本論文は、腹腔鏡下チョコレート嚢腫硬化療法(アルコール固定)について10個のステップを紹介しています。
Fertil Steril 2022; 117: 1102(デンマーク)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.01.036
Fertil Steril 2022; 117: 1104(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.02.030
要約:腹腔鏡下チョコレート嚢腫硬化療法(アルコール固定)
1 患者選択:直径50mm以上、症状あり、妊娠希望、悪性腫瘍の否定、オペ前にAMHやAFC測定
2 準備:通常の腹腔鏡セッテイング+嚢腫容積の60%量のエタノール+バルーンカテーテルを準備
3 腹腔内探索:腹腔内悪性腫瘍の否定、卵巣の可動性を良くするために癒着剥離、破裂させないよう注意
4 嚢腫穿刺:直接トロカールを嚢腫に挿入するのもあり
5 嚢腫吸引:ダブルルーメンが必要
6 嚢腫洗浄:生理食塩水で綺麗になるまで洗浄
7 嚢腫内にバルーンカテーテル挿入し固定後、96%エタノールを注入しクランプ
8 10〜15分間エタノール暴露(この間に他の部位を手術処理)
9 エタノール吸引(嚢胞内は洗浄しない)、腹腔内洗浄してエタノール漏出部分を除去する
10 アルコール固定をしていない部分の嚢腫壁を切除(バルーンの大きさによるが通常3〜4mm角)、病理に提出
解説:挙示希望のある方に対するチョコレート嚢腫の処置には、嚢腫摘出、ドレナージ、嚢胞壁焼灼、硬化療法があります。硬化療法は残存卵胞へのダメージが最も少ない方法と考えられており、用いられる薬剤としてエタノール、テトラサイクリン、メソトレキセート(MTX)などがあり、様々な用量で経膣超音波ガイド下あるいは腹腔鏡下に注入します。本論文は、腹腔鏡下チョコレート嚢腫アルコール固定について、洗練された10個のステップを紹介しています。
コメントでは、挙示希望のある方に対するチョコレート嚢腫の処置のどの方法が優れているかについて賛否両論があり結論が得られていないのは、硬化療法を実際に見たことがない医師が少なくないからかもしれないとし、本ビデオ論文により硬化療法を行う医師が増えることで、これまでの処置との比較試験の実施が広く行われるようになることを期待すると述べています。
下記の記事を参照してください。
2021.1.23「チョコレート嚢胞のアルコール固定術:ビデオ論文」
2017.8.13「チョコレート嚢腫固定術:メタアナリシス」
2014.4.23「☆卵巣嚢腫の取り扱いについて」