Q&A3059 妊娠するとかゆくなります | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 40歳、AMH 0.7

2020.11.30「Q&A2764 39歳、流産2回後陰性」で回答いただき、ありがとうございました。人工受精と胚盤胞移植で1回ずつ妊娠しましたが、2度とも妊娠のかなり早い時期から体中が痒くなりました。

 

人工受精の時は4週3日くらいから、体の内側からくる耐え難い痒みに襲われ、夜も眠れない日々でした。頭から足先、耳の穴の中までとにかく体の全てが異常に痒く、睡眠不足と痒み、妊娠初期の身体のだるさで日常生活もままならない状態でしたが、痒みが多少和らぐ時もあったので何とか生活できていました。どこも赤くなったり腫れたりはしていないのに、とにかく痒みだけが異常に強かったです。妊娠できたのに、痒過ぎて辛いなんてことを、通院先のクリニックの先生に何だか言い出せませんでした。痒過ぎて運転もままならず、車で1時間かかる通院先まですぐに行けなかったこともあり、近所の総合医療センターで妊娠していることを伝え、抗ヒスタミン薬を処方してもらいましたが全く効きませんでした。妊娠5週を過ぎても胎嚢は見えず5週後半で確認、6週で心拍は見えず7週で流産の診断を受けました。成長はやはりゆっくりでしたし、経験したことのない異常な痒みで、こんな状態では妊娠の継続ができるはずがない、と自分でも確信してしまう程でした。妊娠週数が進むにつれ痒みは治っていき、流産確定後にはすっかり痒みが治りました。
 

2度目の妊娠の時には、移植の翌日から体がじわじわと痒くなり、移植の4日目には異常な痒みまではいかないものの、1回目の妊娠の時と似たような体の内側からくるそれなりの痒みをはっきりと自覚していました。その後も痒みはあるものの、耐えられない程ではありませんでした。その時の妊娠経過は、5週後半から毎日少量の出血がありましたが、8週で心拍が見えなくなった時、8週相当の大きさまでには育っていました。自然排出後、痒みはやはり完全に治りました。
 

その後、移植を4回して全て陰性、4回とも移植後全く痒みがなかったので、おそらく陰性だろうといつも予想できていました。あくまでも私の体感としてですが、1回目の妊娠時は受精卵がかなり激しいアレルギー反応として出たような気がしています。2回目は、多少のアレルギー反応はあったけれども、流産する直接の原因にはならなかったような気がしています。
 

不育症専門医のもとでも、激しい痒みがあったことを話しましたが、あまり聞いたことがないし、それほど気にすることではない、とのことでした。ProteinS抗体陽性、第XⅡ因子が基準よりやや低く、抗β2GP1-IgG抗体が高いですが、バイアスピリンのみ処方されています。妊娠初期の体の痒みについて色々調べてみましたが、それほど早い時期から痒みがある人の話はほとんどありませんでした。松林先生に一度お聞きしたかったので、メッセージを送らせていただきました。

 

また、2度の妊娠ではどちらもクロミッドを使いましたので、私の必勝法はクロミッドがいいのでしょうか。
 

A 妊娠するとかゆくなる方はおりますが(妊娠性掻痒)、耐えがたいほどのかゆみに悩まされる方はほとんどおられないと思います。お話を伺う限りでは「妊娠(着床)」と「かゆみ」が間違いなくリンクしていると思います。理由はわかりませんが、生きている受精卵に対する拒絶反応ではないかと推察します。このような場合に「かゆみ」を抑えると、上手くいく可能性はあります。お使いになられた抗ヒスタミン薬では効果がありませんので、違う抗ヒスタミン薬あるいはステロイドホルモン剤を使用してみることをお勧めいたします。

 

また、妊娠への必勝法はクロミッドが良いと思います。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。