【ニッポン興国論】第5回 デフレのときには、政府には大きな役割がある。 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

【第4回】デフレのときには、政府には大きな役割がある。


前回は、超高齢化社会の日本では、消費税率の引き上げは、社会保障の側面から、人々の将来不安を緩和したり、おカネを使う世代である現役世代の負担をラクにすることなどを通じて、デフレを緩和する効果もあることを述べました。

前回第4回の記事は、こちら↓をご覧ください。

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11255522209.html

しかし、だからといって、消費税率さえ引き上げればデフレを克服できるわけではありません。今回は、皆がおカネを使わないデフレのときには、大きなおカネを支出できる唯一の存在、政府の役割が欠かせないことを論じてみたいと思います。


そもそも経済政策のあり方は、経済状況に応じて組み立てるべきです。一国の供給力に比べて総需要が大幅に不足する「デフレ経済」のときと、逆の「インフレ経済」のときとでは、正しい経済政策は逆転します。日本では、この当然のことが、あまり認識されていませんでした。

小泉政権時の構造改革は、「小さな政府」、官から民へ、規制緩和や市場競争原理を進めた改革でしたが、これは、総需要よりも供給力のほうを強める政策体系でした。つまり、レーガン・サッチャーのインフレ経済時の政策を、20年遅れでデフレ経済の時に実行した時代遅れの政策だったといえるでしょう。

例えば、社会保障の支出抑制で「医療崩壊」まで招いた小泉政権の政策は、国民生活の不確実性を増大させてデフレを加速した面があるといえます。公共投資の削減もそうでした。デフレの日本に必要な政策とは、単に既得権益を「壊す改革」ではなく、むしろ、人々が安心しておカネを使える社会システムを「組み立てる改革」であるはずです。


 しかし、おカネの価値が上がるデフレ経済のもとでは、おカネを出さないのが民間の合理的な行動です。萎縮した民間部門に、こうした「組み立て」の主役になり、リスクをとっておカネを投じることを期待することはなかなかできません。逆に、合理的な行動をしない(価値の上がっているおカネを使う)主体が必要です。

それは政府しかありません。極論すれば、そもそも政府とは、経済合理的でない行動ができる存在が社会に必要だという点に存在意義があるともいえます。デフレのときに重要なのは、民間の市場原理よりも、「政治」なのかもしれません。

その際に、いちばん簡単な方策は、デフレの間だけは「官から民へ」を逆転させ、政府自らが国営事業に乗り出し、そこに人々を直接雇用することです。しかし、問題は、政府がいったん制度面で拡大してしまうと、デフレが治った段階でそれを元に戻そうとしても、現実にはそれが困難だということです。日本を社会主義にするわけにはいきません。


ですから、いまの制度のもとで、政府にしかできない分野で、社会的に真に必要な実需を掘り起こすためにおカネを支出するという方法を考えなければなりません。

そのときに大事なのは、民間が政府頼みの体質を強めないよう、民間が保有する巨額の金融資産ストックを活かしていく道です。それがマネーとして引き出され、経済に循環していく呼び水となるような政府支出をすることで、日本の巨額の金融資産が社会的に有為な分野に活用されていく。そのような経済の姿へにつながる起爆剤になるような政府支出を考えるべきです。

その最も現実的な手段を考えれば、それは後世代に貴重な社会的資本(資産)を残すために行われる政府投資だということになります。その代表格が「公共投資」ですが、道路や橋といった従来のトンカチ「公共事業」に政府投資を限定する必要はありません。医療の世界でも、病院や設備などの資本的項目は政府投資の対象に入れて良いと思いますし、日本の未来を形成するための政府支出なら、それを広く「投資」に取り入れて考えてもよいと思います。


次回は、こうした政府投資のうち、批判されることの多い公共事業について考えてみたいと思います。(続く)


バックナンバー

【ニッポン興国論】第1回 消費税率引上げは国民にとって負担増なのか↓

 http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11237001318.html

【ニッポン興国論】第2回 消費税を上げたらデフレが加速するというのは本当か↓

 http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11242202033.html

【ニッポン興国論】第3回 消費増税では説明できないデフレとは、そもそも何なのか↓

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11248255278.html