2020年10月にFertil Steril Revが創刊されました。本論文は、その近年すべき第1号に掲載された、男性年齢のART成績(体外受精、顕微授精)への影響に関するメタアナリシス です。
Fertil Steril Rev 2020; 1: 16(英国)DOI:https://doi.org/10.1016/j.xfnr.2020.04.001
要約:39歳以下の女性(自己卵、ドナー卵子)におけるART成績(体外受精、顕微授精)に及ぼす男性年齢の影響をメタアナリシス により検討しました。なお、無精子症の方は除外しました。出産率は、自己卵3論文2926周期、ドナー卵子5論文7648周期で、流産率は、自己卵2論文970周期、ドナー卵子4論文3741周期で検討しました。ドナー卵子の場合には、出産率も流産率も男性年齢による有意な影響は認めませんでした。自己卵の場合には、出産率も流産率も流産率も男性が40歳以上の場合に有意な低下を認めましたが、男性年齢とパートナーの女性年齢には有意な正の相関を認めました。
解説:最近、男性の加齢が生殖に悪影響であることを示す論文が数多く発表されています。男性の加齢により精子DNA損傷が多くなること、精子のDNAは酸化ストレスに敏感であること、加齢により酸化ストレス(活性酸素)が増加すること、精子DNA損傷増加により妊孕性が低下することが知られています。一方で、男性の加齢は受精卵の染色体異常とは無関係であるとの報告もあります。本論文は、男性年齢のART成績への影響に関するメタアナリシス であり、ドナー卵子の場合には男性年齢による影響を認めなかったこと、自己卵の場合には男性が40歳以上の場合に出産と流産率の有意な低下を認めています。ただし、自己卵の場合にはパートナーの男女の年齢には有意な相関があるため、女性年齢による影響が最も考えられるとしています。
男性の加齢については、下記の記事を参照してください。
2020.11.3「☆男性の加齢と活性酸素増加と精子DNA損傷増加の関連」
2020.9.10「☆男性の加齢は受精卵の染色体異常とは無関係」
2020.9.9「☆男性の加齢による精子DNA損傷」
2019.6.9「☆不妊原因と子供の健康について その1:夫婦の年齢」
2015.10.21「☆男性の加齢が生殖に与える影響」
2015.6.28「☆男性の加齢に伴うお子さんの異常や疾患」
2014.11.11「男性の加齢による影響は?」
2014.5.30「父親の年齢は子どもの精子に影響するか」
2014.2.12「父親が高齢になると子どもの精子のテロメアが長くなる」
2014.1.13「☆男性の加齢→大きな胎盤→妊娠中のトラブル増加」