、アイデアを競い合うことになるかもしれない。

そうした各種の政策目的の実現にも資することになるデジタル円の財源は、政府が国債を発行すればするほど、日銀がそれを買えば買うほど、増えることになる。

「松田プラン」実行の決断を政治が早く行うことを期待している。現在の政権では無理なのであれば、政権を変えるぐらいのことを考えてよいだろう。これこそが

「究極の救国策」だと考えるからである。

次回は、今回の対策で莫大な金額で増発されることとなった国債というものについて論じてみたい。「松田プラン」の持つメリットをさらにご理解いただけることになると思う。